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バッチバチです
しおりを挟む「! エンジュ様っ!!」
俺を視界に入れるや駆け寄ろうとしたソラだが、ラディウスとナハトの眼光――但し睨んではいない――にその歩みを止める。
「ヨッ! ――珍しいメンツの食事だな」
「ヴァン。どうして此処に?」
「そりゃあ一応見舞いとコレの引率」
コレと称されたソラだが特段気分を害した様子もなく依然、主人の傍に行きたいのに障害物の所為で近寄れず右往左往する犬のように俺に一点集中している。
可愛いけどそうじゃない。
とりあえず問題ない大丈夫だという意味を含めて苦笑すれば、彼の幻覚の尻尾が高速でぶん回される。
「随分と懐かれたものだな」
俺とソラを交互に見比べたネロが気味悪そうに言う。
多分選択したのが貴方かヴァンだった場合かつ正規なら恐らくこの立ち位置は君達ぞ。
「ご心配お掛けしたようで申し訳ありません」
「僕は別にお前の事なんて心配していない。此処に来たのだってヴァンに言われたからだ。勘違いするな」
「そー言いながら道中ずっと軟弱だとか弛んでるって心配してたぞ」
「なっ!? 世間一般ではそれは心配とは言わないぞ、ヴァン!!」
楽しげに口角を上げるヴァンと耳を赤くして彼に食って掛かるネロ。見事なツンデレキャラ具合だ。
しかし好感度マイナス第一位(俺予想)に気遣ってもらえるとは驚いた。これも毎日コツコツ難易度高めの折り紙を献上した効果だろうか?
「はいはい照れない照れない。つーか食事中に悪いな」
「いや気にしなくていい。それより」
「あぁ、一応釘はさしといたが効果は薄いかもな」
「いや寧ろその方が好都合かな」
何やら通じ合っている彼らを横目に二個目のサンドイッチを頬張る。此方は香ばしいフライドチキンに塩胡椒のきいたタルタルソースを挟んだ食べ応えのある物だ。
「――旨いか?」
「はい! 今まで食べたサンドイッチの中で一番美味しいです!」
「そうか」
「っ、」
誇張抜きで賛美した瞬間、嬉しそうに顔を緩ませたナハトに胸が一つ高鳴る。
「あの、お二人って」
図らずも見つめ合ってしまった俺達の関係性をソラが問う。
そういえば説明してなかった。しかし素直に開示していいものか悩んだ一瞬の隙に二つの美声が重なる。
「コイツは俺の物だ」
「只の魔力供給相手だよ」
「え」
困惑を露わにしたソラが結局どっちなの?と言いたげな視線を送ってくる。序でに真横からは俺・私の言う通りだよな(ね)圧が強く注がれている。
「あ~……えっと」
他者への説明としてなら圧倒的ラディウスだが、そうなると必然的に推しに恥をかかせてしまう訳で、正に彼方立てれば此方が立たず。
背中に嫌な汗が伝う中、救いの手が差し伸べられる。
「邪魔するようですまないが、一先ず食事を終えてからにした方がいいと思うぞ。休み時間もあと少しだしな」
壁掛け時計をチラ見しつつ頬を掻くヴァンに俺は感謝の眼差しを送った。彼も俺というかナギから嫌味を言われていた筈だが、流石は側近随一の良心だ。まぁ多分俺の為ではないだろうけど。
「――そうだね」
「……」
素直に引き下がった二人に内心で胸を撫で下ろす。
「ナギはゆっくり食べて休むように」
「あ、いえ。やはり次の授業は出るべきではないでしょうか。良からぬ噂が出ては困りますし、彼を今一人にするのも」
「それならネロに任せるから問題ないよ」
「え」
突然の流れ弾にネロが狼狽する。
「ちょっと待ってよ!」
「諦めろネロ。命令だ」
「っ……分かったよ」
不承不承と頷いたネロが俺を睨む。
なんでそこで俺睨むねん。
「リヴィエラ様、申し訳ありませんが宜しくお願い致します。ソラ、貴方はリヴィエラ様の言う事をよく聞くように」
「分かり、ました」
「心配せずともリヴィエラ様はお優しい方です。それに魔法学方面では他の追随を許さないほどの逸材です。貴方にとっては非常に得る物の大きな方となるでしょう」
「っ、と、当然だ!」
若干耳を赤くしたネロが胸を張る。
どうやら褒め言葉には弱いらしい。
「決まりだな。じゃあオレらは先に行くぜ」
「ほら、平民。さっさと行くよ」
「はっ、はい!」
名残惜しそうに退室するソラを見送り、再び室内に静寂が戻る。時計の針の音が嫌に大きく聞こえた。
「……ご馳走様。ナギ、どうしても体調が優れない時は直ぐに人を呼ぶんだよ」
いつの間にかサンドイッチを平らげたラディウスが俺の頬に触れる。
「っ、は、はい」
「うん。良い子だね」
蕩けるように甘い視線。
その視線に違和感を覚えていると、反対側から不意に手が伸び唇の端に触れる。
「ついてるぞ」
硬い無骨な指が付着したソースを拭い取り、そのままナハトの舌に移動する。
「!?!?!? あああ、有り難う存じます」
「気にするな」
「ナハト・ユーベルヤード。私の物に馴れ馴れしく触れないでくれるかな」
「断る」
バチィっと火花が散る音が耳の奥に届いた、気がした。
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