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第一章:金色の神様
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「なぁ,君。大丈夫だったかい?」
「あ,うん。……ありがとう」
この時スウェンは,自分を助けてくれた恩人の顏を初めて見た。
きれいな黒い瞳と輝いた色白の肌。金髪のロングヘアはサラサラだった。スウェンよりも三~四つ,年が上だろう。この人を見掛けたことがある。
「き,君。たしかさっきの人じゃない?」
「えっ?」
「ほら,さっきぼくが道で思いきり君にぶつかっちゃって……」
「……ああ」
その人はスウェンがこの店に来る途中,たまたま出会ったあの美少年だったのだ。この人が,助けてくれたなんて――。
「本当に助かったよ! でも大丈夫なの? あんな騒ぎ起こしちゃって」
「うん,大丈夫だろ。オレ,ああいうのとよく喧嘩するし」
少年は当たり前のようにそう言った。
「そんなことより,君の名前は?」
「スウェンだよ。スウェン・ミラー」
「……そうか。変わった名前だな。オレの名前は――一応,ジャック・マーティンだ。気軽にジャックって呼んでくれよな」
「う,うん。……一応ジャック……ね」
このジャックという少年,なかなか面白そうな人だ。悪い人間ではないだろう。スウェンは思わず微笑した。
「なぁスウェン。君はいつも,あの野郎共に酷いことをされてるのか?」
「……うん,そうだよ」
「そうか――最低だな! でももう安心しろよ。今日から君は友だちだからな! オレが守ってやる」
「……え?」
ジャックの言葉を聞いたスウェンは,わっと泣き出しそうになった。
この人生の中で,誰からも言ってもらえなかった言葉――こんな自分と,ジャックは友だちになってくれるなんて。
まるで夢を見ているようだった。
スウェンは今まで一度も味わったことのない,嬉しい気持ちになった。
「――スウェンは,笑ってる顏の方が似合うな」
「えぇ?」
「ジョーダン。そうだ,怪我してるだろ? オレが見てやるよ」
「いや……その」
蹴られたあとの傷は,すでになくなっていた。痛みだって感じない。もちろん,I・Bのおかげで。
「どうした。さっきので何箇所もやられてるだろ?」
「ううん,もう……治ってるよ」
ジャックは首を傾げた。当然のことだ。
仕方なくスウェンは,自らの腹を見せながら彼に説明をした。
「ほら,ここ,さっきやられた所だけど……傷なんてどこにもなくなっているだろう?」
「す,すげぇ。……どうなってるんだ!」
ジャックは目を丸くしていた。
「ぼくの身体は,何かの病気にかかってるみたいなんだ」
「病気?」
「どんな怪我を負っても,すぐに完治してしまう。I・Bって呼んでるんだけど,この病気の原因は全く分からないんだ」
ジャックは小さく頷くと,黙りこくってしまった。こんな話をジャックにしたところで,何の意味もないだろう。
しかし他人にI・Bのことを言ったのは,これが初めてだった。
スウェンは彼のことをじっと見つめる。
「うーん」
と,ジャックが口を開いた。
「こりゃ……珍しい病気,だな」
そう言ったまま,あとに続く言葉は何もなかった。別に期待していたわけではないが,何ともあっけない返事にスウェンは肩を落とす。
少し沈黙が続いてから,ジャックは明るい声でスウェンに言った。
「そういえば何か買うつもりでここに来たんだろ。もうあの野郎共はいなくなったんだし,買っちまえよ」
買いたいのは山々だったが,それができないのだ。
スウェンは首を横に振った。
「どした?」
「……買えないんだ」
「金がないのか」
「……うん」
じゃあ何しに来たんだ,とでも思われただろうか。スウェンは恥ずかしくなった。
「――だったら仕方ないよな」
「……」
「オレが奢ってやるよ」
「えェ?」
思いがけない言葉を聞いて,スウェンは思わず声が裏返った。ジャックの表情はいたって真面目である。
スウェンは戸惑った。
彼はそれほど金持ち,という感じはしない。気前がいいのか,それとも単に親切なのか。どちらにせよ,人に物を奢ってもらうなんてことスウェンには考えられなかった。
絶対に断らなければならない。
よく考えて,スウェンは自分が同情されているんだと思った。はっきり言ってそういうのは大嫌いであった。
「ジャック……同情だったらやめてくれ」
「何言ってるんだ? 別にそんなんじゃないよ。買いたいもんあるんだろ」
「それはそうなんだけど……」
「だろ? だから奢ってやんだ。
何でも好きな本選べよ」
「……」
なぜだろう。なぜジャックは,ここまでしてくれるのだろう。
スウェンには分からなかった。
「ねぇ……ジャック。ぼくたち,たった今出会ったばかりなんだよ。無理することないからね。
君がすごくいい人なんだってことは,よく分かったから」
「……無理,だと?」
急にジャックの顔付きが変わった。
「勘違いすんな! オレはただ,君の役に立ちたいだけなんだよ。無理なんてしてねぇ」
ジャックに怒鳴られ,スウェンはしばらくの間何も言えなくなった。なぜここまでムキになる必要があるのか。
「あ,うん。……ありがとう」
この時スウェンは,自分を助けてくれた恩人の顏を初めて見た。
きれいな黒い瞳と輝いた色白の肌。金髪のロングヘアはサラサラだった。スウェンよりも三~四つ,年が上だろう。この人を見掛けたことがある。
「き,君。たしかさっきの人じゃない?」
「えっ?」
「ほら,さっきぼくが道で思いきり君にぶつかっちゃって……」
「……ああ」
その人はスウェンがこの店に来る途中,たまたま出会ったあの美少年だったのだ。この人が,助けてくれたなんて――。
「本当に助かったよ! でも大丈夫なの? あんな騒ぎ起こしちゃって」
「うん,大丈夫だろ。オレ,ああいうのとよく喧嘩するし」
少年は当たり前のようにそう言った。
「そんなことより,君の名前は?」
「スウェンだよ。スウェン・ミラー」
「……そうか。変わった名前だな。オレの名前は――一応,ジャック・マーティンだ。気軽にジャックって呼んでくれよな」
「う,うん。……一応ジャック……ね」
このジャックという少年,なかなか面白そうな人だ。悪い人間ではないだろう。スウェンは思わず微笑した。
「なぁスウェン。君はいつも,あの野郎共に酷いことをされてるのか?」
「……うん,そうだよ」
「そうか――最低だな! でももう安心しろよ。今日から君は友だちだからな! オレが守ってやる」
「……え?」
ジャックの言葉を聞いたスウェンは,わっと泣き出しそうになった。
この人生の中で,誰からも言ってもらえなかった言葉――こんな自分と,ジャックは友だちになってくれるなんて。
まるで夢を見ているようだった。
スウェンは今まで一度も味わったことのない,嬉しい気持ちになった。
「――スウェンは,笑ってる顏の方が似合うな」
「えぇ?」
「ジョーダン。そうだ,怪我してるだろ? オレが見てやるよ」
「いや……その」
蹴られたあとの傷は,すでになくなっていた。痛みだって感じない。もちろん,I・Bのおかげで。
「どうした。さっきので何箇所もやられてるだろ?」
「ううん,もう……治ってるよ」
ジャックは首を傾げた。当然のことだ。
仕方なくスウェンは,自らの腹を見せながら彼に説明をした。
「ほら,ここ,さっきやられた所だけど……傷なんてどこにもなくなっているだろう?」
「す,すげぇ。……どうなってるんだ!」
ジャックは目を丸くしていた。
「ぼくの身体は,何かの病気にかかってるみたいなんだ」
「病気?」
「どんな怪我を負っても,すぐに完治してしまう。I・Bって呼んでるんだけど,この病気の原因は全く分からないんだ」
ジャックは小さく頷くと,黙りこくってしまった。こんな話をジャックにしたところで,何の意味もないだろう。
しかし他人にI・Bのことを言ったのは,これが初めてだった。
スウェンは彼のことをじっと見つめる。
「うーん」
と,ジャックが口を開いた。
「こりゃ……珍しい病気,だな」
そう言ったまま,あとに続く言葉は何もなかった。別に期待していたわけではないが,何ともあっけない返事にスウェンは肩を落とす。
少し沈黙が続いてから,ジャックは明るい声でスウェンに言った。
「そういえば何か買うつもりでここに来たんだろ。もうあの野郎共はいなくなったんだし,買っちまえよ」
買いたいのは山々だったが,それができないのだ。
スウェンは首を横に振った。
「どした?」
「……買えないんだ」
「金がないのか」
「……うん」
じゃあ何しに来たんだ,とでも思われただろうか。スウェンは恥ずかしくなった。
「――だったら仕方ないよな」
「……」
「オレが奢ってやるよ」
「えェ?」
思いがけない言葉を聞いて,スウェンは思わず声が裏返った。ジャックの表情はいたって真面目である。
スウェンは戸惑った。
彼はそれほど金持ち,という感じはしない。気前がいいのか,それとも単に親切なのか。どちらにせよ,人に物を奢ってもらうなんてことスウェンには考えられなかった。
絶対に断らなければならない。
よく考えて,スウェンは自分が同情されているんだと思った。はっきり言ってそういうのは大嫌いであった。
「ジャック……同情だったらやめてくれ」
「何言ってるんだ? 別にそんなんじゃないよ。買いたいもんあるんだろ」
「それはそうなんだけど……」
「だろ? だから奢ってやんだ。
何でも好きな本選べよ」
「……」
なぜだろう。なぜジャックは,ここまでしてくれるのだろう。
スウェンには分からなかった。
「ねぇ……ジャック。ぼくたち,たった今出会ったばかりなんだよ。無理することないからね。
君がすごくいい人なんだってことは,よく分かったから」
「……無理,だと?」
急にジャックの顔付きが変わった。
「勘違いすんな! オレはただ,君の役に立ちたいだけなんだよ。無理なんてしてねぇ」
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