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第四章:八年間の友情
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城門を通り過ぎ庭園らしき所に行くと,道の両脇に銅像が並んでいた。右手に女性,左手には男性,四人ずつ設けられており――多分,歴代の王や女王の彫像なのだろう。
城の入口付近には,長槍を持った家来らしき男が二人立っていた。
「お,お帰りなさいませ!」
挨拶を間違えたのだろうか。彼らはどこか緊張したような態度で,深く礼をした。
「はは。ここの人たちと知り合いなのか」
と,スウェンがジャックの肩を軽く叩いて言うと,なぜか男たちに鋭い目つきで一瞬見られた。
「まあ,な。オレ,一応,城の者だからな……」
「は?」
スウェンが首を傾げても,ジャックはそれ以上何も言わなかった。エイダも完全無言である。
抜け殻のように二人がしんとしているので,スウェンも口を閉じるしかなかった。
城内に入ると,またもスウェンはたまげた。天井にはぎらぎらと輝く,ばかでかいシャンデリア。壁は石像で,芸術家が描いと思われる花や人物の絵画がたくさん飾られている。一階だけでも赤い扉がいくつもあり,二階へと続く階段はふた道に別れていた。広さからしても,やはり「金持ち」の世界は壮大だ,とスウェンは思った。
城内にいた人々はジャックの存在に気が付くと,誰もが礼儀正しく,そして若干表情を強張らせながら挨拶をする。スウェンは現在の状況がいまいち理解できないでいた。
広間に入ってすぐ右側の扉に,応接間があった。スウェンたちはそこに連れられる。
その部屋には窓がなければ,ソファーやテーブルなどの調度品が一切置かれていない。あるのは,古びた木製の椅子が三脚。客人をもてなす部屋にしては,どうも陰気くさい。
「ふう。よく歩く日だな。いや,旅をしているんだから当たり前か。それで,ジャック。こんな所まで来てどうするつもりだ。本の世界みたいに,王様と対面したりするか? ははは」
スウェンがふざけてそう言うと,二人はしらけたまま口を開こうとしない。
「ごめん」と呟いてから,スウェンも黙り込んだ。
「ふう。よく歩く日だな。いや,旅をしているんだから当たり前か。それで,ジャック。こんな所まで来てどうするつもりだ。本の世界みたいに,王様と対面したりするか? ははは」
スウェンがふざけてそう言うと,二人はしらけたまま口を開こうとしない。
「ごめん」と呟いてから,スウェンも黙り込んだ。
無言,という名の音の中で,三人はただじっとしていた。
――そうして,事は起きた。
「失礼いたします」
声に反応して扉の方を振り向くと,そこには先ほどの女性乗務員が立っていた。
服装が変わっている。お嬢さまが着るようなヒラヒラした,装いの華やかな黄色いドレス姿になっている。
――なぜこんな格好を
スウェンは目を奪われた。
彼女に続いて,もう一人部屋にやってきた。
ブライアンであった。その両手には,スウェンたちが預けた武器。大鎌の存在をすっかり忘れていた。
「短剣をお返しします」
「……あ。ありがとうございます」
ドレス姿の女性はブライアンから武器を受けとると,それをエイダに手渡した。
「この大鎌は――あなた様のものですね」
「……どうも」
なぜかスウェンはドキッとした。汗で柄が落ちそうになり,とっさに手を拭う。
鎌の刃を見て,スウェンは手の中にあるものを見直してしまった。
たしかにこれは,いつも使用している鎌だ。間違えはない。
――ただ,どういうわけか,刃こぼれしていた部分が新品同様,元通りになっている。預けている間,何かされたのだろうか。
「最後に」
と,女性は重たそうにもうひとつの武器をブライアンから受けとる。その武器を目にして,スウェンは疑問符を頭に浮かべた。
「ええっと……。
『ジャッシー様』は,こちらですね。どうぞ」
「ああ」
ジャックは平然としながら,金に輝く武器を手にしていた。彼が渡されたのは弓矢ではなく,長剣であった。
なぜそんなものを?
しかも「ジャッシー様」とは一体,誰のことだ?
わけが分からずに,スウェンは混乱した。
「ああ久しぶりだ,この剣を持つのは」
「ジャック……? お前,どうしたんだよ。そんな立派な剣。弓矢は?」
スウェンは眉に皺を寄せ,まじまじとジャックのことを眺めた。すると彼は落ち着かない口調で言う。
「もう……分かってるだろ,スウェン」
「何が?」
「オレの『故郷』のことだよ。
……ここなんだ。
この城が,オレの家――」
「……は?」
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