アンネイセカイ~異世界と姉と安寧と~

蒼月

文字の大きさ
10 / 12

異世界と中央国。そして別れ

しおりを挟む
 前日寝る前の勉強会が常習化した。今日はレヴィアが魔族について教えてくれた。基本的に生まれかたは魔物とは変わらない。だが、生まれる場所が問題なのだ。魔大陸。この世界の裏側に位置すると言われている大陸だ。先代勇者の張った結界、魔封壁によって、通常人間も魔族もお互い干渉できないはずなのだ。だが、その魔封壁も時が経ち綻び始め、その綻びから魔族が侵入してきているらしい。そして世界中の様々な綻びから瘴気が満ちているとのことだった。
「今日もありがとうございました」
 勉強とは別に、目上の人との話し方も教えて貰っている。タメ口ばかりだとさすがにまずいだろうとのことでとのことだった。
 商隊達は再び整列し、昨日とほぼ変わらない配置で進むことになった。昨日のように魔族が襲ってくるはなかったが魔物の襲撃は少しあった。だが、ことなく日々は過ぎてゆき、あっという間に一週間が経った。
 中央国へ着くと、そこは機械は機会。魔法は魔法と一辺倒の街ではなく、共存した世界だった。リューネの街でも空飛ぶ車はあったが、ここは凄かった。それらがさらに発展して、車のタイヤ部分には魔石が埋め込まれ、おそらくそれが浮遊の効果をもたらしているのだろうか。街灯もブラッシュアップされ、光だけが魔石の力で空へ浮かんでおり、街はいくつかの浮島で構成されていた。人々も、人工的なパーツを埋め込んでいる人もおり、中には手の甲にクリスタルを埋め込み、そこからカード類の現出を行っている人もいたりして、未知の世界だった。
 中央国は中央に大きな居住区画の島を中心いくつかの浮島に別れている。より専門的な商品を売っている商業島。機械的な品物を作り、商業島へ卸す工業島。研究機関等が集中している研究島と四つの島に別れており、移動するには仕組みは分からないが、歩いた場所が足場になり、上へと向かう道があれば踏んだ場所がその人の足の上げ方によって階段になるなど便利な場所だった。足腰が悪い人や遠方へ用がある人のためにもちろんのこと空中バスも出ている。
 冒険者ギルドへ向かうために居住区画を歩いていると、まさに田舎者丸出しといった感じでキョロキョロと周りを見渡しながら歩いていると、女性とぶつかってしまった。
 その女性は青髪の青目のセミショートで身長が高く、童顔で可愛らしい容姿していた。とても頑強な鎧を着ており、鎧の継ぎ目から見える細い腕からは想像できないが、その装備からはまさに鉄壁というイメージを抱いた。
「あっつつ……すいませんぶつかってしまって」
「なぁに、気にするな。僕だって不注意だったかもしれないんだ」
 とても気さくでよく笑い、その笑顔が似合う人で、様々な話を聞いていると、名前はエルデ・スペラードという名前らしい。職業は見た目通りの騎士で、帰り際にお前とはまた会いそうな気がするよと話し去っていった。
 周りに気にしながら歩き、ようやく冒険者ギルドへと着くとやはり僕の存在が目に付くらしく色々とヒソヒソ話をされる。
 レヴィアももう気にしなくなったのか、無反応だった。ヴァーデルはやはり苛立っていた。注目されることが好きではないようだやはり。
「すまない、依頼の達成報告をしたいのだが」
「わかりました。ではギルドカードの提出をお願いします」
 そう言い、僕達三人が提出すると驚いていた。どうやら冒険者はレヴィアだけであとの二人は護衛対象とでも思っていたのだろうか。まぁ、しょうがない。
「はい、登録と振り込みが完了しました。お疲れ様でした」
 冒険者ギルドのテーブルが空いていたため、そこへ座りこれからの予定を立てる。話し合うまでもなく、当初の予定通り僕の実力を高めるために様々な依頼をこなす予定だ。護衛依頼を達成してはいるが、Aランクのレヴィアが一緒なため、ランクは上がらなかったのだ。ヴァーデルは冒険者ギルドに登録するのには気が進まずリューネの街では登録しなかったが、結局人国で渋々登録し、ともにFランクからのスタートとなった。レヴィアはというと、とても沈んだ面持ちになっており、なぜかというとここで一旦パーティは解散することになったからだ。勇者としての仕事、魔大陸の調査も同時に請け負っていたらしく、僕が寝た後密かに城へと呼び出されていたらしい。そこでいい加減に調査をするよう急かされたようだ。
「そういうことで、雄君。しばらくのお別れなんだ。もしかしたらもう会えないかもしれない。それ程に危険な任務なんだ。だから……だから、今日一日だけ私に付き合ってくれないか?」
 付き合うも何も、僕はレヴィアに助けられてからレヴィアの物のようなものだ。当たり前に付き合うに決まっている。
「会えないなんて言わないでよ。レヴィアさんなら、きっと大丈夫だから。それに僕はレヴィアさんの弟子だよ?付き合ってと言われて付き合わないわけにはいかないよ」
 ヴァーデルは何も言わず、首を冒険者ギルドの方へ向け、行けと暗に言っていた。
「じゃあ、行こう?レヴィアさん」
 幼い僕の手には大きすぎる手を取り歩きだす。その日は一日中街を回った。訓練などではなく、冒険者としてでもなく一人の人として楽しんだ。商人島ではアクセサリーを見たり、屋台で買い食いしたりと普段では考えられないことをした。居住区画にはゲームセンターもあったため、そこでもツーショットの写真を取るなどして楽しんだ。そして店を出るころにはすでに日は暮れあたりは暗くなり始めていた。
「雄君。じゃあ、宿屋に戻ろうか。すまないね、こんな時間まで振り回してしまって。疲れただろう」
「いえ、僕も楽しかったよ。レヴィアさんとは別れたくないけど、それが勇者としての仕事なら、僕はまた会えることを信じて待ってるから。だから……」
 声が震えてくる。最後は笑顔で送り出したかったのに。今まで撫でてくれたこと、時には厳しく叱られることもあったが、たくさんの愛情を僕に注いでくれた。気がつけば頬から涙が伝っていた。
「だから!必ず……必ず戻ってきてよ!」
 力一杯にレヴィアに向かって走り出し抱きつく。もう涙が止まらなかった。ずっと一緒にいたかった。いつの間に僕はこんなにもレヴィアのことが好きになってしまっていたのだろう。両親との別れ、そしてレヴィアとの別れ。何度別れを経験すればいいのだろうか。ただ純粋に嫌だった。
 するとそんな僕は優しい手つきで僕を撫でてくれる。そして頬にキスをされた。
「わかった。必ず戻ってこよう。このキスは勇者の誓いだ。そして君に私の勇者としての加護を与えることが出来る。使える数には限りがあるが、それを使うと身体能力が上昇する。そんな魔法だよ」
 するとレヴィアは僕に背を向け歩きだし、行ってしまった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

拾った年上侯爵が甘え上手すぎて、よしよししてたら婚約することになりました

星乃和花
恋愛
⭐︎火木土21:00更新ー本編8話・後日談8話⭐︎ 王都の市場で花屋をしているリナは、ある朝―― 路地裏で倒れている“美形の年上男性”を拾ってしまう。 熱で弱っているだけ……のはずが、彼はなぜか距離が近い。 「行かないで」「撫でて」「君がいると回復する」 甘えが上手すぎるうえに、褒め方までずるい。 よしよし看病してあげていたら、いつの間にか毎日市場に現れるようになり、 気づけば花屋は貴族の面会所(?)になっていて―― しかも彼の正体は、王都を支える侯爵家の当主だった!? 「君は国のために必要だ(※僕が倒れるから)」 年上当主の“甘え策略”に、花屋の心臓は今日ももたない。 ほのぼの王都日常コメディ×甘やかし捕獲ラブ、開幕です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』

KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。 日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。 アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。 「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。 貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。 集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。 そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。 これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。 今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう? ※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは 似て非なる物として見て下さい

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

処理中です...