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茜色の泉 3
しおりを挟む入学した当時の胸躍る感覚は、その時の優希にはどこにもなかった。
埋め尽くすのは、ただひたすら学校に行きたくないという現実に対する哀願と、それを認めない家族の記憶と優希の臆病な心。そんな自分でもわからない混沌とした感情を持ちながら、優希は重たい体を動かして玄関のドアを開ける。
竜崎が優希に目をつけるようになったのは入学して半年が過ぎた頃、当時は竜崎のグループだけが、唯一進める足を重くする要因だ。
そして、下を向き、自らの足が前に進んでいることを視覚で確認しながら学校へと向かっていた時、
「よう桜木、今日放課後空いてる?」
まだ、学校に着いていないと言うのに後ろから肩を組んで放課後のことを語るのは、竹刀袋と鞄を肩に背負った鬼一 翠人《きいち あきと》だ。まだ、暑さが残る時期でベリーショートの彼は半袖という涼し気な格好をしている。
「別に……何もないけど」
放課後に竜崎に呼ばれないよう理由なら何でもよかった。鬼一は、クラスでもなかなか目立つ存在だ。そんな彼との約束なら竜崎も無理には連れて行かないだろう。
そうして、その日は少し安心と言う感覚に浸りながら、学校へと向かった。もちろん、休み時間での嫌がらせは変わらないが、それでも、時間は限られる。竜崎たちとは席が離れているため授業中は何かをされるということはなく、放課後のほぼ時間無制限な嫌がらせだけでもなくなるのは良いものだ。
いつも通り、古家たちから竜崎たちへと過ごすようになった休み時間を過ぎ、放課後を知らせるチャイムが鳴った時、優希は目の端でとらえるように竜崎たちを見た。いつものらそのままこちらに近づいてくるのだが、今日は優希とは反対方向にある教室の扉を開け、そのまま帰宅していった。つまり、今日は放課後の地獄をもともと味わうことはなかったのだ。
それでも、約束は約束。優希は鬼一の元に向かった。
場所は剣道場。なぜ剣道場なのか気にはなったが、鬼一やその友達である日向 宏人《ひゅうが ひろと》が剣道部に所属しているため、それほど深く考えることはなかった。
剣道場は、建物の一階、柔道場の隣にある。二階に授業で使用している体育館がある。そして、その建物の中に入り、玄関のような使用になっている下駄箱で体育館シューズへと履き替え、奥にある剣道場へと歩き出した。
剣道場の扉は少しだけ開いており、館内の廊下は少し暗いが、そこから斜光が射していた。
そして、優希は鞄を片手にその扉を開けた。中にはケータイをいじり壁にもたれかかっている日向とその隣で話している花江 哀《はなえ あい》、布谷 瑠奈《ぬのたに るな》。それと、どう言うわけか面以外の防具をつけている鬼一。鬼一の両手には竹刀を持っている。
「おい遅いぞ桜木、ほら、つけ方は知ってるな?」
鬼一は、入り口のそばに置いてある防具を指さす。鬼一の意図を読み取れないまま、優希は言われるままに防具をつける。若干の汗臭さを感じさせ、抵抗がないわけでもないが、竜崎と過ごすようになってから断るということができなくなっていた。
「つけたけど……どうするの?」
着慣れない感覚を肌で味わいながら、面金越しに鬼一を見る。おおよそ見当はついているが、理由が分からない。
「お前、竜崎にいろいろされてんだろ? もう見てられなくてな。俺が直々に稽古つけてやんよ」
「え、いや、でも……」
鬼一の申し出はありがたいが、もともと喧嘩などしたことがない優希には今から鍛えたところで何かが出来るビジョンがわかない。
だが、もうすでに竹刀を優希の手に握らせ、自らも構える鬼一にそれ以上異論など言えるわけもなかった。
「もっと、強く打てよ!」
「ちょ、まっ――」
暴力……とはまた違う。それが優しさから来ているのかはわからないが、鬼一は確かに優希に竹刀の振り方や動き方を教えている。もちろん、素振りなどを省いた実戦形式で、ほぼ一方的に優希がやられているだけだが、それでも稽古と言えるだけことはやっている。端で笑いながらこちらを見ている日向たち三人のことも、次第に気にならなくなり、優希はせっかくの申し出を乗ることにした。なにより、これを理由に竜崎と地獄の放課後を送らなくて済むというのもあった。
それ以降、放課後は鬼一が稽古をつけるようになった。なぜか竜崎たちが必要に絡んでこなくなったのは気になっているが、別に悪いことはなく気にしていなかった。
そして、稽古が始まってから二週間が過ぎた頃だった。
「うわっ!?」
「はぁ~桜木、お前全然成長しねぇな。そうだ、こういうのはどうよ?」
鬼一は何か思いついたのか、指を立てて話す。だが、その時は優希を見てはいない。鬼一の視界には前でしりもちをついている優希はなく、端で薄ら笑いを浮かべながらこちらを見ていた日向、花江、布谷の三人が映っている。
「やっぱこういうのは、罰と褒美がやる気を出すもんだろ?」
鬼一の言ってることに、優希は不安感が募る。そして、言われている三人の笑みは、薄くすらなくなり確かな笑みへと変わった。
「これから、最後の三分だけ、本気で相手する。俺に攻撃を当てた回数だけ桜木の願いを聞いてやるよ。ただし、俺が逆に攻撃したらその分願いを聞いてもらう。もちろん、俺は三回で一回分でいい」
鬼一の剣道の実力は、優希だけでなくクラス中が知っている。日向も全国出場者だが、鬼一はそれでも準決までは確実に行くほどの実力者だ。
そんな彼から優希が一本を取ることは難しく、優希の中には焦りしかない。
「それじゃ、最初の一回、始めるか」
鬼一は竹刀を構える。優希もついた尻を上げ、若干の痛みを耐えながら竹刀を構えた。
「や、やぁあ!」
自らに気合いを入れて、竹刀を振りかかる優希。だが、優希の筋力では竹刀の振りは遅く、全国クラスを経験している鬼一にとってはその全力の一振りも軽くあしらえる。その実力差を踏まえた結果は当然鬼一の圧勝。優希は一回も鬼一に竹刀を当てることは出来なかった。
「それじゃあ罰ゲームな。ま、そんな変なことは言わねぇから」
鬼一の言う通り、最初は芸人の物真似などだった。もちろんこれぐらいならそれほど抵抗はない。内気な優希にとって恥ずかしさはあるが、もっと過激なものを想像していた優希にとっては全然マシだった。
その時はもしかしたら楽しんでいたのかもしれない。ただ一方的な暴力を受けていた時とは違い、防具をしている分痛みもまだマシ。それに、罰ゲームと言っても本当に簡単なもので、場の空気も悪くはなかった。
おかしくなり始めたのは、そのルールが追加されて一週間が過ぎた頃だ。
「今回の罰ゲームは、外に行くぞ」
「翠人、外って?」
「公園」
「「「あぁ~」」」
鬼一の言葉に日向たち三人はなぜか納得している。
そして、着替えて公園に向かった。
「で……一体なにするの?」
「はいこれ」
鬼一が優希に手渡したのはスプレー缶だ。なぜこの場でこれを渡したのか優希には疑問だった。だが、優希がその疑問を言葉にする前に鬼一の言葉で解決した。
「そこの壁に渾身のグラフィティを仕上げろ」
「渾身のグラフィティって……それにこの壁って私有のものなんじゃ……」
壁に勝手に落書きをするのは悪い、もとより犯罪だ。そうはわかっていても、雰囲気が逃げ道を塞ぐ。たとえこの場で無理を言って断れば、また竜崎と同じようにしてくるかもしれない。なら、いっそのこと鬼一の言う通りにして、何かあれば誤ればいい。犯罪行為という実感が薄いものよりも鬼一たちに虐められる方がよほどの恐怖心と想像を膨らませる。そして、人目がないことを確認しながら、優希は壁にスプレー缶で描いていく。後ろからの重圧と、胸中をくすぶる罪悪感でおかしくなりながら。
それからは、罰ゲームと言うには少しばかり過激になっていった。自転車のタイヤにカッターで傷をつけたり、学校のガラスを故意に割るなど、犯罪すれすれものや法に触れるものまで、優希は鬼一の言われるがままにやり続けた。もう誰も離れてほしくなかったから、もう誰からも殴られたくなかったから、日に日に強くなる罪悪感と共に、そんな生活が続いていた。
ただ、そんなことを何回もしていれば当然免れない出来事が生じる。
「……」
「いろいろやってるみたいだね?」
「……」
教師からの冷たく鋭い視線に優希は顔を逸らすしかできない。
場所は生徒指導室。数々の行いをしてきた優希がこうなるのは必然だろう。いくら人目を気にしていたとはいえ、一切目撃されることなく行動するのは不可能に近い。
もちろん、数々の行いを認めるしかない。それは優希もわかっている。だが、一つ教師の話から腑に落ちないことがあった。
「一体なにしてたんだ? あんなところに一人きりで……」
一人。そう、確かにその教師は一人と言った。だが、優希の記憶には確かに鬼一たち四人も優希のすぐそばにいた。それでも、教師は一人と言っている。やっていることは事実で、教師が言ってることも合っている。つまり、別の人と間違えているわけでもない。その上で一人と言うのは引っかかりがあった。
「あの場には……鬼一たちも……」
自信がなく、場の雰囲気に蹴落とされ、優希の声は薄く震え、そして小さい。それでも、教師の耳には入っている。その状況で教師が言った発言は優希の理解を遅らせた。
「何言ってるんだ? 君は、一人だったろ? 目撃情報が出てるんだ。そこに鬼一はいないぞ」
この人は何を言ってるんだ? もしかして、見た人からは鬼一が見えなかったのか?
そんな考えが優希の頭に浮かぶ。
バレているものは全部学校内。つまり、見たというのは生徒か教師。教師ならその場で注意するので、生徒が目撃したのだろう。
なら、鬼一たちが証明してくれれば――
果たして、彼は、彼らは優希を助けてくれるのだろうか?
そう思うと今までだましていた不安が一気にこみ上げた。
――無実の証明? 目撃者がいる中で、鬼一たちが優希の無罪を主張してくれるのだろうか。
――罪の分割? 目撃者がいる中で、鬼一たちが自分たちがやらせたと言ってくれるのだろうか。
優希が今この場で出来るのはただ一つ。
「僕が……やりました……」
数々の犯罪行為、むしろ謝罪で済んだだけ幸運だろう。本当なら警察が介入するものだが、学校側の配慮、人々の優しさと、優希の必死な謝罪が、この状況を一日で収めた。
そして、優希はそれでも剣道場に向かう。それは、いつものように稽古をしてもらうためではない。ただ話をつけたかった。
そして、いつものように剣道場の前に辿り着いた時、ふと何かが耳に入った。
「あいつ、まだ怒られてんのかな?」
「そりゃそうだろ。だって、結構アウトの範囲だぜ? 今頃警察じゃね」
「何それめっちゃ受けるんですけど」
「にしても馬鹿よね。なんで気付かないの。ただ遊ばれてるって」
薄々気付いていた。ただ、それでも信じたかった。本当に自分のことを心配してくれてるのだと。
彼らは気づいていない。思いのほか早く解放された優希がすぐそばで聞いていることを。たとえ気付いたとしても、彼らは動揺することはないだろう。なぜなら優希が何かをすることは出来ないから。
そう思うと、何とも言えない感情が湧き上がる。何とかしたい。でも、何もできない。自分の無力さと愚かさを実感しながら、優希は扉を開ける。
――もう彼らとは、関わらないことにしようと
「や、やあ」
優希の登場に、鬼一たちは一斉に振り向く。
「大丈夫だったか? 悪いなお前ばっかり」
本当はそんなこと一切思っていない。優希にはそのことが分かっていた。
「いや、やったのは僕だし」
「そうか……それじゃ、今日も始めますか」
鬼一が竹刀を持ったその時、
「その……ことなんだけど……」
冷や汗をかきながら、優希は心から考えを、気持ちを舌に乗せて、
「もう……やめたいんだ……」
勇気を振り絞った言葉。だが、返って来たのは、受諾ではなかった。
「はぁ? 何それ、お前そんなこと言えると思うの?」
今までとは違い、鬼一は竜崎と同じ目で優希を見る。
「言っとくけど、お前がこうしていられんのは俺のおかげだぜ」
「正確には竜崎だけど」
鬼一の発言に布谷が追加する。
優希には言っている意味が分からなかった。ただ、竜崎はPTA会長の息子だ。もし、最初から鬼一と竜崎が関係しているとすれば、突然竜崎が絡んでこなくなったことにも説明がいく。もしかしたら、今まで鬼一がやらせた数々の被害者はその会長の関係者かもしれない。
つまり、結局は遊ばれていたのだ。心では抵抗しながらも抵抗しきれない優希の姿を。
「もう……勘弁してください」
優希は膝をつき、頭を床にこすりつけた。泣きながら震える声で、目の前の鬼一に懇願した。
鬼一が今どんな顔をしているのか、優希には見ることができなかった。それでも、確かに近づいてくる足音に、優希の鼓動が早くなる。
優希の肩に手が触れる。誰の手かはわからない。けれど、おそらく鬼一のものだろう。優希はゆっくりと顔を上げる。そこには薄っすらと笑みを浮かべる鬼一が、優希の肩に手を乗せてそこにいる。
そして、鬼一はたった一言、
「い・や・だ・ね」
この一言を、優希は忘れないだろう。なざなら、この日から優希に対する虐めはさらに悪化したのだから。
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