ある日、私の頭に耳が生えました

巻乃

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ガオン・ロード国編

王太子と王太子妃のお茶会

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 ガオン・ロード国へ着いてから、先代聖獣のやらかしていた濃い好色じじいのあれこれを聞かされて、この国での聖獣についての情報は、次代の私達が対等な交流をするのに必要ではない内容だとショウ様と話し、決定しました。

 この国へ着いてすぐ今代の聖獣様とのお話だったのもありましたし、色々と国と国での話し合いをする前の調整が必要という事でした。
 そこで、2日程、移動に伴った疲れを癒す為の休養をするという名目で、日程が調整されました。

 随行した文官達やメイドや侍女達や、護衛達があちこちで草の根交流をしてくれて、この国の大体の内情を把握してくれました。
 ナーオ・ロウ国として、この先をどうするかの話し合いをして、国を出る時に決めていた大まかな方針の修正をしていたので、現場についた者達で細部を決めました。

 話し合いの最後、ショウ様は私がどうしたいのかという事を小声で聞いてくれました。

 私が、もうこれ以上、この国の聖獣様達に関する事を私自身が聞きたくないのだとショウ様だけに話すと、
「ユーイの判断は適格だよ。
 私達の国とは先代の聖獣様の件は直接の関係がない。その私達がこの国の内情へ、これ以上は踏み入らないことにしよう。」と言ってくださいました。

 それからは私達と外交担当である先王様がいない今、その担当の補佐になっているイッチェンさん、それと文官の方々もこの事を話し合いました。
 この件について、他国であるナーオ・ロウ国はガオン・ロード国へ不干渉とする旨を下しました。

 そして、すぐ、この事もナーオ・ロウ国へ聖獣のクーちゃん経由で国内へ知らせました。

 報告・連絡・相談の報連相ほうれんそうですね。国内の方でもその場ですぐに同じような決定がされたので、方針としてのズレが出ていないのだと皆で安心しました。

 もちろん、先王で今は一伯爵様とされている先王様、王太后様ご夫妻にもクーちゃん経由でこの件をお知らせしておきましたよ。

 そうしたら、先王ご夫妻はラーン・ビット国で第3王子の処刑を見届けたので、明日朝にはラーン・ビット国を出立するそうです。

 ラーン・ビットからガオン・ロードまでは6日程かかる魔馬車での行程をクーちゃんの転移で短縮し、明日の夕方にこちらの国の近郊まで転移してくるそうです。だから夜半過ぎには、この国へ着くのだと聞きました。

 この到着を先触さきぶれとして、先程、我が国のリヨウさんがこちらの国の王族へ知らせに行きました。

 あぁ、良かったぁ。私じゃ、まだまだ新米と言う冠が付いたままの王太子妃だから不安だし、王太后様が来るので、別の意味でも安心します。

 ただ、明日の午前は城内案内と視察、午後からはガオン・ロード国の王太子ご夫妻と私達のお茶会があるのです。

 何だかこの国の内情に巻き込まれそうな感じがするので、ショウ様とその夜も話し合いをして、これ以上、私達も内情を深く知るのはノーセンキューだと決めてました。
 何が何でもお断わりの姿勢に徹するとして、2人の足並みを揃えました。

 そうして迎えた翌日、午前中は可も不可もなく過ぎ、午後のお茶会が開かれました。

 王太子同士のお茶会だからでしょうか。テーブルの上には所狭しと色々なお菓子や軽食が並んでいます。どれもこれも美味しそう。全て、両国の方で魔法での異物混入や毒や薬の混入がない事を確認した上、毒見も済んでいるのだと聞かされました。

 それなら、安心です。それに、お茶を淹れるのは、ホスト役であるアルクトス王太子様だそうですから。

 お茶会の最初の話題は、当たり障りのない話や、王太子あるあるといいますか、部下である臣下の違いをどう生かすかなどの話でした。

 それを微笑ましく眺めながら、「お菓子がおいしいなぁ。」なんて思っていると、私の向かいの席に座っていたブリュンヌ王太子妃様が下を向いてしまわれました。

 アルクトス王太子様が気遣っても、顔を上げません。アルクトス王太子様が手を握って慰めています。

 人前でも手を握るのは、イチャイチャでなく、これは、番なら当たり前の事なのですよ。私も最初は恥ずかしかったけれど、今では前よりも少しは慣れましたんで。

 それにしても、やけに長いなぁ。どうしたんだろう?とショウ様の方を見て、私が様子を伺うと、ショウ様が私の目を見て口パクで「あの件だ。」と言うのです。

 あぁ、聖獣様がらみかぁ。でもその件は解決したのでは?

 私も困ったように、眉を下げて不安そうな顔をして見えたのでしょう。ショウ様が頭を撫でてくれました。

「ショウ王太子殿、ユーイ王太子妃殿、我が妃が申し訳ない。聖獣クーマク様から話を聞かれているのだろう?」

「ええ、ですが、私達は関係ありません。」

 青い顔色をしたブリュンヌ王太子妃様が縋るような目付きで私達を見ています。アルクトス王太子様も私達を責めるような目付きです。

「そんな。せめてユーイ殿には妃の話を聞いてもらえないだろうか。」
「…私の話だけでも、聞いてもらえないですか…。」

 同情はしても、私達はこの国の者ではありません。だから無理なのですとの気持ちを込めて、2人して断りました。

「私もショウ様も話を聞く気はありませんわ。」と。

「どうして…。」

 泣きそうになりながら、そう問いかけるブリュンヌ様。

「では、私の方から先に聞きたい事があります。」と、ショウ様がアルクトス様に問いかけました。

「ショウ殿、いいでしょう。先にお話下さい。」

 ショウ様が微笑んでいたのを止め、真剣な顔つきで話し出しました。

「我が国の恥ですが、私はつい近年までの10年間以上、地球では20年以上、婚約者で番であったユーイが行方不明でした。
 それは他国の介入で、ユーイが血縁の者の手によって地球へ誘拐されていたからです。」

「ああ、その件は私達も知っている。」

 ショウ様が何を言いたいのか疑問に思いながら、アルクトス様が答えました。

「私がユーイに出会ったのは、ユーイが3才の頃です。番だってすぐに解りました。

 それなのに、次に出会う事を楽しみにしていた私に届いた知らせは、ユーイが誘拐され、行方不明との事でした。
 最初は悲しんで、次に、衝撃で全く動けなくなりました。そこで私は、ユーイを番を諦められませんでした。

 だから、ユーイを見つける力が欲しくて、文字通りに血を吐きながら、あらゆることに努力を重ねました。

 地球へ連れ去られてしまい、居所を追ってもすぐに引っ越しをされてしまう、ユーイとその血縁の者達の行方が不明で心配も不安も沢山経験しました。その度に何度も悔し涙を流し、呪詛や文句を口から垂れ流しました。

 これがどの位きつかったのか、番を身近に感じて過ごしていたアルクトス殿にはお分かりにはならないでしょう。」

「私の方も、小さ過ぎて、その頃の記憶が曖昧あいまいですが、食事が満足にも与えられず、服も古着を渡されて、小さくても大き過ぎても我慢をしなければなりませんでした。

 血縁の者の機嫌一つで、寒空の中、薄い服1枚だけで凍えそうな夜を過ごした事は、数え切れませんでした。
 学校でも、イジメにあい、理不尽な思いを沢山しました。」

 そう告げた私の声は強張って震えていました。まだ、怖い辛いという気持ちがぬぐえ切れていませんでした。

「そんな…。」「幼子おさなごを…。」

 アルクトス様とブリュンヌ様が何かを呟いていたようですが、私には聞き取れませんでした。

「私がユーイを見つけられたのはホントウに偶然でした。

 私が地球で仕事をしながら、探して探して、諦めてしまおうかと絶望する直前、やっと見つけ出せました。
 その時のユーイは平民の中でもすごく節約してハッキリ言って、貧しいという生活をしていました。

 血縁の者達がユーイに費用や財産を渡さずに浪費したのでしょうね。一切の金銭を残さず、寿命で亡くなっていました。
 ですから、ユーイは特待生と言う学費を免除される学力を維持しつつ、自分で働きながら、生活の費用と学用品をまかない、学校を卒業し、就職していました。

 就職先でも他国の介入の延長で、理不尽な目に遭っている所を私と臣下で救い、後始末をして、自国まで連れて帰ってきました。

 もう二度と離すものかと決意しましたよ。だから、もし私がユーイを手放す時は、私の寿命が尽きた時だけです。」

「私、地球での居場所がありませんでした。

 友人もなく、このまま消えていくものばかりだと思っていたんです。

 だって、私は地球で育っている間中、ここは私の居る場所ではないとの疎外感をずっと感じていましたから。

 だからかもしれません、こちらへ帰ってきてからは、私、幸せなんです。

 嫌な事、怖い事もありましたが、ショウ様と一緒にいると、生きているって実感出来ました。」

 そう言い切ってから、最後にニッコリと微笑んでおきました。

「ラーン・ビット国の元第3王子が処刑されましたね。」

 ショウ様がそう言い続けます。

「ええ、まぁ。」今朝早くにその話が我が国伝わりました。」

 ショウ様はニコニコと微笑んではいますが、目が笑っていません。怖い笑顔ってやつです。

「あれはですね、ユーイに催淫剤を用い、強姦しようとしたからなんですよ。

 これは、お2人ならどういう意味かお分かりになりますよね。

 実際にユーイの居た客間に忍び込んで、その王子は一晩中居て、朝帰りをしましたから。
 そうそう、元王子はユーイの身代わりをユーイ本人だと勘違いしたままでしたけれどもね。」

 そう言い切るとニッコリと笑みを深くしたショウ様でした。

 息を呑んで、溜め息を一つしてから、アルクトス様は言葉を吐き出しました。

「…私、アルクトスの方からは何も言う事はありません。」

 ショウ様は続けます。

「身代わりの方も魔法で操っていた身代わり人形でしたのですが、未遂で済みました。

 それでも、そんな目に遭った私のユーイにすがりますか?

 ブリュンヌ王太子妃様は対等の立場でのお付き合いを望まれないのですか?」と。

 アルクトス王太子様もブリュンヌ王太子妃様も黙っておられます。

 私はショウ様の方を見て、どうしましょうかと口パクで伝えました。ショウ様は、笑っているだけです。

「では、時間も丁度良いでしょう。私達も王太后様を迎える支度がありますので、お茶会をお開きにいたしましょう。それでは。」

「ああ。茶会への参加、誠にありがとうございました。私共も、歓迎の用意を致します故、また後でお会い致しましょう。」

「ありがとうございました。」

 お2人が頭を下げて私達を見送ってくださいました。

「お茶会にお招きいただき、ありがとうございました。」

 私も茶会の挨拶をしてから、ショウ様とその部屋を出ました。

 私達が滞在している客室まで送られてから、王太后様が来られるまでの間に、アルクトスお王太子ご夫妻は話し合ったのでしょうね。お出迎えの時には、スッキリとした顔つきをしていました。

 ショウ様が「まあ、いいか。」と言っていましたが、ショウ様の方も厄介ごとを引き受けずに済んだので、安心したと言っていましたから。
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