15 / 15
完
取り決めはこうだ。
お試し期間は一ヶ月。その間は性的接触はキスまでとし、デート以外外ではあくまで友人の距離を保つこと。それ以外にはデートを除くイチャイチャは週二回、互いの家でのみ開催。違反した場合は、された側がペナルティー内容を決める。
なんとも大雑把なそれに、僕は苦笑いをこぼす。これでもう退路は断たれた。あとは野となれ山となれだ。
まとめたものをLINIの久貫君用トーク画面に流し、既読がついたのを確認して、彼と向き直る。泣いた所為で酷い顔をしているが、久貫君も僕ほどではないが少しだけ目が赤くなっていた。
こういう時、美形は得だなとつくづく思う。それと同時にこんな美しい人に僕がつり合うのか不安になる。
脳裏に浮かんだ顔も知らない多くの男女が僕をなじる。今は幻聴だが、そのうち当たり前のように現実になるのだろう。
「ナツ?」
その時、久貫君はどんな反応を見せるのか。怒るだろうか、悲しむだろうか、はたまた庇ってくれるのか。いやそれよりも無駄に傷つけてしまうのではなかろうか。それで疲れて――
考えれば考えるほど気持ちが沈む。
僕は頑張って笑顔を作る。
もしそれで久貫君に別れを告げられたとしても、僕の中ではきっといい思い出になるのだろう。
だから高望みしちゃいけない。
弁えなきゃいけない。
努力しなくちゃいけない。
「チューしてもいい?」
「ふぇっ!? い、いいですけど……」
閉じた貝のように固まった僕の頬に、彼の手が触れる。
「嫌だったらいつでも押しのけて」
久貫君の顔が近づく。
そのあまりの美貌に直視できず、目を瞑るのと同じタイミングで、柔らかな感触が唇に当たった。
身近なもので喩えるならマシュマロ。ふにふにと合わさり、啄む。そして幾度か繰り返すと、ぬるりとしたものが僕の下唇を舐めた。
背筋に痺れが走る。
僕は思わず瞠目し――
「っ、」
心臓が大きく跳ねた。
目と鼻の先に久貫君のドアップ。その濡れた瞳が僕を、僕だけを映している。
熱くて、甘くて、目が逸らせない。
「口開いて」
「あっ」
薄く開いた唇の隙間に、先ほどの熱い舌が割り込んでくる。
けっして性急ではなく、むしろ安心させるような柔らかい動き。
オレンジジュースを舐めたのか、ほのかに柑橘の味が彼の舌を通して伝わる。
得意でない味なのに、今は凄く興奮する。僕はたどたどしくも彼に応えた。
「ん……ふっ……ぅ……」
室内に水音と僕の喘ぎ声が広がる。
久貫君はなかなかキスをやめてくれない。まるで味わうかのように僕の口の中を丹念に舐め取り、刺激していく。
それによって僕の体からは力が抜け、まるで縋りつくみたいな体勢になってしまう。恥ずかしい。でも不思議と嫌ではなかった。
「ナツ……ナツ……」
キスの合間に呼ばれる度、全身がぞくぞくした。そうしてどれくらい口づけていたのか、不意に久貫君が離れていく。
「あっ……」
ちゅぱっと音を立てて、僕と彼の間に銀糸のような糸が伸びて、やがて切れる。
「嫌じゃなかった?」
「や、じゃない、です」
「じゃあもう一回しよ」
「んぅ」
間髪容れずまた口づけが始まる。
だが今度のは先程とは異なる激しいキス。いったいどこで、誰と培ってきた技術なのだろうと頭の片隅で考えながら、僕も必死にくらいついた。
「く……ぬぎ……く、ん……ふぁっ」
「ナツの唾液ちょうだい」
「んぅ……あっ……!」
その日、遅くまでキスに明け暮れたのは言うまでもない。そして――
* * *
「ナーツ」
「な、んですか。久貫……凌、くん」
「はい。名字呼びしたので、罰ゲームね」
「う、」
「ナツから俺にキスね」
「それペナルティーでもなんでも無いじゃないですか」
「そんな事はないよ。恥ずかしそうにキスするナツが見られるもの」
僕達が本当に付き合うまであと少し。
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました
あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」
穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン
攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?
攻め:深海霧矢
受け:清水奏
前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。
ハピエンです。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
自己判断で消しますので、悪しからず。
平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法
あと
BL
「よし!別れよう!」
元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子
昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。
攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。
……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。
pixivでも投稿しています。
攻め:九條隼人
受け:田辺光希
友人:石川優希
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグ整理します。ご了承ください。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
「イケメン滅びろ」って呪ったら
竜也りく
BL
うわー……。
廊下の向こうから我が校きってのイケメン佐々木が、女どもを引き連れてこっちに向かって歩いてくるのを発見し、オレは心の中で盛大にため息をついた。大名行列かよ。
「チッ、イケメン滅びろ」
つい口からそんな言葉が転がり出た瞬間。
「うわっ!?」
腕をグイッと後ろに引っ張られたかと思ったら、暗がりに引きずり込まれ、目の前で扉が閉まった。
--------
腹黒系イケメン攻×ちょっとだけお人好しなフツメン受
※毎回2000文字程度
※『小説家になろう』でも掲載しています
転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…
お酒に酔って、うっかり幼馴染に告白したら
夏芽玉
BL
タイトルそのまんまのお話です。
テーマは『二行で結合』。三行目からずっとインしてます。
Twitterのお題で『お酒に酔ってうっかり告白しちゃった片想いくんの小説を書いて下さい』と出たので、勢いで書きました。
執着攻め(19大学生)×鈍感受け(20大学生)
アプリで元カノを気にしなくなるくらい魅力的になろうとした結果、彼氏がフリーズしました
あと
BL
「目指せ!!魅力的な彼氏!!」
誰にでも優しいように見えて重い…?攻め×天然な受け
⚠️攻めの元カノが出て来ます。
⚠️強い執着・ストーカー的表現があります。
⚠️細かいことが気になる人には向いてません。
合わないと感じた方は自衛をお願いします。
受けは、恋人が元カノと同級生と過去の付き合いについて話している場面に出くわしてしまう。失意の中、人生相談アプリの存在を知る。実は、なぜか苗字呼び、家に入れてもらえない、手を出さないといった不思議がある。こうして、元カノなんか気にしなくなるほど魅力的になろうとするための受けの戦いが始まった…。
攻め:進藤郁也
受け:天野翔
※誤字脱字・表現の修正はサイレントで行う場合があります。
※タグは定期的に整理します。
※批判・中傷コメントはご遠慮ください。
「大好きです」と言ったらそのまま食べられそうです
あまさき
BL
『「これからも応援してます」と言おうと思ったら誘拐された』のその後のお話
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
リクエストにお答えしましてその後のお話🔞を書きました。
⚠︎
・行為に必要な色んな過程すっ飛ばしてます
・♡有り