じゃあ俺、死霊術《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。

万怒 羅豪羅

文字の大きさ
580 / 860
14章 痛みの意味

10-3

しおりを挟む
10-3

「いくぞ!ディストーションハンド・オーバードライブ!」

ブワァァァー!俺の右手から溢れ出る霊波が、ダンジョンの壁を伝って、隅々まで行き渡っていく。出力を上げろ!このダンジョンのすべてに、俺の魔力を響かせるんだ!

「おりゃあああ!」

俺から溢れ出す霊波に当てられ、仲間たちはぶるりと震えた。フランの髪はバサバサと波打っているし、ウィルのスカートはひらひらと舞っている。一瞬意識が逸れそうになったが、集中だ、集中!
やがて、全ての浮かばれぬ魂と“繋がった”のを感じた。俺は彼ら一体一体に語り掛ける。そして、協力して欲しい旨と、その詳細を伝えた。
……。

「……ロウラン」

「うまくいったの?」

「ああ。全員、協力してくれるってさ」

「よかったぁ。さすがダーリンなの♪それじゃあ、次はアタシに、いい?」

「ふう。よし、わかった」

これから何度も魔力放出を繰り返すことになるからな、頑張らないと。だが俺は、魔力の量だけはべらぼうなようだからな。なぁに、何とかしてみせるさ。
俺はカバンの中から、群青色の箱を取り出した。これは、ロウランの“棺桶”だ。この中には、ロウランの“本体”が入っているんだけど……驚くほど軽い。中からはカサッっと乾いた音がするし。

「……ロウラン。やっぱこれ、開けちゃダメだよな?」

「え?うぅーん……恥ずかしいから、あんまり見てほしくないけど……ハダカが見たいなら、いま脱いであげるの。ほらほら」

「わかった、いいから。悪かった!それよりほら、やるぞ!」

俺はくねくねしているロウランを無視して、箱に右手を当てた。そして、強く魔力を込める。

「んっ……感じるの。ダーリンの強い魔力が、アタシの中に入ってくる……」

霊体のロウランは目を閉じて、その感覚に集中しているようだ。が、すぐにハッとして目を開く。

「あっ、こうじゃなかったの。こほん……」

「……?」

「あぁーん♪ダーリンのあっついのが、どくどく入ってくるぅ」

な、なんだぁ?俺は全身から力が抜けて、箱を落としそうになってしまった。気が遠くなりそうだ……ウィルは眉を吊り上げて目を見開き、反対にフランは目をすっと細めて、眉間にしわを寄せた。エラゼムはむせている。

「いやぁーん。感じちゃうのぉ~」

「……いちおう訊くけど、ロウラン。それは、なんだ?」

「なにって、ダーリンの魔力を注がれてる感想なの。どきどきした?」

「まあ……いろんな意味で、動揺はしてるけど……」

「にひひ♪なによりなの。あ~ん、お~ん」

……時々、ロウランが大人なのか子どもなのか、分からなくなる時があるよ。今がまさにそれだけど。ロウランは悩ましい(?)声を上げながら体をよじり、時折ちらっとこちらを見た。俺はどう反応したらいいのか分からず、ぎこちない笑みを浮かべるしかないが……

「いやぁーん。うぅ~ん!」

「黙ってることはできないの!」「んですか!」

髪を逆立てたフランとウィルの剣幕に押されて、ロウランはようやく大人しくなった。

「うん、力を感じる。みなぎってきたの!」

しばらく魔力を注ぐと、ロウランは目に見えて元気になった。具体的には、体が透けなくなった。心なしか、瞳の色も濃くなった気がする。

「ダーリンの力、やっぱりすごいの!」

「そりゃどうも。で、いけそうか?」

「ばっちり!それじゃ、さっそく始めるよ!……ライノ・ライナー!」

ロウランが両腕を突き出すと、どろりと溶けていた元鉄格子が、ぴくぴくと動き始めた。アメーバのように動く金属は、次第に集まって、真ん丸の球体になった。と、ある一点だけが伸びて、鋭く細くなっていく。丸から、円錐形になったぞ。さらにさらに、螺旋状の溝が現れると……これ、もしかしなくても。ドリルだ!

「いっけー!」

ロウランが腕を振ると、鋼鉄のドリルは、激しく回転を始めた。そして天井にぶっ刺さる!ギャガガガガガ!

「ぐわ!み、耳が……」

天上の石材が砕かれると、密室の地下空間に轟音が響き渡る。あまりの音に、頭蓋骨ごと脳ミソが振動しているみたいだ。ロウラン以外のみんなは、耳を押さえてうずくまった。ああ、けどエラゼムには同情するな。塞ぐべき耳がないので、何もできずにいる。

「……だ……から……の!」

「なに!?なんだって!」

「まだ……ほうがとけ……いから、カチカチ……のぉー!」

ロウランは顔を赤くして声を張り上げているが、音がすごすぎて全然聞き取れない。何となくだけど、まだ防御魔法が解けていないから、ドリルがカチカチだって言いたいのか?

(けどほんとうに、すごいパワーだ)

ドリルはあっという間に天井を砕き、その先の土へと進む。とたん、猛烈な量の石と土砂が、ドバドバと排出されはじめた。うひゃあ、酷い土煙だ!ごほ、エホ!

「このままじゃ、五分で埋もれちまうな。よし、“みんな”!作業を始めるぞ!」

俺が呼びかけると、ダンジョン中のあちこちから返事があがった。
声の主は、さっきのオーバードライブで繋がった、死霊たちだ。老魔道士の罠に嵌り、地上への未練を遺して死んだ彼ら。そんな彼らに、俺は協力を要請した。結果は、二つ返事で了承してくれたよ。彼らの望みは、ただ一つ。この暗い迷宮を、抜け出すことだったから。

「人海戦術だ!そーら、運べ運べ!」

ロウランの計画は、単純なものだった。つまり、地上まで穴を掘って脱出しようってわけだな。確かにそれができるなら、一番確実な方法だ。が、問題もある。穴を掘れば、その分の土砂が出てくる。この狭い部屋に、それだけの土砂を置いておくスペースはない。

「だからこそ、人手を増やせる俺の能力ネクロマンスが生きてくる!」

死霊たちの力は極めて微弱だったが、ちりも積もればなんとやら。当然、俺や仲間たちも働くから、全体ならかなりの労働力になるはずだ。さあ、こっからはひたすら、土木作業!
ドリルが次々に掻き出す土やがれきを、ひたすら通路の奥へ、奥へと押しやっていく。俺やウィル、それに死霊たちは並み以下の力しか出せないので、バケツリレー形式だ。だけどフラン、エラゼム、アルルカの並み以上組は、巨大ながれきをゴトンゴトンと転がしていったり、あるいは魔法で凍らせて、一気に運び出したりと、さながら重機のように活躍した。

「ったく、なんであたしがこんなことを……あーあー、土埃、泥まみれ!ガキじゃあるまいし、なんで泥んこになって土遊びしなきゃなんないのよ」

「アルルカ、文句言うなよ。ここを出られなかったら、一生風呂にも入れないんだぞ」

「ふんっ。いっそ、ダンジョンの奥底にでも引きこもってみる?あんたの最後の血の一滴まで、あたしがたっぷり愛してあげるわよ?」

「いってろ!グダグダいわずに、手を動かせよ、手を!」

するとしばらくの間、アルルカは足だけでがれきを運びはじめやがった。くぅー、腹立つなぁ!
文句ばっかりのヴァンパイアと違って、死霊たちは黙々とよく働いてくれる。もっとも、口がきけないからというのもあるが。死霊たちの恰好はめいめいだ。完全に白骨化しているもの、ボロボロだが衣服が残っているもの、霊体のもの……

「こうして集まってみると……どれだけの数の人が犠牲になったのか、改めて実感しますね……」

「ああ。そのおかげで、俺たちの作戦は、こうして順調だ。皮肉なもんだよ」

けれど、順調に思えたトンネル工事も、中盤あたりで陰りが見えだした。



つづく
====================

読了ありがとうございました。
続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。

====================

Twitterでは、次話の投稿のお知らせや、
作中に登場するキャラ、モンスターなどのイラストを公開しています。
よければ見てみてください。

↓ ↓ ↓

https://twitter.com/ragoradonma
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...