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第二章 箱庭の発展と神の敵対者
24.箱庭の神と悪魔
しおりを挟む作戦通りに事が運んだ。
悪魔は全員箱庭の各所に、バラバラに飛ばしてやった。
そして、私とフィレオのおっさん、悪魔リヴァイの、三人はこの箱庭の中央エリアに転送したのだ。
「トンボ! ここはどこだ?!」
「なんかおっさん……驚くか覚悟決めた顔のどっちかしかしてないな」
「トンボ!!」
「わかったから、少し落ち着けよ。ここは箱庭って場所だよ」
「箱庭とは……どこだ?」
「あー……説明してもいいけど、その前にあっちをどうにかするべきなんじゃ?」
私は油断なく空を飛び周囲を伺っているリヴァイに目をやった。
リヴァイは会話をしっかり聞いていたらしく、こちらににっこりと笑顔を向けた。
「構いませんよ。私も興味があります」
「あっそう。お仲間は気にならないのか?」
「別に……仲間ではありませんからね。会ったのだって召喚された時が初ですし」
そう考えると、悪魔って日雇いバイトみたいだな。
報酬はクソだが。
「……箱庭は私の創った世界だ」
「…………は?」
「ほう……」
私の告白に正反対の反応をするおっさんとリヴァイ。
というか、おっさんは頭大丈夫か? みたいな顔すんなよ。
「トンボ……頭大丈夫か?」
「心に仕舞っとけ!」
誰の頼みでやってると思ってんだ!
「ここが貴女の創り出した世界なら……つまり貴女は神ですか?」
「一応な……まだ見習いだよ。研修中なんだ」
「トンボ……」
「心には仕舞ってるけど顔に出てんぞ!」
なんで敵の方が話わかってる風なんだよ。
そこは嘘でも「俺様はトンボを信じてるぜ」とか言っとけよ。
いや嘘はいやだけどさ。
「……神の証明は可能ですか?」
「神の証明ねぇ……例えばこんなのとか?」
私がフィンガースナップ(指パッチン)をすると、私達の周りに壁が現れる。
リヴァイの質問には言葉ではなく見える形で答えよう。
「“映像”」
その壁に各地の様子が映し出された。
しかも音声付きだ。
「これは?」
「箱庭各地に飛ばした悪魔と私のペットの戦い?」
いやこれは蹂躙か?
わかっていたけど、みんな箱庭で戦うと滅茶苦茶強いな。
「ってええぇぇ?! エメトが喋ったー?!」
壁の一つに映ったエメトが、当たり前みたいに話してる!
スゲー流暢なんですが?!
えーマジか。
恥ずかしいって。
マジかー。
「マジだよなー……マジ?」
ヤバい。
衝撃的過ぎて語彙力が死んでいる。
「トンボ! こ、こんな事が本当に……本当に起きているのか?!」
「あ、ああ、私も信じられない……あのエメトがあそこまでお喋りだったなんて」
「違う! この! ……なんだ……まるで……神話の中で語られるような戦いの事だ!」
ああ、そっちか。
私的にはエメトが喋った事の方が一大事なんだけど。
一番の懸念だったナルとソルも、セヨンのお陰で勝手知ったるダンジョンで戦えて勝利できたみたいだし、よかったよかった。
「これは……」
「後はお前だけだな?」
「参りましたね……改めて聞かせてください……貴女は何者ですか?」
仲間の全滅を目にしても、余裕の態度を崩すことなく、リヴァイが再び私に尋ねてきた。
「私の名前は真壁蜻蛉。箱庭世界の壁魔法使いだ!」
なので、比較的通りの良さそうな名乗りをあげる。
「あー……神では無かったのですか?」
「そっちは副業」
「副業で神を名乗るな馬鹿者!」
「いや待てよ……副業は薬草少女だから、神様はオマケか?」
「トンボ!」
フィレオのおっさん今日だけでどんだけ怒鳴ってんだよ。
頭の血管切れるぞ。
「誰の所為だと……!」
「ふふふっ、神がオマケとは……本当に面白い方だ」
「なんか随分余裕だな? ウチのペット達か集まってきたら勝ち目ないだろ?」
「そうですね。今のままだと一匹相手するだけでも難しいでしょうね」
今のまま?
私はリヴァイはの含みのある言い方が気になった。
「実はあと二回変身を残してるとか?」
「なんですかそれは?」
「……こっちの話だ」
宇宙の帝王的な事にはならないか。
「面白い話を聞かせてあげましょう。遥か昔……神の魂を食らった悪魔がいたそうです」
「神の魂?」
「そうです。若くまだ力の弱い神だったらしいですがね」
若く力の弱い神。
私と同じような神様見習いか?
「その神の魂を食らった悪魔は邪神に至り、新たな世界を創り出したとか……」
「邪神……」
「悪魔が何故人の魂を食らうか知っていますか?」
「あんま興味はないけど……教えてくれんの?」
「魂の持つ力を自分の力に変える為です」
魂の持つ力。
魂に焼き付き力に変わるようなもの。
「……スキルか?」
私の出した答えに、リヴァイは満足そうに頷いた。
「悪魔は他者からスキルを吸収できるのですよ。ただ魂にスキルが残る程、強く歪な魂は滅多にありませんがね」
神の魂……つまり過去に壁魔法を奪った悪魔がいたって事か。
そりゃあ神の敵対者なんて呼ばれる訳だ。
滅茶苦茶危険な奴らじゃないか!
「だからこそ、悪魔は魂を弄ぶのです。絶望や怒り等の深い感情を感じた方がスキルが残りやすいですからね……まぁ、魂を肉体に留めたりするのは一部の悪魔だけに許された力ですし、契約魔法などのややこしい手続きが必要など、結構縛りがありますがね」
ヤーデルが死んだ後も魂を縛られていたのはその為か。
「つまり何が言いたいかというと、マカベトンボさん。私は貴女が欲しくなった」
「はぁ?」
「ここまで一人の人間を欲したのは初めてです!」
「魂が欲しい……の間違いだろ?」
「いいえ! これは恋ですよ! 私と一つになりましょうトンボさん!」
リヴァイは興奮した様子で、上気した顔と潤んだ瞳を向けてくる。
悪魔に求愛されても困るんだけど。
それに私も女だから、中身だけじゃなく、外身でも評価してもらいたいね。
「残念だが私の好みは渋めのナイスミドルなんだ。それにイケメンでも人の魂を食う奴はちょっと……」
「それは本当に残念ですねぇ……ならせめて、他の邪魔が入る前に私と踊っていただけますか……お嬢さん?」
リヴァイは清々しい笑顔でギザったらしいセリフを吐きまくり、レイピアを構えた。
「それは構わないけど……お前そんなキャラだっけ?」
「恋は人を変えるんですねぇ」
いい笑顔を向けてくるリヴァイ。
これは、お前は悪魔だろってツッコミ入れた方がいいのか?
「つー訳だ。フィレオのおっさんは離れていろよ」
「話が大きすぎてついていけん。だが……負けるなよトンボ!」
走って離れていくおっさんを見送りリヴァイと対峙する。
「いきますよ、マカベトンボ!」
「来いよ、リヴァイ」
とか言いつつ先手必勝!
壁を作ってリヴァイを囲む。
しかしリヴァイは囲まれる前に、広げた翼をたたみ、器用に壁の隙間をすり抜けた。
しかも、そのままの勢いで私に高速の突きを放ってきた。
速い!
鋭いレイピアの一撃は私の額に直撃する。
が、刺さらない。
「硬いですね!」
「石頭なんでな!」
リヴァイのレイピアは、私の全身に張ってあった壁に遮られ届かない。
神様の箱庭では万全に振るえない力も、この中では違う。
権能も魔力も使い放題だ。
壁の硬さは相当だぞ。
「岩山!」
攻撃の隙を狙い、私は岩山をオーダーする。
頭の中でイメージした通り、地面から生えた巨大な岩山が、左右からリヴァイを押し潰そうとする。
「おっと! 今度は魔方陣も無しですか!」
リヴァイはそれも素早く避けて再び空に逃れる。
標的を失った岩山同士は互いにぶつかり合い砕け散った。
「礫!」
岩山の残骸をリヴァイに向けて発射する。
ちなみに口に出しているのはイメージしやすいからだ。
「大規模な魔法ほど初動の見切りは楽になる。それにこれだけ距離があれば避ける事は簡単ですよ!」
大小様々な岩石の散弾を縫うように避けるリヴァイ。
とにかく動きが速い。
「知ってるよ」
リヴァイの後ろに転移して囁いた。
散弾は私の姿を隠すための目隠しだ。
「短距離転移?! しかし、貴女も巻き込まれますよ!」
「その程度の岩が私に効くか!」
「ならよろしくお願いしますねっ!」
蜻蛉切を出して切りつけようとした手を逆に掴まれ、身体を入れ替えられる。
私の身体にガンガンと岩礫がぶつかる。
リヴァイは私の後ろに隠れて岩礫をやり過ごした。
「お前ー! 仮にも恋したとかいう相手を盾にすんな!」
「私の愛は刺激的なんです!」
「そんな愛はいらねぇ!」
くそっ!
悪魔は魔力が見えるみたいだが。
リヴァイのスピードと相まって、初動を見切られると当たらねぇ!
体術でも私に勝ち目はねぇな。
「なら! こうだ!」
私は更に攻撃の規模を大きくする事にした。
大きな攻撃が察知されるなら、更に大きくして避けきれなくしてやればいい。
地平線の先まで伸び、大地と空を覆う壁が二枚。
その二枚を支え繋げる、山よりも高く広い壁が四枚。
「これはこれは……参りましたね」
中央エリア全てを囲む箱。
それを見て呆れたように苦笑すると、リヴァイはレイピアを持った手をだらりと下げた。
「この世界で貴女に勝つのは無理そうです……大人しく諦めましょう」
潔い。
って訳じゃないよな。
「お前……本体じゃないな?」
「ふふふっ、バレてしまいましたか?」
「余裕が崩れないからな」
他の悪魔と違い、自分の命に頓着がないのが気になっていた。
だがそれも、目の前のリヴァイがコタローみたいな分身体なら説明がつく。
「お察しの通り……ここにいる私はかつて手に入れた《分身》スキルで作った分身体です」
「……本体はどこだ?」
「安心して下さい。今回召喚に応じたのは元々分身体だけですので」
「そんな事ができるのか?」
「私の本体を喚ぶには代償が足りませんでしたから……それでも召喚に応じたのは、ほんの気まぐれですよ」
気まぐれに付き合わされる方はたまったもんじゃないけどな。
「まぁ、そのお陰で貴女に会えたのですから……ヤーデル様には感謝しています。契約を果たしてあげたい所ですが」
「無理だな」
「ですよねー」
本当の事を言ってる確証はないが、なんとなく嘘ではない気がした。
「じゃあ、とりあえずお前を潰せば」
「ラプタス領を狙う人間はいなくなりますね。ですが、私はいつか貴女を手にいれ」
それが分かれば十分。
「なら潰れてよし!」
壁が勢いよく収縮していく。
私も一緒に中にいるけど、私は壁を自由に出入りできるから問題はない。
「最後まで言わせて欲しいのですが?」
「必要なし」
「酷い方だ……では、またいつかお会いしましょう」
こっちは二度と会いたくない。
「壁魔法、赤い箱」
「あ、これ結構エグいで」
リヴァイの言葉が途中で消える。
手のひらサイズにまで収縮された箱に潰され分身体が消えたからだ。
確かにエグい。
盗賊共にやらなくてよかった。
でも、ようやく。
「終わったー!」
スゲー疲れた。
なんかストーカーみたいな奴が出来ちゃったけど……。
なんにせよ。
ラプタスが無事でよかった。
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