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10章 死霊術師の覚悟
8-1 北へ
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8-1 北へ
「うぅ~~~、さぶいなぁ」
俺は肩を縮こまらせながら、ずずっと鼻をすすった。この寒さじゃ、鼻水まで凍り付きそうだ。だれだ、地上に出れば、暖かな日差しとそよ風を感じられるなんて言ったやつは?
(……俺だけど)
ドワーフの町、カムロ坑道を出てから一日が過ぎた。あの大穴を境に、山脈は雪の積もった下り坂へと転じた。登りじゃない分、行きよりよっぽど楽だ、なんて思っていたんだけど……考えが甘かった。北に近づいたせいか、寒さが今までの比じゃなくなったのだ。
「同じ国内なのに、ここまで差が出るもんかね……」
俺がぼやくと、それを諫めるように、胸元でアニがチリンと揺れた。
『北部地方は山脈が気流を遮る関係などで、同緯度帯より気温が低い傾向にありますから。それより、気を付けてくださいよ。またあのモンスターがいないとも限らないので』
「わかってるよ。さすがに二度目はごめんだ」
『まったく、うかつでした。目と寒さという二点から、スニードロを連想することができないなんて。字引として、あれほど自分を恥じたことはありません……主様、十分、じゅうぶん警戒をしてください。同じ轍を踏むなど、絶対にあってはなりませんよ』
「わーってるってば。だからコレを付けてるんだろ」
俺は目にかけたでっかいゴーグルを、こんこんと指で小突いた。ドワーフの町を出る前に仕入れたシロモノだ。これがあれば、目に飛び込んでくるスニードロ対策はバッチリだという。ただ、今の天気は晴れなので、吹雪に紛れて飛ぶスニードロが来ることは無いはずなんだけども……ゴーグルを取ろうとすると、みんなが怖い目で見てくるので外すに外せなかった。
雪が分厚く積もった山道は、歩きにくいことこの上ない。ボスボスと踏みしめる足だけに血流が集まったせいか、俺は太ももが痒くてしょうがなかった。
「ぬぅぅ~……」
内ももをゴシゴシこする俺を見て、ライラが首をかしげた。
「桜下、何してるの?」
「いや、足がかゆくってさ……」
「ふーん。ライラがかいてあげよっか?」
「え゛っ。いや、それはちょっと……」
さすがに、内ももを幼女にさすらせるのは……
「ならさぁ……」
うひゃっ。耳元にぽそぽそとした声が吹きかけられる。何事かと首をひねると、アルルカが背中に引っ付いて、耳にマスクのついた口元をよせていた。ニヤニヤよからかうような笑みを浮かべて……またこいつか!
「あたしが、あんたの足をさすってあげよっか?ほーら、こうしてズボンを脱がしてぇ……」
つやっぽい声をだすアルルカ。やつの腕が、俺の腰に回され……!?
「っ!うおぉっ!」
俺は勢いよく飛び退ると、腰元の剣に手を伸ばした。そんな俺を見て、アルルカはけたけた笑っている。
「きゃはは!なぁによ、そんなにビビんなくてもいいじゃない」
「バカ、そうじゃない!後ろだ!」
「え?後ろ?」
アルルカが後ろを振り向いた瞬間、足元の雪が爆発した。ドカーン!
うわぁ!俺とライラとアルルカの三人は、飛んできた雪をドサドサ、しこたま被った。雪煙をもうもうとまき散らしながら現れたのは、二メートルはありそうな、真っ白な毛でおおわれた巨人だった。
「ゆっ、雪男!?」
『違います!あれは……イエティ!』
あ、その名前は聞いたことあるな。未確認生物だとか……うわあ、どうしよう。今この瞬間に確認してしまった。なんにしても、人間に友好的な印象はない。案の定イエティは俺たちを睨むと、黄色い歯を剝き出しにして吠えた。
「ヴォオオオオ!」
くそ!せめてもの威嚇にと、俺は剣を抜こうとした。が、鞘の途中で、何かに引っかかったようにガッ!と止まってしまった。しかも運が悪いことに、俺はその拍子に雪に足を取られ、無様にひっくり返ってしまった……どさっ。バキッ!
「ぶへっ」
「桜下殿!」
「下がってて!」
エラゼムがさっと俺たちの前に滑り込み、フランがイエティへ突撃する。
イエティは太い腕を思い切り突き出してきたが、フランは単調なパンチを余裕でかわすと、逆に腕を踏み台にして、イエティの顔面に飛び膝蹴りを食らわせた。
「ヴァアァ!?」
真っ赤な血を鼻からふき出しながら、イエティがバランスを崩す。が、すぐにギロリとフランを睨むと、その体勢のままで反撃を繰り出した。巨大な手のひらをぬうっと伸ばすと、人形でも掴むようにフランをわしづかみにする。ベキベキベキッ!
ああっ!嫌な音が、フランの全身から発せられた。
「ファイアフライ!」
ウィルが叫ぶように呪文を唱えた。蛍光色の火の玉が毛皮に押し付けられ、イエティは驚いたように叫んで、フランを手放した。そのまま巨体が雪に倒れる。ズズーン!
フランはくるりと宙返りして雪の上に着地したが、両腕はだらりと垂れさがったままになっている。よく見ると、ところどころ関節ではないところで曲がっている気がした。
「フランさん!大丈夫ですか!」
「任せて!」
ウィルが作った隙をついて、フランは足だけで高々と飛び上がると、倒れたイエティの顔面を踏み付けるように蹴飛ばした。
「……ヴァアアア!」
怒ったイエティが跳ね起き、フランを殴りつけようとする。が、フランはさっと体をかがめると、再び跳躍して、両足をイエティの首に絡みつかせた。
「あああアアァッ!」
フランは体ごと投げ出すように、イエティの背後へと倒れこんだ。フランの怪力に引っぱられて、イエティの上半身がぐらりと揺れる。
「やああああぁ!」
イエティの体が浮いた!フランは足だけの力で、イエティの巨体を投げ飛ばしてしまったのだ。し、信じられない……
「ヴォオオオオォォォォ……」
イエティが宙を舞い、街道を飛び越える。白い巨人は断末魔のような雄たけびを上げながら、雪の積もった斜面を転がり落ちていった。
「……倒したか?」
「死んだかどうかはわかりませぬが……少なくとも、すぐには戻っては来れぬでしょう」
エラゼムは白い雪煙がもうもうと舞う斜面をのぞき込んで、少し警戒を緩めたが、それでも油断なく様子をうかがっている。俺は尻がじんわり冷たいことに気付いて、ようやく腰を上げた。抜きかけだった剣を鞘に戻して……
「ん、あれ……?あ!?」
剣をもとに戻そうとして、俺は大声を上げた。ライラがびっくりした様子で、俺の裾を引っ張る。
「桜下、どうしたの?どこか怪我した?」
「いや、そうじゃないけど……見てくれよ、これ」
俺は手に握った、半分以下になってしまった剣を見せた。剣は根元の十数センチを残して、ばっきりと折れてしまっていた。
「ありゃ……折れちゃってるね」
「ああ……たぶん、転んだ時だな」
中途半端に抜けていたせいもあって、その拍子にやってしまったんだろう。そういえば、バキって音がしていたような気もする。
「あーあ……これじゃ、さすがに使い物にならないな……」
剣の断面を眺めて、エラゼムが言う。
「ふむ……どうやら、鞘の中で錆が回っていたようです。そのせいで脆くなっていたのでしょう」
「あー、だから途中で引っかかったのか……」
けど思い返せば、俺はろくすっぽ剣の手入れをしてこなかった。エラゼムはまめに剣を拭いたりしていたもんな。まさに身から出た錆ってわけだ。当然と言えば、当然の結果かもしれない。
「うーむ。ついに武器を失ってしまったか……」
まさか、戦いでも何でもないところで力尽きるなんて。こいつとは確か、フランと出会った村以来の付き合いだった。あの時拾った剣を、なんだかんだここまで持ってきてしまったんだ。そこまで重宝していたわけではないけれど、旅の道連れを失くしたみたいでなんだか悲しい……
「桜下、元気出して?」
ライラがよしよしと背中をさすってくれる。幼女に慰められて複雑な気分だったが、それでも俺は少し元気になった。
「ありがとよ……そうだな。失った戦友を嘆くのは、山を無事に下りてからにしよう。今はとにかく、ここを離れないとな」
さっきのイエティがもしも無事だったら、また襲ってくるかもわからない。ここでぼやぼやしている暇はないだろう。俺は仲間の傷を治すべく、激闘を終えたフランのもとへと向かった。
「フラン、大丈夫……な、わけないな。うん、見ればわかる」
「うん」
フランの腕は、一言で言うとバキバキだった。肘の曲がり方が逆な気がする……
「……フランには、怒られちゃうかもしれないんだけどさ。こういう時は、つくづくフランがゾンビでよかったって思うよ」
「……うん。わたしも、そう思う」
俺が困ったようににやりと笑うと、フランも珍しく、ふふっと笑った。
フランの胸に手を当て、ファズの呪文を唱えると、フランの腕はすぐに元通りになった。
「フラン、動けそうか?すぐここを離れたほうがいいと思うんだけど」
「うん、わたしも同じ。たぶんあいつ、死んでないよ。落ちていく時、わたしの顔をしっかり見てたから。あの目、いつか仕返ししてやるって目だった」
ぶるるっ。俺の背中に、寒さだけじゃない震えが走った。一刻も早く山を下りたほうがよさそうだ。
それから俺たちは、十二分に周囲を警戒しながら、だがなるべく急いで山を下っていった。中腹あたりに差し掛かると、道幅がぐっと広がり、傾斜がだいぶ緩やかになった。
「これなら、馬に乗って走れそうだな」
ライラが呼び出したストームスティードに乗り込むと、俺たちはひとっとびで、コバルト山脈を駆け下りたのだった。
つづく
====================
読了ありがとうございました。
続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。
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俺は肩を縮こまらせながら、ずずっと鼻をすすった。この寒さじゃ、鼻水まで凍り付きそうだ。だれだ、地上に出れば、暖かな日差しとそよ風を感じられるなんて言ったやつは?
(……俺だけど)
ドワーフの町、カムロ坑道を出てから一日が過ぎた。あの大穴を境に、山脈は雪の積もった下り坂へと転じた。登りじゃない分、行きよりよっぽど楽だ、なんて思っていたんだけど……考えが甘かった。北に近づいたせいか、寒さが今までの比じゃなくなったのだ。
「同じ国内なのに、ここまで差が出るもんかね……」
俺がぼやくと、それを諫めるように、胸元でアニがチリンと揺れた。
『北部地方は山脈が気流を遮る関係などで、同緯度帯より気温が低い傾向にありますから。それより、気を付けてくださいよ。またあのモンスターがいないとも限らないので』
「わかってるよ。さすがに二度目はごめんだ」
『まったく、うかつでした。目と寒さという二点から、スニードロを連想することができないなんて。字引として、あれほど自分を恥じたことはありません……主様、十分、じゅうぶん警戒をしてください。同じ轍を踏むなど、絶対にあってはなりませんよ』
「わーってるってば。だからコレを付けてるんだろ」
俺は目にかけたでっかいゴーグルを、こんこんと指で小突いた。ドワーフの町を出る前に仕入れたシロモノだ。これがあれば、目に飛び込んでくるスニードロ対策はバッチリだという。ただ、今の天気は晴れなので、吹雪に紛れて飛ぶスニードロが来ることは無いはずなんだけども……ゴーグルを取ろうとすると、みんなが怖い目で見てくるので外すに外せなかった。
雪が分厚く積もった山道は、歩きにくいことこの上ない。ボスボスと踏みしめる足だけに血流が集まったせいか、俺は太ももが痒くてしょうがなかった。
「ぬぅぅ~……」
内ももをゴシゴシこする俺を見て、ライラが首をかしげた。
「桜下、何してるの?」
「いや、足がかゆくってさ……」
「ふーん。ライラがかいてあげよっか?」
「え゛っ。いや、それはちょっと……」
さすがに、内ももを幼女にさすらせるのは……
「ならさぁ……」
うひゃっ。耳元にぽそぽそとした声が吹きかけられる。何事かと首をひねると、アルルカが背中に引っ付いて、耳にマスクのついた口元をよせていた。ニヤニヤよからかうような笑みを浮かべて……またこいつか!
「あたしが、あんたの足をさすってあげよっか?ほーら、こうしてズボンを脱がしてぇ……」
つやっぽい声をだすアルルカ。やつの腕が、俺の腰に回され……!?
「っ!うおぉっ!」
俺は勢いよく飛び退ると、腰元の剣に手を伸ばした。そんな俺を見て、アルルカはけたけた笑っている。
「きゃはは!なぁによ、そんなにビビんなくてもいいじゃない」
「バカ、そうじゃない!後ろだ!」
「え?後ろ?」
アルルカが後ろを振り向いた瞬間、足元の雪が爆発した。ドカーン!
うわぁ!俺とライラとアルルカの三人は、飛んできた雪をドサドサ、しこたま被った。雪煙をもうもうとまき散らしながら現れたのは、二メートルはありそうな、真っ白な毛でおおわれた巨人だった。
「ゆっ、雪男!?」
『違います!あれは……イエティ!』
あ、その名前は聞いたことあるな。未確認生物だとか……うわあ、どうしよう。今この瞬間に確認してしまった。なんにしても、人間に友好的な印象はない。案の定イエティは俺たちを睨むと、黄色い歯を剝き出しにして吠えた。
「ヴォオオオオ!」
くそ!せめてもの威嚇にと、俺は剣を抜こうとした。が、鞘の途中で、何かに引っかかったようにガッ!と止まってしまった。しかも運が悪いことに、俺はその拍子に雪に足を取られ、無様にひっくり返ってしまった……どさっ。バキッ!
「ぶへっ」
「桜下殿!」
「下がってて!」
エラゼムがさっと俺たちの前に滑り込み、フランがイエティへ突撃する。
イエティは太い腕を思い切り突き出してきたが、フランは単調なパンチを余裕でかわすと、逆に腕を踏み台にして、イエティの顔面に飛び膝蹴りを食らわせた。
「ヴァアァ!?」
真っ赤な血を鼻からふき出しながら、イエティがバランスを崩す。が、すぐにギロリとフランを睨むと、その体勢のままで反撃を繰り出した。巨大な手のひらをぬうっと伸ばすと、人形でも掴むようにフランをわしづかみにする。ベキベキベキッ!
ああっ!嫌な音が、フランの全身から発せられた。
「ファイアフライ!」
ウィルが叫ぶように呪文を唱えた。蛍光色の火の玉が毛皮に押し付けられ、イエティは驚いたように叫んで、フランを手放した。そのまま巨体が雪に倒れる。ズズーン!
フランはくるりと宙返りして雪の上に着地したが、両腕はだらりと垂れさがったままになっている。よく見ると、ところどころ関節ではないところで曲がっている気がした。
「フランさん!大丈夫ですか!」
「任せて!」
ウィルが作った隙をついて、フランは足だけで高々と飛び上がると、倒れたイエティの顔面を踏み付けるように蹴飛ばした。
「……ヴァアアア!」
怒ったイエティが跳ね起き、フランを殴りつけようとする。が、フランはさっと体をかがめると、再び跳躍して、両足をイエティの首に絡みつかせた。
「あああアアァッ!」
フランは体ごと投げ出すように、イエティの背後へと倒れこんだ。フランの怪力に引っぱられて、イエティの上半身がぐらりと揺れる。
「やああああぁ!」
イエティの体が浮いた!フランは足だけの力で、イエティの巨体を投げ飛ばしてしまったのだ。し、信じられない……
「ヴォオオオオォォォォ……」
イエティが宙を舞い、街道を飛び越える。白い巨人は断末魔のような雄たけびを上げながら、雪の積もった斜面を転がり落ちていった。
「……倒したか?」
「死んだかどうかはわかりませぬが……少なくとも、すぐには戻っては来れぬでしょう」
エラゼムは白い雪煙がもうもうと舞う斜面をのぞき込んで、少し警戒を緩めたが、それでも油断なく様子をうかがっている。俺は尻がじんわり冷たいことに気付いて、ようやく腰を上げた。抜きかけだった剣を鞘に戻して……
「ん、あれ……?あ!?」
剣をもとに戻そうとして、俺は大声を上げた。ライラがびっくりした様子で、俺の裾を引っ張る。
「桜下、どうしたの?どこか怪我した?」
「いや、そうじゃないけど……見てくれよ、これ」
俺は手に握った、半分以下になってしまった剣を見せた。剣は根元の十数センチを残して、ばっきりと折れてしまっていた。
「ありゃ……折れちゃってるね」
「ああ……たぶん、転んだ時だな」
中途半端に抜けていたせいもあって、その拍子にやってしまったんだろう。そういえば、バキって音がしていたような気もする。
「あーあ……これじゃ、さすがに使い物にならないな……」
剣の断面を眺めて、エラゼムが言う。
「ふむ……どうやら、鞘の中で錆が回っていたようです。そのせいで脆くなっていたのでしょう」
「あー、だから途中で引っかかったのか……」
けど思い返せば、俺はろくすっぽ剣の手入れをしてこなかった。エラゼムはまめに剣を拭いたりしていたもんな。まさに身から出た錆ってわけだ。当然と言えば、当然の結果かもしれない。
「うーむ。ついに武器を失ってしまったか……」
まさか、戦いでも何でもないところで力尽きるなんて。こいつとは確か、フランと出会った村以来の付き合いだった。あの時拾った剣を、なんだかんだここまで持ってきてしまったんだ。そこまで重宝していたわけではないけれど、旅の道連れを失くしたみたいでなんだか悲しい……
「桜下、元気出して?」
ライラがよしよしと背中をさすってくれる。幼女に慰められて複雑な気分だったが、それでも俺は少し元気になった。
「ありがとよ……そうだな。失った戦友を嘆くのは、山を無事に下りてからにしよう。今はとにかく、ここを離れないとな」
さっきのイエティがもしも無事だったら、また襲ってくるかもわからない。ここでぼやぼやしている暇はないだろう。俺は仲間の傷を治すべく、激闘を終えたフランのもとへと向かった。
「フラン、大丈夫……な、わけないな。うん、見ればわかる」
「うん」
フランの腕は、一言で言うとバキバキだった。肘の曲がり方が逆な気がする……
「……フランには、怒られちゃうかもしれないんだけどさ。こういう時は、つくづくフランがゾンビでよかったって思うよ」
「……うん。わたしも、そう思う」
俺が困ったようににやりと笑うと、フランも珍しく、ふふっと笑った。
フランの胸に手を当て、ファズの呪文を唱えると、フランの腕はすぐに元通りになった。
「フラン、動けそうか?すぐここを離れたほうがいいと思うんだけど」
「うん、わたしも同じ。たぶんあいつ、死んでないよ。落ちていく時、わたしの顔をしっかり見てたから。あの目、いつか仕返ししてやるって目だった」
ぶるるっ。俺の背中に、寒さだけじゃない震えが走った。一刻も早く山を下りたほうがよさそうだ。
それから俺たちは、十二分に周囲を警戒しながら、だがなるべく急いで山を下っていった。中腹あたりに差し掛かると、道幅がぐっと広がり、傾斜がだいぶ緩やかになった。
「これなら、馬に乗って走れそうだな」
ライラが呼び出したストームスティードに乗り込むと、俺たちはひとっとびで、コバルト山脈を駆け下りたのだった。
つづく
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読了ありがとうございました。
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