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第三章
「アルベルト、少し揺れるぞ」
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「アルベルト、我の援護なしで三十秒ほど稼げるか?」
「大丈夫だ。お前の作ってくれた防具もあるしな」
歯を見せて笑うと、アルベルトはナイの前に移動した。
「ハーフリフレクター……アディション」
ナイの短い詠唱と共に魔法陣が生まれ、小さな鏡のような物体が浮かび上がる。
鏡は次々と大量に生まれ組み合わされ、ついには床の上に浮かぶ直径二メートルほどの球体となった。
反射鏡は本来、魔法を反射させるだけの魔法だ。
このように球形にしても意味はない。
しかもナイはその鏡面をすべて内部に向けており、外部からの攻撃を反射できるわけではない。
さらにナイが使ったのはただの反射鏡ではなく半反射鏡……片側から透視できもう一方から鏡となる。マジックミラーとも言われる鏡と同じ性質を持っていた。
つまり、外からは内部の様子は見えるが、内側からは鏡となる球形だ。
「プロミネンス……プロミネンス……プロミネンス……」
半反射鏡の球体に、ナイは紅炎の魔法を打ち込む。
打ち込まれたプロミネンスは鏡面で反射され逃げ場を失う。
球形の内部で、それは炎の龍の様に暴れ回った。
「アルベルト、少し揺れるぞ」
「おう!」
パックを撃退しているアルベルトに声をかける。
パックはナイの妨害が無くなったことで魔法攻撃を打ち始め、それをアルベルトは剣と防具の装甲の厚い部分で受けていた。
アルベルトの防具はナイが手加減なしに作ったため、パックの魔法は凶悪なものだが傷一つついていない。
「解放」
球体の下部が開く。
球体の内部で暴れていたプロミネンスがひらいた部分に集中し、真っすぐに床へと放たれた。
わずかな振動だけで、床に直径数メートルの穴が開いた。
ナイは球体によって複数のプロミネンスを一気に打ち出し、方向を統一させた。
通常であれば大きな魔法は余波をばら撒き、周囲まで崩壊させる。
特に建物などに打ち込んだ場合は、全体の崩壊につながる。
今回は自分の足元を狙って放つため、建物が崩壊しないように前準備を行ったのだった。
床の穴はそこだけ切り取ったように、周囲に何の影響もなく開いていた。
それは深く、しっかりと地下まで届いている。
もちろん、ナイは王や貴族に配慮して城が崩壊しないようにしたわけではない。
地下まで穴を開けたいのに、王城が崩壊して穴をふさいでは本末転倒だからそうしただけだ。
ナイとしては、むしろ王城が崩壊した方が面白そうだとすら感がていた。
国王と取り交わした契約書には例え王城が崩壊しても責任は問わないと記されてもいるので、問題ない。
「行くぞ」
ナイの言葉を合図に、アルベルトはナイを抱え上げる。
そして、二人は穴の中に落ちていった。
「大丈夫だ。お前の作ってくれた防具もあるしな」
歯を見せて笑うと、アルベルトはナイの前に移動した。
「ハーフリフレクター……アディション」
ナイの短い詠唱と共に魔法陣が生まれ、小さな鏡のような物体が浮かび上がる。
鏡は次々と大量に生まれ組み合わされ、ついには床の上に浮かぶ直径二メートルほどの球体となった。
反射鏡は本来、魔法を反射させるだけの魔法だ。
このように球形にしても意味はない。
しかもナイはその鏡面をすべて内部に向けており、外部からの攻撃を反射できるわけではない。
さらにナイが使ったのはただの反射鏡ではなく半反射鏡……片側から透視できもう一方から鏡となる。マジックミラーとも言われる鏡と同じ性質を持っていた。
つまり、外からは内部の様子は見えるが、内側からは鏡となる球形だ。
「プロミネンス……プロミネンス……プロミネンス……」
半反射鏡の球体に、ナイは紅炎の魔法を打ち込む。
打ち込まれたプロミネンスは鏡面で反射され逃げ場を失う。
球形の内部で、それは炎の龍の様に暴れ回った。
「アルベルト、少し揺れるぞ」
「おう!」
パックを撃退しているアルベルトに声をかける。
パックはナイの妨害が無くなったことで魔法攻撃を打ち始め、それをアルベルトは剣と防具の装甲の厚い部分で受けていた。
アルベルトの防具はナイが手加減なしに作ったため、パックの魔法は凶悪なものだが傷一つついていない。
「解放」
球体の下部が開く。
球体の内部で暴れていたプロミネンスがひらいた部分に集中し、真っすぐに床へと放たれた。
わずかな振動だけで、床に直径数メートルの穴が開いた。
ナイは球体によって複数のプロミネンスを一気に打ち出し、方向を統一させた。
通常であれば大きな魔法は余波をばら撒き、周囲まで崩壊させる。
特に建物などに打ち込んだ場合は、全体の崩壊につながる。
今回は自分の足元を狙って放つため、建物が崩壊しないように前準備を行ったのだった。
床の穴はそこだけ切り取ったように、周囲に何の影響もなく開いていた。
それは深く、しっかりと地下まで届いている。
もちろん、ナイは王や貴族に配慮して城が崩壊しないようにしたわけではない。
地下まで穴を開けたいのに、王城が崩壊して穴をふさいでは本末転倒だからそうしただけだ。
ナイとしては、むしろ王城が崩壊した方が面白そうだとすら感がていた。
国王と取り交わした契約書には例え王城が崩壊しても責任は問わないと記されてもいるので、問題ない。
「行くぞ」
ナイの言葉を合図に、アルベルトはナイを抱え上げる。
そして、二人は穴の中に落ちていった。
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