※踏み台ではありません

悠十

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魔王城編

第六話 異母妹

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「あぁぁぁら、セスと忌み子じゃありませんの」

 早速フラグを回収してしまった。

 セス達の行く手を阻むのは、真紅の髪の美少女、異母妹のアラキナと、その取り巻き三人である。取り巻き連中はいずれも顔立ちの良いイケメンで、外見年齢的に確実に成人している。

「ロリコンが三人……」

 ダリオの呟きにセスは吹き出しそうになったが、何とかこらえた。
 アラキナと出会ったのは、テオドアの部屋へと向かう廊下での事だった。



   ※ ※ ※



 ダリオに魔族の事を一通り教え終わった後、取り敢えず基本的な城での過ごし方をアビーから習う事に決まり、一先ずはダリオの今晩の寝床を確保しようということになったのだ。

「私は出来るメイドですからね! 急な人員増加だって対応してみますよ!」
「む、すまない……」

 にっこり笑うアビーの笑顔が怖かった。
 従業員増加に関しては煩雑な手続きが必要で、その審査は厳しい。しかし、それは当然である。何といっても、ここは魔王城なのだから。
 しかし、ダリオは王子たるテオドアの手によって作られ、契約に縛られた存在であるので、割とすんなり手続きは完了する筈だ。

「俺は安宿程度の寝床があれば大丈夫だぞ」
「あ、そうだ。僕の部屋に付いてる使用人待機室は使われていませんから、そこを使いましょう」
「そうだな。それに、ダリオはある意味使い魔ともいえるのだから、近くに居るのが良いだろう」

 そうと決まったのなら、さっさと部屋を整えてしまおうと一同はテオドアの部屋へと向かったのだが、その道中でアラキナとばったり出会ってしまったのだ。



   ※ ※ ※



 美しい顔に高慢な微笑を湛えて此方を見つめるアラキナに、セスはため息交じり呟く。

「……出たな」
「見事にフラグを回収しましたね」

 セスはげんなりとしたが、それを表情には出さず、アラキナを見遣る。

「久しぶりだな、アラキナ。何か用か?」
「あら、貴方に用なんてありませんわ」

 そう言って、アラキナは蔑むような視線をテオドアに向ける。

「ただ、その忌み子を私の視界に入らないようにしていただきたいの」

 言われたテオドアは、ぱちくり、と目を瞬く。

「先代様を殺した女の子供なんて、見たくも無いのよ。何処かに閉じ込めておいてちょうだい」

 アラキナのその言葉に、ダリオは眉をひそめる。しかし、そんなダリオとは対照的に、彼の主人たるテオドアはパッと顔を輝かせ、セスの服の裾をつかんだ。

「じゃあ、僕は兄上の部屋に閉じ込められますね!」
「いや、何でだ」

 何故、兄の部屋に監禁されようとするのか。

「それなら、おはようからお休みまで、ずっと一緒に居られます!」
「却下だ。俺の部屋には住まわせないし、監禁もしない」

 セスは眉間に皺をよせ、アラキナを見遣る。

「アラキナも余計な事を言わないでくれ。テオドアが引きこもりになったらどうしてくれるんだ」
「そういう話をしているのでは無いのですけど!?」

 何やら可笑しな方向へ話が変わろうとするが、それをアラキナが止めた。

「ああ、もう! 本当に、貴方方とは話をするだけ無駄ですわね。とにかく、その忌み子は私の前に出さないでちょうだい。では、失礼しますわ」

 ツン、と顔を背け、男達を引き連れてアラキナは去っていった。

「あの方、同じことの繰り返しなのに、飽きないですよねぇ……」
「僕は兄上と一緒に居られれば、閉じ込められても平気ですよ!」
「駄目だ、テオドア。それは健康的ではない」

 アラキナは明らかにテオドアを傷つけるような言葉を放っていたが、肝心のテオドアはノーダメージだった。むしろ、それを切っ掛けに兄の部屋に住み着こうとしている。中々、図太い神経をしている。
 そんなセス達の会話に、ダリオが一つ深く息を吐いた。テオドアが傷ついていない事に安堵したようだった。しかし、それは良い事なのか悪い事なのか、とすぐに眉間に皺を寄せて頭を悩ませていたが。

「気にしないって事は、言われ慣れてる……、って事だよなぁ?」

 ダリオの呟きは、拾われる事無く、セスの部屋に住み着こうとするテオドアの騒ぎ声によって掻き消された。
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