錬金術師の成り上がり!? 家族と絶縁したら、天才伯爵令息に溺愛されました

悠十

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令嬢は踊る

第十四話 歓迎会2

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 そんなヘンリーを見ながら、エラが声を落して気まずげに尋ねる。

「あの……、思ったんですけど、ジュリエッタ様はヘンリー殿下を狙ってますよね?」
「私はそうだと思ってるわ」
「この学園で、ジュリエッタ様――というより、フーリエ公爵家が一番魅力的に思える人はやっぱりヘンリー殿下だと思う」
「……多分な」

 先ほどの愉しげな顔から一転、嫌そうに顔を歪めてヘンリーは頷く。

「隣国の公爵令嬢が我が国の社交界に顔を出したという話は聞きませんでしたから、恐らく接触してくるなら学園だと思うんです」
「そうなの?」
「そういえば、留学生のお姫様が凄い美人だって、噂で聞いたような……」

 もしかしてあれって、ジュリエッタ様? と首を傾げるレナに、エラが頷く。

「恐らくそうだと思うわ。手芸部の先輩からアメリア様のご様子をお聞きした時に聞いたんだけど、オーランド様はよく隣国からの留学生であられる公爵令嬢と一緒に行動しているそうなの。実に甲斐甲斐しいご様子だったとか。あの方に心を奪われたから、アメリア様と婚約を解消したのだとおっしゃっていたわ」
「もしかして、貴族の令嬢間では噂が回っていたりするの?」

 ネモの問いに、エラは頷く。

「はい。あと、その噂はあまり良い類のものではありません。隣国の令嬢ですし、ヘンリー殿下がおっしゃる通り、この国で女性社会に溶け込もうとするなら、苦労するかと思います」
「あのクソバカがもっと時間をかけて、穏便に婚約を解消すれば少しは対応が違ったんだろうけどな」

 しかし、現実ではかなり強硬な姿勢で両家の関係にヒビが入るような別れ方をしている。

「ジュリエッタ嬢は何と言われて奴について来たんだろうな?」
「少なくとも根回しのできない輩だとは知っていたはずだな」

 ヘンリーが鼻で笑い、チアンは肩を竦める。
 そこで、ふと口を開いたのはイヴァンだった。

「そこまでは想定内で、どうとでもなると判断していたんじゃないんですか? ただ、アメリア嬢がそこまで慕われている令嬢だったのが、想定外だった」
「ああ……、なるほど。その可能性はあるか」

 視線で続けろ、と促され、イヴァンは自説を続ける。

「普通、冤罪からの婚約破棄だなんて、同情される身の上じゃないですか。しかも、長く王太子である婚約者に尽くして来たのに、そんな仕打ちをされるなんて」
「まあ、確かに普通は同情するわよね」
「ええ。私もアメリア様の事が無ければ、同情して私にできる事なら手助けをしようと考えていたかもしれません」

 それにネモとエラが頷く。

「そうした同情が得られるものとして計算していたら、予想外にアメリア嬢に人望があった。きっと、ジュリエッタ嬢は困っているでしょうね」
「はっ! ザマァ! そのまま国に帰れ!」
「荒れているな」

 よく見てみれば、ヘンリーの目の下には薄っすらと隈がある。彼がそれだけ動かなければならない事態なのだろう。

「まあ、そうなると余計にクソバカボンボンとの婚姻は無いんじゃない?」
「ヘンリーを落すのに気合が入っていそうだな」

 非情な同輩の言葉に、ヘンリーの目が死んだ。

「……厄介だぜ、あの令嬢。昔、引き抜きの話を持ってこられた、って聞いたから関係各所に問い合わせてみたら、職人の弟子が隣国のフーリエ公爵家で店を出さないか、って誘いをかけられた。しかも、それとなく令嬢と俺の婚姻を仄めかしてだ」
「うわぁ……。職人の弟子、ってのが厭らしいわね」
「お陰で注意喚起や否定や説明の手紙を出して、果てには出向いて説明しなきゃならん所も出てきて……」

 はーっ、と重い溜息をつく。

「その声を掛けられたお弟子さんはどうなったんですか?」
「俺はジュリエッタ嬢と結婚するつもりは無いし、隣国は上層部のゴタゴタで最悪内戦になる可能性があると言ったら、隣国に行くのを諦めた」

 しかし、そこまで言わなくては行くつもりだったのだ。それだけの好条件を出されたらしい。

「ただなぁ……、このまま行くと誰かしら引き抜かれそうで……」
「勧誘してる本人がうちに来ちゃってますもんね……」

 げっそりとした顔でそうぼやくヘンリーに、レナが苦笑いする。
 部下任せだったのが、令嬢本人が国に来てしまっている。彼女本人が直接勧誘に動いたら面倒な事が起きそうだ。

「あの、ジュリエッタ嬢の外見の特徴とかは分かりますか? 出来る限り接触を避けたいんですが……」

 イヴァンの言葉に、ヘンリーが記憶から引きずり出すかのごとく眉間に皺をよせて言う。

「黒髪のロングで、毛先をこう……クルクルと巻いてるらしい。瞳の色は紫で、背はエラ嬢と同じくらい……だと思う」
「大層な美人らしいし、オーランド・ランドールが張り付いているんだろう? なら、すぐ分かるんじゃないか?」

 オーランドの外見は知っているかと尋ねられ、レナとネモだけが首を横に振った。

「あら、チアンは知ってるの?」
「うむ。早々に顔を確認に行った。まあ、顔は良かったな。鳶色の髪で短髪。目はヘーゼル。身長はヘンリーくらいだが、体格は少し細いな。あれは文官寄りだろう」
「アンタ達は王子のくせに筋肉がそれなりにあるわよね」
「まあ、かなり動くからな」
「地位の低い者が魔窟で生き残るなら、必然的に鍛える羽目になる」

 ヘンリーはともかく、チアンの答えには闇が広がっている。
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