168 / 207
ガオン・ロード国編
アルクトスとブリュンヌの話し合い
しおりを挟む
茶会が終わったばかりの部屋で、ナーオ・ロウ国の王太子ご夫妻が出て行った後、椅子にドカリと座り込んだ。
わたしは何という事を他国の王太子殿にしようとしていたのかと、己を反省していたのだ。
ブリュンヌを見ると、彼女も辛そうな顔をしていた。他人に縋っている自身を恥じているような反省しているような、複雑さを表現していた。
小さい頃、悪いことをしてみようと誘ったわたしに逆らえず、一緒にいたずらをして、その悪い事が見つかって、王妃であるわたしの母上から怒られる前のような顔をしていたからか、わたしにはブリュンヌが反省しているのだと解ったのだがな。
「ブリュンヌ、わたし達は道を誤る所だったのだな。」
そう、わたしが溜め息交じりで告げると、
「そうですわね。私達、他国の方々に対して、大変失礼な事をする所でしたわ。断ってくださって良かったですの。」
どこか安心したような声色で告げたブリュンヌ。
「ああ。断られた直後は、何て事を言うのだと憤慨しそうになったものだが、な。」
それも、心のままに。怒鳴りそうになったのは本当だが、わたしもこの国の王太子で、王子が2人もいる父親なのだ。
「そうです。なんて薄情でしょうと思いましたわ。」
顔を上げて、そう言うブリュンヌはちっとも悔しそうではないが、な。
「だが、あの2人の話を聞いたら、わたし達が甘えていたのだと理解したのだ。それも、わたし達よりも大変だったお2人に、な。」
わたしが悔しそうに言うと、ブリュンヌも俯いた。
「王太子夫妻という同じ立場でも、私達が幼少時にお2人と同じような、そのような環境でいたら、一体どうなったのでしょうかと、つくづく考えさせられましたわ。」
涙目でそう語るブリュンヌが愛しい。
「ああ。わたし達と出会う前に、隣国でも、そんな目に遭っていたのだとは知らなかった。今までのように情報がないのは困るな。」
「私でしたら、国が違うと理解出来ても、同じように笑っていられませんでしたわ…。
これからは情報も大事ですわね。」
「さすがは女神さまの愛し子だな。過酷な試練を課されると言われているだけはあるのだな。」
「ええ。その番であるショウ王太子様も、ですわね。」
見つめ合うわたし達の邪魔をする先代の聖獣のような者は、もうこの国にはいないのだ。
「そうだな。わたしでは、正直に、無理だったと言うべきか、な…。そのような立場になってみないと分からない。
先代様の事も日和見主義で、なぁなぁにしていたのだ。それは陛下も王妃も同様に、だ。そのうち、収まるだろうと、な。」
うつむき加減になったわたしの両手をブリュンヌが両手で握ってくれた。
「私も同罪ですわ。次代様、今は今代様経由で女神さまに訴え出れた筈ですのに、逃げるだけで、何もしませんでしたわ。」
ブリュンヌに伝えたい事がある。だから、顔を上げて、目を見てブリュンヌに話す。
「この件を次の世代に教訓として残さなければな。わたし達王家の者達の誤まりとして。
国民達にも、貴族達にもわたし達の間違ったやり方を押し付けてしまっていたのだ。」
「そうですわ。陛下や王妃様にもお話ししなければいけませんわ。
でなければ、私のような者が王家で二度と出ないようにと、王子達に引き継ぎましょう。ねぇ、アルクトス様。」
わたしにはブリュンヌが。ブリュンヌにはわたしがいる。
「そうだ。弱い熊のような、図体だけ大きくて度胸がない小心者だと言われないようにな。勇敢な熊のように、勇敢な所を見せなければいけないな。」
「ええ!そうしましょう!」
「お転婆ブリュンヌ、復活か?フフフッ。」
わたしがそう茶化すと、頬を膨らませて拗ねたブリュンヌが言った。
「そうですわ!私らしい王太子妃にならないと!」
「それはいいな!わたしも、いたずら好きな王子もとい、皆を驚かせるような政策を立てられるような王太子を目指そう!」
ニッカリと笑いかけた。
「その意気ですわ。」
ブリュンヌがニコリとした。
「そうして、皆で幸せな国にしていこう。」「ええ!」
「父上と母上にも話さなければな!すぐに!」「そう致しましょう。」
アルクトスとブリュンヌが茶会を開いていた部屋から出ていくと、どこからか、呟きが響いた。
『これで、この国も安泰だぁーね。ベーア?』
『そうね、クーマク。』
『次は私達の番だぁね。』『そうそう。次々世代の弟子になるかもしれないヤヤコも産みたいわ。』
『ベーア!』『お願いね!』
『まだまだこの国には足りないけれどねぇ。』『そうね。』
『仲が良いのはいいが、その前に弟子達を鍛えるのが先だろう?』
聖獣のクーマクと、その番のベーアをたしなめるような声が聞こえたのだ。
『『め、女神さま!!』』
2人はその場で頭を垂れて、平伏した。
『のんびりな。焦るでないぞ。』
その返事は元気よく『『はいっ!!』』と答えていた。
わたしは何という事を他国の王太子殿にしようとしていたのかと、己を反省していたのだ。
ブリュンヌを見ると、彼女も辛そうな顔をしていた。他人に縋っている自身を恥じているような反省しているような、複雑さを表現していた。
小さい頃、悪いことをしてみようと誘ったわたしに逆らえず、一緒にいたずらをして、その悪い事が見つかって、王妃であるわたしの母上から怒られる前のような顔をしていたからか、わたしにはブリュンヌが反省しているのだと解ったのだがな。
「ブリュンヌ、わたし達は道を誤る所だったのだな。」
そう、わたしが溜め息交じりで告げると、
「そうですわね。私達、他国の方々に対して、大変失礼な事をする所でしたわ。断ってくださって良かったですの。」
どこか安心したような声色で告げたブリュンヌ。
「ああ。断られた直後は、何て事を言うのだと憤慨しそうになったものだが、な。」
それも、心のままに。怒鳴りそうになったのは本当だが、わたしもこの国の王太子で、王子が2人もいる父親なのだ。
「そうです。なんて薄情でしょうと思いましたわ。」
顔を上げて、そう言うブリュンヌはちっとも悔しそうではないが、な。
「だが、あの2人の話を聞いたら、わたし達が甘えていたのだと理解したのだ。それも、わたし達よりも大変だったお2人に、な。」
わたしが悔しそうに言うと、ブリュンヌも俯いた。
「王太子夫妻という同じ立場でも、私達が幼少時にお2人と同じような、そのような環境でいたら、一体どうなったのでしょうかと、つくづく考えさせられましたわ。」
涙目でそう語るブリュンヌが愛しい。
「ああ。わたし達と出会う前に、隣国でも、そんな目に遭っていたのだとは知らなかった。今までのように情報がないのは困るな。」
「私でしたら、国が違うと理解出来ても、同じように笑っていられませんでしたわ…。
これからは情報も大事ですわね。」
「さすがは女神さまの愛し子だな。過酷な試練を課されると言われているだけはあるのだな。」
「ええ。その番であるショウ王太子様も、ですわね。」
見つめ合うわたし達の邪魔をする先代の聖獣のような者は、もうこの国にはいないのだ。
「そうだな。わたしでは、正直に、無理だったと言うべきか、な…。そのような立場になってみないと分からない。
先代様の事も日和見主義で、なぁなぁにしていたのだ。それは陛下も王妃も同様に、だ。そのうち、収まるだろうと、な。」
うつむき加減になったわたしの両手をブリュンヌが両手で握ってくれた。
「私も同罪ですわ。次代様、今は今代様経由で女神さまに訴え出れた筈ですのに、逃げるだけで、何もしませんでしたわ。」
ブリュンヌに伝えたい事がある。だから、顔を上げて、目を見てブリュンヌに話す。
「この件を次の世代に教訓として残さなければな。わたし達王家の者達の誤まりとして。
国民達にも、貴族達にもわたし達の間違ったやり方を押し付けてしまっていたのだ。」
「そうですわ。陛下や王妃様にもお話ししなければいけませんわ。
でなければ、私のような者が王家で二度と出ないようにと、王子達に引き継ぎましょう。ねぇ、アルクトス様。」
わたしにはブリュンヌが。ブリュンヌにはわたしがいる。
「そうだ。弱い熊のような、図体だけ大きくて度胸がない小心者だと言われないようにな。勇敢な熊のように、勇敢な所を見せなければいけないな。」
「ええ!そうしましょう!」
「お転婆ブリュンヌ、復活か?フフフッ。」
わたしがそう茶化すと、頬を膨らませて拗ねたブリュンヌが言った。
「そうですわ!私らしい王太子妃にならないと!」
「それはいいな!わたしも、いたずら好きな王子もとい、皆を驚かせるような政策を立てられるような王太子を目指そう!」
ニッカリと笑いかけた。
「その意気ですわ。」
ブリュンヌがニコリとした。
「そうして、皆で幸せな国にしていこう。」「ええ!」
「父上と母上にも話さなければな!すぐに!」「そう致しましょう。」
アルクトスとブリュンヌが茶会を開いていた部屋から出ていくと、どこからか、呟きが響いた。
『これで、この国も安泰だぁーね。ベーア?』
『そうね、クーマク。』
『次は私達の番だぁね。』『そうそう。次々世代の弟子になるかもしれないヤヤコも産みたいわ。』
『ベーア!』『お願いね!』
『まだまだこの国には足りないけれどねぇ。』『そうね。』
『仲が良いのはいいが、その前に弟子達を鍛えるのが先だろう?』
聖獣のクーマクと、その番のベーアをたしなめるような声が聞こえたのだ。
『『め、女神さま!!』』
2人はその場で頭を垂れて、平伏した。
『のんびりな。焦るでないぞ。』
その返事は元気よく『『はいっ!!』』と答えていた。
0
あなたにおすすめの小説
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています
空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。
『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。
「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」
「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」
そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。
◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる