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辺境編
第十話 冒険者ギルド前での遭遇
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ダッカの店での買い物を終えた一行は、次に冒険者ギルドへ行く事にした。ダンジョンコンパスを手に入れるためである。
「折角だし、ギルマスを紹介しちゃおうかしら。アポは取ってないけど、ちょっと顔を合わせる位なら大丈夫でしょうし」
そう言って、にこにこと機嫌よく笑うルシアンに、セスは首を傾げる。
「ご迷惑ではないでしょうか?」
「大丈夫よ~」
そんな遣り取りをしながら冒険者ギルドがある通りに差しかかかった時であった。不意に、人のざわめきが大きくなったのだ。
何だろうと思い、セスは視線をその方向へ向け、固まった。
そして――
「わっ!? どうしたんですか、兄上?」
テオドアの目を両手で塞いだ。
進行方向に、恐ろしいモノが居た。
「どうし――」
セスの様子に気付き、ルシアンがその視線を追ったその瞬間、ルシアンはセスの目をその手で塞いだ。
全ての表情を削ぎ落した顔で、ルシアンが告げる。
「アビー、あの頭の可笑しい連中を今すぐ然るべき処理をしなさい」
「はい、ルシアン様」
「いやいやいや、待て待て待て!」
ドスの利いた声で出された命令に、アビーは仄暗い微笑みを浮かべて頷き、それをダリオが慌てて止める。
彼等の視線の先には、問題の人物が居た。
「確かにこの土地で地肌にビキニアーマーは可笑しいが、南国からの何も知らない冒険者かもしれないだろうが!」
その声に、セス達一行が問題視している人物に視線が集まる。
その人物は、一言で言うなら美女だった。そして、痴女だった。
恐らく二十代前半くらいの人間の女性で、スタイルが良く、日に焼けた肌を惜しげもなく晒している。放漫なバストはビキニアーマーのみで隠し、魅惑的な腰には下肢を保護する鎧と、恐ろしく短い短パンを穿いているだけだった。何かのイベント中でもない町中でするには、非常識な格好である。お陰様で、子供を連れている保護者は「見ちゃいけません」と言わんばかりに子供を目隠しする羽目になっている。
「じゃあ、隣に居る女は何なの!? そういう店勤務の女の子でもあんな格好してないわよ!」
「うっ」
問題視している人物は一人では無かった。
彼女等は五人連れで、うち四人が女性だったのだが、その中の二人の恰好がアウトだったのだ。
「あんなピッチピチで、深いスリットの入った修道服なんて、町中で着て良い格好じゃないわよ!」
心ある保護者の声に、「せやな」と周りの人々も深く頷いた。
ビキニアーマー女の隣に居るアウト判定の出た人物は、やはり二十代前半くらいの美しい女性で、スタイルが良い豊満な胸の持ち主だった。
彼女は胸元が開いたピッチピチの窮屈そうな改造修道服を着ており、そのスカート部分には深いスリットが入っている。同教の人物に見つかったら最後、破門の危機ではなかろうか、という予想が立てられる程ヤバイ格好である。
「衛兵! 誰か、衛兵を呼んで来てちょうだい!」
「有り得ないわ」
「そうだな、アレはちょっと町中でする格好では無いよな」
「眼福ではあるけど、子供には見せらんねぇしな」
「俺は正直引いた」
騒ぐルシアンの言葉に釣られ、遠巻きにしていた人々からも「あいつヤベェ」という声が上がる。
それに慌てたのは痴女一行であった。
「ま、待って! 待ってください! 彼女達に悪気は無くて!」
「もう! リンジーさん達の所為ですよ!」
「そんな変な恰好するから!」
「そうかい? 南の方ではアリだったんだけどねぇ」
「え~? そんなぁ~」
衛兵を呼ぶのを止めようとしているのは一行の中で唯一男の少年だ。金髪金眼で、年の頃は十代後半に見えた。彼は感じ取れる気配から、魔族であろう事が分かる。
その彼の両サイドに引っ付いているのは、少年と同じ年ごろの少女達である。
一人は銀髪碧眼の美少女で、着ている服が上等な仕立てである事から、富裕層のお嬢様である事が分かる。彼女の腕は少年の腕と組まれ、その腕に豊かな胸を押し付けている。
もう一人は赤毛の猫の獣人で、活発的な美少女だった。短パンから惜しげもなく晒される白い太腿に、チラチラと周りの男から視線が飛んでいる。こちらも少年の腕に自らの腕を絡ませ、ささやかな胸元へ押し付けており、少年には「おのれ、ハーレム野郎め……」と一部の男達から怨嗟の視線が突き刺さっている。
「文句があるなら、さっさとアンタのツレの女達の恰好をどうにかしなさい!」
「はい! 申し訳ありませんでした!」
ルシアンの怒声に、少年はそう言って九十度のお辞儀をした後、女達を連れて走り去って行った。
「まったく……。後でアレ等が何なのか、それと、ちゃんと服装を整えたのかどうか調べとかないと……」
「え、わざわざ調べるんですか?」
ルシアンの苦々しさを隠さない呟きに、ダリオが少し驚きながら尋ねる。
「調べるわよ。特に、あの銀髪のお嬢さんはね。アレは多分貴族の娘だもの。身につけている物のグレードが違ったわ」
「そうなんですか……」
そんな事を言いながらルシアンは目を塞いでいたセスを解放し、セスもまたテオドアを解放する。
セスはホッと一つ息を吐き、テオドアは目をパチパチとして不思議そうに首を傾げた。
「兄上、何があったんですか?」
「……公共の場で、不適切な恰好をしている人が居たんだよ」
「不適切? 服を着てなかったんですか?」
「着てたけど、子供の教育に悪いうえに、犯罪を誘発しそうな格好だったんだよ」
「そんな服があるんですか? それは本当に服なんですか? 魔道具とかではなく?」
「魔道具では無かったな」
子供達のそんな会話に、大人達は何とも言えぬ表情で遠い目をした。
「折角だし、ギルマスを紹介しちゃおうかしら。アポは取ってないけど、ちょっと顔を合わせる位なら大丈夫でしょうし」
そう言って、にこにこと機嫌よく笑うルシアンに、セスは首を傾げる。
「ご迷惑ではないでしょうか?」
「大丈夫よ~」
そんな遣り取りをしながら冒険者ギルドがある通りに差しかかかった時であった。不意に、人のざわめきが大きくなったのだ。
何だろうと思い、セスは視線をその方向へ向け、固まった。
そして――
「わっ!? どうしたんですか、兄上?」
テオドアの目を両手で塞いだ。
進行方向に、恐ろしいモノが居た。
「どうし――」
セスの様子に気付き、ルシアンがその視線を追ったその瞬間、ルシアンはセスの目をその手で塞いだ。
全ての表情を削ぎ落した顔で、ルシアンが告げる。
「アビー、あの頭の可笑しい連中を今すぐ然るべき処理をしなさい」
「はい、ルシアン様」
「いやいやいや、待て待て待て!」
ドスの利いた声で出された命令に、アビーは仄暗い微笑みを浮かべて頷き、それをダリオが慌てて止める。
彼等の視線の先には、問題の人物が居た。
「確かにこの土地で地肌にビキニアーマーは可笑しいが、南国からの何も知らない冒険者かもしれないだろうが!」
その声に、セス達一行が問題視している人物に視線が集まる。
その人物は、一言で言うなら美女だった。そして、痴女だった。
恐らく二十代前半くらいの人間の女性で、スタイルが良く、日に焼けた肌を惜しげもなく晒している。放漫なバストはビキニアーマーのみで隠し、魅惑的な腰には下肢を保護する鎧と、恐ろしく短い短パンを穿いているだけだった。何かのイベント中でもない町中でするには、非常識な格好である。お陰様で、子供を連れている保護者は「見ちゃいけません」と言わんばかりに子供を目隠しする羽目になっている。
「じゃあ、隣に居る女は何なの!? そういう店勤務の女の子でもあんな格好してないわよ!」
「うっ」
問題視している人物は一人では無かった。
彼女等は五人連れで、うち四人が女性だったのだが、その中の二人の恰好がアウトだったのだ。
「あんなピッチピチで、深いスリットの入った修道服なんて、町中で着て良い格好じゃないわよ!」
心ある保護者の声に、「せやな」と周りの人々も深く頷いた。
ビキニアーマー女の隣に居るアウト判定の出た人物は、やはり二十代前半くらいの美しい女性で、スタイルが良い豊満な胸の持ち主だった。
彼女は胸元が開いたピッチピチの窮屈そうな改造修道服を着ており、そのスカート部分には深いスリットが入っている。同教の人物に見つかったら最後、破門の危機ではなかろうか、という予想が立てられる程ヤバイ格好である。
「衛兵! 誰か、衛兵を呼んで来てちょうだい!」
「有り得ないわ」
「そうだな、アレはちょっと町中でする格好では無いよな」
「眼福ではあるけど、子供には見せらんねぇしな」
「俺は正直引いた」
騒ぐルシアンの言葉に釣られ、遠巻きにしていた人々からも「あいつヤベェ」という声が上がる。
それに慌てたのは痴女一行であった。
「ま、待って! 待ってください! 彼女達に悪気は無くて!」
「もう! リンジーさん達の所為ですよ!」
「そんな変な恰好するから!」
「そうかい? 南の方ではアリだったんだけどねぇ」
「え~? そんなぁ~」
衛兵を呼ぶのを止めようとしているのは一行の中で唯一男の少年だ。金髪金眼で、年の頃は十代後半に見えた。彼は感じ取れる気配から、魔族であろう事が分かる。
その彼の両サイドに引っ付いているのは、少年と同じ年ごろの少女達である。
一人は銀髪碧眼の美少女で、着ている服が上等な仕立てである事から、富裕層のお嬢様である事が分かる。彼女の腕は少年の腕と組まれ、その腕に豊かな胸を押し付けている。
もう一人は赤毛の猫の獣人で、活発的な美少女だった。短パンから惜しげもなく晒される白い太腿に、チラチラと周りの男から視線が飛んでいる。こちらも少年の腕に自らの腕を絡ませ、ささやかな胸元へ押し付けており、少年には「おのれ、ハーレム野郎め……」と一部の男達から怨嗟の視線が突き刺さっている。
「文句があるなら、さっさとアンタのツレの女達の恰好をどうにかしなさい!」
「はい! 申し訳ありませんでした!」
ルシアンの怒声に、少年はそう言って九十度のお辞儀をした後、女達を連れて走り去って行った。
「まったく……。後でアレ等が何なのか、それと、ちゃんと服装を整えたのかどうか調べとかないと……」
「え、わざわざ調べるんですか?」
ルシアンの苦々しさを隠さない呟きに、ダリオが少し驚きながら尋ねる。
「調べるわよ。特に、あの銀髪のお嬢さんはね。アレは多分貴族の娘だもの。身につけている物のグレードが違ったわ」
「そうなんですか……」
そんな事を言いながらルシアンは目を塞いでいたセスを解放し、セスもまたテオドアを解放する。
セスはホッと一つ息を吐き、テオドアは目をパチパチとして不思議そうに首を傾げた。
「兄上、何があったんですか?」
「……公共の場で、不適切な恰好をしている人が居たんだよ」
「不適切? 服を着てなかったんですか?」
「着てたけど、子供の教育に悪いうえに、犯罪を誘発しそうな格好だったんだよ」
「そんな服があるんですか? それは本当に服なんですか? 魔道具とかではなく?」
「魔道具では無かったな」
子供達のそんな会話に、大人達は何とも言えぬ表情で遠い目をした。
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