君と僕の関係は罰ゲーム

くすのき

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 取り決めはこうだ。
 お試し期間は一ヶ月。その間は性的接触はキスまでとし、デート以外外ではあくまで友人の距離を保つこと。それ以外にはデートを除くイチャイチャは週二回、互いの家でのみ開催。違反した場合は、された側がペナルティー内容を決める。
 なんとも大雑把なそれに、僕は苦笑いをこぼす。これでもう退路は断たれた。あとは野となれ山となれだ。
 まとめたものをLINIの久貫君用トーク画面に流し、既読がついたのを確認して、彼と向き直る。泣いた所為で酷い顔をしているが、久貫君も僕ほどではないが少しだけ目が赤くなっていた。
 こういう時、美形は得だなとつくづく思う。それと同時にこんな美しい人に僕がつり合うのか不安になる。
 脳裏に浮かんだ顔も知らない多くの男女が僕をなじる。今は幻聴だが、そのうち当たり前のように現実になるのだろう。
 
「ナツ?」

 その時、久貫君はどんな反応を見せるのか。怒るだろうか、悲しむだろうか、はたまた庇ってくれるのか。いやそれよりも無駄に傷つけてしまうのではなかろうか。それで疲れて――
 考えれば考えるほど気持ちが沈む。
 僕は頑張って笑顔を作る。
 もしそれで久貫君に別れを告げられたとしても、僕の中ではきっといい思い出になるのだろう。
 だから高望みしちゃいけない。
 弁えなきゃいけない。
 努力しなくちゃいけない。

「チューしてもいい?」
「ふぇっ!? い、いいですけど……」

 閉じた貝のように固まった僕の頬に、彼の手が触れる。

「嫌だったらいつでも押しのけて」

 久貫君の顔が近づく。
 そのあまりの美貌に直視できず、目を瞑るのと同じタイミングで、柔らかな感触が唇に当たった。
 身近なもので喩えるならマシュマロ。ふにふにと合わさり、啄む。そして幾度か繰り返すと、ぬるりとしたものが僕の下唇を舐めた。
 背筋に痺れが走る。
 僕は思わず瞠目し――

「っ、」

 心臓が大きく跳ねた。
 目と鼻の先に久貫君のドアップ。その濡れた瞳が僕を、僕だけを映している。
 熱くて、甘くて、目が逸らせない。

「口開いて」
「あっ」

 薄く開いた唇の隙間に、先ほどの熱い舌が割り込んでくる。
 けっして性急ではなく、むしろ安心させるような柔らかい動き。
 オレンジジュースを舐めたのか、ほのかに柑橘の味が彼の舌を通して伝わる。
 得意でない味なのに、今は凄く興奮する。僕はたどたどしくも彼に応えた。

「ん……ふっ……ぅ……」

 室内に水音と僕の喘ぎ声が広がる。
 久貫君はなかなかキスをやめてくれない。まるで味わうかのように僕の口の中を丹念に舐め取り、刺激していく。
 それによって僕の体からは力が抜け、まるで縋りつくみたいな体勢になってしまう。恥ずかしい。でも不思議と嫌ではなかった。

「ナツ……ナツ……」

 キスの合間に呼ばれる度、全身がぞくぞくした。そうしてどれくらい口づけていたのか、不意に久貫君が離れていく。

「あっ……」

 ちゅぱっと音を立てて、僕と彼の間に銀糸のような糸が伸びて、やがて切れる。

「嫌じゃなかった?」
「や、じゃない、です」
「じゃあもう一回しよ」
「んぅ」

 間髪容れずまた口づけが始まる。
 だが今度のは先程とは異なる激しいキス。いったいどこで、誰と培ってきた技術なのだろうと頭の片隅で考えながら、僕も必死にくらいついた。

「く……ぬぎ……く、ん……ふぁっ」
「ナツの唾液ちょうだい」
「んぅ……あっ……!」

 その日、遅くまでキスに明け暮れたのは言うまでもない。そして――




 * * *



「ナーツ」
「な、んですか。久貫……凌、くん」
「はい。名字呼びしたので、罰ゲームね」
「う、」
「ナツから俺にキスね」
「それペナルティーでもなんでも無いじゃないですか」
「そんな事はないよ。恥ずかしそうにキスするナツが見られるもの」

 僕達が本当に付き合うまであと少し。
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