夢想剣 黄泉蜻蛉

白鯨

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黄泉蜻蛉②

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 秘靭録を書き始め数か月。
 友人知人に古今東西様々な秘剣とその逸話を聞いて回っていたが、どこからかその噂を聞き付けたらしく、是非自分の話も聞いてくれと私と似たような趣味の連中が向こうから接触してくるようになった。
 その日もまた、『秘剣について伝え残したい』と書かれた文が私の元に届いた。
 私は早速返事を返して待ち合わせの場所と日時を決めて、会いに行った。
 どんな秘剣の話が聞けるのか心躍ったが、一番気になったのは、聞かせたいでも語りたいでもない、『伝え残したい』という一文だ。いったい何を残したいというのか、私はその一文に興味を惹かれていた。

 待ち合わせの茶屋、その入り口に置かれた縁台に腰かけて茶を啜っている男がいた。
 その男以外客はいない。
 どうやらこの男が待ち合わせをしていた『秘剣』の話を聞かせてくれるという男らしい。

「お待たせしてすまない」と頭を軽く下げながら、私は男の風采を見て固まってしまっ
た。
 顔は蝋を塗ったかのように蒼白で、骨ばって痩せこけており、目の下にはまるで墨入れでもしたかのように深く黒々とした隈ができていた。
 眼だけが生き生きと動き、ぎょろりとこちらを見据える。
 不気味な、幽鬼のような男だった。

「いえ、おかげで話をする前に、茶と団子をゆっくり楽しめました」

 男はそう言って口角を歪めて笑った。できれば人違いであってほしいという私の願いは、その言葉で脆くも崩れ去った。だが、思っていたよりその言は穏やかで、話が聞けるのならば、この際見てくれはどうでもいいのだ。
 そう思い直しつつもさっさと終わらせたい気持ちもあり、私は少しだけ男と距離を開けて同じ縁台に腰かけ、店員に茶を注文すると、「では、早速お聞かせ願えますか」と早々に話を切り出した。

「はい、これはある秘剣と―――」

 ある藩主の一族に代々に仕えてきた秋津家に生まれた男の話。
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