ある日、私の頭に耳が生えました

巻乃

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ラーン・ビット国編

王太后様はユーイと聖獣様をお供に

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 さて、ユーイにはどこまで話そうかしら?今回の事の全てを話して計画を手伝わすのは簡単だけれども、ナーオ・ロウ国の事を考えると、将来の国母になるユーイには、色々な経験を積ませないと、いけないわね。

 まずは、どこまでの計画内容をユーイに話していいかどうか、ユーイの王妃教育での成長具合がどの程度かの探りを入れなければならないわ。

 …ふぅ、ショウ王太子の生母が生きていれば、こんな手間暇をせずに、私とあの人で2人の老後をエンジョイしていたでしょうに。

 こんな苦労は単純な男共には分からないのよねぇ。だから、私の所へこんな手間暇をかける様な事が飛び込んで来たのだし…。ユーイが馬鹿でなかったから、この位の準備で済んだのですけれど、ね。

 ユーイの中の魔法で出来ている、もう一人のユーイが私の計画をユーイに話さなければ、今回の件で王妃としての資質を磨く実地訓練が出来るでしょうし。

 将来王妃になるユーイの力になるだろう事はもう一人のユーイも理解しているでしょうね。
 ユーイへ話す可能性は低いけれど、ユーイの身に危険が迫ったら出て来るのでしょうし…それでもギリギリまで我慢してくれないかしら?

「あら、ユーイは居眠りをしているのね。今朝の出発は早朝だったから、仕方がないわよね。」

 朝早い時間にナーオ・ロウを出発した王族専用の魔馬車の応接間の中には、ユーイと私とクー様がいるだけ。
 メイドや女官は、魔馬車内の違う部屋で待機中。
 私達がベルで呼んだり、声をかけるまでは、今いるこの走る応接間内へは入って来れない。勿論、護衛騎士も、ね。

 王太后である私が入室を許していないから。さて、と、防音の魔法をかけて、っと。

 今なら、もう一人のユーイに話を聞いてもらえる良い機会だわ。

「もう一人のユーイが、今回の件でユーイに危険が迫っても、ギリギリまで出て来ない様にしてくれないかしら?王妃になる為にはそれをどうやって乗り越えるのかもがユーイの良い訓練になるのだけれど、どうかしら?」

 私がそう言って、居眠りをしているユーイに問いかけると、寝ている筈のユーイの身体から魔力が溢れ出て、いつものユーイとは違う低い声が聞こえて来たわ。もう一人のユーイが出て来たのね。

「…分かりました。ギリギリまではこの体の持ち主のユーイの手助けをしない方向で行きます。ユーイの将来の為ですもの。折角一つの身に戻れたのに、ユーイに死なれては私も困りますもの。
 幼少時に沢山辛い思いをしたんです、もっと幸せになってもらいたいのです、私ごと。ええ、幸せになってもらいたいのです。」

「今度のこの計画も話さないでいてくれればいいわ。」

「ユーイに聞かれても、知らない振りをしておきます。女神さまも聖獣様も手を貸していらっしゃるのですから、私は静かに観客の役目を致しております。」

『うにゃんにゃ。(あたいもユーイに聞かれても、言わない様にする。)』と、ユーイの横のクッションの上で寝ていた筈のクー様こと、クーちゃんが、そう返事をしたのですわ。

 聖獣様も今回私達に同行なさるのですが、ユーイの飼い猫を装うのにあたり、「クー様」と呼ぶ事を禁止され、「クーちゃん」と呼ぶ事を厳命されましたのよ。
 それに、クーちゃんの見た目が黒一色だと聖獣様だとバレるので、お腹の側を白く見える様に、黒白の猫を装う事に致しました。王家の意向を示すきらびやかな立派な首輪を付けて。

 クー様には、今回、人化した姿は私達以外には見せずに、場面によって、ユーイや私の影武者を演じてもらうつもりですのよ。おほほほほ。

『にゃごにゃ。(楽しそうだな、王太后よ。)』

「楽しいですわ。女神さまや聖獣様達の手伝いが出来るし、親友を助ける手伝いも出来ますし、あの熊男を追い払える機会ですものっ!逃しませんわ。
 その上、いろんな方々を鍛える良い機会に恵まれたし、マザコンの大馬鹿王子共をぎゃふんと言わせられるなんて、一石二鳥どころではありませんわ…!!!」

『ん、にゃ。(そ、そうか。)』

「ええ!!」

『うるにゃんにゃ、うにゃにゃにゃにゃん。(明日の午後には、ラーン・ビット王宮へたどり着けるのだろう?)』

「明日の午後には、楽しみが一杯ですのよ。まずは先制パンチを浴びせなければ!」

『にゃにゃにゃにゃ、にゃお。(程々に、な。)』

 その頃、ラーン・ビット国の王城では、ナーオ・ロウと言う他国の王族の訪問を伝えられて2日。未だにその準備で王城の中がごたごたとしていたのだった。

 私室でくつろいでいたアマデウス王の元へ、第3王子であるベルナールが飛び込んで来た。

 王の部屋の前に居た騎士達が通したので、危険な者ではないだろうと思っていた王だったが、末の息子だと気付き、たしなめた。

「キチンとした手順で王の元を訪ねよ。」と。

「すみません!ち、父上っ!!ナーオ・ロウからの訪問とはっ、どなたがいらっしゃるのですかっ!!」

 これは、王と王子の会話ではなく、父子の話なのだなと思った王は、息子へ話す口調を少しだけ砕けたものに変えたのだった。

「あー、アインハルトとラインハルトとファネスやシルビアには伝えてあったのだが、な。ベルナールは聞いておらなんだか?」

「聞かされておりませんっ!!」

「王太子妃様とその付き添いで、王太后様のお2人がまずはいらっしゃるのだとあったのだ。

 あちらも聖獣様による急な指示での急ぎの出国だったので、後から土産を持った正式な使者が訪れるとあった。

 我が国への滞在は10日程だそうだ。都合や事情が変われば、多少の変更はあるだろうが、な。

 聖獣様が指示したのは、「我が国の王太子妃とラーン・ビット国の王太子達の番が両国を結びつけるだろう。その祝いでの訪問をすぐする様に」と言って実現したそうだ。

 祝いを告げる正式な訪問に際し、アインハルトとラインハルトの番の叔母にあたり、将来の国母になる王太子妃様にその役目を果たすようにと聖獣様からの白羽の矢が立ったそうなのだ。

 だが、ナーオ・ロウには今現在、王妃にあたる方がいらっしゃらないので、その付き添いを王太后様がされるのだとの旨を書いてあった。

 あちらの王家からの書簡の中にそう書いてあったのだ。我が国の王家へ向けての正式な書簡だと既に受け取ってあるので、急いでその準備をしている最中だ。

 だから、ベルだけでなく、城中の皆が慌てているだろう?ふははは。」

「…父上、私まで慌ててしまい、すみません。」

「よいよい。ここ半年以上、そなたが別人の様であったので、な。そなたの素が見えたので、安心したわい。」

「王子としての振る舞いが出来ず、申し訳ありません。」

「ファネスとシルビアには王家の女性として、使者であるお2人方を迎える準備もあるので、な、前もって伝えていたのだ。

 アインハルトとラインハルトの番が絡む話だから、2人にも前もって話しておかねばならないだろう?

 ベルナールにも伝えようとしていたのだが、ここ4日程、視察へ出ていただろう。だから、伝えられなかったのだ。」

「重ね重ね、申し訳ありません。視察の後の報告書を仕上げて参ります。」

「あの名誉騎士団長殿をベルが城の外へ連れだしてくれたので、な、迎える準備が進んだのだ。でないと、あれやこれやと口出しをしてきて、準備も進まず、五月蠅かっただけだろうからな。」

「母上を狙う他国の者など、国外追放をしたい位です。」

「それが出来ぬから、ベルナールに王城から、あの男を引き離してもらったのだ。ご苦労であったな。」

「父上、あんな男に負けないで下さい。」

「ファネスは渡さんから、ベルも皆も安心しているがいい。」

「では、失礼致します。」

 3男が出て行った扉を見て、アマデウスは呟いた。

「王家を潰さないで、誰も殺さずにいれば、王家の誰が次代の王になっても良いのだ。ベルよ。その血さえ継いでいるなら。」と。
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