【完結】悪役令嬢はゲームに巻き込まれない為に攻略対象者の弟を連れて隣国に逃げます

kana

文字の大きさ
40 / 122

40

しおりを挟む
ウォルシュ侯爵家で過ごす楽しい日々も終わり、これから5日をかけてアトラニア王国に戻るのだ。

今回はレイもいたから、何時もよりも賑やかだったもんね。特にレイを気に入ったお祖母様は寂しそうにしている。

「お祖母様、次の休暇もレイと一緒に帰ってきますよ」

アランがそっとお祖母様を抱きしめると横からレイも「また会いに来ます。それに3年後には嫁いできますのでよろしくお願いしますね」

もうレイったら可愛いこと言うんだから!

「そうよね!レイちゃんがお嫁に来るのよね。じゃあそれまでにレイちゃんの喜ぶプランをお爺様と考えておくわね」

お祖母様・・・まあお祖母様の笑顔が見れたからいいか。

「お爺様もそれまで元気でお過ごし下さい」

私もお爺様に抱きつく。

「エリー、ちゃんとアランとレイちゃんの言うことを聞くんだぞ」

ん?増えてる・・・

「「お任せ下さい。お爺様」」

なんで2人とも揃って返事しているの?

私、2人のお姉ちゃんだよ?

納得いかないまま、馬車に乗り込んだ。

目の前にはイチャつくアランとレイ。

普通に私とも話してくれるわよ?

ただ2人の距離が近過ぎて、どこを見て話せばいいのか分からないのよ!

そうそう、アランとレイの婚約はうちの両親が夏季休暇が終わる頃に、ビジョップ侯爵家にご挨拶に伺って婚約を結ぶのですって。

休暇明けには2人は婚約者になっているのね。
ずっと2人を見てきたから感慨深いものがあるわね。

学院も騒ぎになるでしょうね。
婚約破棄になったばかりのレイと、たぶん今の学院で一番人気のアランの婚約だもんね。

隙あらばと狙っていた子息子女も残念がるでしょうね。

退学になったミーシャ嬢のことも気になるわね。
なんで私を陥れようとしたのか分からないもの。
私は王子の婚約者でもないし、話したこともなかったのにね。
もし会うことがあれば聞いてみたいわ。





~レックス視点~



父上に『もうウォルシュ嬢のことは諦めろ。我が公爵家といえどもウォルシュ侯爵家に無理強いする事は出来ないんだ。あの家を怒らせるな』

確かにウォルシュ侯爵家はウインティア王国だけでなく、海外でも成功を収めている大商会を経営しながら、領地も潤わせている。
国に収めている税金だけでも、その辺の貴族の収入よりも遥かに多いだろう。
それでも『怒らせるな』なんて訳が分からない。


だからといって、彼女を諦めるなんて出来ない。

あのキラキラと輝く薄い紫がかった銀髪、神秘的な紫色の目、冷たく見える顔は真っ白でピンク色をした小さめの口、女性の中では長身で長い手足、背筋の伸びた姿勢。
気品漂う佇まい。
どこを取っても完璧な女性だ。

そして、彼女のあの微笑み。
見惚れない男はいないだろう。

彼女は誰よりも美しい。


お茶会でも彼女に見惚れていたのは子息達だけではなかった。
常に自意識過剰の令嬢達ですら彼女に見惚れていた。
それだけ視線を集めていたのに彼女は気付いていないのか、それとも慣れているのかは分からないが、会場にいる誰よりも注目を集めていた。

誰の目にも彼女を映したくない。

彼女を攫って閉じ込めてしまおうか・・・
そして、私だけのものに・・・

ダメだ!それは犯罪だ。
こんな事考えたこともなかったのに、彼女に会ってから私の思考はおかしくなってしまったのだろうか?




もう彼女のことしか考えられない。






~ガルザーク視点~


何度訪問してもウォルシュ嬢に会わせて貰えない。

ウォルシュ侯爵家から出てくる使用人に彼女のことを聞いても教えてくれない。
金を渡そうとしても受け取らず口を割ろうともしなかった。

他の貴族の使用人の中には金さえ払えば何でも話す使用人はいくらでもいるのに、ウォルシュ侯爵家の使用人にそんな主人を裏切るようなことをする人間はいないようだ。


俺は将来、父の跡を継いでタイロン伯爵家の当主になるが、騎士団団長にもなる予定だ。
その為に鍛錬だけは怠ったことはない。

そんな俺に色目を使い、媚びてくる令嬢もたくさんいる。
貴族の令嬢に手を出して、面倒なことになるのが嫌で興味はあったがキス程度で我慢していた。

そんな時に『マイ』が現れたんだ。

黒髪に黒い目、小柄だが胸が大きくまずそこが気に入った。
顔もまぁ可愛いほうだろう。

最初は『マイ』から声をかけられた。
記憶喪失で不安だと言って俺の袖を掴んで上目遣いで見てきた。
俺だって教育は受けている。
上目遣いを使ってくる令嬢も何人も見てきた。
ただ、記憶喪失は確かに不安だろうなと思って相手をしてやるうちに、身体の関係を持つようになった。

最初は初めてなのと言っていたが、その最中に「こんなに大きいのも激しいのも初めて~」と乱れる『マイ』を見て幻滅した。
何が初めてだと?
だったら俺の欲求を思う存分ぶつけさせてもらおうと、その日から何度も『マイ』を抱いた。
どんなに乱暴に抱いても『マイ』は喜ぶ。
あいつは激しいのが好きみたいだ。

それに『マイ』を抱いた子息も俺が知っているだけで10人は軽く超えている。
ほとんどの男に初めてだと言っているようだが、抱いた男たちの内何人かには嘘だとバレている。
バカな『マイ』はバレているとも知らず演技を続けているようだ。

今では誰とでも寝る『マイ』の噂が子息たちの間で広まり、経験を済ませたい男や、欲求不満の男だけが『マイ』に侍っている。

初めてだと信じている素直な奴は『マイ』が他の男と寝ていることに気付いていないバカか本気で『マイ』のことが好きな男のようだ。


『マイ』のような女を抱いても身体は満足出来ても心はいつも虚しかった。


ウォルシュ嬢のような気高く、気品に溢れる美しい女性を手に入れたい。

あの微笑みを俺だけに向けて欲しい。
彼女のことを考えると、心臓が煩くなる。

それからも俺は学園が始まるまで毎日ウォルシュ侯爵家に訪問したが結局会わせてもらえることはなかった。
しおりを挟む
感想 316

あなたにおすすめの小説

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464

悪役令嬢に転生したと気付いたら、咄嗟に婚約者の記憶を失くしたフリをしてしまった。

ねーさん
恋愛
 あ、私、悪役令嬢だ。  クリスティナは婚約者であるアレクシス王子に近付くフローラを階段から落とそうとして、誤って自分が落ちてしまう。  気を失ったクリスティナの頭に前世で読んだ小説のストーリーが甦る。自分がその小説の悪役令嬢に転生したと気付いたクリスティナは、目が覚めた時「貴方は誰?」と咄嗟に記憶を失くしたフリをしてしまって──…

いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!

夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。 しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。 ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。 愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。 いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。 一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ! 世界観はゆるいです! カクヨム様にも投稿しております。 ※10万文字を超えたので長編に変更しました。

【完結】財務大臣が『経済の話だけ』と毎日訪ねてきます。婚約破棄後、前世の経営知識で辺境を改革したら、こんな溺愛が始まりました

チャビューヘ
恋愛
三度目の婚約破棄で、ようやく自由を手に入れた。 王太子から「冷酷で心がない」と糾弾され、大広間で婚約を破棄されたエリナ。しかし彼女は泣かない。なぜなら、これは三度目のループだから。前世は過労死した41歳の経営コンサル。一周目は泣き崩れ、二周目は慌てふためいた。でも三周目の今回は違う。「ありがとうございます、殿下。これで自由になれます」──優雅に微笑み、誰も予想しない行動に出る。 エリナが選んだのは、誰も欲しがらない辺境の荒れ地。人口わずか4500人、干ばつで荒廃した最悪の土地を、金貨100枚で買い取った。貴族たちは嘲笑う。「追放された令嬢が、荒れ地で野垂れ死にするだけだ」と。 だが、彼らは知らない。エリナが前世で培った、経営コンサルタントとしての圧倒的な知識を。三圃式農業、ブランド戦略、人材採用術、物流システム──現代日本の経営ノウハウを、中世ファンタジー世界で全力展開。わずか半年で領地は緑に変わり、住民たちは希望を取り戻す。一年後には人口は倍増、財政は奇跡の黒字化。「辺境の奇跡」として王国中で噂になり始めた。 そして現れたのが、王国一の冷徹さで知られる財務大臣、カイル・ヴェルナー。氷のような視線、容赦ない数字の追及。貴族たちが震え上がる彼が、なぜか月に一度の「定期視察」を提案してくる。そして月一が週一になり、やがて──「経済政策の話がしたいだけです」という言い訳とともに、毎日のように訪ねてくるようになった。 夜遅くまで経済理論を語り合い、気づけば星空の下で二人きり。「あなたは、何者なんだ」と問う彼の瞳には、もはや氷の冷たさはない。部下たちは囁く。「閣下、またフェルゼン領ですか」。本人は「重要案件だ」と言い張るが、その頬は微かに赤い。 一方、エリナを捨てた元婚約者の王太子リオンは、彼女の成功を知って後悔に苛まれる。「俺は…取り返しのつかないことを」。かつてエリナを馬鹿にした貴族たちも掌を返し、継母は「戻ってきて」と懇願する。だがエリナは冷静に微笑むだけ。「もう、過去のことです」。ざまあみろ、ではなく──もっと前を向いている。 知的で戦略的な領地経営。冷徹な財務大臣の不器用な溺愛。そして、自分を捨てた者たちへの圧倒的な「ざまぁ」。三周目だからこそ完璧に描ける、逆転と成功の物語。 経済政策で国を変え、本物の愛を見つける──これは、消去法で選ばれただけの婚約者が、自らの知恵と努力で勝ち取った、最高の人生逆転ストーリー。

転生先がヒロインに恋する悪役令息のモブ婚約者だったので、推しの為に身を引こうと思います

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【だって、私はただのモブですから】 10歳になったある日のこと。「婚約者」として現れた少年を見て思い出した。彼はヒロインに恋するも報われない悪役令息で、私の推しだった。そして私は名も無いモブ婚約者。ゲームのストーリー通りに進めば、彼と共に私も破滅まっしぐら。それを防ぐにはヒロインと彼が結ばれるしか無い。そこで私はゲームの知識を利用して、彼とヒロインとの仲を取り持つことにした―― ※他サイトでも投稿中

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

前世の記憶を取り戻した元クズ令嬢は毎日が楽しくてたまりません

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のソフィーナは、非常に我が儘で傲慢で、どしうようもないクズ令嬢だった。そんなソフィーナだったが、事故の影響で前世の記憶をとり戻す。 前世では体が弱く、やりたい事も何もできずに短い生涯を終えた彼女は、過去の自分の行いを恥、真面目に生きるとともに前世でできなかったと事を目いっぱい楽しもうと、新たな人生を歩み始めた。 外を出て美味しい空気を吸う、綺麗な花々を見る、些細な事でも幸せを感じるソフィーナは、険悪だった兄との関係もあっという間に改善させた。 もちろん、本人にはそんな自覚はない。ただ、今までの行いを詫びただけだ。そう、なぜか彼女には、人を魅了させる力を持っていたのだ。 そんな中、この国の王太子でもあるファラオ殿下の15歳のお誕生日パーティに参加する事になったソフィーナは… どうしようもないクズだった令嬢が、前世の記憶を取り戻し、次々と周りを虜にしながら本当の幸せを掴むまでのお話しです。 カクヨムでも同時連載してます。 よろしくお願いします。

麗しの王子殿下は今日も私を睨みつける。

スズキアカネ
恋愛
「王子殿下の運命の相手を占いで決めるそうだから、レオーネ、あなたが選ばれるかもしれないわよ」 伯母の一声で連れて行かれた王宮広場にはたくさんの若い女の子たちで溢れかえっていた。 そしてバルコニーに立つのは麗しい王子様。 ──あの、王子様……何故睨むんですか? 人違いに決まってるからそんなに怒らないでよぉ! ◇◆◇ 無断転載・転用禁止。 Do not repost.

処理中です...