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4章
しおりを挟む夜明け前、王都の広場には、重々しい空気が漂っていた。
私はカイルとともに、次なる一手を打つための計画を静かに進めていた。
これからの戦略が、私たちの命運を大きく左右することになるだろう。
「リリアーナ様、先にお伝えしておくべきかと思いますが………王家も既に何か動き始めているようです」
カイルが口を開き、封印された手紙を差し出した。
それは、王都の貴族たちの間でひそかに流れているという噂話がまとめられた報告書だった。
私はその内容を確認し、眉をひそめた。
「どうやら、王家は私たちの動きに感づいているわね…」
王太子との婚約破棄を表向きの口実にしつつ、裏では権力争いが秘密裏に始まっていたのだ。
私が「悪役令嬢」として扱われたのも、単なる貴族間の駆け引きではなく、もっと深い陰謀が隠されていることに気付かされた。
「王太子レオナードも、おそらく何かしらの命令で動いているに違いないわ。私を捨てたのも、彼の独断ではなく………」
王家が背後で糸を引いている――
その確信が胸の奥に沸き上がった。だが、いまだ掴めないその全貌が私の焦燥感を煽る。
「これでは、ただの復讐劇になってしまうわ。私たちの勝利のためには、もっと大きな一手が必要よ」
私は深呼吸し、カイルに目を向けた。
「次に目指すは、王国における最大の影響力を持つ者――宰相の家よ」
「宰相家ですか? ですが、彼らは王家に深い忠誠を誓っていることで知られています」
カイルの指摘に、私は微笑んだ。
「ええ、だからこそ、利用価値があるの。彼らが何を守り、何に忠誠を誓っているのか、その本質を見抜けば私たちは勝てるわ」
宰相家は単に王家のしもべではない。
彼らが守っているのは、王国そのもの
――つまり、彼らが忠誠を誓っているのは王国そのものに対してなのだ。
もし私が、国民に対する王家の裏切りと、その支配構造を変える力を見せれば、彼らは王家から離れるかもしれない。
---
次の日、私は宰相の館を訪れた。
その美しく整えられた庭園と、歴史を感じさせる大理石の廊下を歩くと、ある種の荘厳さに胸が引き締まる思いがした。
「リリアーナ・ベルトワール様、お待ちしておりました」
宰相の家令が私を迎え入れ、奥の間へと案内した。そこに座っていたのは、
宰相家の長――**エドワード・レクサル**。
冷たい灰色の瞳が私をじっと見つめ、その顔には何の表情もない。
「さて、リリアーナ嬢。あなたが何を求めてここへ来たのか、聞かせていただきましょうか」
エドワードの言葉は静かであったが、その背後には巨大な力と威厳が感じられた。
私は軽く頭を下げ、ゆっくりと口を開いた。
「私が求めるのはただ一つ――王家の力を覆すことです。そして、それは貴方にとっても利益になるはずです」
エドワードは少しだけ眉を上げたが、すぐに興味深そうな笑みを浮かべた。
「ほう? 王家を覆す、ですか。その言葉の真意をお聞かせ願いたい」
私は深呼吸し、王家に隠された真実と、魔族との契約の話を伝えた。
エドワードの表情は微かに動き、その灰色の瞳が鋭く輝いた。
「なるほど、確かにそれが事実ならば…話が変わってきますね……」
エドワードは立ち上がり、窓の外を見つめた。そして、静かに呟いた。
「もしその真実を公にしたら、王家は終わりを告げるでしょう。しかし、同時にそれは、この国をも崩壊するかしれないということ。貴女にはその覚悟がおありですか?」
宰相が鋭く私を見やる。
その言葉には、重く深い問いが込められていた。
私は一瞬だけ戸惑ったが、すぐに答えた。
「国を壊すつもりはありません。私が望むのは、より良い未来です。今の腐った体制を打ち壊し、新たな秩序を築くために、この真実を使うのです」
エドワードは黙って私を見つめていたが、やがて小さく頷いた。
「面白い。貴女に賭けてみましょう。だが、私が動くにはもっと確実な保証が欲しいですね」
彼はその灰色の瞳を私に向けたまま、さらに言葉を続けた。
「貴女が本当に王家を超える力を持っていることを、証明してみせてください。そうすれば、私も全力で貴女の助けになりましょう」
私はその挑戦を受け入れることにした。
---
宰相家という強力な同盟を得るための次なる課題は、私が真に王家を凌駕する力を示すこと――その道のりは険しいが、ここまで来た以上、後戻りはできない。
「覚悟を決めるわ、カイル」
一呼吸して、冷静さを取り戻す。
「行くわよ」
2人は宰相家を後にして、歩みを始めた。
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