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第四章:八年間の友情
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しおりを挟む「――うわあああ!!」
目覚めると,スウェンは,体中に汗をかいていた。全身がとても熱い。
スウェンは,見知らぬ部屋のベッドで眠っていたようだ。
「ど……どうしたのスウェン!」
部屋には,エイダもいた。彼女は窓側に立ちながら,スウェンのことを見つめていた。
「いや……何でもない」
「……嫌な夢でも見た?」
「まあ,な……」
スウェンは立ち上がり,テーブルに置いてあったタオルで汗を拭った。
心から恐ろしい,と思える夢は久々だ。一体,あの男は何だったのだろう――?
部屋は真っ暗でよく見えなかったが,ふとスウェンは,エイダの異変に気付いた。
「エイダ……泣いてるのか?」
確かに,スウェンは見た。窓から差し込む月の光が,エイダの涙を輝かせるのを。
しかし,エイダは後ろを向いて小さく否定した。
「……泣いてないわよ」
とても,沈んだ声であった。彼女は嘘が下手だ。スウェンはそう思う。
「家出したことを悔んでるのか」
「違うわよ……」
「家に,帰ったほうがいいんじゃないのか」
「だから,違うのよ……」
首を横に振り,エイダは決して頷くことはなかった。
どうしていいか分からず,とりあえずスウェンは自分のハンカチを差し出した。止まらない涙を,エイダは静かにそれで拭き取る。
彼女の滴は,美しく見えた。
*
翌日。
店主に礼を言い,スウェンたちは飲み屋を後にした。行くあてもなく,ひたすら二人は城下町を歩き回っていた。
基本的には酒に強いスウェンだが,いくらなんでも飲みすぎた。少しだけ頭痛がするせいで,スウェンはイライラしていた。
「ねぇ,スウェン。戻らないの?」
「……何の話だ」
「分かってるでしょ。ジャック……いえ,ジャッシー王子だったわね。彼の所にはいつ戻るのよ」
「は?」
スウェンは立ち止まる。眉間に皺を寄せ,彼女を睨みつけた。
「な,なによ」
「うるさい……その名前を聞くと,ムカつくんだ」
「ちょっと……バカ言わないで。彼はあなたの仲間でしょ!」
「仲間,だと?」
バカはどっちだ。
鼻で笑いたくなった。エイダの言葉が,あまりにおかしくて――。
スウェンは自分で,気が歪んでいると自覚している。それもこれも全て「奴」のせいだ。
――本当に腹が立つ。この怒り,どう静めればいいのだろう。
「――そもそも仲間だとか,友だちとかってなんなんだよ。俺はあいつを信じてたのに,あいつは俺を騙してたんだ!」
昨日の出来事を思い出すと,たちまち怒りが溢れてくる。スウェンは舌打をした。
するとエイダは,呆れたようにこんなことを言った。
「……うだうだ言って,本当にバカみたい。これであなたたちの仲が直らなかったら,二人の友情は本物ではなかったのね」
「……はぁ?」
スウェンは声を低くし,眉間に皺をよせた。そして,まるで悪魔のように怒鳴り散らしてしまった――。
「おい,お前が言えることかっ? でしゃばるな!!」
街のど真ん中で叫んだものだから,スウェンの声は建物の間に響き渡ってしまった。
声を震わせて,エイダは小さく言う。
「……何よ,何なの? そんなに怒鳴ることないじゃない。スウェンがそう言うんだったら,もういいわ」
強がっているようにも見えたが,彼女は今にも泣きそうな表情を浮かべていた。
――やってしまった。これではただの,八つ当たりだ。
彼女と出会ってからは喧嘩ばかりを繰り返し,少なくともスウェンと一緒にいるのは楽しくないはずである。
それなのになぜ。
エイダはスウェンの側にいるのだろう。 なぜスウェンは,エイダに傷つくことばかりしてしまうのだろう。
エイダの目を真っ直ぐに見ながら,スウェンは言った。
「……ごめん,エイダ」
「…………」
「俺が,悪かったよ」
スウェンは,彼女の腕を掴む。が,エイダは横を向いたままだ。
「ムシャクシャしすぎた。俺は,エイダに当たってばかりで……」
「いいわ,耳障りよ」
「えっ」
「最低! 一緒にいて損した気分」
そう言葉を放つと,エイダは逃げるようにスウェンの手から逃れ,さっと後ろを向いて走り出した。その背中がどんどん小さくなっていく――。
この瞬間,スウェンは寂しさに襲われた。また一人,自分の側から“仲間”がいなくなってしまう――。
いざこうなると一人は嫌だ,と思う自分。どれだけ自分のことしか考えていないか,スウェンは深く身に感じていた。
「待ってくれ」
声の限り,スウェンは叫んだ。通行人たちに白い目で見られても,全く気にしない。
「待て……待てよ。エイダ!」
全速力で走っても,彼女は遠くにいる。走っても走っても,エイダに追い付けない気がした。
――孤独を感じた。
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