悪役令息? いいえ。俺は納豆召喚できる経年劣化スマホバッテリーのような者です。

くすのき

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 辺り一面が禿げ上がって焦土と化した中、ヴァンはネロを介抱し、唯一戦闘メンバーでないソラはナハトとラディウスの試合結果を告知していた。
 結果は同数。勿論回避に専念しつつのカウントである為、正確性は低い。とはいえ勝者がいない事で新たな火種が生まれなかった事にヴァンだけは一人静かに胸を撫で下ろす。
 そうして休憩がてら水分補給していると、息も絶え絶えなネロが慄いていたような視線を向けているのに気付いた。

「大丈夫か?」

 不躾なそれに触れず気遣うヴァンに、ネロが疑問をぶつける。

「何で涼しい顔をしてるんだよ」
「そりゃあこれでも鍛えてるからなー」
「だとしても限度があるよ。この体力馬鹿」
「そういうネロは少し体を鍛えた方が良いぞ」

 そう言いながらヴァンは水の入った革袋をネロに差し出した。

「こういう事態が頻繁には起こらないと思うがいざという時、足手まといにならないようにした方がいい。持久力はあればあるだけ望ましいぞ。それに開発のにもきっと役立つ」

 その指摘に少なからず思う所があったのか、ネロは苦虫を噛み潰したような表情となる。

「そういうなら戻ったらトレーニングに付き合ってあげなくもないけど」
「ハハッ。じゃあその時は走り込みから始めような。早朝と夕方ならどっちが良い?」
「どっちも嫌なんだけど。というか何で初手で走り込みなんだよ。普通はまず筋力トレーニングとかじゃないの?」

 ネロが呆れた視線を飛ばす中、ヴァンはそれも一利あると頷いて目線をずらした。

「おーい、ラディウス。もう少ししたら野営出来そうな所を探すぞ」
「! それは――いや、分かった」

 言葉を飲み込むラディウス。

「ユーベルヤードもそれで構わないよな」
「――チッ」

 渋々、本当に渋々と了承の意を示すナハトにヴァンは苦笑いを深くする。
 一刻も早く救出に向かいたい気持ちは理解している。だがそれを選択したらどうなるか、流石のナハトも分かっているようだ。だからこそこうして踏みとどまった。しかし内なる激情は未だ渦を巻いているようで身体から発する魔力は、最大火力を発散した後だというのにまだ刺々しい。
 それほどまでにナギに執着している。
 ヴァンはいつの間にそのような関係を構築したのかは知らないが、そのくらい人を想えるナハトが純粋に羨ましかった。
 恋敵はとんでもない相手だが。

「(しかし殿下まで王太子妃に据えたいと断言するとは……これはアイツが戻ってきたら一段と荒れるなー)」

 下手したら政界いや貴族間のパワーバランスが揺らぎかねない。
 ヴァンは一応ラディウスの味方だ。
 故にラディウスが心からそうしたいと望むなら余程の事でない限り従う。ネロに至ってもそうだろう。

「(あの研究所をナギ名義にしたのは囮の側面が強いと思ったが、実績作りもあったんだろうな)」

 本当に面倒臭い事になった。
 これからを思い、ヴァンはまた静かに肩を竦めるのだった。
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