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第四章:八年間の友情
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――子供が危ない!
エイダが叫んだ。まだ幼い少年に襲いかかろうとしていた賊の背後に回り,エイダはその背中を短剣で突き刺した。
「うぎゃぁ!」
その間にエイダは少年の手を取り,賊から離れる。しかし,あの程度の攻撃でくたばる相手ではないだろう。
「俺が殺る」
スウェンは鎌を持ち上げ,瞬時に刃で敵の首を斬り落とした。どばっと,血が飛び散る。この快感――たまらないものであった。
スウェンは敵を目にすると,常に発病してしまうようだった。今も,「狩り」をすることに熱中し続けていた。
この街は賊どもに襲撃されているようだが,町人の命すら今のスウェンにはどうでもよかった。
「スウェン,どうしよう! この子,お母さんとはぐれちゃったみたいなの……!」
「それがどうした。
それより俺は,次の獲物を捕えたい」
「……ちょっと何言ってんの!?」
エイダを完全無視して駆け出そうとした時。付近の家から,ばかでかい爆音がした。見ると数件,勢いよく燃やされている。いちいちうるさいとスウェンは思う。
怖くなったのだろう,子供は泣き出した。これもスウェンにとっては非常に耳障りであった。
「……スウェン! さっきから変よ。そんな人じゃないでしょう!? この子を守ってあげようとか思わないわけ?
戦いがそんなに楽しいの!?」
そんなエイダの罵声とは裏腹に,スウェンは落ち着いた口調でいた。
「ああ,楽しいよ。正直,これほどまでに興奮できることは他にない」
スウェンは手に付着した血を舐め,真ん前にいる賊に狙いを定めた。飛び掛ろうとした,その瞬間――
「危ないスウェン!」
エイダの叫び声と共に,スウェンは誰かに強烈な力で殴打された。
「ぐっ!」
痛みは全くなかったが,不意をつかれて不快であった。
背後を振り返り,鎌で突きつけようとしたが,その腕は相手に掴まれてしまった。
「お前は……誰だっ!」
目の前に立っていたのは,筋肉が立派な巨大な男。太い眉毛,艶やかな髭を生やした顏に,濃い目の化粧。目つきは悪く,着ている物もそこらのザコとは違い,なかなか見事な鎧と紫のマントを纏っていた。
明らかにその男は,賊の首領かなにかだった。
だが,男は武器らしきものは何も所持していない。スウェンは細やかな疑問を抱きつつ,自分の腕を掴んでくる手を払おうとした。しかし,男は一向に離そうとしない。スウェンはキッと,睨みつけた。
そこに,どこからか二人の男がやって来た。
「……よぅ。お二人さん,久しぶりだな」
「もう一人の金髪は,どっか消えちまったかぁ?」
片目がない白髪と,サングラスの禿頭。以前戦ったルーカスとボビーであった。
「お前ら……」
スウェンの心臓が,どくんと鳴った。
ルーカスはじろじろこちらを見るなり,スウェンを指差しながら言った。
「――こいつです! こいつが,オレらの邪魔をした男です!」
すると,首領らしき男はニヤりと笑った。スウェンの腕を解放し,低い声で言った。
「……お前か。よくここまで成長したな,スウェン・ミラー」
「……お,お前。どうして俺の名を知ってる?」
見ず知らずの男に名を呼ばれても,あまりいい気分にはなれなかった。
男は不気味に笑う。
「ふははは……。おれ様はなぁ,お前のことなら何でも知ってるんだよ」
「何言ってるんだ? 俺は貴様のことなんて知らないぞ!」
気分が悪い。スウェンはゴミは早めに処分した方がいいと考えた。
大鎌を構え,三人一気に始末しようとした。
「オレたちと戦う気かぁ? いい度胸だ」
ボビーがニヤニヤしながら言う。
「それはこっちの台詞だ。お前ら,あの時に死ねばよかったんだ。
でも安心しろよ。俺が今からぶっ殺してやるから」
「ふん。デカイ口叩くんじゃねぇ! そっちが負けたら,その女渡してもらうからな」
と言ってルーカスとボビーは,エイダの方を見た。
エイダは泣く子供を守るようにして抱きしめ,奴らを睨みつけている。なぜ賊たちが,エイダを狙っているのか。分からなかったが,今のスウェンにはそれすらどうでもよかった。
「……ご自由に」
言葉を放った直後,スウェンは再び全身が燃えるように熱くなった。目の前が,真っ赤に染まる。
周辺の家屋に,また爆弾が投げ込まれた。
ものすごく煩わしい音。そして逃げ回る町人たち,それを追いかける賊ども。
ここは戦いにふさわしい最高の場所であった。
「はは……」
声を低くして,スウェンは一人で笑った。刃先を的に向けて走り出す。
――『オ前ハ正シイ。人ヲ殺セ。血ヲ浴ビロ。オ前ハ正シイ』
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