アラフォーの悪役令嬢~婚約破棄って何ですか?~

七々瀬 咲蘭

文字の大きさ
21 / 150
第一部

第20話 衝撃のカーテシー!☆

しおりを挟む
「どうしよう、何を言ったらいいのかしら……」
「大丈夫です、お嬢様。誰もお嬢様の挨拶に期待はしてません。はい、お飲み下さいませ」 
「そうね……」
 夜会、当日。
 ゲンメ公の控え室でウロウロ行ったり来たり、落ち着かない私にルーチェがお茶を淹れてくれた。

「ところで、あれは持ってきてくれた?」
「はい、50部ほどですが」
「どこまで効果あるかしら。気づいてもらえるといいけど」
「取り敢えず、各控え室や談話室に置いてきました。版元がエスト公ですから、まず怪しまれないとは思いますけど…」


 無事、誌面にはとりあげてもらえた。
 ミスターユッカからの返信は人柄通り、一般的な穏やかな忠告だった。

『……私に相談して下さってありがとう。女性同士のお付き合いは、私ではわからないところがありますが、恋情がはいると男女問わず複雑なことになるものです。
 トラブルになりそうな時は一人で解決しようとせず、周囲の人と相談されるのが一番かと思います。私が何かリエージュさんのためにできることがあると良いのですが。
 貴女の思いが届いて誰も傷つかないよう、祈ってます』
 
 くぅ~っ。
 何か私にできることって……。
 ミスターユッカからのワードが嬉しい。もうここでとりあげてもらえたから充分よっ。

 あとは、これを会場にばらまいて、話題にしてもらうor当人たちに気づいてもらえば目的達成ね。
 

 まぁ夜会で直接、ヴィンセント様かアルルに会えればいいけど、会う前に蛇姫が罠をかけていたらアウトだもの。
 会ってプライベートな会話が出来るかも微妙だし。

 どうやったかは知らないけど、事前に銀の公子みたいに捕まえられてしまったら、蛇姫の餌食になっちゃう……。

「そろそろ時間ですよ。お嬢様」
 ルーチェに背中を押されて、夜会の会場へ移動した。


※※※


 夜会の会場は楽士の奏でる明るい音楽につつまれ、人工の灯りがぼんやりと幻想的に光り、季節の花々で綺麗に飾られていた。
 大公宮では2番目の大きさの広間が開放され、中庭に面した扉が開かれて、綺麗に手入れされた庭の広場に美味しそうな料理が盛られた机が設置されている。
 とても華やかな雰囲気に満ち溢れ、また着飾った人の多さに気圧され、私は思わず足がすくんだ。


 ゲンメの野菜畑ではこうもいかないわね……。

 田舎者丸出しな感じで、やたらキョロキョロしてしまい、我ながら不審人物……。

 だって、こないだ学園のパーティーは行ったけど所詮、良いところの子女の集まりに過ぎない内輪のパーティーだった。
 こんな国の偉い人が沢山集まるようなところは、あの会議以来初めてなんだもの。

 あ、今日はPTAスーツじゃないよ。

 
 流石にルーチェに止められたの。
 
 会場内では誰もそんな格好はしてなかったから、今回は本当に着てこなくて良かったわ。


 今日はちゃんとドレスを着用。
 まぁ、何にも飾りもふわふわもしてない、そこらの軍服や礼服よりも遥かに地味なストンとしたシンプルなドレスだけど、いいの。

 予定通り、モンチッチ路線を目指して今日は乗り込んできたんだから。

 思いきって髪の毛もバッサリショートにしちゃったわ。
 どうせ、毛先痛みまくってたし。軽くて快適。  
 食生活もマルサネの肉と脂だらけの食事から、野菜中心のさっぱり志向に変わったせいか、流石十代、肌も艶々になってきた。
 マルサネを猿姫からモンチッチ化計画は順調、順調。ちょっとは見れるようになってきたと思うのね。
 ルーチェは毎日見てるから何も言わないけど、時々会ってるだけの人は「?!」となるから、きっと変化が多少はあるにちがいない。



 あ、エスト大公の挨拶が始まった。
 
 相変わらず、大公の声は低音のぐっとくるエエ声ね。
 ……こないだも思ったけど、どこかで聞いたことがあるような声なのは、やっぱり声優さんの声に似てるからだろうか。



 大公から回復祝いの宴に対する謝辞があり、宴は始まった。
 私が怖れていた四公の挨拶はこれから。

 四公が大公の前に並ぶ。
 カルゾ女公ソーヴェ様をエスコートしてきたのは金の公子……あら?アルルがいない。ヴィンセント様がてっきりエスコートしてくると思ったのに。
 
 すでに蛇姫に捕らわれたのではないかと不安がよぎるが、ヴィンセント様の表情がそれにしては落ち着いているのを見て、多分大丈夫と自分を納得させる。 
 
 私が動揺してる間に蛇姫が進み出て、イスキア公の名代として挨拶をした。ゲンメ公の名代である私も後ろからくっついて、見よう見まねでカーテシーをする。

 これが、本当の猿真似よ。知らんけど、こんな感じ?
 片足を斜め後ろの内側に下げ、もう片膝を軽く曲げて背筋を伸ばして頭を下げる。

 くっ、こんな格好したことないからバランスがっ。なんとか転ばずにできただけ、褒めて欲しいわ……。 


「まさか……!猿姫……マルサネ様がカーテシーだって?」
「ありえないものを見たわ!」
「あの、病気の噂は本当だったのね……」
「なんか、雰囲気変わってない?髪型と衣装のせいかしら?」
  会場がざわついたようだが、そんなに珍しいもんだった?本当に今までの普段のマルサネって一体…?


 ソーヴェ様が爽やかに御礼を述べられ、蛇姫カルドンヌは腐っても公女。口調は相変わらずねっちょりだが、「御二人の元気なお姿が拝見できてユッカの民も喜んでおりましょう」なんてシャアとシャアと口上を述べる。

 今回の騒ぎの元の刺客を差し向けたの、イスキア家じゃないの?先日、水軍まで差し向けようとしてたのに、張本人が被害者の回復の宴によくも堂々と出てこれるわね。

 あぁ、逆か。エスト大公がわざとイスキア家を招待したのかもしれないわ。

 なんて、思ってるうちに私の番になっちゃったわ!

 あ、頭真っ白……。

 私、律子は昔から人前に出ると緊張で思わず貧乏揺すりや変顔しちゃう、あがり症なのよ~!

 あ、きたきた。カタカタするぅ~。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

二度目の子育て~我が子を可愛がったら溺愛されました

三園 七詩
恋愛
私は一人娘の優里亜の母親だった。 優里亜は幼い頃から体が弱く病院でほとんどの時間を過ごしていた。 優里亜は本が好きでよく私にも本の話をしてくれた。 そんな優里亜の病状が悪化して幼くして亡くなってしまう。 絶望に打ちひしがれている時事件に巻き込まれ私も命を落とした。 そして気がつくと娘の優里亜が大好きだった本の世界に入り込んでいた。

【完結】私が誰だか、分かってますか?

美麗
恋愛
アスターテ皇国 時の皇太子は、皇太子妃とその侍女を妾妃とし他の妃を娶ることはなかった 出産時の出血により一時病床にあったもののゆっくり回復した。 皇太子は皇帝となり、皇太子妃は皇后となった。 そして、皇后との間に産まれた男児を皇太子とした。 以降の子は妾妃との娘のみであった。 表向きは皇帝と皇后の仲は睦まじく、皇后は妾妃を受け入れていた。 ただ、皇帝と皇后より、皇后と妾妃の仲はより睦まじくあったとの話もあるようだ。 残念ながら、この妾妃は産まれも育ちも定かではなかった。 また、後ろ盾も何もないために何故皇后の侍女となったかも不明であった。 そして、この妾妃の娘マリアーナははたしてどのような娘なのか… 17話完結予定です。 完結まで書き終わっております。 よろしくお願いいたします。

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた

夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。 そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。 婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...