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オーギュスト王国編
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「ギリアン様ぁ~」
二度と聞きたくなかったべティーの声だ。
媚びるような甘ったるい声。
でも、ミラドール公爵家の養女になっていない彼女がこの学院に居るのは何故?
どこかの貴族家の養女に?
⋯⋯やっぱり今回もギリアン殿下の恋人なのね。惹かれ合う二人は変わらないわね。
私は振り向くことなく馬車止めに向かった。
「婚約者でもない異性に気軽に触れるなと、何度言ったら君は理解するんだ?」
え?ギリアン殿下のあの冷たい声はいつも私へ向けられたものだった。それがべティーへ?
思わず振り向いた先に見えたものは⋯⋯
「そ、そんな⋯⋯酷い」
べティーは瞳に涙を浮かべ如何にもか弱そうに見えるが⋯⋯ギリアン殿下には効果がないように見える。
「あれが第二王子のギリアン殿下か」
「まあ、殿下の言っていることは間違ってはいないわね」
「ええ、婚約者でもない異性に触れるのはちょっと⋯ね」
それが国が違っても貴族の常識。
でもべティーにはそれが通じない。
会話を聞く限りギリアン殿下がべティーを拒絶している?それに苛立っている?
こんなギリアン殿下は知らない。
どうなっているの?
「殿下!」
「ギリアン殿下!」
「いくら殿下でもそんな言い方!べティー嬢が可哀想ではありませんか!」
出た⋯⋯べティーの取巻き。これは前回と変わらないのね。
それなら何故ギリアン殿下だけが、べティーへの態度が違うのか⋯⋯
「⋯⋯僕は間違ったことは言っていないよ」
確かに。
「み、皆んな⋯⋯庇ってくれてありがとう。いつもギリアン様を怒らせるあたしが悪いの。クスン」
クスンって⋯⋯相変わらずね。
「き、気持ちわる。ほら!見てみろ鳥肌が!」
へぇ~レイには通用しないんだ。
「本当だ~」
「ねえ、あの子のアレって演技よね。あんなのに引っかかる男って、周りからの評価を落としていることに気付かないのかしら?お馬鹿さんってことよね。まさかこの学院にはそんな男たちが沢山いるの?」
ちょっ、ちょっと声が大きいわリズベット!
ほ、ほら!気付かれたみたいよ!
ギリアン殿下とべティーたちが勢いよく睨むようにこちらに向いた。
レイは私たちを守るように一歩前に出て、私たちは私たちで身構えたけれど、彼らは想定外の反応をした。
「き、君たち⋯⋯な、名前、名前を教えてくれないかな?」
「み、見かけない子たちだね。新入生?」
「⋯⋯か、可愛い」
彼らの視線も意識も私たちに集中していた。
それが面白くないのがべティー。
そうだった。べティーは自分が中心じゃないと不機嫌になる子だった。
「ちょっと!皆んな!」
自分に意識を向けようと取り巻きの袖を引っ張ったり、腕に手を搦めても彼らに外される始末。まさに眼中に無いって感じ。
まあ、こうなるよね。
さっきまでのか弱い演技はどこへ行った?とばかりに恐ろしい顔で睨んできた。
「この程度で化けの皮が剥がれるなんて、女優にはなれないわね」
リズベット揶揄うのは止めなさい!
べティーは執念深いのよ!
せっかくの可愛い顔なのに、今のリズベットはクロイツ殿下の意地悪をする時の顔にそっくりよ!
「ギ、ギリアン様ぁ~」と、ギリアン殿下に手を伸ばしたけれど、それは触れる前に叩き落とされた。
これ以上ここに居たら面倒なことになる!
「か、帰るわよ!」
やる気満々のリズベットの手と、面白そうにしているマリエルの手を掴んで走った。⋯⋯逃げたと言った方が正しいかも。
レイは放っておいても勝手に付いてくるはず!
走りながらも私の頭の中では、しゃがんで頭を抱えている私がいるわ~
三年のべティーやギリアン殿下が卒業するまでは、大人しく目立たないつもりでいたのに⋯⋯編入早々それを諦めることになるなんて~
二度と聞きたくなかったべティーの声だ。
媚びるような甘ったるい声。
でも、ミラドール公爵家の養女になっていない彼女がこの学院に居るのは何故?
どこかの貴族家の養女に?
⋯⋯やっぱり今回もギリアン殿下の恋人なのね。惹かれ合う二人は変わらないわね。
私は振り向くことなく馬車止めに向かった。
「婚約者でもない異性に気軽に触れるなと、何度言ったら君は理解するんだ?」
え?ギリアン殿下のあの冷たい声はいつも私へ向けられたものだった。それがべティーへ?
思わず振り向いた先に見えたものは⋯⋯
「そ、そんな⋯⋯酷い」
べティーは瞳に涙を浮かべ如何にもか弱そうに見えるが⋯⋯ギリアン殿下には効果がないように見える。
「あれが第二王子のギリアン殿下か」
「まあ、殿下の言っていることは間違ってはいないわね」
「ええ、婚約者でもない異性に触れるのはちょっと⋯ね」
それが国が違っても貴族の常識。
でもべティーにはそれが通じない。
会話を聞く限りギリアン殿下がべティーを拒絶している?それに苛立っている?
こんなギリアン殿下は知らない。
どうなっているの?
「殿下!」
「ギリアン殿下!」
「いくら殿下でもそんな言い方!べティー嬢が可哀想ではありませんか!」
出た⋯⋯べティーの取巻き。これは前回と変わらないのね。
それなら何故ギリアン殿下だけが、べティーへの態度が違うのか⋯⋯
「⋯⋯僕は間違ったことは言っていないよ」
確かに。
「み、皆んな⋯⋯庇ってくれてありがとう。いつもギリアン様を怒らせるあたしが悪いの。クスン」
クスンって⋯⋯相変わらずね。
「き、気持ちわる。ほら!見てみろ鳥肌が!」
へぇ~レイには通用しないんだ。
「本当だ~」
「ねえ、あの子のアレって演技よね。あんなのに引っかかる男って、周りからの評価を落としていることに気付かないのかしら?お馬鹿さんってことよね。まさかこの学院にはそんな男たちが沢山いるの?」
ちょっ、ちょっと声が大きいわリズベット!
ほ、ほら!気付かれたみたいよ!
ギリアン殿下とべティーたちが勢いよく睨むようにこちらに向いた。
レイは私たちを守るように一歩前に出て、私たちは私たちで身構えたけれど、彼らは想定外の反応をした。
「き、君たち⋯⋯な、名前、名前を教えてくれないかな?」
「み、見かけない子たちだね。新入生?」
「⋯⋯か、可愛い」
彼らの視線も意識も私たちに集中していた。
それが面白くないのがべティー。
そうだった。べティーは自分が中心じゃないと不機嫌になる子だった。
「ちょっと!皆んな!」
自分に意識を向けようと取り巻きの袖を引っ張ったり、腕に手を搦めても彼らに外される始末。まさに眼中に無いって感じ。
まあ、こうなるよね。
さっきまでのか弱い演技はどこへ行った?とばかりに恐ろしい顔で睨んできた。
「この程度で化けの皮が剥がれるなんて、女優にはなれないわね」
リズベット揶揄うのは止めなさい!
べティーは執念深いのよ!
せっかくの可愛い顔なのに、今のリズベットはクロイツ殿下の意地悪をする時の顔にそっくりよ!
「ギ、ギリアン様ぁ~」と、ギリアン殿下に手を伸ばしたけれど、それは触れる前に叩き落とされた。
これ以上ここに居たら面倒なことになる!
「か、帰るわよ!」
やる気満々のリズベットの手と、面白そうにしているマリエルの手を掴んで走った。⋯⋯逃げたと言った方が正しいかも。
レイは放っておいても勝手に付いてくるはず!
走りながらも私の頭の中では、しゃがんで頭を抱えている私がいるわ~
三年のべティーやギリアン殿下が卒業するまでは、大人しく目立たないつもりでいたのに⋯⋯編入早々それを諦めることになるなんて~
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