君の描く色

天月ひなた

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プロローグ

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 いつからだろう、が見えるようになったのは。
 初めて見えるようになったのは、物心が付いたころだった。その頃は、周りの人も僕と同じ世界を見ている、綺麗な世界だ、としか思わなかった。けど、小学校に上がり周りの友人に話した時は、
「頭……大丈夫?」
「そんな風には見えないけど?」などと言われた。
 それくらいの事を言われたくらいならまだ良かった。だが、どういう訳だかの話は、その日のうちに担任の先生、そして両親までに届いた。学校から帰宅し玄関を開けた瞬間、両親は居間から焦るように出てきた。その時の心配した顔は、今でも覚えている。
 それからというもの、いくつもの病院を受診した。主に眼科がメインだったが、脳の可能性も有り得ると両親は考え、脳外科も何度か受診した。しかし、何度行っても結果は変わらなかった。病院の先生は皆口を揃えて、
「私からはがみえる?」としか言わなかった。
 そう、僕には『人の色』が見える。見えるといっても薄らと、滲み出る感じだ。普通の人には見えないらしい。当時の僕は、周りも同じ様に見えてると信じていた分、誰にも相談してなかった。それは確かに両親も心配するか。
 あれから『色』の事は誰にも話さず小学校を卒業し、そして中学校を卒業した。とくに思い出深い程でもないが『人の色』が見える分、トラブルなどは起こらず、ただただ平和に普通に、中学校まで卒業することができた。
 この不可解な現象の良いところは『人の色』を見れば、性格、感情、育ってきた環境が分かる事だ。悪いところをあげるとするなら、人の悪い面も『色』として見えてしまうところだ。だからなるべく、そういった『色』からは目を逸らしてきた。しかし、最近は色がはっきりと、見えるようになってきてる。
「明日から高校生か……」
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