ある日、私の頭に耳が生えました

巻乃

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ガオン・ロード国編

アルクトスとブリュンヌの話し合い

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 茶会が終わったばかりの部屋で、ナーオ・ロウ国の王太子ご夫妻が出て行った後、椅子にドカリと座り込んだ。

 わたしは何という事を他国の王太子殿にしようとしていたのかと、己を反省していたのだ。

 ブリュンヌを見ると、彼女も辛そうな顔をしていた。他人に縋っている自身を恥じているような反省しているような、複雑さを表現していた。

 小さい頃、悪いことをしてみようと誘ったわたしに逆らえず、一緒にいたずらをして、その悪い事が見つかって、王妃であるわたしの母上から怒られる前のような顔をしていたからか、わたしにはブリュンヌが反省しているのだと解ったのだがな。

「ブリュンヌ、わたし達は道を誤る所だったのだな。」

 そう、わたしが溜め息交じりで告げると、

「そうですわね。私達、他国の方々に対して、大変失礼な事をする所でしたわ。断ってくださって良かったですの。」

 どこか安心したような声色で告げたブリュンヌ。

「ああ。断られた直後は、何て事を言うのだと憤慨ふんがいしそうになったものだが、な。」

 それも、心のままに。怒鳴りそうになったのは本当だが、わたしもこの国の王太子で、王子が2人もいる父親なのだ。

「そうです。なんて薄情でしょうと思いましたわ。」

 顔を上げて、そう言うブリュンヌはちっとも悔しそうではないが、な。

「だが、あの2人の話を聞いたら、わたし達が甘えていたのだと理解したのだ。それも、わたし達よりも大変だったお2人に、な。」

 わたしが悔しそうに言うと、ブリュンヌもうつむいた。

「王太子夫妻という同じ立場でも、私達が幼少時にお2人と同じような、そのような環境でいたら、一体どうなったのでしょうかと、つくづく考えさせられましたわ。」

 涙目でそう語るブリュンヌが愛しい。

「ああ。わたし達と出会う前に、隣国でも、そんな目に遭っていたのだとは知らなかった。今までのように情報がないのは困るな。」

「私でしたら、国が違うと理解出来ても、同じように笑っていられませんでしたわ…。

 これからは情報も大事ですわね。」

「さすがは女神さまの愛し子だな。過酷な試練を課されると言われているだけはあるのだな。」

「ええ。その番であるショウ王太子様も、ですわね。」

 見つめ合うわたし達の邪魔をする先代の聖獣のような者は、もうこの国にはいないのだ。

「そうだな。わたしでは、正直に、無理だったと言うべきか、な…。そのような立場になってみないと分からない。

 先代様の事も日和見主義で、なぁなぁにしていたのだ。それは陛下も王妃も同様に、だ。そのうち、収まるだろうと、な。」

 うつむき加減になったわたしの両手をブリュンヌが両手で握ってくれた。

「私も同罪ですわ。次代様、今は今代様経由で女神さまに訴え出れた筈ですのに、逃げるだけで、何もしませんでしたわ。」

 ブリュンヌに伝えたい事がある。だから、顔を上げて、目を見てブリュンヌに話す。

「この件を次の世代に教訓として残さなければな。わたし達王家の者達の誤まりとして。

 国民達にも、貴族達にもわたし達の間違ったやり方を押し付けてしまっていたのだ。」

「そうですわ。陛下や王妃様にもお話ししなければいけませんわ。

 でなければ、私のような者が王家で二度と出ないようにと、王子達に引き継ぎましょう。ねぇ、アルクトス様。」

 わたしにはブリュンヌが。ブリュンヌにはわたしがいる。

「そうだ。弱い熊のような、図体だけ大きくて度胸がない小心者だと言われないようにな。勇敢な熊のように、勇敢な所を見せなければいけないな。」

「ええ!そうしましょう!」

「お転婆ブリュンヌ、復活か?フフフッ。」

 わたしがそう茶化すと、頬を膨らませて拗ねたブリュンヌが言った。

「そうですわ!私らしい王太子妃にならないと!」

「それはいいな!わたしも、いたずら好きな王子もとい、皆を驚かせるような政策を立てられるような王太子を目指そう!」

 ニッカリと笑いかけた。

「その意気ですわ。」

 ブリュンヌがニコリとした。

「そうして、皆で幸せな国にしていこう。」「ええ!」

「父上と母上にも話さなければな!すぐに!」「そう致しましょう。」

 アルクトスとブリュンヌが茶会を開いていた部屋から出ていくと、どこからか、呟きが響いた。

『これで、この国も安泰だぁーね。ベーア?』

『そうね、クーマク。』

『次は私達の番だぁね。』『そうそう。次々世代の弟子になるかもしれないヤヤコも産みたいわ。』

『ベーア!』『お願いね!』

『まだまだこの国には足りないけれどねぇ。』『そうね。』

『仲が良いのはいいが、その前に弟子達を鍛えるのが先だろう?』

 聖獣のクーマクと、その番のベーアをたしなめるような声が聞こえたのだ。

『『め、女神さま!!』』

 2人はその場で頭を垂れて、平伏した。

『のんびりな。焦るでないぞ。』

 その返事は元気よく『『はいっ!!』』と答えていた。
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