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『ああ、そんな事か。言っただろう?神を恨んでいるってな。その娘は神の愛し子だ。一目見て分かったさ⋯⋯この女も最初からフィオナが気に入らなかったようだ。
まあ、コイツは自己評価が高くてな、すべての男から自分は愛されると思い込んでいたな。それが何人かの見目のいい男に相手にされない事が続いた。プライドの高いコイツがそんな時にフィオナの存在を知った。
見向きもされなかったことをフィオナの存在のせいにし、憎むようになった』
「⋯⋯そんな理由でフィオナの命を奪おうとしたのか?」
いやマジ、おかしいよね?どんな思考の持ち主なんだよ!
『オレの私怨に引き摺られたのか、この女の頭がおかしいのか、オレが言うのもなんだがコイツには普通の人間にあるべき罪悪感というものがない。⋯⋯それでも神に復讐するのにフィオナを消すことに同意した』
「⋯⋯そうか」
『お前には悪ぃが娘を渡してもらおうか。フィオナを亡くしてもお前にはまだ子が2人残るだろう?』
「もう、いいか?」
『何がだ?』
「お前らの言い分を聞いてみたが無駄な時間だった」
『お前も殺すぞ』
「やってみろ」
お父様が動いたその瞬間を、目で追えた者は驚愕の表情をしているジンとサラだけだったと思う。ジンに至っては顔色まで青く変わっている。
オルセロー嬢が突然力が抜けたように倒れ、お父様の右手には透明の箱の中に黒い煙のような物が閉じ込められていた。
『な、何が起こった?』
本当に何が起こったのだろう?
どうやって彼女から『魔王』を引きずり出したの?
「弱いな。この程度で世界を滅ぼそうとしたのか?」
なぜ優しいお父様が巷で『魔王』と呼ばれているのかずっと不思議だった。
でも、今のようにお父様に殺気を向けられたとしたら?無駄に抵抗することを諦めるだろう。
それぐらいお父様は別格だった。
実際に今も殺気だけで皮膚が切り裂かれそうな錯覚に陥る。
『お、お前⋯お前は本当に人間か?』
「人間に決まっているだろう」
私だって自称神様に相当なチート能力を貰ったけれど、お父様はそれ以上だ。
「さあ、消滅の時間だ」
『や、やめろ!やめてくれ!ギャーーー』
透明な箱がどんどん小さくなり、箱からは『魔王』の懇願と悲鳴が聞こえたけれど、それもプツっと音が鳴ると聞こえなくなった。
そしてお父様の手には何も残っていなかった。
「終わったな。さあ、帰ろうか」
振り向いたお父様の顔はいつもの穏やかで優しいものに戻っていた。けれど⋯⋯
でも⋯⋯私たちの出番は?
死に物狂いで特訓してきた日々は?
私たちの意気込みは?
お父様1人でサクッと終わらせちゃったよ。
「一応コレも連れて帰るか」
何だか納得のいかないまま私たちは転移した。
その夜、自称神様が夢に出てきた。
『えへっ、ごめんね~』テヘペロ♡
って⋯⋯次に会ったら絶対にぶん殴ってやる!
まあ、コイツは自己評価が高くてな、すべての男から自分は愛されると思い込んでいたな。それが何人かの見目のいい男に相手にされない事が続いた。プライドの高いコイツがそんな時にフィオナの存在を知った。
見向きもされなかったことをフィオナの存在のせいにし、憎むようになった』
「⋯⋯そんな理由でフィオナの命を奪おうとしたのか?」
いやマジ、おかしいよね?どんな思考の持ち主なんだよ!
『オレの私怨に引き摺られたのか、この女の頭がおかしいのか、オレが言うのもなんだがコイツには普通の人間にあるべき罪悪感というものがない。⋯⋯それでも神に復讐するのにフィオナを消すことに同意した』
「⋯⋯そうか」
『お前には悪ぃが娘を渡してもらおうか。フィオナを亡くしてもお前にはまだ子が2人残るだろう?』
「もう、いいか?」
『何がだ?』
「お前らの言い分を聞いてみたが無駄な時間だった」
『お前も殺すぞ』
「やってみろ」
お父様が動いたその瞬間を、目で追えた者は驚愕の表情をしているジンとサラだけだったと思う。ジンに至っては顔色まで青く変わっている。
オルセロー嬢が突然力が抜けたように倒れ、お父様の右手には透明の箱の中に黒い煙のような物が閉じ込められていた。
『な、何が起こった?』
本当に何が起こったのだろう?
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「弱いな。この程度で世界を滅ぼそうとしたのか?」
なぜ優しいお父様が巷で『魔王』と呼ばれているのかずっと不思議だった。
でも、今のようにお父様に殺気を向けられたとしたら?無駄に抵抗することを諦めるだろう。
それぐらいお父様は別格だった。
実際に今も殺気だけで皮膚が切り裂かれそうな錯覚に陥る。
『お、お前⋯お前は本当に人間か?』
「人間に決まっているだろう」
私だって自称神様に相当なチート能力を貰ったけれど、お父様はそれ以上だ。
「さあ、消滅の時間だ」
『や、やめろ!やめてくれ!ギャーーー』
透明な箱がどんどん小さくなり、箱からは『魔王』の懇願と悲鳴が聞こえたけれど、それもプツっと音が鳴ると聞こえなくなった。
そしてお父様の手には何も残っていなかった。
「終わったな。さあ、帰ろうか」
振り向いたお父様の顔はいつもの穏やかで優しいものに戻っていた。けれど⋯⋯
でも⋯⋯私たちの出番は?
死に物狂いで特訓してきた日々は?
私たちの意気込みは?
お父様1人でサクッと終わらせちゃったよ。
「一応コレも連れて帰るか」
何だか納得のいかないまま私たちは転移した。
その夜、自称神様が夢に出てきた。
『えへっ、ごめんね~』テヘペロ♡
って⋯⋯次に会ったら絶対にぶん殴ってやる!
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