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第二章:出会い
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――長いこと見つめていると,突然,彼女の目がぱっと開いた。スウェンは思わず「あっ」と声を漏らす。
「……な? なんです,あなたは!?」
目の前に見知らぬ男がいたものだから,女は酷く驚いたようだ。
叫んだ直後,彼女はスウェンの股間を強烈な力で蹴り飛ばしてきた。
「はぅっ……! い痛ぇ!!」
ぶったまげるほどの激痛――。痛みのあまり股を抑えながら,スウェンの体は地面に沈んでいった。
――こんな時にはしっかり痛みがあるなんて……。
「な,何をする!」
スウェンはたまらず叫んだが,声が裏返ってしまった。
「こっちが聞きたいわよ! あなた,私に何をしようとしていたの!」
怒鳴りながら,彼女はスウェンから強引に帽子を取り上げ,それを大事そうに頭に被せた。
「別に何もしようとしてない! あんた訳分かんねえ。命の恩人に感謝のひとつもしないしな」
「恩人……? なぜ? あなたはいつから私の恩人になったの?」
この言葉が放たれた瞬間,その女はスウェンの中で世界一嫌いな人間となった。こんな最低な奴がいたのか,とさえ思った。
しばらく言い争いをしていると,日向で寝そべっていたジャックが,出し抜けに口を挟んできた。
「やめるんだ。スウェン,お前なあ,女の子相手にムキになるなよ」
スウェンは苦笑して口を閉じる。
「お嬢さん。君もだ。オレたちはさっき……君を賊から助けてやったんだ。礼のひとつ,言ってほしいな」
「あら……」
女は目を大きく見開いた。間の抜けた顏である。笑ってやろうかと,スウェンは密かに思った。
「あなたの言ってたことは本当だったのね。失礼しました。感謝すべき人に無礼なことを,私……」
こう言うと,女は深々と頭を下げた。
「ありがとう。あなたたちのおかげで助かりました。だからきっと,忘れないわ」
もう一度お辞儀してから,女は背中を向けた。すると,ジャックが心配そうな表情を浮かべて言った。
「――君,これからどこに行くつもりなんだ?」
「……どこかしら」
「どこかしらって……旅人なら,ちゃんと目的があるだろう?」
「旅人? 勘違いしないで。私は……家族を捨てて家出した馬鹿な女。お金もないし,行く場所なんてどこにもないの」
そんな話をしているとき,彼女は一瞬だけ哀しそうな声になった。家族と何があったのか聞こうと思ったが,スウェンは何も言わなかった。
他人の家庭事情に興味を持つものではない。
彼女はごほごほと,軽く咳をしていた。
「とにかく私は適当に町を探します。さようなら。またどこかで会えるといいわね」
二度と会うものか,スウェンが言葉を放とうとした直前。ジャックに少し先を越された。
「ちょっと待った」
女の前にジャックは立ちはだかる。
「家出のことはオレたちが口出しできることじゃない。ただ,この先も単独行動でいるのは危険だ。君みたいにかわいいと,また賊に狙われるぞ」
「あら。赤の他人を心配するの? でも……どうせこんなことしてたら,私の命は長く続かない。賊に狙われようが,死ぬ覚悟はできてるわ」
「……大した心構えだなあ! と言ってもな,君と出会ったからには君を放っておくわけにはいかない。オレたちが守ってやるから,一緒に来ないか?」
「……え?」
女はジャックの話に,固まってしまった。
どういうつもりなのか。スウェンは首を傾げた。
「おいおいジャック! 勝手に話を進めるな。悪いけど,俺はこんな女と仲良く旅なんて嫌だよ。断固反対だからな」
「そう言うなよスウェン。女を見捨てる男は最低だぞ!」
――そんなこと関係ない
ジャックは一度言ったことは,何がなんでも貫き通す。……女と共に旅をするのは既に決定してるも同然だ。深い,ため息が出た。
「ああもう。仕方ないな」
そしてスウェンはうつむき,ジャックのことは見なかった。
間を置いてから,彼女は言った。
「――決まりらしいわね。短い間だと思うけどよろしくね,ボディガードさんたち。私の名前は,エイダ・ウィルホイト」
スウェンはまたひとつため息をつく。
エイダという,女の第一印象は「絶対に好きになれない奴」であった。
「……な? なんです,あなたは!?」
目の前に見知らぬ男がいたものだから,女は酷く驚いたようだ。
叫んだ直後,彼女はスウェンの股間を強烈な力で蹴り飛ばしてきた。
「はぅっ……! い痛ぇ!!」
ぶったまげるほどの激痛――。痛みのあまり股を抑えながら,スウェンの体は地面に沈んでいった。
――こんな時にはしっかり痛みがあるなんて……。
「な,何をする!」
スウェンはたまらず叫んだが,声が裏返ってしまった。
「こっちが聞きたいわよ! あなた,私に何をしようとしていたの!」
怒鳴りながら,彼女はスウェンから強引に帽子を取り上げ,それを大事そうに頭に被せた。
「別に何もしようとしてない! あんた訳分かんねえ。命の恩人に感謝のひとつもしないしな」
「恩人……? なぜ? あなたはいつから私の恩人になったの?」
この言葉が放たれた瞬間,その女はスウェンの中で世界一嫌いな人間となった。こんな最低な奴がいたのか,とさえ思った。
しばらく言い争いをしていると,日向で寝そべっていたジャックが,出し抜けに口を挟んできた。
「やめるんだ。スウェン,お前なあ,女の子相手にムキになるなよ」
スウェンは苦笑して口を閉じる。
「お嬢さん。君もだ。オレたちはさっき……君を賊から助けてやったんだ。礼のひとつ,言ってほしいな」
「あら……」
女は目を大きく見開いた。間の抜けた顏である。笑ってやろうかと,スウェンは密かに思った。
「あなたの言ってたことは本当だったのね。失礼しました。感謝すべき人に無礼なことを,私……」
こう言うと,女は深々と頭を下げた。
「ありがとう。あなたたちのおかげで助かりました。だからきっと,忘れないわ」
もう一度お辞儀してから,女は背中を向けた。すると,ジャックが心配そうな表情を浮かべて言った。
「――君,これからどこに行くつもりなんだ?」
「……どこかしら」
「どこかしらって……旅人なら,ちゃんと目的があるだろう?」
「旅人? 勘違いしないで。私は……家族を捨てて家出した馬鹿な女。お金もないし,行く場所なんてどこにもないの」
そんな話をしているとき,彼女は一瞬だけ哀しそうな声になった。家族と何があったのか聞こうと思ったが,スウェンは何も言わなかった。
他人の家庭事情に興味を持つものではない。
彼女はごほごほと,軽く咳をしていた。
「とにかく私は適当に町を探します。さようなら。またどこかで会えるといいわね」
二度と会うものか,スウェンが言葉を放とうとした直前。ジャックに少し先を越された。
「ちょっと待った」
女の前にジャックは立ちはだかる。
「家出のことはオレたちが口出しできることじゃない。ただ,この先も単独行動でいるのは危険だ。君みたいにかわいいと,また賊に狙われるぞ」
「あら。赤の他人を心配するの? でも……どうせこんなことしてたら,私の命は長く続かない。賊に狙われようが,死ぬ覚悟はできてるわ」
「……大した心構えだなあ! と言ってもな,君と出会ったからには君を放っておくわけにはいかない。オレたちが守ってやるから,一緒に来ないか?」
「……え?」
女はジャックの話に,固まってしまった。
どういうつもりなのか。スウェンは首を傾げた。
「おいおいジャック! 勝手に話を進めるな。悪いけど,俺はこんな女と仲良く旅なんて嫌だよ。断固反対だからな」
「そう言うなよスウェン。女を見捨てる男は最低だぞ!」
――そんなこと関係ない
ジャックは一度言ったことは,何がなんでも貫き通す。……女と共に旅をするのは既に決定してるも同然だ。深い,ため息が出た。
「ああもう。仕方ないな」
そしてスウェンはうつむき,ジャックのことは見なかった。
間を置いてから,彼女は言った。
「――決まりらしいわね。短い間だと思うけどよろしくね,ボディガードさんたち。私の名前は,エイダ・ウィルホイト」
スウェンはまたひとつため息をつく。
エイダという,女の第一印象は「絶対に好きになれない奴」であった。
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