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第二章
「……先手必勝だな。まずは一番でかいのをぶつけるか」
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アルベルトは平原に一人立つ。
その目はアニマルダンジョンのある方向に向けられていた。
数百メートルあけ、その背後にはナイと初心者パーティーがいた。
彼らが背にしているのは、王都がある方向だ。
ダンジョンから溢れた魔獣は、人の多い場所に引き寄せられる。
それがダンジョン生まれの魔獣の本能なのかダンジョンコアの意思なのかはわからないが、現在もそれに則した行動をとっていた。
アルベルトの視界に遠くで立ち上る白煙が見え始める。
それは無数の魔獣が駆けることで舞い上がった砂煙だった。
アニマルダンジョンは猛獣系の魔獣が出るダンジョンだ。すべて大地を駆ける魔獣である。
その走りは力強く、平原を走れば砂塵を巻き上げる。
大量の魔獣が、押し寄せる波ように見えた。
いずれはこの平原を埋め尽くすだろう。
魔獣たちは王都めがけて進んでいた。
ナイの話ではすでに冒険者ギルドが迎え撃つ準備をしているようだし、王都にはこういった時のための防衛手段もある。
しかし、それでもこのまま放置すれば少なくない被害が出ると予測できた。
「……先手必勝だな。まずは一番でかいのをぶつけるか」
呟くと、腰の剣を引き抜く。
握りや柄の部分に装飾があるが、剣身の見た目はごく普通のものと変わりない。
ただ、その輝きは鋭く、鏡のように磨かれていた。
スッと、息を吸うと同時に剣を構える。
構えた剣の剣身にアルベルトの顔が映りこむ。
その顔はスプリガンと対峙した時と同じ覚悟を決めた真剣な表情だ。
ただあの時とは違い、余裕があるものだった。
以前の彼を知っている者が見れば、別人と思えるほどに自信に満ちた表情。
それはナイとの訓練と、手にした魔剣のおかげだ。
魔剣の銘は『悪戯神』。
いつの間にか、ナイによって名付けられていた。
ナイに言わせると一本の剣の名ではないということだが、アルベルトにはよくわからない。
「……魔力操作」
魔剣が淡い輝きを放ち始める。
「目標設定。範囲設定。威力設定」
アルベルトは魔力操作の手順を言葉にしながら行っていく。
訓練で手順を言葉に出して確認していたせいで付いた癖だ。
敵に攻撃のタイミングが読まれるため無くさないといけない悪癖だが、今は気にする必要もない。
フーと、大きく息を吐いた。
「ブラマダッタ、雷の矢」
電光一閃。
アルベルトが魔剣を横に薙ぐと、光が走った。
同時に駆けてきていた魔獣たちがまるで紙吹雪のように宙に舞う。
轟音が響き渡り、砂塵が血煙へと変わった。
「……ふう」
アルベルトは満足げに笑みを浮かべた。
アルベルトが魔剣を使って放ったのは広範囲の雷撃魔法だった。
それは魔獣たちを焼き、爆ぜさせ、跳ね上げた。
アルベルトは魔法の才能はないが、魔力を蓄え、事前に魔法陣が組み込まれている魔剣には関係ない。
魔剣は発動させるための極少量の魔力と、狙いを定める魔力操作の能力さえあれば扱える。
「狙いが甘い!範囲指定が甘い!威力制御が甘い!」
「チッ……」
背後からかけられたナイの声に、アルベルトは舌打ちする。
「潰せたのはまだ三分の一ほどだ。しかも撃ち落としもかなりあるぞ。もう数発大きいのを放って潰しておけ!」
「わかった!!」
ナイの声に不満を感じつつも、答える声は大きく、嬉しそうだ。
アルベルトは初めて自らが放つ魔法で、大量の魔獣を撃破できたことに興奮していた。
その目はアニマルダンジョンのある方向に向けられていた。
数百メートルあけ、その背後にはナイと初心者パーティーがいた。
彼らが背にしているのは、王都がある方向だ。
ダンジョンから溢れた魔獣は、人の多い場所に引き寄せられる。
それがダンジョン生まれの魔獣の本能なのかダンジョンコアの意思なのかはわからないが、現在もそれに則した行動をとっていた。
アルベルトの視界に遠くで立ち上る白煙が見え始める。
それは無数の魔獣が駆けることで舞い上がった砂煙だった。
アニマルダンジョンは猛獣系の魔獣が出るダンジョンだ。すべて大地を駆ける魔獣である。
その走りは力強く、平原を走れば砂塵を巻き上げる。
大量の魔獣が、押し寄せる波ように見えた。
いずれはこの平原を埋め尽くすだろう。
魔獣たちは王都めがけて進んでいた。
ナイの話ではすでに冒険者ギルドが迎え撃つ準備をしているようだし、王都にはこういった時のための防衛手段もある。
しかし、それでもこのまま放置すれば少なくない被害が出ると予測できた。
「……先手必勝だな。まずは一番でかいのをぶつけるか」
呟くと、腰の剣を引き抜く。
握りや柄の部分に装飾があるが、剣身の見た目はごく普通のものと変わりない。
ただ、その輝きは鋭く、鏡のように磨かれていた。
スッと、息を吸うと同時に剣を構える。
構えた剣の剣身にアルベルトの顔が映りこむ。
その顔はスプリガンと対峙した時と同じ覚悟を決めた真剣な表情だ。
ただあの時とは違い、余裕があるものだった。
以前の彼を知っている者が見れば、別人と思えるほどに自信に満ちた表情。
それはナイとの訓練と、手にした魔剣のおかげだ。
魔剣の銘は『悪戯神』。
いつの間にか、ナイによって名付けられていた。
ナイに言わせると一本の剣の名ではないということだが、アルベルトにはよくわからない。
「……魔力操作」
魔剣が淡い輝きを放ち始める。
「目標設定。範囲設定。威力設定」
アルベルトは魔力操作の手順を言葉にしながら行っていく。
訓練で手順を言葉に出して確認していたせいで付いた癖だ。
敵に攻撃のタイミングが読まれるため無くさないといけない悪癖だが、今は気にする必要もない。
フーと、大きく息を吐いた。
「ブラマダッタ、雷の矢」
電光一閃。
アルベルトが魔剣を横に薙ぐと、光が走った。
同時に駆けてきていた魔獣たちがまるで紙吹雪のように宙に舞う。
轟音が響き渡り、砂塵が血煙へと変わった。
「……ふう」
アルベルトは満足げに笑みを浮かべた。
アルベルトが魔剣を使って放ったのは広範囲の雷撃魔法だった。
それは魔獣たちを焼き、爆ぜさせ、跳ね上げた。
アルベルトは魔法の才能はないが、魔力を蓄え、事前に魔法陣が組み込まれている魔剣には関係ない。
魔剣は発動させるための極少量の魔力と、狙いを定める魔力操作の能力さえあれば扱える。
「狙いが甘い!範囲指定が甘い!威力制御が甘い!」
「チッ……」
背後からかけられたナイの声に、アルベルトは舌打ちする。
「潰せたのはまだ三分の一ほどだ。しかも撃ち落としもかなりあるぞ。もう数発大きいのを放って潰しておけ!」
「わかった!!」
ナイの声に不満を感じつつも、答える声は大きく、嬉しそうだ。
アルベルトは初めて自らが放つ魔法で、大量の魔獣を撃破できたことに興奮していた。
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