※踏み台ではありません

悠十

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魔王城編

第十一話 成長

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 手合わせの翌日、毎度お馴染みのテオドアによる突撃モーニングコールから、アビーのめげないパンツ泥棒イベントが起こった。
 色っぽい美女のガワを被った変態が、セスのパンツを懐に仕舞って窓から逃走し、それを修羅の形相でテオドアが追いかける。そんな二人を虚無の瞳で見送る被害者の隣には、驚きのあまり呆気にとられて立ち尽くすダリオの姿があった。
 


 セスのパンツを取り返したテオドアと、頭にでかいたん瘤をこさえたアビーが戻って来てから朝食を摂った。その間、マジかよ……、と言わんばかりの視線をダリオがアビーに突き刺していたが、アビーは涼しい顔でそれを流していた。
 
「さて、今日からはダリオに武術指南を頼みたい」

 そう言うセスに、ダリオが困った顔をする。

「でも、俺はアビー嬢ちゃんにわりと簡単に負けちまったぜ? 俺で良いのか?」

 『嬢ちゃん』呼びされてアビーが目を丸くしているのを横目に、セスは軽く頷いた。

「アビーとあれだけ戦えれば上々だ。それに、アビーの強さは魔術や身体強化の術ありきだからな。アビーは強いけれど、クセが強い。確かにアビーからは基本的な事は教わったが、アビーの能力的にも、性格的にも教えるのに向いてなかった。まあ、メイドなのだから、教官の真似事なんて出来なくても良いんだけど」

 そして何より、身の危険を感じるのだ。この残念ドМにこれ以上教わりたくない。
 何やら悔しそうにしているアビーに、しらっとした視線を向けつつ、セスは言葉を続ける。

「まあ、そんな訳で、専門家であるダリオには俺達、特にテオドアに武術指南をして欲しい。テオドアには武術的なセンスがあると思うんだ」

 そう言ってテオドアに視線を移せば、大好きな兄に褒められたテオドアが嬉しそうに笑っていた。

「成る程なぁ……。まぁ、そういう事なら俺でも教えられるな」
「ああ。よろしく頼む」
「ダリオ、よろしくね!」

 セスは静かに、テオドアは元気よくダリオに笑いかけた。二人の嬉しそうな顔に、ダリオも少し肩の力が抜けたのか、ホッとした様子で、人好きのする笑顔を見せた。



   ※ ※ ※



 ダリオを作ってから、一ヶ月の時が流れた。
 特に大きな事件も無く、セス達はそれなりに穏やかな日々を過ごした。ただ、アビーは相変わらずセスのパンツを盗み、冷たくされて興奮するし、テオドアはセスにべったりだ。そして、新入りのダリオはセス達に基礎トレーニングと武術指南をしつつ、主人のテオドアと何やらこそこそと秘密の特訓をしているらしい。
 その秘密の特訓だが、テオドアが態々「ダリオと秘密の特訓をしてきます!」とセスに宣言して行くので、あまり秘密になっていなかったりする。
 さて、件の特訓だが、遂に成果が出たとの事で、お披露目してくれるらしい。セスとアビーは訓練場にてテオドアの説明を聞いていた。
 
「実はですね、ダリオの腕が切り飛ばされても、後でくっついた事から他にも色々出来るんじゃないかと思って、試してみたんです」

 にこにことテオドアが笑い、ダリオも嬉しそうに笑っている。

「それでですね、僕とダリオは契約を結んでいるからか、僕の魔力をダリオが自由に使える事が分かりました!」

 その報告を聞き、セスは目を丸くし、アビーは口をあんぐりと開けて呆けた様子を見せた。

「……テオドア。それは、ダリオが勝手にお前から魔力を引き出せるという事か?」

 もしそうなら大問題である。

「勝手に、というのは無理みたいです。ただ、事前に僕が上限を決めて、使っていいと許可後出したら使えました。試しに上限を多くして使いたいだけ使ってもらったんですけど、先にダリオの身体にガタが来ました」
「いやぁ、やっぱり生前の生まれ持った以上のモノを使うのは難しいな。けど、怪我の功名というか、技を一つ手に入れたんだぜ!」
 
 にこにこ微笑むテオドアと、何やら年甲斐もなくはしゃぐダリオに、セスは安堵したのか、少し気が抜けた様に笑う。

「よし! それじゃ、テオドア坊ちゃん。準備は良いか?」
「いいよー」

 張り切るダリオに、テオドアはにこにこと返事をする。
 そして、ダリオはテオドアの魔力を吸収し始め、その肉体がピクピクと動き始める。

「これが、『身体強化』の更に先! 『肉体進化』だ‼」

 そう言うが早いか、ダリオの筋肉が膨張し、バツーン! と着ていた衣服が弾け飛んだ。
 セスは死んだ魚の様な目で微笑みを浮かべ、アビーは額に青筋を浮かべている。

「この『肉体進化』は『身体強化』の倍以上の力を得る事が出来――」
「この変態‼」

 アビー渾身の拳が、パンツまで弾き飛ばした素っ裸のダリオの顔にめり込んだ。

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