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第三章
「恐れ多くて言えないのか?ならば私が代弁してやろう」
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もちろん、声をかけてきたのは国王ではない。
先ほどから一人で話続けていた文官だ。
進行の役目をしていたことから儀式官か何かだろう。
ナイの目には彼は未熟に見えた。
声の調子もやけに抑揚を付けすぎており、国の行事を任されるには未熟だ。
その態度も洗練されていない。
<なるほど。変だと思ったがもしもの時の切り捨て要因だったか>
ナイはそう分析した。
何か強引に事を進めるときに、文官にやらせ、勝手にやったことにして切り捨てて処分するためだろう。重要でない人物が指名されたに違いない。
そして今、彼自身が知らない内にその役目を果たそうとしている。
「何かないかと尋ねているのだが?」
アルベルトは答えない。
……実は、先ほどからアルベルトはマヒ状態だ。頭を下げた状態でそのまま動くことはできないだろう。
もちろんナイの仕業だ。
国王が直答を許していない状態で勝手に答えたり動いたりされても困るので、魔法をかけたのだった。
下手に答えていたら無礼者扱いだ。
「恐れ多くて言えないのか?ならば私が代弁してやろう」
文官の発言はどう考えても越権行為だが、誰も止める者はいない。
この謁見の間に集まっている貴族たちには事前に話が通されているのだろう。
ダンジョンから溢れた魔獣をすべて殺せるほどの強力な魔剣なら、他国に対しての抑止力としては十分過ぎる。今この国は賢者が死んだことで他国へのけん制に使えるものが減っていた。
アルベルトから魔剣を奪えるなら、多少のズルい策を弄したとしても反対する者がいるわけがない。
それに、貴族とはズルく陰険なものだ。
ナイの偏見だが、大きく外れてはいないだろう。
「その魔剣を国王様に献上したいのだろう?」
<ああ……言ってしまったか!>
その露骨すぎる要求に、ナイは内心で爆笑した。
<もう少し、遠回しに言えぬものか?遠回しで嫌味で鬱陶しいのが貴族の言い回しであろう?バカなのか?バカなのだな??>
取り上げるのと強制的に献上させるのは同じだが同じではない。
少なくとも、貴族や王族にとっては大きな違いがある。
他国に嘘をつくことなく『献上された』と言えるだけのメリットがあるのだ。希少ながら嘘を見抜く魔法が存在しているため、こういった面倒な対応が必要だった。
文官の発言は公式に『献上された』という事実を無理やり作り出すためだった。
今回の式典ではアルベルトは帯剣を許されている。
魔剣を使って魔獣を討伐したという話が知れ渡っており、一目見たい者も多いだろうという配慮というか、言い訳がなされていた。
もちろん、そのまま帯剣して国王に謁見するのは問題があるため、鞘と剣の柄を紐で堅く縛り付けて引き抜けないように細工がされていた。
それもこの展開のための仕掛けの一つだったのだろう。証人は多ければ多いほどいい。
王侯貴族の目の前で、アルベルトが献上したという事実が必要だったのだ。
「……では、近衛騎士の方々、献上品を王の前へ」
何も答えないどころか反応すらしないアルベルトに警戒しつつも、文官は言い放つ。
彼は王の後ろ盾で行動し、偉くなった気になっているのだろう。
声が興奮したものになっている。
事前の段取り通りなのか、近衛騎士の一人が戸惑いなくアルベルトに近づく。
そして、腰の剣に手をかけようとした時。
「近衛騎士様、よろしいでしょうか?」
ナイが口を開いた。
先ほどから一人で話続けていた文官だ。
進行の役目をしていたことから儀式官か何かだろう。
ナイの目には彼は未熟に見えた。
声の調子もやけに抑揚を付けすぎており、国の行事を任されるには未熟だ。
その態度も洗練されていない。
<なるほど。変だと思ったがもしもの時の切り捨て要因だったか>
ナイはそう分析した。
何か強引に事を進めるときに、文官にやらせ、勝手にやったことにして切り捨てて処分するためだろう。重要でない人物が指名されたに違いない。
そして今、彼自身が知らない内にその役目を果たそうとしている。
「何かないかと尋ねているのだが?」
アルベルトは答えない。
……実は、先ほどからアルベルトはマヒ状態だ。頭を下げた状態でそのまま動くことはできないだろう。
もちろんナイの仕業だ。
国王が直答を許していない状態で勝手に答えたり動いたりされても困るので、魔法をかけたのだった。
下手に答えていたら無礼者扱いだ。
「恐れ多くて言えないのか?ならば私が代弁してやろう」
文官の発言はどう考えても越権行為だが、誰も止める者はいない。
この謁見の間に集まっている貴族たちには事前に話が通されているのだろう。
ダンジョンから溢れた魔獣をすべて殺せるほどの強力な魔剣なら、他国に対しての抑止力としては十分過ぎる。今この国は賢者が死んだことで他国へのけん制に使えるものが減っていた。
アルベルトから魔剣を奪えるなら、多少のズルい策を弄したとしても反対する者がいるわけがない。
それに、貴族とはズルく陰険なものだ。
ナイの偏見だが、大きく外れてはいないだろう。
「その魔剣を国王様に献上したいのだろう?」
<ああ……言ってしまったか!>
その露骨すぎる要求に、ナイは内心で爆笑した。
<もう少し、遠回しに言えぬものか?遠回しで嫌味で鬱陶しいのが貴族の言い回しであろう?バカなのか?バカなのだな??>
取り上げるのと強制的に献上させるのは同じだが同じではない。
少なくとも、貴族や王族にとっては大きな違いがある。
他国に嘘をつくことなく『献上された』と言えるだけのメリットがあるのだ。希少ながら嘘を見抜く魔法が存在しているため、こういった面倒な対応が必要だった。
文官の発言は公式に『献上された』という事実を無理やり作り出すためだった。
今回の式典ではアルベルトは帯剣を許されている。
魔剣を使って魔獣を討伐したという話が知れ渡っており、一目見たい者も多いだろうという配慮というか、言い訳がなされていた。
もちろん、そのまま帯剣して国王に謁見するのは問題があるため、鞘と剣の柄を紐で堅く縛り付けて引き抜けないように細工がされていた。
それもこの展開のための仕掛けの一つだったのだろう。証人は多ければ多いほどいい。
王侯貴族の目の前で、アルベルトが献上したという事実が必要だったのだ。
「……では、近衛騎士の方々、献上品を王の前へ」
何も答えないどころか反応すらしないアルベルトに警戒しつつも、文官は言い放つ。
彼は王の後ろ盾で行動し、偉くなった気になっているのだろう。
声が興奮したものになっている。
事前の段取り通りなのか、近衛騎士の一人が戸惑いなくアルベルトに近づく。
そして、腰の剣に手をかけようとした時。
「近衛騎士様、よろしいでしょうか?」
ナイが口を開いた。
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