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第一部 Side 永宮 真紀
やっぱり
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「で?話ってなに?」
彼女と交わす言葉を極力減らす様、可能な限り短い言葉で問いかける私。
そんな私に視線を向けると、彼女は不意にぽぅっと己の頬を赤らめた。
「……あのね?」
両手を自分の胸の前で組み、もじもじしながら話し始める風香。
「私……やっぱり、真紀ちゃんになりたいなって思ってるの。だからね?真紀ちゃん……貴女の人生を私に譲ってくれない?」
「はぁっ?」
その童女そのままの愛くるしい仕草とは裏腹な――放たれた言葉の凶悪さに、思わず私は声を上げる。
(譲る?私の人生を?風香に?)
流石に、言っていることが訳が分からなさすぎる。
その内容の突拍子のなさに、私は驚嘆の声を上げた後、ぽかんと口を開けたまま暫く何も言えずにいた。
すると、それを私が言葉の続きを待っているとでも思ったのか――風香が勝手に話を続けてくる。
「……私ね?昔から、自分の人生が嫌いだった。ううん、人生だけじゃないわ。意地悪で……痛いことをしてくるお父さんも、それを止めてくれないお母さんも。皆、皆、嫌いだったの」
風香はそう言いながら、長いフリルのブラウスの袖を捲り、私に腕を見せてくる。
その雪の様に真っ白な腕には、無数の青あざが存在していた。
(……なんてこと!虐待は、おさまってなかったんだ……!)
あまりに痛ましく生々しい虐待の痕跡に、一瞬言葉を失う私。
心の中には風香に対する哀れみにも似た感情が芽生え、ほんの一瞬……彼女に優しい言葉をかけてしまいそうになる。
だが、私はその感情を己の拳をぎゅっと握り締めることでどうにか制した。
彼女と交わす言葉を極力減らす様、可能な限り短い言葉で問いかける私。
そんな私に視線を向けると、彼女は不意にぽぅっと己の頬を赤らめた。
「……あのね?」
両手を自分の胸の前で組み、もじもじしながら話し始める風香。
「私……やっぱり、真紀ちゃんになりたいなって思ってるの。だからね?真紀ちゃん……貴女の人生を私に譲ってくれない?」
「はぁっ?」
その童女そのままの愛くるしい仕草とは裏腹な――放たれた言葉の凶悪さに、思わず私は声を上げる。
(譲る?私の人生を?風香に?)
流石に、言っていることが訳が分からなさすぎる。
その内容の突拍子のなさに、私は驚嘆の声を上げた後、ぽかんと口を開けたまま暫く何も言えずにいた。
すると、それを私が言葉の続きを待っているとでも思ったのか――風香が勝手に話を続けてくる。
「……私ね?昔から、自分の人生が嫌いだった。ううん、人生だけじゃないわ。意地悪で……痛いことをしてくるお父さんも、それを止めてくれないお母さんも。皆、皆、嫌いだったの」
風香はそう言いながら、長いフリルのブラウスの袖を捲り、私に腕を見せてくる。
その雪の様に真っ白な腕には、無数の青あざが存在していた。
(……なんてこと!虐待は、おさまってなかったんだ……!)
あまりに痛ましく生々しい虐待の痕跡に、一瞬言葉を失う私。
心の中には風香に対する哀れみにも似た感情が芽生え、ほんの一瞬……彼女に優しい言葉をかけてしまいそうになる。
だが、私はその感情を己の拳をぎゅっと握り締めることでどうにか制した。
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