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辺境編
第九話 買い物2
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ルシアンが言う通り、ダッカの店は分かりにくい場所に在った。
表通りから細い路地に入り、その路地に数点並ぶ店の半地下に在る店がダッカの店だったのである。
店のドアに続く階段の端には荷物が雑然と積まれ、少しばかり店に入りづらい。
「商売をする気が無い店ですねぇ」
「まあね。この店は趣味でやってるんですって」
アビーの言葉に、ルシアンが肩をすくめて笑う。
「んー? この荷物、全部空の魔石だな」
「空の魔石?」
ダリオの言葉に、テオドアが首を傾げる。
「簡単に言えば、魔力を失った魔石だな。クズ石扱いの石だ」
「それも商品なの?」
「ほぼゴミ扱いの石ですよ」
テオドアの疑問に、アビーが呆れたように大量の空の魔石を眺め、言う。
「いや、使い道はいくらでもあるぞ。と、いうか、俺は欲しい。全部買って帰ろう」
「えっ!?」
しかし、ただ一人そのクズ石に目を輝かせているのがセスであった。
「これ、幾らだろう? 値段は書いてないな……」
「五つで半銅貨一枚だ」
セスの呟きに、聞き覚えの無い声が答えた。
声の聞こえた方へ振り向くと、ドアから半分身を乗り出している中年の男が居た。
「あら、ダッカ。久しぶりね~」
「ああ、久しぶりだな、領主様」
分厚い丸メガネの男は、どうやらこの店の主人のダッカであるらしい。
ダッカは黒髪で、無精ひげを生やしており、その気配から、どうやら種族は魔族であるらしい事が分かった。
「ダッカ、この子がアタシの甥のセスよ。将来有望な子なの~」
「ふぅん……」
セスを引き寄せ、撫で繰り回すルシアンを無視して、ダッカはセスをじろじろと見る。
「まあ、面白そうな奴ではあるみたいだな。おい、店に入るなら、さっさと入れ」
「は~い」
ダッカの言葉にルシアンは明るく返事をし、セスと共に店内に入って行った。
店内は薄暗く、棚には所狭しと商品が置いてあった。
棚に並ぶ商品は『水を吸着するマント』や、『石を粉にする箱・残使用回数三回』など、何に使うか分からない物や、誰も買わないだろう物が並べられ、隅の木箱の中には壊れたガラクタが乱雑に詰められていた。
ルシアンは面白そうに商品を眺め、他の面々は微妙な顔をしていたが、セスだけは目を輝かせ居ていた。
「伯父上、この店は大変良い店ですね!」
「そうでしょ! 面白いのよねぇ」
流石血族というべきか、似た者同士の伯父と甥は店内を物色し始め、残された三人は顔を見合わせて苦笑したのであった。
※ ※ ※
セスは店内の品物を物色し、壊れたガラクタが詰め込まれている木箱の前で足を止めた。
「おや、これは……」
木箱の中の品を一つ取り上げ、目を見開いた。
そして、慌てて木箱に目を戻し、目の色を変えて物色していく。
その様子に気付いたアビーがそっと近づき、覗き込むも、それが己の主人のどんな琴線に触れたのかは理解できなかった。
そして、あらかた目を通した後、セスは声を上げた。
「店主! これは全部で幾らだ!?」
珍しいセスの興奮した声にルシアン達が目を丸くしていると、ダッカがカウンターから身を乗り出し、セスの指す品を見て面白そうな顔をした。
「坊ちゃん、本当に面白いねぇ……。それは、その一箱で半銀貨三枚だよ」
「買った!」
半銀貨三枚は格安ランチ六食分の値段だ。壊れたガラクタに対しては少しばかり高い。それなのに目を輝かせて買うと言ったセスに、ダッカは大笑いした。
「あっはっはっは! 坊ちゃん、外の空の魔石だけど、坊ちゃんにならあれ全部で半銀貨二枚で売っても良いぜ? どうする?」
「全部買う!」
勢いよく言うセスに、ダッカは再び大笑いした。
「それじゃあ、この荷物は屋敷に届けるかい?」
「あ、いえ。魔法袋があるので、全部入れて帰ります」
そう言うと、アビーが魔法袋を差し出し、ダッカはそれに品物を詰めていった。
「なあ、セス様。セス様は何故これが欲しいと思ったんだい? これ、壊れているだろう?」
詰め込まれる品物を眺めながら、ダリオが尋ねる。
ダリオがそう言うのも仕方がない。それらは割れた魔導ランプであったり、原型を留めていない程ひしゃけてしまった物だったりしたからだ。
そんなダリオ耳に、セスは手招きして小さな声でこっそりと教えてやった。
「まあ、一見そうだろうな。けどな、これら全てに貴重金属のヒヒイロカネやミスリルが使われている。まあ、混ぜられているから錬金術で分離させないといけないんだがな」
「えっ!?」
その言葉に目を剥き、ダリオは思わずセスを凝視する。
「ここの店主は目利きだぞ。あの木箱の中に入っている物はひと手間加えれば大変価値ある者に化けるものばかりだった」
しかし、それを言うならその目利きがトラップじみたやり方で店に出していた商品を掘り出したセスもまた、店主に負けぬほどの目利きなのではないだろうか。
ダリオが感心しながらそんな事を考えているとは露知らず、セスは表に出ている空の魔石をもう一つの魔法袋に詰めてきて良いかと店主に許可を貰い、ウキウキしながら店から出て、空の魔石を魔法袋に詰めるのだった。
表通りから細い路地に入り、その路地に数点並ぶ店の半地下に在る店がダッカの店だったのである。
店のドアに続く階段の端には荷物が雑然と積まれ、少しばかり店に入りづらい。
「商売をする気が無い店ですねぇ」
「まあね。この店は趣味でやってるんですって」
アビーの言葉に、ルシアンが肩をすくめて笑う。
「んー? この荷物、全部空の魔石だな」
「空の魔石?」
ダリオの言葉に、テオドアが首を傾げる。
「簡単に言えば、魔力を失った魔石だな。クズ石扱いの石だ」
「それも商品なの?」
「ほぼゴミ扱いの石ですよ」
テオドアの疑問に、アビーが呆れたように大量の空の魔石を眺め、言う。
「いや、使い道はいくらでもあるぞ。と、いうか、俺は欲しい。全部買って帰ろう」
「えっ!?」
しかし、ただ一人そのクズ石に目を輝かせているのがセスであった。
「これ、幾らだろう? 値段は書いてないな……」
「五つで半銅貨一枚だ」
セスの呟きに、聞き覚えの無い声が答えた。
声の聞こえた方へ振り向くと、ドアから半分身を乗り出している中年の男が居た。
「あら、ダッカ。久しぶりね~」
「ああ、久しぶりだな、領主様」
分厚い丸メガネの男は、どうやらこの店の主人のダッカであるらしい。
ダッカは黒髪で、無精ひげを生やしており、その気配から、どうやら種族は魔族であるらしい事が分かった。
「ダッカ、この子がアタシの甥のセスよ。将来有望な子なの~」
「ふぅん……」
セスを引き寄せ、撫で繰り回すルシアンを無視して、ダッカはセスをじろじろと見る。
「まあ、面白そうな奴ではあるみたいだな。おい、店に入るなら、さっさと入れ」
「は~い」
ダッカの言葉にルシアンは明るく返事をし、セスと共に店内に入って行った。
店内は薄暗く、棚には所狭しと商品が置いてあった。
棚に並ぶ商品は『水を吸着するマント』や、『石を粉にする箱・残使用回数三回』など、何に使うか分からない物や、誰も買わないだろう物が並べられ、隅の木箱の中には壊れたガラクタが乱雑に詰められていた。
ルシアンは面白そうに商品を眺め、他の面々は微妙な顔をしていたが、セスだけは目を輝かせ居ていた。
「伯父上、この店は大変良い店ですね!」
「そうでしょ! 面白いのよねぇ」
流石血族というべきか、似た者同士の伯父と甥は店内を物色し始め、残された三人は顔を見合わせて苦笑したのであった。
※ ※ ※
セスは店内の品物を物色し、壊れたガラクタが詰め込まれている木箱の前で足を止めた。
「おや、これは……」
木箱の中の品を一つ取り上げ、目を見開いた。
そして、慌てて木箱に目を戻し、目の色を変えて物色していく。
その様子に気付いたアビーがそっと近づき、覗き込むも、それが己の主人のどんな琴線に触れたのかは理解できなかった。
そして、あらかた目を通した後、セスは声を上げた。
「店主! これは全部で幾らだ!?」
珍しいセスの興奮した声にルシアン達が目を丸くしていると、ダッカがカウンターから身を乗り出し、セスの指す品を見て面白そうな顔をした。
「坊ちゃん、本当に面白いねぇ……。それは、その一箱で半銀貨三枚だよ」
「買った!」
半銀貨三枚は格安ランチ六食分の値段だ。壊れたガラクタに対しては少しばかり高い。それなのに目を輝かせて買うと言ったセスに、ダッカは大笑いした。
「あっはっはっは! 坊ちゃん、外の空の魔石だけど、坊ちゃんにならあれ全部で半銀貨二枚で売っても良いぜ? どうする?」
「全部買う!」
勢いよく言うセスに、ダッカは再び大笑いした。
「それじゃあ、この荷物は屋敷に届けるかい?」
「あ、いえ。魔法袋があるので、全部入れて帰ります」
そう言うと、アビーが魔法袋を差し出し、ダッカはそれに品物を詰めていった。
「なあ、セス様。セス様は何故これが欲しいと思ったんだい? これ、壊れているだろう?」
詰め込まれる品物を眺めながら、ダリオが尋ねる。
ダリオがそう言うのも仕方がない。それらは割れた魔導ランプであったり、原型を留めていない程ひしゃけてしまった物だったりしたからだ。
そんなダリオ耳に、セスは手招きして小さな声でこっそりと教えてやった。
「まあ、一見そうだろうな。けどな、これら全てに貴重金属のヒヒイロカネやミスリルが使われている。まあ、混ぜられているから錬金術で分離させないといけないんだがな」
「えっ!?」
その言葉に目を剥き、ダリオは思わずセスを凝視する。
「ここの店主は目利きだぞ。あの木箱の中に入っている物はひと手間加えれば大変価値ある者に化けるものばかりだった」
しかし、それを言うならその目利きがトラップじみたやり方で店に出していた商品を掘り出したセスもまた、店主に負けぬほどの目利きなのではないだろうか。
ダリオが感心しながらそんな事を考えているとは露知らず、セスは表に出ている空の魔石をもう一つの魔法袋に詰めてきて良いかと店主に許可を貰い、ウキウキしながら店から出て、空の魔石を魔法袋に詰めるのだった。
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