40 / 94
優という人間は③
しおりを挟む
優に台所の機械の使い方を聞きながら調理すること約1時間。
俺の自慢の牛めしが完成する。
「さぁ、有り難く食いやがれ」
俺がそう言っててえぶるに出来立ての牛めしを並べると、優はわざとらしく大仰に頭を下げてみせた。
「ははー、有難き幸せ」
その表情に……近藤さんの血を継ぐ優が笑顔でいることに、何とも言えない感動に近い感情を覚える俺。
だが、俺はそんな気持ちを優には決して悟られない様に、わざとつっけんどんに対応してみせた。
――共に食卓を囲んで、あたたかい出来立ての飯を一緒に食う。
たったそれだけのことが、なんて幸せなことなのだろう。
(昔……隊士達と一緒に飯を食っていた時も、こんな気持ちになったことがあるな……)
そう――それは、「生きていられる」ことが当たり前ではなかった時代。
命の奪い合いが普通であったあの時代に於いて、気の許せる仲間達と飯を食う時間が、唯一生きていることを……幸福を実感できる時間だったのだ。
(だから俺も……いつからか、飯を作ることが好きになったんだよな)
自分の作った飯を仲間達が生き生きとした笑顔で美味い美味いと言いながら食べてくれる。
あれ程、幸せで満ち足りた時間はなかっただろう。
――そんな幸せな時間は長くは続かなかった訳だが。
俺は、昔の幸福であった時間に思いを馳せながら、飯を口にした。
そうして、今、目の前にいる男のことを考える。
家族を亡くし、愛した女に裏切られ、大切な形見や家宝までも……全てを奪われた哀れな男。
そんな男が……俺を、生きる理由にしたいと言って来た。
最初に言って来たあの言葉は、今思えば、きっと優の本心からの言葉だったのだろう。
と、同時に、俺にはどうしても気になることがあった。
「なぁ、優?形見を取り戻しに行く前に、ちゃんと聞いておきたいことがある。……お前、こんな俺のどこを好きになったんだ?」
俺の自慢の牛めしが完成する。
「さぁ、有り難く食いやがれ」
俺がそう言っててえぶるに出来立ての牛めしを並べると、優はわざとらしく大仰に頭を下げてみせた。
「ははー、有難き幸せ」
その表情に……近藤さんの血を継ぐ優が笑顔でいることに、何とも言えない感動に近い感情を覚える俺。
だが、俺はそんな気持ちを優には決して悟られない様に、わざとつっけんどんに対応してみせた。
――共に食卓を囲んで、あたたかい出来立ての飯を一緒に食う。
たったそれだけのことが、なんて幸せなことなのだろう。
(昔……隊士達と一緒に飯を食っていた時も、こんな気持ちになったことがあるな……)
そう――それは、「生きていられる」ことが当たり前ではなかった時代。
命の奪い合いが普通であったあの時代に於いて、気の許せる仲間達と飯を食う時間が、唯一生きていることを……幸福を実感できる時間だったのだ。
(だから俺も……いつからか、飯を作ることが好きになったんだよな)
自分の作った飯を仲間達が生き生きとした笑顔で美味い美味いと言いながら食べてくれる。
あれ程、幸せで満ち足りた時間はなかっただろう。
――そんな幸せな時間は長くは続かなかった訳だが。
俺は、昔の幸福であった時間に思いを馳せながら、飯を口にした。
そうして、今、目の前にいる男のことを考える。
家族を亡くし、愛した女に裏切られ、大切な形見や家宝までも……全てを奪われた哀れな男。
そんな男が……俺を、生きる理由にしたいと言って来た。
最初に言って来たあの言葉は、今思えば、きっと優の本心からの言葉だったのだろう。
と、同時に、俺にはどうしても気になることがあった。
「なぁ、優?形見を取り戻しに行く前に、ちゃんと聞いておきたいことがある。……お前、こんな俺のどこを好きになったんだ?」
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話
八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。
古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる