※踏み台ではありません

悠十

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辺境編

第十九話 提案

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 翌朝、セス達は朝食を食べた後、『光の刃』一行と共にダンジョンから出る事になった。
 リフィルも大分体力が戻ったとの事で、自分の足で歩いている。

「へえ、じゃあリフィルはご両親の生まれ故郷に帰る為に路銀を稼いでるんだ」
「は、はい。そうです」
「こんなに小さいのに、苦労してるのね……」
「え、えっと……」
「私達に何かできる事あったら、何でも言って下さいね~」

 そして、何故かリフィルは『光の刃』一行に囲まれていた。
 リフィルはオドオドしながら受け答えしており、時折助けを求める様にセス達を見る。
 そんな彼女に少しばかり同情的な視線を向けながら、セス達は『光の刃』一行の後ろを歩いていた。

「何か、リフィルちゃん、あっという間に囲まれちゃいましたね」
「コミュニケーション能力の高い連中だな」
「いや、けど空気は読めてないぞ」
「リフィル、嫌がってますよね?」

 セス達は『光の刃』一行に聞こえない程度の小声でコソコソ話し合う。

「あれ、どうしますか?」
「根は善良でも、情操教育には悪い連中だからな」
「子供は任せらんねーよなぁ……」
「僕、ちょっと呼んできましょうか?」

 リフィルをわざわざ探しに来たことと、此処までの道行きで『光の刃』一行は善良な冒険者パーティーだという事は分かっているのだが、如何せん痴女一行だった過去があるのだ。残念ながら、ちょっと子供を側に置いておきたくない連中である。
 テオドアの提案にセスは頷き、アビーに視線で行けと命じる。
 そして、二人は行動を開始した。

「リフィル、ちょっと良いですか?」
「は、はい! 何ですか?」

 テオドアに声を掛けられ、リフィルは少し嬉しそうに返事をし、『光の刃』一行に会釈をしてからそそくさとセス達の元へ歩いて行く。
 あっという間に連れていかれたリフィルに、少し残念そうにするクリフォードに、彼に恋する女達は少しばかり面白くない顔をするが、それもすぐに霧散する事になる。

「あの~、ちょっとよろしいですか?」
「うひゃぁっ!?」

 背後から突然話掛けられ、チェルシーが素っ頓狂な悲鳴を上げた。

「ちょ、ちょっと、気配が無かったわよ!? 気配殺して話しかけないでよ! ビックリするじゃない!」
「あら、失礼しました。つい、癖で……」

『光の刃』一行に話しかけたのは、アビーだった。

「ちょっと、女性陣の皆さんにお話があります」
「え? 何よ……」
「何の話だい?」
「え、俺は駄目なのか?」
「まあ! クリフォード様を除け者にするつもりですの?」

 ちょいちょい、と手招きするアビーに、女性陣が寄って行き、クリフォードが少しばかり寂し気に眉を下げる。そして、そんなクリフォードの様子を見て、キャロルの眉が吊り上がった。
 めんどくさい連中だなぁ、と思いつつも、アビーがキャロルに近付き、その耳元で内緒話をするように小さく告げる。

「リフィルちゃんのコイバナです。鈍感な男には聞かせたくないんですよ」
「あら」

 キャロルがパチリ、と目を瞬き、改めてアビーを見返す。

「それなら、仕方ありませんわね」

 例え、クリフォードに惚れていようと、彼が鈍感である事は誰もが認める事実である。なんせ、これまでどんなにアタックしても照れるばかりで、どうにもはっきりしてくれないのだから。
 キャロルはクリフォードに少し離れていて欲しいと言い、他の女性陣を呼んだ。

「で、何だい、話って」
「コイバナですわ」
「え。ちょっと、こんなダンジョン内でする話なの?」

 チェルシーの言葉はもっともだが、アビーとしては面倒になる前にとっとと話を付けておきたいのだ。

「まあ、確かにダンジョン内でいう事でもないのでさっさと言いますが、リフィルちゃんは、うちのテオドア様の事が好きみたいですので、こちらと共に行動させてあげたいんですけど、良いでしょうか?」
「えっ」
「あら」
「まぁ~」

 女性陣の様子が、一気に微笑まし気に華やいだ。

「あ、けど、ちょい待ち。よく考えたら、アンタ達の素性をよく知らないんだけど。メイドさんが居るからには、イイトコの家なんだよね?」

 リンジーの言葉に、一同はハッとしてアビーを見た。
 よく手入れされた髪や肌の、血色の良い綺麗な子供達に、メイド服の女が居たものだから、少なくとも可笑しな連中では無いと思っていたのだが、それでも素性は尋ねておかねばならい。

「ああ、申し遅れました。私はアビー・マニオンと申します。ルシアン・ジンデル辺境伯が甥御、セス・ウルフスタン・ジンデル様の侍女でございます」
「「「「えっ!?」」」」

 その言葉に、女性陣は一気に一歩引いた。

「あの、『殲滅公』の!?」
「辺境の怪談の全てに関わっていると言われている!?」
「触るな危険の!?」
「歩く最終兵器と言われている、あの!?」

 ルシアン、ここまで言われるようになるまで、一体何をしたんだ、と思いつつ、アビーは肯定の意を含めて頷いた。
 しかしながら、彼女達はその『殲滅公』に猥褻物と認識され、叱られたのだが、それは言わないでやろうとアビーは生温い眼差しで微笑んだ。

「はい。そのルシアン・ジンデル辺境伯様です。リフィルさんの今後も此処まで関わったのですから、面倒を見る事をお約束します。よろしいでしょうか?」
「ええっと……、クリフォードぉ……」

 アビーの言葉に、チェルシーが情けない声でクリフォードを呼んだ。
 除け者にされていたクリフォードは少し嬉しそうに側に寄って来て、事情を聞き、困った様にキャロルを見た。

「キャロル、どう思う?」
「良いと思いますわ」

 キャロルは、貴族疑惑のあった少女である。こう断言するという事は、やはり貴族の事に詳しい階級の人物である事が伺い知れた。

「ジンデル辺境伯は怒らせれば恐ろしい方ですけど、理由も無く怒る方ではありませんし、基本的に誠実で、領内の評判も良い方です。可笑しな事にはならないと思いますわ」

 そこの言葉に、クリフォード達は納得し、アビーの提案に頷きつつも、条件を一つ出した。

「但し、冒険者ギルドで確認させてほしい。申し訳ないけど、辺境伯の名を騙った、なんて事だったら、目も当てられない」
「それはそうですね。では、ダンジョン内ではリフィルさんの側にテオドア様を置きつつ、ダンジョンから出たら共に冒険者ギルドへ行きましょうか」
「そうですわね」
「それが良いですね~」

 アビーの言葉に『光の刃』一行の面々も頷くが、只一人だけ、クリフォードが首を傾げた。

「……って、あれ? 何で、そのテオドアって子をリフィルの側に置くんだ?」

 その疑問には、ウフフ、と女性陣が生温く微笑むばかりで、誰も答えてはくれず、アビーはリフィルを『光の刃』一行から距離を取らせる事に成功したのであった。
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