最初からここに私の居場所はなかった

kana

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オーギュスト王国編

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帰ってきた私たちは着替えてから何時ものように談話室に集まった。

「演技女と馬鹿男たちを見ていたら黙っていられなかったのよね」

ああ~終わった⋯⋯⋯⋯
!!
いや、待てよ。
べティーが絡むとしたら恥をかかせられたリズベットよね?
私⋯⋯大丈夫じゃね?
⋯⋯ダメダメ!自分さえ良ければいい!なんてこんな考えはダメよ。
リズベットは大切で大好きな友達だもの。

「でもあの人睨んでいたわよ」

そうなのよ!それが心配なのよ!
きっと何か仕掛けてくるはずよ。

「ああ、気を付けろよリズベット。あの様子じゃあ恨まれてんじゃないか?」

「それならそれで面白いじゃない。彼女が何をしてこようが、わたくしが返り討ちにしてさしあげるわ。ふふふっ」

リズベットがわくわく楽しそうに見えるのは気の所為だよね。まあ確かにリズベットはべティーのように色目を使って男を利用する人が嫌いだものね。
それはリズベットが育った家庭環境が原因だ。

彼女の母親は夫が留守の間に何人もの男を邸に連れ込み関係をもっていたらしい。
男に高価なものを強請り、撓垂れ掛かっている姿を幼いリズベットに見せていたそうだ。
いざ夫にバレた時には『リズベットが将来男を上手く利用出来る子になってもらうために、わたくしが実践して教育していただけよ』とか、巫山戯た寝言を言って追い出されるところまで見ていたそうだ。まあ、どんなもっともらしい理由を言ってもただの浮気だからね。
だから母親に似た行動をする人が男も女も関係なくリズベットは嫌いだし軽蔑している。
それには私も同感だ。

今日はべティーに嫌いな母親が重なったんだと思う。
実際、べティーは嫌いな人や邪魔な人を周りを味方につけ簡単に陥れ排除する。
それに対して彼女には罪悪感がない。
だからこそ、べティーが怖い。



べティーとギリアン殿下よりも一学年下の私が、前回入学した時には既に二人は恋人同士だった。人目もはばからずイチャイチャしていたしね!
それがどうよ!
ギリアン殿下は冷たい態度でべティーを拒絶していた。

まあ、ギリアン殿下の言っていたことは貴族としては間違っていない。
さらに相手が王族ともなれば勝手に触れるなど罪に問われても仕方がない行動をべティーはしていた。
前回はそれがだから許されていただけ。それだって私という婚約者が居なければの話。傍から見ればただの不貞。
それなのに、断罪され殺されたのは婚約者だった私の方。

べティーの取り巻きたちの顔ぶれは前回と変わっていなかった。
前回と今回の違いはギリアン殿下の言動。

べティーが『魅了』の力を持っているかもしれない⋯⋯なんてのは私の勝手な憶測だったかも。
持っていたとしたらギリアン殿下はとっくにべティーに夢中になっていたはずだものね。

彼女たちに関わるつもりはなかったけれど、リズベットに何か仕掛けてくるようなら、そうも言ってられない。

『魅了』どうこうは距離を取りながら要観察ね。
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