悪役令息? いいえ。俺は納豆召喚できる経年劣化スマホバッテリーのような者です。

くすのき

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「ん……はぁ」

 自らの口から悩ましい声色が漏れると共に、ナハトの唇が離れていく。その際どちらの物か分からない唾液の糸が伸びてやがて切れる。
 僅かに息を乱しながら見つめ合う俺達。
 緊張と羞恥、それに酸欠手前で思考力が低下している反面、頭の片隅では妙に冷静というか他人事な自分がいた。口づけ後の推しの美しさといったらもう言葉では表現できない。彼こそが神が創り給うた最高傑作だ。
 うっとりと観察、いや見惚れていると何を思ったのか。ナハトは俺を器用に寝台の上に寝かせ、覆い被さってくる。
 まさかこの先に進むつもりなのか。驚愕する俺を他所に、彼の利き手が俺の服の下に侵入する。剣を握る者特有の硬い皮膚が腹の上を軽く擦ったのが分かる。

「やぁ……」

 濡れたような声を発して身を捩るも、密着率の高さから逃げ場がない。
 流石に此処でおっ始めるのは宜しくないと制止を促そうとするも、何も言うなとばかりに彼の口づけで封殺される。
 その気持ちよさにすっかり抵抗の意志が薄れ、胸への侵入を許してしまう。
 指の腹で遊ばれる小さな頂が徐々に固さを帯びていくのが自分でも判った。前世では開発しようとしても一向に快感を拾えなかったというのに。
 これがBL次元か。
 いや呑気に考察してる場合じゃない。
 俺は即行で我に返る。こんな場面目撃されたら某映画並の大惨事待ったなしだ。
 だがしかしエロスイッチを起動したナハトを待て出来るほどの強力なカードは、俺にはない。
 いったいどうすればいいのか。
 隣にラディウスが居るからは多分火に油、シたくないは多分彼を傷つける、俺の心の準備……は多分待ってくれない。――うん、詰んでる!
 このまま美味しく頂かれるのかと焦りと僅かな期待が胸に広がっていく最中、雷の如き天啓が降って湧いた。

「ぷはっ……こ、婚前交渉は良くないと思いましゅ」

 噛んだ。
 俺は震える喉をグビリと動かした。
 貴族間では婚前交渉は嫌厭されている。たまに守っていない者もいるが、爵位の高い貴族ほどそれを重視する。これはいつ何時お互いの家に不利益、又は問題が生じた場合、即座に別れ、速やかに次の相手を充てがう為という側面が大きい。なにせ貴族同士の婚姻は政治的な物が多く秘めているから。
 俺の大変情けない進言に、ナハトは動きを止めて、一拍ほど名残惜しそうに俺の乳首を弄ってから手を引いた。
 十分すぎる時間刺激された為に服の上がやや盛り上がっていたが、俺は今は気にするなと自らに言い聞かせる。もう少し触って欲しいなどとは思ってはいけない。

「婚前交渉でなければいいのか」
「ひぇっ、」

 非常にキメ顔のナハトが顔を近づけて問う。

「結婚したら抱いていいんだな?」
「や、あの……まぁ、一般的にはそう、だと思います」
「分かった」

 顔の圧に負けて答えた俺に、彼は満足そうに頷き、俺のズボンに手を入れた。
 なんでやねん。

「ちょちょちょっ!」
「……何故妨害する?」
「いやしますよ! 俺、婚前交渉は駄目って言いましたよね?」
「言った。だから婚前交渉はしない」
「――ん?」

 どういうことだってばよ。
 某忍者の台詞が脳内を占める中、俺の脳内は三拍かけて正解を導き出す。
 つまりナハトは婚前交渉でないエロ行為ならオッケー!と解釈したのだろう、と。

「待って待って待って。普通にそれも駄目ですよ。というか寮内でしたくありません」
「分かった。ホテルを予約する」
「違う。そうじゃない」

 我が推しながら頭が痛い。

「えっとですね、俺は今はその……シたくないです。すみません」
「さっきのやり方が気に障ったのか」
「あ、いえ、気持ちよ、ゴホン! 兎も角今は嫌です」
「なら何時ならいいんだ」

 何で今日に限って食い下がらないんだ。
 そんなに俺とシたいの?

「明日か明後日か?」
「早い! ――えっとですね、こういうのって普通お友達から始めてお互いをよく知ってから、じゃないですか?」
「友達……」

 考えこむ素振りを見せるナハト。
 なので俺は一気に畳み掛ける。

「そ、それに俺はユーベルヤード様が俺なんかを想う理由が分からなくて」
「理由がいるのか?」
「えっと、はい」
「……了解した」

 どうやら理解してくれたらしい。
 安堵に胸を撫で下ろした俺は、後日それを大いに後悔する羽目になる。
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