【完結】悪役令嬢はゲームに巻き込まれない為に攻略対象者の弟を連れて隣国に逃げます

kana

文字の大きさ
28 / 122

28

しおりを挟む
湖のほとりをレイと手を繋いで歩く。

小さなレイは僕の胸あたりの身長だ。
きっと抱きしめたら、僕の腕の中にすっぽりと収まるのだろう。
本当はレイとの2人の時間を大切にしたいが報告が先だ。


「レイ、ウインティア王国のゾルティー殿下から手紙が届いたよ。」

「向こうの様子はどうなっているの?ヒロインが転移してきてから一月になるわよね?」

ここからエリーとルフランには教えられない話しをレイに話していく。


手紙の内容はこうだった。

彼女の名前はマイ・ツルギ。

貴族だけが通う学園では彼女がお茶会に突然現れたことは皆が知っている。

そこまで騒がれなかったのは彼女のように違う世界から転移してきた者が過去にも何人もいたからだ。
それは幼児から高齢者までいたそうだ。

学園の入学式。ゲームではルフランが新入生代表の挨拶をする。
だが実際に挨拶をしたのは僕たちがウインティア王国にいた時から優秀だと有名だったアルマ・セルティ公爵令嬢だった。

影の報告では彼女は『おかしい、ルフランがいない。おかしい』などとブツブツ言っていたそうだ。

そして、同じクラスになるはずのエリーがいないことにも、攻略対象者の僕がいないことにも気づいた彼女は教室で騒いだそうだ。

『アランはどこ?エリザベートは何処にいるの?』と・・・

侯爵家の僕たちを敬称も付けず、呼び捨てる彼女はクラスからも白い目で見られてしまったそうだ。

そこは貴族社会を知らない転移者だから多目に見れるが、彼女はその時に宥めようとする令嬢に暴力を振るったそうだ。
幸いたいした怪我ではなかったようだが、本来なら即退場だろう。
学園側も何も知らない転移者だと仕方がないと口頭での厳重注意で終わらせたようだ。

一人ぼっちになった彼女は記憶喪失を装いはじめたらしい。

バカだろ?
僕たちの名前を口にしたのに記憶喪失なんて通じるわけが無い。

それが通じてしまうバカがいたのだ。

天真爛漫で純真無垢なフリをして見目の良い男たちに手当り次第声を掛けていたようだ。


最初は警戒していた男たちも、記憶喪失を装った彼女に同情したのか信じたのか、次々と彼女を特別扱いする子息が増えていったそうだ。
その中には既に宰相と騎士団長の子息も含まれている。

落ちるのが早すぎるだろ。


最初から彼女の嘘を見破った子息たちは全く相手にしていないそうだ。
それが普通だ。

影の報告では体の関係がある令息はすでに8人いる。
すべての男に初めてを装っているそうだ。

時間をずらし1日に2人の相手をすることもあるそうだ。

まるで娼婦のようだ。



ゲームの表向きのヒロインは天真爛漫、純真無垢の設定だそうだが、裏では無実のエリーを悪役令嬢に仕立て陥れる底意地の腐った女だ。

『彼女はバカ過ぎて面白いね。エリザベート嬢の代わりをアルマ・セルティ公爵令嬢を悪役令嬢に選んだみたいだよ。この調子なら私が入学するよりも早く色々と処分出来そうだよ』

手紙の向こうでゾルティー殿下の黒い笑顔が見えるようだ。

『兄上がエリザベート嬢と友達になれたとの報告もありがとう。ヒロインを退場させたら君たちも兄上と一緒に帰っておいで』

そう締め括られていた。


エリーの養子の話しはゾルティー殿下にもしていない。
話すと面倒なことになりそうだから、これは言わないつもりだ。


レイにそこまで話すと帰ってしまうの?と泣きそうな顔で見上げてきた。

「レイの婚約を解消させてからレイを連れて一緒に帰るよ。それまではレイから離れないから安心して。」

レイ、潤んだ大きな目から涙が溢れそうだよ。

「夏の長期休暇には帰るけど、エリーの友人としてレイも一緒に来て欲しい。まだレイは王子の婚約者だけど、僕の両親や祖父母にも紹介したいんだ。僕の最愛の人だと。いいかな?」


アラン!僕の名を呼びながらレイが抱きついてきた。
やっぱり想像した通り腕の中にすっぽりと収まるレイ。

初めて抱きしめたレイは本当に小さい。
そしてすごく柔らかい。
それにほんのりと香る甘い匂い。
力を入れたら壊れそうだ。
どんどん愛しさが増してくる。

レイは僕のものだ。
誰にも触らせない。
奪わせないよ。



~ルフラン殿下視点~


エリーの作った弁当は何を食べても本当に美味しかった。

レイがアランに食べさせている所を見た時は正直羨ましく思った。
俺もエリーに食べさせてもらいたい!

まだ、そう言える程の仲ではないことに気づき落ち込んだ。

なのにエリーは食べてと言ってフォークに刺した唐揚げを俺に向けてきたんだ。
恥ずかしさと、嬉しさが込み上げてきたが、もう二度とないチャンスかもしれないと思った時には口に唐揚げが入っていた。

それからも俺の食事の進み具合を見ながら食べさせてくれる。
調子に乗った俺は口を開けて催促した。
その時のエリーが俺のことを女神の微笑みで見ていたんだ。

昔見たアランの世話をしていたエリーを思い出した。

あの頃アラン限定にしか見せない微笑みが俺にも向けられたことに嬉しさで胸が締め付けられ苦しくなった。

最後には口をナフキンで拭ってくれたのは少し恥ずかしかったがな。

また作ってくれると約束してくれた。

あの美味しいエリーの手料理がまた食べられる。

帰ったらゾルティーに手紙を書こう。

エリーの側にいられて幸せだと伝えたい。
しおりを挟む
感想 317

あなたにおすすめの小説

記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~

Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。 走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。

悪役令嬢に転生したと気付いたら、咄嗟に婚約者の記憶を失くしたフリをしてしまった。

ねーさん
恋愛
 あ、私、悪役令嬢だ。  クリスティナは婚約者であるアレクシス王子に近付くフローラを階段から落とそうとして、誤って自分が落ちてしまう。  気を失ったクリスティナの頭に前世で読んだ小説のストーリーが甦る。自分がその小説の悪役令嬢に転生したと気付いたクリスティナは、目が覚めた時「貴方は誰?」と咄嗟に記憶を失くしたフリをしてしまって──…

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464

私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?

きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。 しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……

「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。

海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。 アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。 しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。 「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」 聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。 ※本編は全7話で完結します。 ※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。

全てを捨てて消え去ろうとしたのですが…なぜか殿下に執着されています

Karamimi
恋愛
侯爵令嬢のセーラは、1人崖から海を見つめていた。大好きだった父は、2ヶ月前に事故死。愛していた婚約者、ワイアームは、公爵令嬢のレイリスに夢中。 さらにレイリスに酷い事をしたという噂まで流されたセーラは、貴族世界で完全に孤立していた。独りぼっちになってしまった彼女は、絶望の中海を見つめる。 “私さえいなくなれば、皆幸せになれる” そう強く思ったセーラは、子供の頃から大好きだった歌を口ずさみながら、海に身を投げたのだった。 一方、婚約者でもあるワイアームもまた、一人孤独な戦いをしていた。それもこれも、愛するセーラを守るため。 そんなワイアームの気持ちなど全く知らないセーラは… 龍の血を受け継いだワイアームと、海神の娘の血を受け継いだセーラの恋の物語です。 ご都合主義全開、ファンタジー要素が強め?な作品です。 よろしくお願いいたします。 ※カクヨム、小説家になろうでも同時配信しています。

『お前の顔は見飽きた!』内心ガッツポーズで辺境へ

夏乃みのり
恋愛
「リーナ・フォン・アトラス! 貴様との婚約を破棄する!」 華やかな王宮の夜会で、第一王子ジュリアンに突きつけられた非情な宣告。冤罪を被せられ、冷酷な悪役令嬢として追放を言い渡されたリーナだったが、彼女の内心は……「やったーーー! これでやっとトレーニングに専念できるわ!」と歓喜に震えていた!

婚約破棄で、おひとり様になれるはずだったのに!?

パリパリかぷちーの
恋愛
主人公ルシアン・ヴァイオレットは、「悪役令嬢」として振る舞う孤独愛好家の公爵令嬢。念願だった第一王子アランとの婚約破棄を言い渡されると、内心では歓喜し、大都会の喧騒から逃れて森の奥の廃墟同然の別荘へと引きこもる。ルシアンの目的は、誰にも邪魔されない至高の静寂ライフを満喫することだった。 しかし、彼女の理想郷にはすでに先客がいた。それは、無口で無愛想だがハイスペックな謎の男、キース。実は彼は、王国の裏社会を統べる『影の英雄』と呼ばれる辺境伯であり、ルシアンの孤高の姿に心奪われた重度の隠れファンだった。

処理中です...