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悠十

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辺境編

第二十一話 身分の証明

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 セス達と『光の刃』一行が冒険者ギルドへ着くと、まず受付に行き、副ギルドマスターのバルドが居るか尋ねた。

「すまない、副ギルドマスターのバルト・ガランは居るだろうか? もし居るなら呼び出してもらえないだろうか?」
「副ギルドマスターですか? 失礼ですが、お名前をよろしいでしょうか?」

 受付嬢に問われ、声を潜めてセスは告げる。

「ジンデル辺境伯の甥、セス・ウルフスタン・ジンデルだ」
「えっ」

 今回は話を手っ取り早く進める為、辺境伯の甥である事を明かすと、受付嬢はピシリ、と笑顔を凍り付かせ、素早い動きで立ち上がった。

「直ちに、呼んで参ります!」

 素晴らしい敬礼を見せた後、彼女は勢いよく二階に駆け上がって行った。

「流石はルシアン様のお名前の威力」
「尊敬より恐怖心が強そうだけどな」
「やっぱり、ここら辺を焼き払ったからでは?」
「へ、辺境伯様は怖い方なんですか?」

 後ろでアビー達三人がこそこそと囁き合い、リフィルはあわあわと心配そうに尋ねる。

「怒らせなければ怖くないですよ」
「割とフレンドリーだったな」
「礼を尽くせば、小さい失敗なら大目に見てくれると思うよ」

 そうフォローが入り、リフィルはほっと胸をなでおろしたが、どちらにせよ敵対すれば恐ろしいのは変わりない。
 そうこうしている内に二階からバルトが降りて来て、セスの顔を見てフレンドリーに手を上げて挨拶をした。

「どうしたんだセス様、ダンジョン帰りか?」
「ちょ、副ギルマス!?」

 その馴れ馴れしさに受付嬢が窘める様にバルトを呼ぶが、バルトは大丈夫だ、と言って軽い足取りでセス達に近付いてくる。

「ああ、バルト。すみません、ちょっと俺の身分の証明をして欲しくて」
「んん?」

 そうして、セスはリフィルの身に起きた事や、このままセスの下で保護しようとしている事を話した。

「あー、そうかぁ。そりゃ、辛かったな……」

 そう言って、リフィルに同情的な視線を送った後、『光の刃』一行に視線を移す。

「この方は確かにジンデル辺境伯の甥で間違いないぜ。辺境伯本人から紹介されたからな」

 バルトのその言葉を受け、『光の刃』一行は安堵する様子を見せ、クリフォードがセスに向き直る。

「それじゃあ、リフィルをよろしく頼むよ」
「ええ、任せて下さい」

 しっかありと目を合わせて頷いたセスに満足気な微笑みを浮かべ、クリフォードはバルトの後ろに控えていた受付嬢に話しかけた。

「すみません、一応リフィルの所属していたパーティーへ伝言をお願いしたいんですが」
「えっ、あ、はい」

 そう言われ、受付嬢は慌てて手続きを取る為に動く。
 それを尻目に、バルトが声を潜めてセスに尋ねる。

「あのよ、ジェスト支部のギルマスから連絡が来たんだが、ちょいヤバイ格好した冒険者が居た、って話だったんだが……」
「ああ、彼等ですね」

 どうやら、痴女事件の連絡が回っているらしい。
 バルトが何とも言えない複雑な顔をして言う。

「時々居るんだよな、珍妙な恰好をした冒険者が。民族的な風習、ってのならまだ分かるんだが、ただの趣味で風紀を乱すような恰好されると、こっちも困るんだよ」

 民族的な風習であったり、習わし的な事を守る冒険者は、それでも他国に冒険に出たのなら、その地のマナーを守るべきだ、と言えば割と許容範囲まで身嗜みを整えてくれるのだと言う。

「趣味だと、自分の勝手だろ、とか言って話が進まない事が多くてな。最終的に何処ぞで不利益が身に降りかかってようやく言う事を聞く様になるんだよ」

 つまり、今回もそれだったという訳である。

「あの『光の刃』のランクはどれ位なんですか? なかなか腕は立つみたいでしたが」
「あー、確か、Bランクだな」
「上から三番目のランクでしたっけ?」
「そうだぜ。ただ、最近ようやく上がったんだが、あの騒ぎでチェックが着いたからな。次に妙な騒ぎが起きたら降格だろうな」

 冒険者もまた人気商売な所があるので、不品行な者は上には上がれないシステムになっているのだ。

「そんなにすんなり降格されてしまうものなんですか?」
「上がったばかりで、功績も無いからな。まだ時期尚早だった、ってだけの話さ」

 そういうものなのか、とセスは頷く。
 そして、セス達はバルトと『光の刃』一行に挨拶し、冒険者ギルドを後にしたのだった。



   ※ ※ ※



 セス達がジンデル辺境伯邸に帰り着いたのは、すっかり日が暮れてしまってからだった。
 いっそ宿に泊まろうかとも思ったのだが、急げば何とかなりそうだったので、ダリオにリフィルを背負わせて、走って帰って来たのである。
 帰り着いたセス達はケロッとしていたのだが、背負われていた筈のリフィルは何故かグロッキーになっていた。

「ふえぇぇ……」
「リフィル、大丈夫?」
「ちょっと速すぎたでしょうか?」
「人通りが少なくなってからはかなり飛ばしたからなぁ……」

 目を回しているリフィルをテオドアが心配そうに覗き込み、アビーとダリオが苦笑いする。

「取り合えず伯父上に相談してくるから、アビーはリフィルの世話をしてやってくれ」
「はい、分かりました」

 そうしてアビーはリフィルを客間の一つに通すべく行動を開始し、セスは屋敷の執事の一人にルシアンへの面会の希望の旨を伝えたのだった。

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