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~ビアンカ・オルト男爵令嬢視点~
ディオリス殿下と関係を持ってから、彼の部屋に泊まることもしばしば。
彼もわたくしに誘われれば抗えないようだ。
突然の外泊も連絡さえ入れておけば、お義父様もネイト兄様も何も言わない。
それどころかお義父様はディオリス殿下との関係を応援してくれている。
お義父様はわたくしを王家に嫁がせたいと思っているのかもしれない。
ディオリス殿下と一緒なら王宮にも出入り自由。
何度目かの訪問時、やっと念願のレグルス様に会えた。
会えたというよりも、見かけたが正しいけれど。
二度目に見かけた時、レグルス様の隣にいた男性もレグルス様に引けを取らない見目麗しい方だった。
「あの方は?」
「ああ、ソルトレグス帝国のジルグレート皇太子殿下だよ」
!!!
帝国の皇太子!!
この国よりも何倍も大きくて力のある国。
お義父様はわたくしなら、王子妃にもなれるかもしれないと言っていたけれど、それはディオリス殿下が相手ならってこと・・・
わたくしにとってディオリス殿下は特別に好きな相手ではない。身体だけの関係で困った時には利用するつもり。
彼はただの第二王子で、わたくしが王子妃になれたとしてもアルスト王太子殿下がいる限り王妃になることは出来ない・・・。
別に王妃になりたいわけでもない。
お義父様の養女になっても、侯爵令嬢のあの子よりも身分は下。
でも皇太子が相手なら?
今のわたくしなら、ジルグレート皇太子殿下の目に留まることも難しくない・・・と思う。
伯爵令嬢なら皇族に嫁ぐことも出来るはず。
でも、皇太子だと既に婚約者も決まっているわよね?
そうだとしても何れ皇帝になる方から寵愛されれば・・・たとえ皇太子后になれず第二后だとしても、高価な調度品、豪奢なドレスに宝石の数々に囲まれ贅沢な暮らしが出来るはず。
そして何より皇帝を除く全ての人がわたくしに傅き、敬われ、いま以上に羨望される。
何とか彼に気に入られる方法は・・・
それにはまずディオリス殿下に紹介されなければ。
お母様の仕出かした事を考えれば、もうレグルス様に愛される可能性は無いに等しいのかもしれない。
けれど、あの夢を見た後では諦めたくないと気持ちが強く残っている。
本音は諦めきれないレグルス様と愛し愛される関係になれるのならば他には何もいらない。
本当に結ばれたいのはレグルス様。
それが無理なら皇太子でもいいわ。
運がいいのか次の日にチャンスが訪れた。
いつ帰国するか分からない皇太子と出会う機会を逃したくないわたくしは今日もディオリス殿下を誘って彼の部屋に向かっていたら、前からレグルス様と皇太子が話しながら歩いてきた。
「あの方達とお茶をすることって出来ますか?」
「う~んどうだろ?時間があれば付き合ってくれるかもしれないけど・・・挨拶するついでに声を掛けてみるか」
ああ、やはりわたくしはレグルス様が好きだわ。
あの日、真相を聞いてお母様のした事でわたくしまでレグルス様に嫌われてしまったかと思っていたけれど、それは杞憂で終わった。
高位の貴族らしくカーテシーで挨拶をしたわ。
無表情の皇太子とレグルス様の眉間に一瞬だけ皺が寄った気がしたけれど、『久しぶりだね。元気にしていたかい?』わたくしを気遣う優しい言葉をレグルス様は掛けてくれた。
やはりレグルス様は素敵な人。
お母様の娘であるわたくしを、個人として見てくれる。
でも・・・皇太子は分からないわ。
表情が少しも変わらないもの。
ディオリス殿下の誘いを受けてくれてお茶をご一緒することも出来た。
タイミングが合うのか、それとも・・・わたくしを気に入ってくれたのか、その日からレグルス様はわたくしが王宮を訪ねる度にお茶に誘ってくれた。
『オルト嬢の付けている香水いい匂いだね。肌に直接付けているの?』
三度目のお茶の席でレグルス様に褒めて貰えた。
これはお義父様がプレゼントしてくれた香水で、わたくしも気に入っている。
この香水を付けだしてから、すべてが上手くいく様になった気がするもの。
『は、はい。手首と首にあと・・・胸にも・・・』
こんな言い方をすればレグルス様は想像するでしょう?
『店を紹介してくれないかな?私も君と同じ物が欲しいな』
もちろんわたくしの返事は決まっている。
だって次の約束が出来るのですもの。
それに、わたくしと同じ香りをレグルス様と纏えるなんて・・・まるでベットに誘われているようだわ。
『分かりましたわ。明日持ってきます。わたくしからプレゼントさせて頂きますわ』
代金を支払うと言うレグルス様に丁寧に断りを入れて次の約束を手に入れた。
それにしても皇太子は話し掛けても相槌を打つだけで無表情は変わらない。
でも、わたくしを気に入っていると思う。
だってそうでないなら毎回お茶の席に参加しないわよね。
そして本来ならまだ男爵令嬢であるわたくしには参加資格のない夜会に皇太子の口添えで招待された。
やはり勘違いではない・・・気に入られてるわね。
愛するレグルス様か、地位も権力もある皇太子か・・・悩むわね。
今回の夜会には気に入らないあの子も参加するでしょう。
なら、この機会にあの子を不幸のどん底に落とす。
頭の中では次々にあの子を貶める作戦が浮かぶ。
ふふふっ、使える男は一人や二人ではない。
夜会が楽しみだわ。
ディオリス殿下と関係を持ってから、彼の部屋に泊まることもしばしば。
彼もわたくしに誘われれば抗えないようだ。
突然の外泊も連絡さえ入れておけば、お義父様もネイト兄様も何も言わない。
それどころかお義父様はディオリス殿下との関係を応援してくれている。
お義父様はわたくしを王家に嫁がせたいと思っているのかもしれない。
ディオリス殿下と一緒なら王宮にも出入り自由。
何度目かの訪問時、やっと念願のレグルス様に会えた。
会えたというよりも、見かけたが正しいけれど。
二度目に見かけた時、レグルス様の隣にいた男性もレグルス様に引けを取らない見目麗しい方だった。
「あの方は?」
「ああ、ソルトレグス帝国のジルグレート皇太子殿下だよ」
!!!
帝国の皇太子!!
この国よりも何倍も大きくて力のある国。
お義父様はわたくしなら、王子妃にもなれるかもしれないと言っていたけれど、それはディオリス殿下が相手ならってこと・・・
わたくしにとってディオリス殿下は特別に好きな相手ではない。身体だけの関係で困った時には利用するつもり。
彼はただの第二王子で、わたくしが王子妃になれたとしてもアルスト王太子殿下がいる限り王妃になることは出来ない・・・。
別に王妃になりたいわけでもない。
お義父様の養女になっても、侯爵令嬢のあの子よりも身分は下。
でも皇太子が相手なら?
今のわたくしなら、ジルグレート皇太子殿下の目に留まることも難しくない・・・と思う。
伯爵令嬢なら皇族に嫁ぐことも出来るはず。
でも、皇太子だと既に婚約者も決まっているわよね?
そうだとしても何れ皇帝になる方から寵愛されれば・・・たとえ皇太子后になれず第二后だとしても、高価な調度品、豪奢なドレスに宝石の数々に囲まれ贅沢な暮らしが出来るはず。
そして何より皇帝を除く全ての人がわたくしに傅き、敬われ、いま以上に羨望される。
何とか彼に気に入られる方法は・・・
それにはまずディオリス殿下に紹介されなければ。
お母様の仕出かした事を考えれば、もうレグルス様に愛される可能性は無いに等しいのかもしれない。
けれど、あの夢を見た後では諦めたくないと気持ちが強く残っている。
本音は諦めきれないレグルス様と愛し愛される関係になれるのならば他には何もいらない。
本当に結ばれたいのはレグルス様。
それが無理なら皇太子でもいいわ。
運がいいのか次の日にチャンスが訪れた。
いつ帰国するか分からない皇太子と出会う機会を逃したくないわたくしは今日もディオリス殿下を誘って彼の部屋に向かっていたら、前からレグルス様と皇太子が話しながら歩いてきた。
「あの方達とお茶をすることって出来ますか?」
「う~んどうだろ?時間があれば付き合ってくれるかもしれないけど・・・挨拶するついでに声を掛けてみるか」
ああ、やはりわたくしはレグルス様が好きだわ。
あの日、真相を聞いてお母様のした事でわたくしまでレグルス様に嫌われてしまったかと思っていたけれど、それは杞憂で終わった。
高位の貴族らしくカーテシーで挨拶をしたわ。
無表情の皇太子とレグルス様の眉間に一瞬だけ皺が寄った気がしたけれど、『久しぶりだね。元気にしていたかい?』わたくしを気遣う優しい言葉をレグルス様は掛けてくれた。
やはりレグルス様は素敵な人。
お母様の娘であるわたくしを、個人として見てくれる。
でも・・・皇太子は分からないわ。
表情が少しも変わらないもの。
ディオリス殿下の誘いを受けてくれてお茶をご一緒することも出来た。
タイミングが合うのか、それとも・・・わたくしを気に入ってくれたのか、その日からレグルス様はわたくしが王宮を訪ねる度にお茶に誘ってくれた。
『オルト嬢の付けている香水いい匂いだね。肌に直接付けているの?』
三度目のお茶の席でレグルス様に褒めて貰えた。
これはお義父様がプレゼントしてくれた香水で、わたくしも気に入っている。
この香水を付けだしてから、すべてが上手くいく様になった気がするもの。
『は、はい。手首と首にあと・・・胸にも・・・』
こんな言い方をすればレグルス様は想像するでしょう?
『店を紹介してくれないかな?私も君と同じ物が欲しいな』
もちろんわたくしの返事は決まっている。
だって次の約束が出来るのですもの。
それに、わたくしと同じ香りをレグルス様と纏えるなんて・・・まるでベットに誘われているようだわ。
『分かりましたわ。明日持ってきます。わたくしからプレゼントさせて頂きますわ』
代金を支払うと言うレグルス様に丁寧に断りを入れて次の約束を手に入れた。
それにしても皇太子は話し掛けても相槌を打つだけで無表情は変わらない。
でも、わたくしを気に入っていると思う。
だってそうでないなら毎回お茶の席に参加しないわよね。
そして本来ならまだ男爵令嬢であるわたくしには参加資格のない夜会に皇太子の口添えで招待された。
やはり勘違いではない・・・気に入られてるわね。
愛するレグルス様か、地位も権力もある皇太子か・・・悩むわね。
今回の夜会には気に入らないあの子も参加するでしょう。
なら、この機会にあの子を不幸のどん底に落とす。
頭の中では次々にあの子を貶める作戦が浮かぶ。
ふふふっ、使える男は一人や二人ではない。
夜会が楽しみだわ。
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