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ウインティア王国編
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~アラン視点~
『アランは国の中枢で働くのが向いてるかもしれないね』
『まだ12歳だ。今からなら何にでもなれる。進むべき道は1本じゃないんだよ』
随分前に伯父上から言われた時は難しくても何となく意味が分かったような気がしていたが、本当にそれを理解したのはアトラニア王国から帰ってきてから周りに心を許せる友に囲まれるようになってからだ。
それまでの僕は、エリーとレイを守ることに必死で、上手く上辺だけを取り繕って周囲の人と無難に付き合いながらも他人など信用していなかったと思う。
レイからゲームの全貌を聞いてルフラン殿下だけはエリーを一緒に守ってくれると全幅の信頼を寄せる事ができていたけどね。
僕はウォルシュ侯爵家も、他国でも成功している両親が経営する商会も引き継ぐつもりだった。
僕ならさらに発展させる自信もあったからね。
だが、エリーとレイが攫われた時も、エリーを陥れようとする令嬢が現れた時も、助言をくれて、協力してくれたのは今の仲間たちだった。
きっと僕一人なら守りきれなかった。
ルフラン殿下の執務室に集まり、ルフラン殿下の執務の手伝いも、問題が上がれば対処法を考えるのも、他愛の無い話に花を咲かせるのも楽しかったんだよね。
エリーのことを除けば、常に冷静沈着なルフラン殿下。
前までは彼もまた一人で何とかしようと陰で動こうとするタイプだった。
そんな彼には僕のような狡賢い人間が必要だと思ったんだよね。
それに、ガルの秘めた思いを知ったら一緒にルフラン殿下を支えようと決意できた。
もちろんレイにも家族にも相談したんだ。
僕が側近になることを選ぶと分かっていたと言って笑って許してくれた。
両親だってまだ40歳そこそこだから、商会のことは心配するなと、僕とレイに子供が出来たらその子に任せてもいいし、従業員の教育は完璧だから後のことは気にするなと言ってくれた。
だからルフラン殿下から側近の話がきた時には快く引き受けたよ。ガルと一緒にね。
ガルの今回自分の命まで犠牲にしてセルティ嬢に手を掛けようとした行動は、軽はずみだと叱責しながらも、そんなガルだからこそ信頼できる。
エリーがアトラニア王国に逃げてくれたから最愛のレイと出会えた。
エリーが覚悟を決めてルフラン殿下を選んだからこそ、今の仲間と出会えた。
そして僕の進むべき道も決まった。
すべてエリーに繋がる。
エリーが僕の姉として転生してくれて良かった。
もう、ゲームは終わったんだ。
これからの僕は、エリーとレイのことだけでなく、この国と民を守るルフラン殿下を支えながら、次世代を担う人材を育てていくよ。
僕はやっと伯父上の言葉の意味が分かったよ。
~ガルザーク視点~
家に帰ってから父上の書斎に呼ばれた。
何が言いたいのかは分かっていたが、あの時は本気でセルティ嬢を殺さなければならないと思ったんだ。
あんな危険な人間を生かせておくことは出来ないと・・・
武器も持たず、無抵抗なセルティ嬢だったが今やらないと絶対にアイツは諦めない、次は別の方法を考えるとまで言ったんだ。
セルティ嬢を手に掛けることに躊躇はなかった。
ただ、人を殺した俺はもうここには居られない。
もう居心地の良いこの場所に戻れないことが悲しかったんだ。
それでも大切な仲間を守りたかった。
常に護身用として持っていた短剣でセルティ嬢に斬りかかった瞬間『そこまでだ!』陛下の威厳のある声に動きが止まった。
剣を下ろしたと同時にルフラン殿下から殴られた。
勝手な行動をした俺に次々に優しい言葉がかけられ止めどなく涙が溢れてきた。
まだ俺はこの大切な仲間と一緒にいられる嬉しさと安心感と、そんな彼らを裏切る行為だったと、また俺は自分本位で動いてしまったんだな。
もう軽はずみなことはしない。
もっと経験を積んで父上のような立派な側近に必ずなる。
そうだ、俺は盾になるだけじゃなく支えにもならないとダメなんだ。
部屋からセルティ嬢に続いて陛下や父上も退室すると、突然の痛みと目の前がチカチカと火花が散った。
見上げるとエリー嬢が泣きながら拳を震わせて『ガル!次に命を粗末にするような事をしたら許さないからね!貴方は私達ではなくこの国に忠誠を誓いなさい!そして誰よりも長生きしなさい!分かったわね!』
これがルフラン殿下が痛いと言っていた拳骨か・・・確かに痛いがエリー嬢の気持ちが心に伝わってきた。
長生きって・・・アランのツッコミに笑ってしまったが、次期王妃のエリー嬢に言われたら誓うしかないだろう?
俺はやっと守る意味を知った。
ノックをして書斎に入ると、俺の顔を見た父上が「いい顔をするようになったな」と言ってくれたが、それは殴られ部屋の隅までぶっ飛ばされた後だった。
「大切な物が何か分かったなら、もう期待を裏切るなよ」
そう言って俺の頭をぐしゃぐしゃに撫でる父上。
もう子供じゃないと手を払いたいのを我慢して見上げると何も言えなくなった。
調子に乗っていた時期も俺を見放さず信じてくれた父上が笑っていたんだ。
もう俺は父上の期待も裏切らないよ。
『アランは国の中枢で働くのが向いてるかもしれないね』
『まだ12歳だ。今からなら何にでもなれる。進むべき道は1本じゃないんだよ』
随分前に伯父上から言われた時は難しくても何となく意味が分かったような気がしていたが、本当にそれを理解したのはアトラニア王国から帰ってきてから周りに心を許せる友に囲まれるようになってからだ。
それまでの僕は、エリーとレイを守ることに必死で、上手く上辺だけを取り繕って周囲の人と無難に付き合いながらも他人など信用していなかったと思う。
レイからゲームの全貌を聞いてルフラン殿下だけはエリーを一緒に守ってくれると全幅の信頼を寄せる事ができていたけどね。
僕はウォルシュ侯爵家も、他国でも成功している両親が経営する商会も引き継ぐつもりだった。
僕ならさらに発展させる自信もあったからね。
だが、エリーとレイが攫われた時も、エリーを陥れようとする令嬢が現れた時も、助言をくれて、協力してくれたのは今の仲間たちだった。
きっと僕一人なら守りきれなかった。
ルフラン殿下の執務室に集まり、ルフラン殿下の執務の手伝いも、問題が上がれば対処法を考えるのも、他愛の無い話に花を咲かせるのも楽しかったんだよね。
エリーのことを除けば、常に冷静沈着なルフラン殿下。
前までは彼もまた一人で何とかしようと陰で動こうとするタイプだった。
そんな彼には僕のような狡賢い人間が必要だと思ったんだよね。
それに、ガルの秘めた思いを知ったら一緒にルフラン殿下を支えようと決意できた。
もちろんレイにも家族にも相談したんだ。
僕が側近になることを選ぶと分かっていたと言って笑って許してくれた。
両親だってまだ40歳そこそこだから、商会のことは心配するなと、僕とレイに子供が出来たらその子に任せてもいいし、従業員の教育は完璧だから後のことは気にするなと言ってくれた。
だからルフラン殿下から側近の話がきた時には快く引き受けたよ。ガルと一緒にね。
ガルの今回自分の命まで犠牲にしてセルティ嬢に手を掛けようとした行動は、軽はずみだと叱責しながらも、そんなガルだからこそ信頼できる。
エリーがアトラニア王国に逃げてくれたから最愛のレイと出会えた。
エリーが覚悟を決めてルフラン殿下を選んだからこそ、今の仲間と出会えた。
そして僕の進むべき道も決まった。
すべてエリーに繋がる。
エリーが僕の姉として転生してくれて良かった。
もう、ゲームは終わったんだ。
これからの僕は、エリーとレイのことだけでなく、この国と民を守るルフラン殿下を支えながら、次世代を担う人材を育てていくよ。
僕はやっと伯父上の言葉の意味が分かったよ。
~ガルザーク視点~
家に帰ってから父上の書斎に呼ばれた。
何が言いたいのかは分かっていたが、あの時は本気でセルティ嬢を殺さなければならないと思ったんだ。
あんな危険な人間を生かせておくことは出来ないと・・・
武器も持たず、無抵抗なセルティ嬢だったが今やらないと絶対にアイツは諦めない、次は別の方法を考えるとまで言ったんだ。
セルティ嬢を手に掛けることに躊躇はなかった。
ただ、人を殺した俺はもうここには居られない。
もう居心地の良いこの場所に戻れないことが悲しかったんだ。
それでも大切な仲間を守りたかった。
常に護身用として持っていた短剣でセルティ嬢に斬りかかった瞬間『そこまでだ!』陛下の威厳のある声に動きが止まった。
剣を下ろしたと同時にルフラン殿下から殴られた。
勝手な行動をした俺に次々に優しい言葉がかけられ止めどなく涙が溢れてきた。
まだ俺はこの大切な仲間と一緒にいられる嬉しさと安心感と、そんな彼らを裏切る行為だったと、また俺は自分本位で動いてしまったんだな。
もう軽はずみなことはしない。
もっと経験を積んで父上のような立派な側近に必ずなる。
そうだ、俺は盾になるだけじゃなく支えにもならないとダメなんだ。
部屋からセルティ嬢に続いて陛下や父上も退室すると、突然の痛みと目の前がチカチカと火花が散った。
見上げるとエリー嬢が泣きながら拳を震わせて『ガル!次に命を粗末にするような事をしたら許さないからね!貴方は私達ではなくこの国に忠誠を誓いなさい!そして誰よりも長生きしなさい!分かったわね!』
これがルフラン殿下が痛いと言っていた拳骨か・・・確かに痛いがエリー嬢の気持ちが心に伝わってきた。
長生きって・・・アランのツッコミに笑ってしまったが、次期王妃のエリー嬢に言われたら誓うしかないだろう?
俺はやっと守る意味を知った。
ノックをして書斎に入ると、俺の顔を見た父上が「いい顔をするようになったな」と言ってくれたが、それは殴られ部屋の隅までぶっ飛ばされた後だった。
「大切な物が何か分かったなら、もう期待を裏切るなよ」
そう言って俺の頭をぐしゃぐしゃに撫でる父上。
もう子供じゃないと手を払いたいのを我慢して見上げると何も言えなくなった。
調子に乗っていた時期も俺を見放さず信じてくれた父上が笑っていたんだ。
もう俺は父上の期待も裏切らないよ。
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