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何この状況?
何で私が責められているの?
何もしていないのに?
何事もなく授業も終わり帰ろうとしたところでこれか⋯⋯
「メイジェーン!エルザに何をした!」
エルザには大丈夫か?と、甘い声で囁くのに対して、⋯⋯私には理由も聞かず怒鳴るなんて最低だなリュート殿下。
「何もしていませんが?」
「!!じゃあ何故エルザが怪我をしているんだ!」
「⋯⋯何も無いところで1人で転んだのですわ」
「嘘を言うな!お前が私とエルザの仲を嫉妬して虐めていたことは知っている!」
はあ?嫉妬?
「虐めもしていませんし、お二人の邪魔をするつもりは私にはありません。どうぞ末永くお幸せに⋯⋯としか思いませんわ。それに嫉妬ですか?お言葉ですが嫉妬するほど私はあなたに好意を持ってはおりませんわ」
そう!誰がお前なんかに嫉妬するか!
それより何だかな~
エルザ⋯⋯自分で転んだくせに何で私が責められても何も言わないのだろう?
私が何もしていないことは彼女が一番わかっているだろうに⋯⋯否定ぐらいしなさいよ。
殿下の怒鳴り声にビビっているとか?
それとも私が怖くて殿下の腕の中で震えているの?
「嫉妬していない?虐めてもいないだと?」
「はい」
ああ面倒臭い。
私が何を言っても無駄なんだろうな。
こうやって何もしていなくても悪役令嬢に仕立てあげられるのかもしれない。
でも、やってもいないことで責められるのは違うだろう。
こうなったらはっきり言わせてもらう。
私が言葉を発する直前⋯⋯私を睨む殿下の顔が大きな背中によって遮られた。
「殿下、メイジェーン嬢は何もしていませんよ。ヒューア男爵令嬢が走っていて自分で転んだだけだ。これだけメイジェーン嬢と距離があってどうやって彼女が男爵令嬢に危害を加えるんだ?」
んん?これは助っ人登場か?
確かに私とエルザの間は5メートルは離れている。
「カイザック」
「カイザックくん!」
「誰が俺の名を呼んでいいと言った?」
底冷えするような低い声でヒロインを睨んでいるのは、カイザック・モナー公爵家嫡男⋯⋯彼もまた攻略対象者の1人。なのだが⋯⋯様子がおかしい。
まるで悪役令嬢の私を庇っているように見える。
てか、多分庇ってくれているのだろう。
「え?カ、カイ⋯ザックくん?」
たった今、呼ぶなと言われたのに⋯⋯
ヒロインって設定では天真爛漫とか言うけれど、もしかして⋯⋯ただのバカなの?
男爵令嬢が許可もなく公爵家の子息を『くん』呼びをするなんて⋯⋯
「二度も言わせるな」
「おい!カイザック!そんな言い方はないだろ!エルザが可哀想だろう!」
「俺は親しくもないヒューア男爵令嬢に名前を呼ぶ許可は出していない」
「いつも私たちは一緒に居ただろう?それなのに今さら何故なんだ?」
「俺はリュートの側近予定だったから傍にいただけだ。何年間も婚約者を蔑ろにし、婚約解消の原因を作った女との距離の近さを俺は何度も苦言を呈してきたよな?側近予定の俺の言葉も聞き入れない。俺はリュートの側近を降りるとすでに陛下にも断りを入れ許可も取った⋯⋯俺は今のお前に仕えたいとは思わない」
え?あれ?カイザックって側近になるのやめたの?
王弟の息子であるカイザックとリュート殿下は従兄弟だからか口調も気安いのだろうけれど、こんな言い方は許されるのだろうか?
「カ、カイザック?」
「それと、ヒューア男爵令嬢。なぜお前は指一本触れていないメイジェーン嬢が責められているのに事実を言わなかった?」
そうだよ!
もっと言ってやって!カイザック!
「え、えっと」
「お前は王命で決まった婚約を潰すだけでなく、公爵令嬢であるメイジェーン嬢を嵌めようとしたのか?」
いつの間にか生徒たちが集まっていて、カイザックの言葉にざわざわと騒がしくなっていた。
「え!そ、そんなつもりは⋯⋯」
「お前が1人で転んだところを見ていたのは俺だけじゃないぞ?な?」
カイザックが2人の男子生徒に同意を求めれば彼らも「ヒューア男爵令嬢が1人で転ぶところを見ました」「殿下がイスト公爵令嬢を理不尽に責めているのに、真実を話さないヒューア男爵令嬢には不信感を抱きましたね」と証言した。
だよね!
私もそれが言いたかったんだよ!
見た目通りのか弱いだけのヒロインではないってことだよね。
今回の件で王子のお気に入りとはいえ、エルザの評価は下がるだろう。せっかく男子生徒から人気があったのにね。
「それと、メイジェーン嬢は虐めなどしていないと俺が保証する」
カイザック⋯⋯あなた攻略対象者なのに公平なのね。
いい男じゃん!
まだ何か言っている殿下を置いてカイザックが何気なく背中を押してこの場を去るよう誘導してくれた。
いや~カイザックって紳士だわ~
これはモテるわ。
「助けてくださりありがとうございました」
「困ったことがあればいつでも頼ってくれ」
そう言ってぽんぽんと頭を撫でたカイザックの瞳は先程までのキツいものではなく、優しく穏やかなもので、少しだけドキッとした⋯⋯
何で私が責められているの?
何もしていないのに?
何事もなく授業も終わり帰ろうとしたところでこれか⋯⋯
「メイジェーン!エルザに何をした!」
エルザには大丈夫か?と、甘い声で囁くのに対して、⋯⋯私には理由も聞かず怒鳴るなんて最低だなリュート殿下。
「何もしていませんが?」
「!!じゃあ何故エルザが怪我をしているんだ!」
「⋯⋯何も無いところで1人で転んだのですわ」
「嘘を言うな!お前が私とエルザの仲を嫉妬して虐めていたことは知っている!」
はあ?嫉妬?
「虐めもしていませんし、お二人の邪魔をするつもりは私にはありません。どうぞ末永くお幸せに⋯⋯としか思いませんわ。それに嫉妬ですか?お言葉ですが嫉妬するほど私はあなたに好意を持ってはおりませんわ」
そう!誰がお前なんかに嫉妬するか!
それより何だかな~
エルザ⋯⋯自分で転んだくせに何で私が責められても何も言わないのだろう?
私が何もしていないことは彼女が一番わかっているだろうに⋯⋯否定ぐらいしなさいよ。
殿下の怒鳴り声にビビっているとか?
それとも私が怖くて殿下の腕の中で震えているの?
「嫉妬していない?虐めてもいないだと?」
「はい」
ああ面倒臭い。
私が何を言っても無駄なんだろうな。
こうやって何もしていなくても悪役令嬢に仕立てあげられるのかもしれない。
でも、やってもいないことで責められるのは違うだろう。
こうなったらはっきり言わせてもらう。
私が言葉を発する直前⋯⋯私を睨む殿下の顔が大きな背中によって遮られた。
「殿下、メイジェーン嬢は何もしていませんよ。ヒューア男爵令嬢が走っていて自分で転んだだけだ。これだけメイジェーン嬢と距離があってどうやって彼女が男爵令嬢に危害を加えるんだ?」
んん?これは助っ人登場か?
確かに私とエルザの間は5メートルは離れている。
「カイザック」
「カイザックくん!」
「誰が俺の名を呼んでいいと言った?」
底冷えするような低い声でヒロインを睨んでいるのは、カイザック・モナー公爵家嫡男⋯⋯彼もまた攻略対象者の1人。なのだが⋯⋯様子がおかしい。
まるで悪役令嬢の私を庇っているように見える。
てか、多分庇ってくれているのだろう。
「え?カ、カイ⋯ザックくん?」
たった今、呼ぶなと言われたのに⋯⋯
ヒロインって設定では天真爛漫とか言うけれど、もしかして⋯⋯ただのバカなの?
男爵令嬢が許可もなく公爵家の子息を『くん』呼びをするなんて⋯⋯
「二度も言わせるな」
「おい!カイザック!そんな言い方はないだろ!エルザが可哀想だろう!」
「俺は親しくもないヒューア男爵令嬢に名前を呼ぶ許可は出していない」
「いつも私たちは一緒に居ただろう?それなのに今さら何故なんだ?」
「俺はリュートの側近予定だったから傍にいただけだ。何年間も婚約者を蔑ろにし、婚約解消の原因を作った女との距離の近さを俺は何度も苦言を呈してきたよな?側近予定の俺の言葉も聞き入れない。俺はリュートの側近を降りるとすでに陛下にも断りを入れ許可も取った⋯⋯俺は今のお前に仕えたいとは思わない」
え?あれ?カイザックって側近になるのやめたの?
王弟の息子であるカイザックとリュート殿下は従兄弟だからか口調も気安いのだろうけれど、こんな言い方は許されるのだろうか?
「カ、カイザック?」
「それと、ヒューア男爵令嬢。なぜお前は指一本触れていないメイジェーン嬢が責められているのに事実を言わなかった?」
そうだよ!
もっと言ってやって!カイザック!
「え、えっと」
「お前は王命で決まった婚約を潰すだけでなく、公爵令嬢であるメイジェーン嬢を嵌めようとしたのか?」
いつの間にか生徒たちが集まっていて、カイザックの言葉にざわざわと騒がしくなっていた。
「え!そ、そんなつもりは⋯⋯」
「お前が1人で転んだところを見ていたのは俺だけじゃないぞ?な?」
カイザックが2人の男子生徒に同意を求めれば彼らも「ヒューア男爵令嬢が1人で転ぶところを見ました」「殿下がイスト公爵令嬢を理不尽に責めているのに、真実を話さないヒューア男爵令嬢には不信感を抱きましたね」と証言した。
だよね!
私もそれが言いたかったんだよ!
見た目通りのか弱いだけのヒロインではないってことだよね。
今回の件で王子のお気に入りとはいえ、エルザの評価は下がるだろう。せっかく男子生徒から人気があったのにね。
「それと、メイジェーン嬢は虐めなどしていないと俺が保証する」
カイザック⋯⋯あなた攻略対象者なのに公平なのね。
いい男じゃん!
まだ何か言っている殿下を置いてカイザックが何気なく背中を押してこの場を去るよう誘導してくれた。
いや~カイザックって紳士だわ~
これはモテるわ。
「助けてくださりありがとうございました」
「困ったことがあればいつでも頼ってくれ」
そう言ってぽんぽんと頭を撫でたカイザックの瞳は先程までのキツいものではなく、優しく穏やかなもので、少しだけドキッとした⋯⋯
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