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カイザックと言えば、現財務大臣の父を持つモナー公爵家の嫡男。
⋯⋯前世を思い出したせいか、カイザックに違和感があるんだよね。
攻略対象者は顔がイケメンなのは鉄板!
王子は権力、騎士団長の息子は力、大商会の息子はお金、それぞれ何かしら魅力があった。
カイザックは知的ポジションだろうに、彼は顔は冷静沈着で知的に見える。これはいい。ただ筋骨隆々で騎士団長の息子ザイフォンよりも鍛えられたように見える身体付きなのだ。
所謂マッチョってやつだ。
あのままカイザックと昼食を一緒に摂ることになってしまったけれど、そこへお兄様まで来ちゃったものだから注目を集めてしまった。
まあ、その後にリュート殿下が泣いているエルザの肩を抱いて現れたから皆んなの視線は一気に2人に向かった⋯⋯冷たい視線だったけどね!
今までならエルザが泣いていると⋯⋯いや悲しそうな顔をするだけで男子生徒たちが慰めて側に居てくれたのが、今は誰も近寄ろうとはしないとか⋯⋯
それでも親しくしている子息がまだ何人もいるとか何とか⋯⋯ エルザ恐るべし!
まあ、最近は殿下がエルザの隣にいるから近付きづらいのだろう。
一応表向きはチヤホヤする男子生徒が減ってきたと聞いた。
それにも理由があると思うんだよね。
リュート殿下の支持率が下がったのが大きな原因だ。
婚約者がいながら男爵令嬢と懇意にしていた、まではギリいいとしよう。
皆んなもちょっとした火遊びだと思っていただろうしね。
だけど、厳しい王太子妃教育を受ける婚約者(私)を10年もの間、労るどころか交流のお茶会すらすべて欠席していたことが、どこからとも無く洩れたのだ。
国と民の為に努力し、国王となった彼を支えてくれるであろう婚約者を大切に出来ない者が自分たちを、民を大切にするだろうか?と不安にさせたのだ。
そして元婚約者(私)にも、後ろ盾になるはずのイスト公爵家にも見限られた王太子。
それが今のリュート殿下の立ち位置なのだ。
さらに元婚約者を証拠もなく怒鳴りつける。
もう、彼の評価は下がりに下がりまくりだ。
そんなリュート殿下を支持しようとする者が減るのは当然ちゃあ当然だよね。
⋯⋯本当に残念だ。
私のことが受け入れられないのはいいの。
彼が次期国王の重圧に耐え、努力を怠らなかったことを知っている。
期待に応え続けようとする彼の姿をこっそりと陰から見ていたから、私も頑張れたんだよ。
今の前世を思い出した私なら、彼がどうしてもエルザを望むと言うのなら協力だってしたのに⋯⋯
でも、もうそんな気は起きない。
男をダメにするヒロインって⋯⋯
もう、それはヒロインとは言わない。と思う⋯⋯
~カイザック視点~
『君が泣かなくてもいいように僕がずっと守ってあげるよ』
ああ、またあの時の夢を見ていたのか。
いま思えばあの時の俺は純情だったよな。
俺が6歳の時、従兄弟のリュートと王宮の庭園で遊んでいた時だ、ヒック⋯ヒックと誰かの泣いている声が聞こえてきた。
声のする方に音を立てずに行くと、ふわふわの長い金髪の少女が蹲って泣いていた。
王家には2人の王子しかいない。
思い当たるのは最近リュートの婚約者に選ばれたメイジェーン・イスト公爵令嬢だ。
リュートは泣いている子が誰だかすぐに気付いたようだった。
俺はリュートなら自分の婚約者に優しく声を掛けると思った⋯⋯
なのにあいつはフンッと鼻を鳴らし、冷めた目で見下ろしたあと何も言わずその場を去ったのだ。
引き止めることも出来なかった。
アイツらしくない。そう思った。
きっと誰にも気付かれたくなくて隠れて泣いているのだろう。
だが俺は放っておくことが出来きなかった。
思わず声をかけてしまったのだ。
『泣くな』と。
少女がビクッとしたのが分かった。
そ~と顔を上げた少女はびっくりするぐらい綺麗な顔をしていた。
その大きな瞳から涙がポロッと流れたのを見た瞬間、心臓がドキドキし守ってあげたいと思ったんだ。
ただ、この子はリュートの婚約者。
俺がこの子を守るには⋯⋯そうだ!騎士になろう。
騎士になってこの子を守ってあげるんだ。
当時、何も知らない俺は単純に騎士になることに決めた。
『君が泣かなくてもいいように僕がずっと守ってあげるよ』
まだ瞳に涙を浮かべていた少女が俺の言葉で笑顔になったんだ。『ありがとう』って。
その笑顔に完全に胸を撃ち抜かれた。
これが俺の初恋だ。
それまで父の跡を継いで財務大臣になると漠然と思っていた。
だから外遊びもたまにはしていたが勉強ばかりしていた俺は、その日から騎士になる為に体を鍛えるようになった。
いま思えば純粋で単純な子供だったな。
あれから約10年⋯⋯ 学園に入学してからリュートは常識もマナーもなっていないバカな女と懇意にし、恋人のように寄り添うようになった。
リュートには何度も婚約者と仲良くしろ!もっと歩み寄れ!話をしろ!何度も、何度も言ってきた。
あのバカ女とも離れろとも。
入学してくる俺の大切な子をこれ以上傷付けないでほしかった。
ずっと陰からあの子を見守ってきたんだ。
大切に出来ないなら俺にくれ!とすら思っていた。
そして、チャンスがやってきた。
リュートと彼女の婚約は解消された。
『君が泣かなくてもいいように僕がずっと守ってあげるよ』
やっと約束を果たせる時がきたんだ。
⋯⋯前世を思い出したせいか、カイザックに違和感があるんだよね。
攻略対象者は顔がイケメンなのは鉄板!
王子は権力、騎士団長の息子は力、大商会の息子はお金、それぞれ何かしら魅力があった。
カイザックは知的ポジションだろうに、彼は顔は冷静沈着で知的に見える。これはいい。ただ筋骨隆々で騎士団長の息子ザイフォンよりも鍛えられたように見える身体付きなのだ。
所謂マッチョってやつだ。
あのままカイザックと昼食を一緒に摂ることになってしまったけれど、そこへお兄様まで来ちゃったものだから注目を集めてしまった。
まあ、その後にリュート殿下が泣いているエルザの肩を抱いて現れたから皆んなの視線は一気に2人に向かった⋯⋯冷たい視線だったけどね!
今までならエルザが泣いていると⋯⋯いや悲しそうな顔をするだけで男子生徒たちが慰めて側に居てくれたのが、今は誰も近寄ろうとはしないとか⋯⋯
それでも親しくしている子息がまだ何人もいるとか何とか⋯⋯ エルザ恐るべし!
まあ、最近は殿下がエルザの隣にいるから近付きづらいのだろう。
一応表向きはチヤホヤする男子生徒が減ってきたと聞いた。
それにも理由があると思うんだよね。
リュート殿下の支持率が下がったのが大きな原因だ。
婚約者がいながら男爵令嬢と懇意にしていた、まではギリいいとしよう。
皆んなもちょっとした火遊びだと思っていただろうしね。
だけど、厳しい王太子妃教育を受ける婚約者(私)を10年もの間、労るどころか交流のお茶会すらすべて欠席していたことが、どこからとも無く洩れたのだ。
国と民の為に努力し、国王となった彼を支えてくれるであろう婚約者を大切に出来ない者が自分たちを、民を大切にするだろうか?と不安にさせたのだ。
そして元婚約者(私)にも、後ろ盾になるはずのイスト公爵家にも見限られた王太子。
それが今のリュート殿下の立ち位置なのだ。
さらに元婚約者を証拠もなく怒鳴りつける。
もう、彼の評価は下がりに下がりまくりだ。
そんなリュート殿下を支持しようとする者が減るのは当然ちゃあ当然だよね。
⋯⋯本当に残念だ。
私のことが受け入れられないのはいいの。
彼が次期国王の重圧に耐え、努力を怠らなかったことを知っている。
期待に応え続けようとする彼の姿をこっそりと陰から見ていたから、私も頑張れたんだよ。
今の前世を思い出した私なら、彼がどうしてもエルザを望むと言うのなら協力だってしたのに⋯⋯
でも、もうそんな気は起きない。
男をダメにするヒロインって⋯⋯
もう、それはヒロインとは言わない。と思う⋯⋯
~カイザック視点~
『君が泣かなくてもいいように僕がずっと守ってあげるよ』
ああ、またあの時の夢を見ていたのか。
いま思えばあの時の俺は純情だったよな。
俺が6歳の時、従兄弟のリュートと王宮の庭園で遊んでいた時だ、ヒック⋯ヒックと誰かの泣いている声が聞こえてきた。
声のする方に音を立てずに行くと、ふわふわの長い金髪の少女が蹲って泣いていた。
王家には2人の王子しかいない。
思い当たるのは最近リュートの婚約者に選ばれたメイジェーン・イスト公爵令嬢だ。
リュートは泣いている子が誰だかすぐに気付いたようだった。
俺はリュートなら自分の婚約者に優しく声を掛けると思った⋯⋯
なのにあいつはフンッと鼻を鳴らし、冷めた目で見下ろしたあと何も言わずその場を去ったのだ。
引き止めることも出来なかった。
アイツらしくない。そう思った。
きっと誰にも気付かれたくなくて隠れて泣いているのだろう。
だが俺は放っておくことが出来きなかった。
思わず声をかけてしまったのだ。
『泣くな』と。
少女がビクッとしたのが分かった。
そ~と顔を上げた少女はびっくりするぐらい綺麗な顔をしていた。
その大きな瞳から涙がポロッと流れたのを見た瞬間、心臓がドキドキし守ってあげたいと思ったんだ。
ただ、この子はリュートの婚約者。
俺がこの子を守るには⋯⋯そうだ!騎士になろう。
騎士になってこの子を守ってあげるんだ。
当時、何も知らない俺は単純に騎士になることに決めた。
『君が泣かなくてもいいように僕がずっと守ってあげるよ』
まだ瞳に涙を浮かべていた少女が俺の言葉で笑顔になったんだ。『ありがとう』って。
その笑顔に完全に胸を撃ち抜かれた。
これが俺の初恋だ。
それまで父の跡を継いで財務大臣になると漠然と思っていた。
だから外遊びもたまにはしていたが勉強ばかりしていた俺は、その日から騎士になる為に体を鍛えるようになった。
いま思えば純粋で単純な子供だったな。
あれから約10年⋯⋯ 学園に入学してからリュートは常識もマナーもなっていないバカな女と懇意にし、恋人のように寄り添うようになった。
リュートには何度も婚約者と仲良くしろ!もっと歩み寄れ!話をしろ!何度も、何度も言ってきた。
あのバカ女とも離れろとも。
入学してくる俺の大切な子をこれ以上傷付けないでほしかった。
ずっと陰からあの子を見守ってきたんだ。
大切に出来ないなら俺にくれ!とすら思っていた。
そして、チャンスがやってきた。
リュートと彼女の婚約は解消された。
『君が泣かなくてもいいように僕がずっと守ってあげるよ』
やっと約束を果たせる時がきたんだ。
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