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30 ローズ視点

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私はローズ・ウエスト男爵家の令嬢として生まれたの。

小さい頃から家族も、周りのみんなも「かわいい、天使」と言って甘やかされて育ったわ。
特にお父様は可愛くお願いすればなんでも与えてくれたわ。

でもお母様は我儘になりつつあった私を心配して、将来困らないように家庭教師を雇ってくれたの。

そこで貴族の中でも男爵家は低位だと家庭教師に教えられたの。
だから少しでも上の爵位の方と結婚できるように一生懸命勉強もしたし、礼儀作法も覚えたわ。
だから自信を持って学園にも入学したの。


入学式前、早く着き過ぎた私は少しだけ学園内を探索していたの。
私とすれ違う男の人には目が合うとニッコリと自慢の笑顔を見せると顔を赤くして目を逸らすの。
だから学園でもきっとチヤホヤされると思ったわ。
その中から素敵な男性を選べばいいと・・・

そんなことを考えながら歩いていると、前から真剣な顔で走ってくる男性がいた。スラリと背も高く、顔も凄く整っていた。
知り合うきっかけが欲しくてワザと前に出てぶつかったのに「ワルい」と言われただけで振り向きもせずに去って行ったの。



入学式が始まって、新入生代表の挨拶に出てきた女性は儚げな美しさと気品を兼ね揃え、凛とした姿を見せた。
誰もが見惚れる、そこにいるだけで周りの空気も変えるような存在感、彼女ほど綺麗な人は見たことがなかったの。
アスパルト公爵家のご令嬢、ティアリーゼ・アスパルト様だと知ったの。
彼女には何もかも敵わないとわかったわ。

在校生代表挨拶はこの国の第1王子様だったわ。
優しい笑顔に堂々とした気品ある佇まいはとても美しく、端正なお顔は惹かれるものがあったわ。

でもそれだけ。

この学園で婚約者を見つけるつもりだけど、
そこまで高望みはするつもりはないの。
男爵家よりもちょっとだけ上の爵位の方に見初められればいいと思っていたの。




学園にも慣れた頃、あの時ぶつかった彼を見かけたの。
いつも柔らかく微笑んでいる第1王子様とは違い、無愛想だけど整った顔立ちの第2王子様。

いつも柱の陰からアスパルト公爵令嬢を優しい眼差しで見つめていると気づいた時、王子様でも片思いするのだと、何故かおかしくなったの。
だからなのか私も公爵令嬢を目で追うことが多くなっていたわ。
見つめているのは彼だけじゃなかったし、アスパルト公爵令嬢に見惚れている人はたくさんいたの。


だから、少しだけ私も注目されたくなったの。





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