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辺境編
第二十四話 エルフの国
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セスの妙な噂が流れてから暫くたった頃、その事がとうとうリフィルの耳にも入った。
「わ、私の所為で……」
リフィルは蒼褪めたが、当のセスが平然と首を横に振ってそれを否定した。
「いや、リフィルの所為じゃ無いよ。リフィルはダシに使われただけで、今回の事は明らかに誰かが俺か、伯父上に喧嘩を売って来ただけだから。だから、本当に気にしなくていい」
そう大した事じゃない、とばかりに、シレッとした顔で言われ、リフィルは戸惑いながらも頷いた。
「それにしても兄上、今回の事は喧嘩を売られたのだとしたら、どういう意図を持って売ってきたのでしょうか? ルシアン様へなら分かるんですが、兄上はまだ良くも悪くも何もしてませんよね?」
テオドアの言葉に、ダリオが頷く。
「そうだよな。セス様はわざわざ敵を作る様な性格でも無いし、やっぱ今回はルシアン様関係か?」
しかし、ダリオのその予想をアビーが否定した。
「いえ、セス様が喧嘩を売られる理由はありますよ」
「「「えっ?」」」
驚く三人に、アビーは呆れた目を向け、セスは苦笑する。
「まず、一番基本的な事を忘れています。セス様は、誰の血筋だと思ってるんですか?」
「「あ……」」
「?」
テオドアとダリオが何かに気付いた様に固まり、リフィルだけが首を傾げた。
「セス様は現魔王陛下のお子様なんですよ? 『魔王の子』というブランドを背負ってるんですから、そりゃ『魔王の子』に勝ったという看板欲しさに喧嘩売って来る人も居ますよ」
『魔王の子』の強さはピンからキリまである物の、総じて一定以上の強さは持っている。その為、『魔王の子』を倒せば、少なくともそれ以上の強さである事の証になるのだ。
この場合、喧嘩を売るというのは物理的な話で、手合わせしたい、という事だが、挑発行為として噂を流したとも考えられるのだ。これは魔族独特の謀略かもしれない。
アビーの指摘に、そう言えばそうだった、テオドアとダリオが頷くが、リフィルだけはポカン、と呆けた顔をしていた。
「リフィル、どうしたんだ?」
「え? あの、今、魔王様の子供だって……。ええ?」
「うん?」
首を傾げるセスに、リフィルはあわあわと口を戦慄かせ、情けない顔で叫んだ。
「王子様だなんて、聞いてません~~~~~!」
混乱し、小さく縮こまってしまったリフィルが落ち着くのには、十数分程時間が必要だった。
そんなリフィルに、セスが告げる。
「正確には、もう『王子様』ではないんだけどね」
『王子様』扱いされるのは、城に居る間だけである。
リフィルは魔族の上層部の事情を知らなかったようで、その説明を受け、目を白黒させていた。
「えっと、それじゃあ、セス様とテオドア君は元王子様……という事なんですか?」
「そういう事になるな」
リフィルの質問に、セスは頷き、言葉を続ける。
「まあ、正確には魔族には『王族』が居ないんだ。だから、実際は王子というより、『魔王の子』と言う方がしっくりくる」
「成る程……」
セスの説明に、リフィルは頷き、それを何とか理解し、飲み込んだ。
そんなリフィルに、テオドアが尋ねる。
「ねえ、エルフの王様って、どんな感じ? 魔族や人間とはやっぱり違うのかな?」
それにリフィルは目を瞬き、何かを思い出すかのような仕草でポツポツと言葉を紡ぐ。
「えっと、私も実際に住んでいたわけじゃ無いからあまり多くは知らないんだけど、王様だとか、王族は居ないんだって。最長老様をトップに、地域毎のトップで議会政治をしてる、って聞いたかな」
「そうなの?」
「うん。一応、『エルフの王族』だなんて呼ばれている力の強いハイ・エルフが居るんだけど、実際は王族では無くて、権力者という意味で、貴族みたいなものみたい。力が強くて、普通のエルフより長生きだから、結構重要な役職を持つ人が多いんだって」
「へえ……」
エルフの視点で語られるエルフの国の事情を聞き、一同は興味深げに耳を傾けた。
「力が強い人は尊敬されるけど、ポーション作りが上手な人や、生活に便利なスキルを持っている人の方が大切にされてるみたい」
「そうなんだ」
どうやら、生活に密着して必要な技を持っている人物の方が重視されているらしい。まあ、俺は当然だろう。大げさな魔法よりも、生きていくのに必要な物だ。
他に何かあったかな、とリフィルは小首を傾げながら言う。
「そういえば、お父さんとお母さんの故郷は森の奥深い所に在る村で、この魔族の国からは結構遠いって聞いたかな」
「え。ねえ、それって、リフィルはそのご両親の故郷へ一人で行くのは難しかったんじゃないの?」
「そうですね。路銀を稼いだところで、絶対その旅路の途中で攫われますよ」
テオドアとアビーの指摘に、リフィルが気まずそうに視線を泳がせる。
「まあ、仕方ないんじゃないか? 両親を亡くしたなら、次に頼るのはどうしても親族になるだろ?」
ダリオの言葉に、それもそうか、とテオドアとアビーは顔を見合わせた。
「そういえば、親族が住んでいる場所は分かるのか?」
「えっと、両親の生まれた村なら分かります」
セスの質問に、リフィルは曖昧に頷いた。
そんなリフィルに、セスはジト目になる。
「何でそんなに自信無さげなんだ」
「うう……、だって、両親が村を出たのが二百年前で、それからずっと村に帰ってないらしくて……。手紙は一方的に出して生存報告をしていたらしいんですけど、肝心の親族がどうしてるかは分からないんです。もしかすると引っ越したか、何か不幸があった可能性もあって……」
さすがはエルフ。時間の単位が違った。
「あー……、うん。それは、確かに可能性が無きにしも非ず……」
セス達は顔を見合わせ、溜息交じりに苦笑した。
「わ、私の所為で……」
リフィルは蒼褪めたが、当のセスが平然と首を横に振ってそれを否定した。
「いや、リフィルの所為じゃ無いよ。リフィルはダシに使われただけで、今回の事は明らかに誰かが俺か、伯父上に喧嘩を売って来ただけだから。だから、本当に気にしなくていい」
そう大した事じゃない、とばかりに、シレッとした顔で言われ、リフィルは戸惑いながらも頷いた。
「それにしても兄上、今回の事は喧嘩を売られたのだとしたら、どういう意図を持って売ってきたのでしょうか? ルシアン様へなら分かるんですが、兄上はまだ良くも悪くも何もしてませんよね?」
テオドアの言葉に、ダリオが頷く。
「そうだよな。セス様はわざわざ敵を作る様な性格でも無いし、やっぱ今回はルシアン様関係か?」
しかし、ダリオのその予想をアビーが否定した。
「いえ、セス様が喧嘩を売られる理由はありますよ」
「「「えっ?」」」
驚く三人に、アビーは呆れた目を向け、セスは苦笑する。
「まず、一番基本的な事を忘れています。セス様は、誰の血筋だと思ってるんですか?」
「「あ……」」
「?」
テオドアとダリオが何かに気付いた様に固まり、リフィルだけが首を傾げた。
「セス様は現魔王陛下のお子様なんですよ? 『魔王の子』というブランドを背負ってるんですから、そりゃ『魔王の子』に勝ったという看板欲しさに喧嘩売って来る人も居ますよ」
『魔王の子』の強さはピンからキリまである物の、総じて一定以上の強さは持っている。その為、『魔王の子』を倒せば、少なくともそれ以上の強さである事の証になるのだ。
この場合、喧嘩を売るというのは物理的な話で、手合わせしたい、という事だが、挑発行為として噂を流したとも考えられるのだ。これは魔族独特の謀略かもしれない。
アビーの指摘に、そう言えばそうだった、テオドアとダリオが頷くが、リフィルだけはポカン、と呆けた顔をしていた。
「リフィル、どうしたんだ?」
「え? あの、今、魔王様の子供だって……。ええ?」
「うん?」
首を傾げるセスに、リフィルはあわあわと口を戦慄かせ、情けない顔で叫んだ。
「王子様だなんて、聞いてません~~~~~!」
混乱し、小さく縮こまってしまったリフィルが落ち着くのには、十数分程時間が必要だった。
そんなリフィルに、セスが告げる。
「正確には、もう『王子様』ではないんだけどね」
『王子様』扱いされるのは、城に居る間だけである。
リフィルは魔族の上層部の事情を知らなかったようで、その説明を受け、目を白黒させていた。
「えっと、それじゃあ、セス様とテオドア君は元王子様……という事なんですか?」
「そういう事になるな」
リフィルの質問に、セスは頷き、言葉を続ける。
「まあ、正確には魔族には『王族』が居ないんだ。だから、実際は王子というより、『魔王の子』と言う方がしっくりくる」
「成る程……」
セスの説明に、リフィルは頷き、それを何とか理解し、飲み込んだ。
そんなリフィルに、テオドアが尋ねる。
「ねえ、エルフの王様って、どんな感じ? 魔族や人間とはやっぱり違うのかな?」
それにリフィルは目を瞬き、何かを思い出すかのような仕草でポツポツと言葉を紡ぐ。
「えっと、私も実際に住んでいたわけじゃ無いからあまり多くは知らないんだけど、王様だとか、王族は居ないんだって。最長老様をトップに、地域毎のトップで議会政治をしてる、って聞いたかな」
「そうなの?」
「うん。一応、『エルフの王族』だなんて呼ばれている力の強いハイ・エルフが居るんだけど、実際は王族では無くて、権力者という意味で、貴族みたいなものみたい。力が強くて、普通のエルフより長生きだから、結構重要な役職を持つ人が多いんだって」
「へえ……」
エルフの視点で語られるエルフの国の事情を聞き、一同は興味深げに耳を傾けた。
「力が強い人は尊敬されるけど、ポーション作りが上手な人や、生活に便利なスキルを持っている人の方が大切にされてるみたい」
「そうなんだ」
どうやら、生活に密着して必要な技を持っている人物の方が重視されているらしい。まあ、俺は当然だろう。大げさな魔法よりも、生きていくのに必要な物だ。
他に何かあったかな、とリフィルは小首を傾げながら言う。
「そういえば、お父さんとお母さんの故郷は森の奥深い所に在る村で、この魔族の国からは結構遠いって聞いたかな」
「え。ねえ、それって、リフィルはそのご両親の故郷へ一人で行くのは難しかったんじゃないの?」
「そうですね。路銀を稼いだところで、絶対その旅路の途中で攫われますよ」
テオドアとアビーの指摘に、リフィルが気まずそうに視線を泳がせる。
「まあ、仕方ないんじゃないか? 両親を亡くしたなら、次に頼るのはどうしても親族になるだろ?」
ダリオの言葉に、それもそうか、とテオドアとアビーは顔を見合わせた。
「そういえば、親族が住んでいる場所は分かるのか?」
「えっと、両親の生まれた村なら分かります」
セスの質問に、リフィルは曖昧に頷いた。
そんなリフィルに、セスはジト目になる。
「何でそんなに自信無さげなんだ」
「うう……、だって、両親が村を出たのが二百年前で、それからずっと村に帰ってないらしくて……。手紙は一方的に出して生存報告をしていたらしいんですけど、肝心の親族がどうしてるかは分からないんです。もしかすると引っ越したか、何か不幸があった可能性もあって……」
さすがはエルフ。時間の単位が違った。
「あー……、うん。それは、確かに可能性が無きにしも非ず……」
セス達は顔を見合わせ、溜息交じりに苦笑した。
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