【完結】前世の記憶があっても役に立たないんですが！

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ちょっと待って！ちょっと待って！

なんなの！

わたくしの今の状況って階段から落ちているところよ？
何でこんな時に前世を思い出すの？
思い出した途端に死ぬの？
それはイヤなんですけど！

冗談じゃないわ！


階段の上にはニヤリと笑っている令嬢がいる。
わたくしを押したのは彼女だ。
彼女は何かとわたくしに言いがかりをつけてくる令嬢だ。

何笑ってんのよ！

てか、すっごいスローモーションなんですけど！
これ受け身取れるんじゃない？

まだスローモーションよ
痛いのも死ぬのもイヤだし、だってまだ空中よ、いけるよね？
てか、体捻ったら手摺にも掴まれるんじゃない？
やるよ？やっちゃうよ？



マジ？
なんか余裕で手摺に掴まれたんだけど・・・
まだスローモーションだし！
彼女もニヤリ顔のままだし！

いつ動き出すの？

それとも夢の中なの？

わからないんですけど！！


痛った！スゴい衝撃が手首に走った。
突然動き出したと思ったら、重力に引っ張られる！手を離したら落ちる！離したら死ぬ！よくても大怪我！
イタい、イタい、イタい、これは泣く！
涙が滲む！


ドンと背中に何かがあたった。
やっと止まった。


後ろから「何やってんだ？アリシア」
止めてくれたのはいつもキツいことばかり言ってくる幼馴染のカイト。
いや顔見知りでいいわ。


「もう、アリシア様。階段で躓くなんて落ち着きがなさ過ぎますわ。ね、カイト様」

はぁ？突き飛ばした本人が言うな！
しかも、見下してるよね？
彼女はハウゼン侯爵家のナタリー・ハウゼン侯爵令嬢。
わたくしはアリシア、アリシア・ウエルス公爵令嬢。
お茶会で顔を合わせたことはあるが挨拶だけしかしたことない。と記憶している。

その彼女が学園に入ってから何かにつけてイチャモンつけてくるようになった。
今までのわたくしなら、「気をつけますわ」で終わらせていただろう。


しか～し！
今のわたくしは前世を思い出した。
なんでか前のわたくしは聞き流して微笑みを浮かべているだけだったわね。

だから、舐められたのね？そうよね？
わかったわ、前世を思い出したからには今までのようにはならないわよ？

「おい！気をつけろよ！」
確かに助けられたけど！言・い・方！
何で怒った言い方してるのよ！ムカつく！
キッと睨んでやるとカイトが怯んだ。


さて、反撃開始だ！


「まあ、わたくしを突き飛ばした貴方が何をおっしゃるの？これって傷害罪かしら？それとも殺人未遂になるのかしら？怖いわ」

「「えっ」」

カイトは目を見開いてわたくしを見る。

彼女の方もまさかわたくしが言い返すなんて思ってもいなかったのでしょうね。
だって、焦ってオロオロしてるもの。

「え、ち、違いますわ、わたくしそんな恐ろしいことなんて」

「誰もいなかったから突き飛ばしたのでしょう？だから証拠はありませんものね？」

「そ、そんなことやっていませんわ！カイト様信じてくれますわよね？」

「え？あ～目撃した訳では無いからなんとも言えないなが・・・アリシアが嘘を言っているとも思えない・・かな」

「そんな・・カイト様わたくしは」
ワザとナタリー様の言葉に被せるように「あら！わたくしが嘘をついているとでもおっしゃるの？」

いつもの微笑みを浮かべ「次はございませんわよ」

と、ひと睨みさせてから背中を向けた。

だってこれ以上は面倒臭いもの。証拠も目撃者もいないのだから。
今の会話はちらほら集まってた人には聞かせられたから、これで十分でしょ。


さて、早く帰っていろいろ確認しなきゃね。