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第1章
出会い
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春、それは出会いと別れの季節。暑すぎず、寒すぎない気温。ゆっくりと、花の匂いを乗せて吹く風に、心は穏やかになるが、どことなしか懐かしく、そして切ない。こんな事を思う僕は、春が好きなのだろう。多くの人は花粉がと言ってきらうが、あいにく僕は花粉とは無縁だ。
そんな事を思いながら緩やかな上り坂を登っていく。同時に、緊張と不安で押し潰されそうにもある。なんたって今日から高校生だ。別に環境が変わるからとか、人間関係が面倒ってことは無い。
後ろから自転車が追い越していく。少し首を上げ、乗っている人の後ろ姿に目を凝らす。
(紺色だ……性格は内気、今の感情は不安、環境は良くも悪くもない)
そうこれが僕、五十嵐拓馬の長年の悩み、『人の色』が見えてしまうという病気。病気と言っても、生活に支障をきたす訳でもなく、周りの人には見えてないから、僕が勝手に病気と思っているだけだ。ただ不便だど感じるのは、相手の気持ちを目で見てわかってしまうこと。そして、僕もその気持ちに落ち込んでしまうことがある。落ち込んでしまうことに関しては、僕自身の心の問題だと思う。別に気にしなければ、目を逸らせばいいのだが、そうもいかない性格が僕だ。誰だって落ち込んでいる人には、手を差し伸べたくなるものだと僕は思う。しかし、手を差し伸べたところで、解決に至らない事が多いのは確かだ。今までがそうだったから、なるべく目を逸らしてきた。助けたいけど、今の僕はそこまで強くないと、ずっと言い訳を心の中で繰り返してきた。そして、自身の弱さにまた落ち込む。その繰り返し。
最近、前に比べて色が良く見えるようになってきてる。人が多いところは、一言で言うなら虹だ。多彩な色が重なりとても綺麗だ。しかし、良い事のように聞こえるけど、決してそのようなことは無い。多くの人の色を見ることになり、主に性格、感情で溢れかえって、結果疲れる。だからなるべく、人の多い場所には行かないようにしてる。
緩やか上り坂を登りきり、後は交差点を右に曲がって、少し歩いたところに、これから通う「竹原高等学校」がある。
気づいたら、僕の周りには同じ制服を着た人でいっぱいだった。大体の人はお喋りをしながら、スマホを操作していた。他には耳にイヤホンをして、周りの人と交流などせず、ただ目的地まで歩く人もいた。多彩な色が重なっていた。流石にこのままではまずいと思い、僕は歩くペースを落とし、集団から何とか離れた。
(遠くから見ると、とても綺麗なんだけどな)
そんなことを思った時だった。集団から離れたから、余計だったのだろう。この世に僕しかいない、と思うくらいに一瞬静かになった。車も通らず、風も吹かず、小鳥のさえずりもなかった。たまたまだろうと思った時、その子は気づいたら隣にいた。
(色が……見えない)
身長はそれ程高い訳でもなく、低くもない。腰まである長い髪。整った顔つき。モデル?とも思った。それくらい綺麗な見た目だった。しかし、何も感じとれない。色が見えないのは初めての事だったが、何も感じ取れないのだ。存在感が薄い、というより無いに近かった。
「なに?」
鋭い目付きで睨まれた。気づいたらその子に見入ってしまったらしい。
「べ、別に……なんでもない」
目線を前に戻し、歩くペースを少し上げた。少しづつ時間が進む感覚だった。車の音、風の音がし始めた。とても動揺していた。
(なんで色がなかったのだろう。)
初めての経験だった。疑問が頭の中でぐるぐる回る。後ろは振り向こうとは思わなかった。寧ろ振り向きたくなかった。
これがその子、花咲玲との出会いだった。
そんな事を思いながら緩やかな上り坂を登っていく。同時に、緊張と不安で押し潰されそうにもある。なんたって今日から高校生だ。別に環境が変わるからとか、人間関係が面倒ってことは無い。
後ろから自転車が追い越していく。少し首を上げ、乗っている人の後ろ姿に目を凝らす。
(紺色だ……性格は内気、今の感情は不安、環境は良くも悪くもない)
そうこれが僕、五十嵐拓馬の長年の悩み、『人の色』が見えてしまうという病気。病気と言っても、生活に支障をきたす訳でもなく、周りの人には見えてないから、僕が勝手に病気と思っているだけだ。ただ不便だど感じるのは、相手の気持ちを目で見てわかってしまうこと。そして、僕もその気持ちに落ち込んでしまうことがある。落ち込んでしまうことに関しては、僕自身の心の問題だと思う。別に気にしなければ、目を逸らせばいいのだが、そうもいかない性格が僕だ。誰だって落ち込んでいる人には、手を差し伸べたくなるものだと僕は思う。しかし、手を差し伸べたところで、解決に至らない事が多いのは確かだ。今までがそうだったから、なるべく目を逸らしてきた。助けたいけど、今の僕はそこまで強くないと、ずっと言い訳を心の中で繰り返してきた。そして、自身の弱さにまた落ち込む。その繰り返し。
最近、前に比べて色が良く見えるようになってきてる。人が多いところは、一言で言うなら虹だ。多彩な色が重なりとても綺麗だ。しかし、良い事のように聞こえるけど、決してそのようなことは無い。多くの人の色を見ることになり、主に性格、感情で溢れかえって、結果疲れる。だからなるべく、人の多い場所には行かないようにしてる。
緩やか上り坂を登りきり、後は交差点を右に曲がって、少し歩いたところに、これから通う「竹原高等学校」がある。
気づいたら、僕の周りには同じ制服を着た人でいっぱいだった。大体の人はお喋りをしながら、スマホを操作していた。他には耳にイヤホンをして、周りの人と交流などせず、ただ目的地まで歩く人もいた。多彩な色が重なっていた。流石にこのままではまずいと思い、僕は歩くペースを落とし、集団から何とか離れた。
(遠くから見ると、とても綺麗なんだけどな)
そんなことを思った時だった。集団から離れたから、余計だったのだろう。この世に僕しかいない、と思うくらいに一瞬静かになった。車も通らず、風も吹かず、小鳥のさえずりもなかった。たまたまだろうと思った時、その子は気づいたら隣にいた。
(色が……見えない)
身長はそれ程高い訳でもなく、低くもない。腰まである長い髪。整った顔つき。モデル?とも思った。それくらい綺麗な見た目だった。しかし、何も感じとれない。色が見えないのは初めての事だったが、何も感じ取れないのだ。存在感が薄い、というより無いに近かった。
「なに?」
鋭い目付きで睨まれた。気づいたらその子に見入ってしまったらしい。
「べ、別に……なんでもない」
目線を前に戻し、歩くペースを少し上げた。少しづつ時間が進む感覚だった。車の音、風の音がし始めた。とても動揺していた。
(なんで色がなかったのだろう。)
初めての経験だった。疑問が頭の中でぐるぐる回る。後ろは振り向こうとは思わなかった。寧ろ振り向きたくなかった。
これがその子、花咲玲との出会いだった。
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