天才の天才による天才のための異世界

野良子猫

文字の大きさ
20 / 41

ホルスゲイン

しおりを挟む

「見ろ!これが俺の最高傑作だ!」

「「おー」」

 イオンはそう言って、二本の剣を掲げた。
 和也とナトリアは剣を見て感心した。
 見た感じ、剣というよりも刀だ。片側だけに刃がつき、反りがない直刀だった。

「こいつは、白月≪びゃくげつ≫。ユニコーンの角を材料にしているから、耐久性、切れ味、軽さはトップクラス!そしてこいつは、赤陽≪しゃくよう≫材料にはペガサスの骨を使い、使えば使うほど強靭になっていき、放たれる斬撃の威力は計り知れない!二本で五千万ホルムだ」

「……いや、こっちの二十万ホルムの剣を二つ」

「これが……いい」

 ナトリアは白月と赤陽を見てうっとりしている。というより、剣を掴んだまま離さない。

「ナトリア、父さんの収入じゃこれは買えないんだよ」

「お父さん……内臓って……結構高いらしい」

「お前お父さんに容赦ねぇな!?」

 和也の手持ちがあまりないのを察したイオンは分割でもいいと言ってくれた。イオンの武器屋が人気なのはこういう人柄の良さもあるのかもしれない。

「サンキューなイオン。これほど優しい奴見たことがないぜ」

「そ、そんなこと言われると照れるぜー。そんなことよりさっきの彼女、ナトリアさんだっけ? 得意げな顔で出て行ったけど……」

「は? うわっいねぇ!?」

 和也はイオンに一言礼を言った後、すぐにナトリアを追った。



 ********************



「あいつ、どこに行ったんだ?」

 イオンの店から数分走っったところで、騒がしくなっている所があった。
 絶対あそこだと確信した和也は全力で向かった。
 そこには、ナトリアが手に入れた二本の刀を眺めていた。周りの人は凶器を振りかざしている彼女に近づかないようにしている。

「うぉぉぉおおお、せいや!」

「……痛い」

「痛い、じゃねえよ!何やってんだよ?」

 ナトリアは和也に叩かれたところをさすっている。表情が変わらないからほんとに痛いかどうかはわからない。

「これ……いい」

「そうか。そろそろ行くぞ。みんな集まる時間だ」

「……わかった」

 この後、第七騎士団に職務質問されたことは言うまでもない。



 ********************



 和也とナトリアが戻ったころには二クスとフランがもう集まっていた。

「遅かったですね。どこ行ってたんです?」

「ちょっと、いろいろあってな……」

「なんかカズヤ、行く前から疲れてないか?」

「なにか……あったの?」

「お前が原因だろ!! とりあえず行くぞ」

 和也たちはカストナーのもとに向かった。



 ********************



 和也たちは馬車で向かっていた。フランが馬を操り、和也達三人は後ろの荷台に座っている。
 ルカリアの首都から少し離れた平地を走っている。

「僕たちだけで大丈夫ですかね?」

 フランの心配は無理もない。ナトリアが一撃負けた相手に、大した戦力も無く挑むのだから。

「ホルスゲインに対抗するなら、カリファーかオルト団長も連れてきたいけどそれは難しいからな」

「なんでだ?」

「今回は王国内部の組織だから第七騎士団の管轄になる。個人的に頼むとしても、向こうはナトリアをまだ信用してないし、ホルスゲインについて全くわかってない状態で動いてくれるとも思えない。今回は良くて撃破、悪くても情報だけは持って帰るぞ」

「マントラの手帳はどう対処するつもりだ?」

「それは何とも言えないな。あらからいろいろ調べたけど、歴史ばかりで弱点とかは書いてなかったんだよ」

「カストナーが手に入れてないことを祈るしかないな」

「ちょ、ちょっと! あれなんです!?」

 突然フランが大声を上げた。和也たちはすぐさま荷台から顔を出してフランが指している方向を見る。
 そこには二匹のドラゴンが空を舞っていた。

「うわーお! ドラゴンだ! 初めて見た!」

「カズヤさん興奮してる場合じゃないですよ! 逃げましょう!」

 フランが馬車を急旋回させた時、ナトリアが荷台から降り、ドラゴンに向かって走っていく。

「試し切り……相手に不足……なし」

 和也たちは馬車を止め、ナトリアの戦闘を見ている。

「そういえば、ナトリアさんが本気で戦うのって初めて見ますね」

「確かに、最初の時は武器を持ってなかったしな」

 ナトリアの戦いぶりはそれは凄かった。
 数十メートル上空のドラゴンにジャンプだけで上に行き、回転しながら落下。そのままドラゴンの片翼を切り落とした。
 落下していくドラゴンに着地し、そのままもう一匹のドラゴンに向かった。ドラゴンは口から炎を吐いたが、ナトリアは剣を一振りすると、炎の玉は真ん中から割れていき、ナトリアとドラゴンの間に阻むものはなく、そのドラゴンは一秒後には首がなかった。
 ナトリアが地面に着地したとき、周りはドラゴンの死体が二つ転がり、ナトリアの剣と服は血で染まっていた。
 和也たちは戦闘中、あまりの凄さに言葉が出なかった。

「これが……ナトリア・ハンフリー……」

「伝説の殺し屋の力か……」

「僕たち、これからの戦いについていけるんでしょうか……」

 カストナーの組織だけならナトリアは簡単に壊滅できるだろう。問題はホルスゲインだ。こいつの攻略は和也たちの頑張りが大きくなる。戦闘は全くついていけないだろう。しかし、やるしかないのだ。

 そんな彼らの前に、一人の男が現れた。

「いや~驚いたね。ここまでになってるとは」

 いきなり現れた男に、和也たちは唖然としている。だが、一人だけは反応が違った。
 ナトリアから殺気が染み出ていた。ドラゴンとの戦闘の後もあり、その姿は殺し屋というよりも、

「まるで、餓えた猛獣だねー」

 その男は、見た感じ三十前半で、ラフな格好に帽子とサングラスを身に着けている。
 特に武器を持っているわけではないが、ナトリアの殺気に全く動じない。というより、むしろ楽しんでいた。
 
「……ホルス……ゲイン」
 
 ナトリアが呟いた名前で、ようやく和也たちが状況を把握した。

「いや~怖いね~ナトリアちゃん元気だった?」

「なんか軽いな。ナトリアじゃないけどイライラしてきた」

「ナトリアちゃん、後ろの人はお仲間かい? ん~左から四十点、二十五点、一点」

「おい! 一点ていうのは俺のことか!? なめんな。五点くらいはあるわボケェ!」

「あんまり変わってないじゃないですか」

「ハハハ八、君面白いね~面白さは百点だよ」

「そんなことは……どうでもいい……カストナーの元に……案内してもらう」

「案内してやってもいいけど、僕に勝てたらね~」

 ホルスゲインの一言で、ナトリアが行動に移した。
 距離は五十メートルほどあったが、彼女らにとってはこの距離は一メートルと大して変わらない。
 二人の戦いは一瞬で始まった。だが、戦いになっているか疑問だった。ナトリアの攻撃はホルスゲインにはかすりもせず、ホルスゲインの攻撃は確実にナトリアに決まろうとする。ナトリアが無傷なのはホルスゲインが攻撃を寸止めしているからだ。

「フラン。俺達が戦いについていけるかって聞いてたよな」

「はい? こんな時になんです?」
 
 フランは和也の方に目をやると、和也は笑っていた。だが、それは完全に作り笑いだ。精神を保つために無理やりにでも笑っている。和也の表情を見たとき、フランは確信した。この二人の戦いに参加する余地などなく、邪魔にしかならないことを。

「ナトリアの戦いを見た後にこれを見るとほんとに勝てるビジョンが見えない。ハイレベルな戦いなはずだけど、子供が騎士団長を相手にしてるようにしか見えない……」

 ナトリアの動きは早く、強く、的確に急所を突いている。だが、ホルスゲインを相手にすると、同じ動きでも全く凄さを感じない。それほどまでにホルスゲインは強かった。

「ナトリアの身体能力を超える力……あいつの能力が関係してるのか?」

「だとしても、どんな能力か分からないことには……」

「それなら任せろ」

 ――分析《スキャン》!
 
 和也は分析の力を発動した。だが、情報は手に入らなかった。なぜなら、分析が完了する五秒間の間に和也の視界からホルスゲインの姿が消えたからだ。

「君、意外と厄介だね~」

「!?」

 ホルスゲインの声が背後からした。和也が振り向こうとしたとき、ホルスゲインの拳が和也の顔の前まで迫っていた――

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

転生後はゆっくりと

衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。 日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。 そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。 でも、リリは悲観しない。 前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。 目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。 全25話(予定)

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

留学してたら、愚昧がやらかした件。

庭にハニワ
ファンタジー
バカだアホだ、と思っちゃいたが、本当に愚かしい妹。老害と化した祖父母に甘やかし放題されて、聖女気取りで日々暮らしてるらしい。どうしてくれよう……。 R−15は基本です。

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、すれ違いの末に離れ離れになった夫婦の物語。 再会したとき、二人が選ぶのは「離婚」か、それとも「再構築」か。 妻を一途に想い続ける夫と、 その想いを一ミリも知らない妻。 ――攻防戦の幕が、いま上がる。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...