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15章 燃え尽きた松明
12-1 一つの嘘
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12-1 一つの嘘
「どーいうこと?三人の誰でもないって……」
ライラが小首をかしげている。そうだよな、言った本人の俺でさえ、まだ混乱している。でも、そうとしか考えられないんだ。
と、ちょうどそのタイミングで、部屋の扉が開いた。
「あら?桜下さんに、ライラさん」
「お二人とも、いかがされましたか」
ウィルにエラゼム、それにフラン。外に出ていたみんなが戻ってきたんだ。
「みんな、どこに行ってたんだよ?」
「桜下殿のご思案を邪魔してはならないと思いまして……勝手な行動をとり、申し訳ございませぬ」
真面目なエラゼムは、律儀に頭を下げる。彼はいつも通りだが、その横にいるウィルとフランは、なんだか様子がおかしい。
「……どうか、したのか?」
「ええ、それが……フランさんが、妙な音が聞こえる、と」
「音?」
ウィルはうなずくと、フランの方を見る。
「かすかだけど、なにかが争うような音がするの」
「争う……ケンカとかじゃなくて、ってことだよな」
「うん。さすがに、町で起きたケンカの音までは聞こえない」
ふむ、いくらフランの耳が犬並みだとしても、そりゃそうか。
「あれ?じゃあ、一体どこで何が……?」
「音が聞こえたのは、それが高いとこから聞こえてきたから。それに、周りに家が無い、静かな場所だったから」
高いところで、家が無い……?
「あ!まさか、グランテンプル?」
フランとウィルは、こくりとうなずく。続きをエラゼムが引き継いだ。
「フラン嬢からその話を聞き、吾輩たちで確認をしようと、外に出ていたのです」
「確認って、何か分かったのか?」
「ウィル嬢が、上空高くまで昇ってくださいました。確かにかの神殿の方で、松明が揺れ動くさまを見たそうです」
松明が……人が動いているってことだな。
「これは、モタモタしていられないな。すぐに出よう!」
「向かわれるのですか、桜下殿?」
「ああ。心配だっていうのもあるけど、ここは打算的に行こう。恩を売れるチャンスかも知れないぜ」
俺がニヤッと笑うと、エラゼムもふふふと鎧を震わせた。
「抜け目がないですな。分かりました、お供いたします」
「おう。けどその前に、一つ寄りたいところがあるんだ」
「ほう。どちらに?」
「実はさっき、気付いたことがあってな。それを確かめたい。詳しいことは、向かいながら話すよ。今は急ごう!」
外はもう真っ暗だった。ずっと降り続いていた雨のせいで、星明りも見えない。けどそれは、かえって好都合だ。人目を気にしなくて済むからな。俺たちはストームスティードに乗って、遠慮なく全速力で町を駆けた。
アニの青白い明かりで前方を照らしながら、俺はみんなに説明する。
「俺が気付いたことは、ある人が付いた、一つの嘘なんだ」
「嘘?」
隣を走るフランが怪訝そうな顔をする。フランは相変わらず、後ろにロウランを引っ張っていた。
「なにか、はっきり嘘だと分かるところがあったの?」
「ああ。フラン、お前の言ったことがきっかけになったよ。その嘘自体は、犯人を特定するに足る証拠じゃない。けど、明らかにおかしいんだ。どうしても、それが引っ掛かる」
致命的なミスだとか、決定的な矛盾だとかの、推理小説みたいな発見なんかじゃない。たぶんそんなのは、俺みたいな凡人じゃ気付けないだろう。
「それって、発言がおかしかったってこと?」
「文脈自体はおかしくない。でも、実際の場面とは食い違うんだ。だからなかなか気付けなかったんだと思う」
「実際の……容疑者たちの家、てことだよね」
うなずく。この中でそれを目にしているのは、俺とライラとロウランだけだ。
「だから俺なら、すぐに気付けたはずなんだけどなぁ。ったく、ポンコツで嫌になるぜ」
「そんなことない。こうして気付いたんだから、やっぱりすごいよ」
お、おお。ストレートに褒められてしまった。照れるな……って、今はそれどこじゃない。
「ご、ごほん。でだ、思い出してほしんだけど、三人の家がどんなだったか、覚えてるか?」
俺はフランのみならず、みんなにも聞こえるように声を大きく話した。時間も限られているし、まとめて説明したほうが効率的だ。
「うん。お爺さんの家は庭があって、ゴロツキの家はゴミだらけ。最後のトレジャーハンターは、テントだったよね」
「そうなんだけど、もう少し詳しく。爺さんとこの庭は、何があった?」
フランは一瞬怪訝そうな顔をしたが、すぐに答えた。
「花、だよね。タマネギの」
「それだ。その花が、おかしいんだよ」
すると、俺の肩に掴まっていたウィルが、割って入ってくる。
「でも桜下さん、確かにそれは、コタマネギに間違いありませんよ。おかしな点はないと思いますが……」
「いや、花そのものは別におかしくない。大事なのは、花が咲いてた位置なんだ」
「位置、ですか?」
ウィルは記憶をたどるように、しばし閉口する。
「……確か、窓の下の、小さな花壇に、植えられていたんでしたよね?」
「そうだ。爺さんは、そこの畑をいじっていたって話だった。それを目撃した証人もいる」
「ええ。娘さんが見てらしたんですね。確か、ヤンさん、ですか。……なにか、おかしな点がありましたか?私がバカなだけかしら」
「あはは、んなことないよ。俺の説明が足りてないんだ。あん時のヤンの言葉を、正確に知らないといけないんだよ」
ヤンが爺さんを見ていただけだと、なにもおかしい所は見つからない。が、あん時ヤンは、こう言ったんだ。
「ヤンは、ウォルフ爺さんと“目が合った”と言ったんだ」
「目が合う……ううん?意味として、そこまで変わらない気がするんですけど……」
「いや、ここが決定的な矛盾だ。だってあの状況じゃ、絶対に爺さんと目は合わない」
「え、え?だって、お爺さんはお庭にいたんですよね?それも一日中。なら、何度かそんなことがあったって……」
「あっ!」
「きゃぁ」
急に大声が上がったせいで、ウィルは俺の肩に指を食い込ませてしまった。ひぃ、冷たい!
「び、っくりしたぁ。ライラさん、やめてくださいよ。心臓に悪いじゃないですか」
「ご、ごめんね。でも、桜下が言いたいこと、わかっちゃった」
「え?どういうことですか?」
「だって、そうだよ。あそこの花壇にいて、お家の中の人と目が合うはずないもん」
「え?………………あっ!そういうことですか。窓の下の花壇に屈みこんでいるのに、窓の中から見えるはずがありませんよね」
そういうことだ。さっき俺が、ベッドの陰にいたライラに気付かなかったのと同じ理屈。
「ヤンは、絶対に爺さんと目が合うことはなかったんだ。嘘をついていたのは、娘のヤンだったんだよ」
こうして振り返ると、我ながらカンが鈍くて嫌になる。ヤンだって、つい最近町に来たという、容疑者の条件を満たしていた。マルティナのメモにだって、ヤンのことは書かれていた。つまり容疑者は、最初から四人だったんだ。
だがマヌケな俺は、ヤンが女だからという理由で、容疑者から自然と外してしまっていた。テレジアが女だった時点で、そこにも気が付くべきだったのに。ちぇ、探偵役としちゃ、落第点だなこりゃ。
「……でも、ちょっと待ちなさいよ」
うん?上空を飛んでいたアルルカが高度を下げて、俺たちのすぐ隣に並ぶ。
「あんた、さっき絶対目が合わないって言ったけど、それもほんとなの?」
「ほんとかっていうのは、どういう意味で?」
「だって、大人一人がすっぽり隠れるには、それなりの高さがいるでしょ。そこのちびっ子ならともかく、窓が低い位置にあったなら、顔が見えて当然じゃない」
「いや、あの窓の高さなら、十分隠れられる」
「それはあんたの目測でしょ?間違いってことも」
「そうじゃない。ちゃんと比較になるものがあったんだ。花だよ」
ウィルがあ、と声を漏らす。そう、あの花が根拠だ。
「あの花の高さは、育てたことがあるウィルがよく知ってる。で、窓のサッシと花はだいたい同じ高さだった。大人が屈めば十分隠れる高さだ」
俺がそうだろ?と目を向けると、ウィルは確かにうなずいた。アルルカは唇を尖らせる。
「ああ、そう言えばそんなこと言ってたわね。でも、そのジジイだって、ずぅっと屈みこんでたわけじゃないでしょ?腰を伸ばした拍子にでも、目が合ったのかもしれないじゃない」
なるほど、もっともだ。けど。
「それはないな」
「な、なんで言い切れんのよ」
「爺さんの腰は、伸びないんだよ。もともと曲がってたから」
「あ……」
爺さんの腰は曲がって、杖まで突いていた。もし立ったとしても、あの状態で目が合うわけない。
「窓の下を覗き込んだりしたら、目が合った可能性はあるけど。それはもう、目が合うとかの話じゃないだろ?」
「そう、ね。そういう表現の仕方はしない、か。庭が狭いんじゃ、遠くに下がってたってこともないでしょうし」
アルルカもさすがにこれ以上、噛みつくしろが無くなったみたいだ。それにもうそろそろ、目的地に着く。
「でも、私も分からないことがあります」
エラゼムがストームスティードの速度を緩めたタイミングで、ウィルがぽつりと言った。
「桜下さんの言う通りだとすると、ヤンさんの嘘には、お爺さんも気付けたはずなんです。でも、話を合わせたってことは……」
「そうなんだ。二人はグルなのか、はたまた爺さんが勘違いしたのか、それとも俺の考えが大外れなのか。それを確かめたいんだ」
「なるほど。だからここに向かったんですね」
ストームスティードが止まる。ここは昼間も来た、くたびれた家の前。ウォルフ爺さんと、ヤン親子の家だ。
「行こう。それではっきりするはずだ」
つづく
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読了ありがとうございました。
続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。
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「どーいうこと?三人の誰でもないって……」
ライラが小首をかしげている。そうだよな、言った本人の俺でさえ、まだ混乱している。でも、そうとしか考えられないんだ。
と、ちょうどそのタイミングで、部屋の扉が開いた。
「あら?桜下さんに、ライラさん」
「お二人とも、いかがされましたか」
ウィルにエラゼム、それにフラン。外に出ていたみんなが戻ってきたんだ。
「みんな、どこに行ってたんだよ?」
「桜下殿のご思案を邪魔してはならないと思いまして……勝手な行動をとり、申し訳ございませぬ」
真面目なエラゼムは、律儀に頭を下げる。彼はいつも通りだが、その横にいるウィルとフランは、なんだか様子がおかしい。
「……どうか、したのか?」
「ええ、それが……フランさんが、妙な音が聞こえる、と」
「音?」
ウィルはうなずくと、フランの方を見る。
「かすかだけど、なにかが争うような音がするの」
「争う……ケンカとかじゃなくて、ってことだよな」
「うん。さすがに、町で起きたケンカの音までは聞こえない」
ふむ、いくらフランの耳が犬並みだとしても、そりゃそうか。
「あれ?じゃあ、一体どこで何が……?」
「音が聞こえたのは、それが高いとこから聞こえてきたから。それに、周りに家が無い、静かな場所だったから」
高いところで、家が無い……?
「あ!まさか、グランテンプル?」
フランとウィルは、こくりとうなずく。続きをエラゼムが引き継いだ。
「フラン嬢からその話を聞き、吾輩たちで確認をしようと、外に出ていたのです」
「確認って、何か分かったのか?」
「ウィル嬢が、上空高くまで昇ってくださいました。確かにかの神殿の方で、松明が揺れ動くさまを見たそうです」
松明が……人が動いているってことだな。
「これは、モタモタしていられないな。すぐに出よう!」
「向かわれるのですか、桜下殿?」
「ああ。心配だっていうのもあるけど、ここは打算的に行こう。恩を売れるチャンスかも知れないぜ」
俺がニヤッと笑うと、エラゼムもふふふと鎧を震わせた。
「抜け目がないですな。分かりました、お供いたします」
「おう。けどその前に、一つ寄りたいところがあるんだ」
「ほう。どちらに?」
「実はさっき、気付いたことがあってな。それを確かめたい。詳しいことは、向かいながら話すよ。今は急ごう!」
外はもう真っ暗だった。ずっと降り続いていた雨のせいで、星明りも見えない。けどそれは、かえって好都合だ。人目を気にしなくて済むからな。俺たちはストームスティードに乗って、遠慮なく全速力で町を駆けた。
アニの青白い明かりで前方を照らしながら、俺はみんなに説明する。
「俺が気付いたことは、ある人が付いた、一つの嘘なんだ」
「嘘?」
隣を走るフランが怪訝そうな顔をする。フランは相変わらず、後ろにロウランを引っ張っていた。
「なにか、はっきり嘘だと分かるところがあったの?」
「ああ。フラン、お前の言ったことがきっかけになったよ。その嘘自体は、犯人を特定するに足る証拠じゃない。けど、明らかにおかしいんだ。どうしても、それが引っ掛かる」
致命的なミスだとか、決定的な矛盾だとかの、推理小説みたいな発見なんかじゃない。たぶんそんなのは、俺みたいな凡人じゃ気付けないだろう。
「それって、発言がおかしかったってこと?」
「文脈自体はおかしくない。でも、実際の場面とは食い違うんだ。だからなかなか気付けなかったんだと思う」
「実際の……容疑者たちの家、てことだよね」
うなずく。この中でそれを目にしているのは、俺とライラとロウランだけだ。
「だから俺なら、すぐに気付けたはずなんだけどなぁ。ったく、ポンコツで嫌になるぜ」
「そんなことない。こうして気付いたんだから、やっぱりすごいよ」
お、おお。ストレートに褒められてしまった。照れるな……って、今はそれどこじゃない。
「ご、ごほん。でだ、思い出してほしんだけど、三人の家がどんなだったか、覚えてるか?」
俺はフランのみならず、みんなにも聞こえるように声を大きく話した。時間も限られているし、まとめて説明したほうが効率的だ。
「うん。お爺さんの家は庭があって、ゴロツキの家はゴミだらけ。最後のトレジャーハンターは、テントだったよね」
「そうなんだけど、もう少し詳しく。爺さんとこの庭は、何があった?」
フランは一瞬怪訝そうな顔をしたが、すぐに答えた。
「花、だよね。タマネギの」
「それだ。その花が、おかしいんだよ」
すると、俺の肩に掴まっていたウィルが、割って入ってくる。
「でも桜下さん、確かにそれは、コタマネギに間違いありませんよ。おかしな点はないと思いますが……」
「いや、花そのものは別におかしくない。大事なのは、花が咲いてた位置なんだ」
「位置、ですか?」
ウィルは記憶をたどるように、しばし閉口する。
「……確か、窓の下の、小さな花壇に、植えられていたんでしたよね?」
「そうだ。爺さんは、そこの畑をいじっていたって話だった。それを目撃した証人もいる」
「ええ。娘さんが見てらしたんですね。確か、ヤンさん、ですか。……なにか、おかしな点がありましたか?私がバカなだけかしら」
「あはは、んなことないよ。俺の説明が足りてないんだ。あん時のヤンの言葉を、正確に知らないといけないんだよ」
ヤンが爺さんを見ていただけだと、なにもおかしい所は見つからない。が、あん時ヤンは、こう言ったんだ。
「ヤンは、ウォルフ爺さんと“目が合った”と言ったんだ」
「目が合う……ううん?意味として、そこまで変わらない気がするんですけど……」
「いや、ここが決定的な矛盾だ。だってあの状況じゃ、絶対に爺さんと目は合わない」
「え、え?だって、お爺さんはお庭にいたんですよね?それも一日中。なら、何度かそんなことがあったって……」
「あっ!」
「きゃぁ」
急に大声が上がったせいで、ウィルは俺の肩に指を食い込ませてしまった。ひぃ、冷たい!
「び、っくりしたぁ。ライラさん、やめてくださいよ。心臓に悪いじゃないですか」
「ご、ごめんね。でも、桜下が言いたいこと、わかっちゃった」
「え?どういうことですか?」
「だって、そうだよ。あそこの花壇にいて、お家の中の人と目が合うはずないもん」
「え?………………あっ!そういうことですか。窓の下の花壇に屈みこんでいるのに、窓の中から見えるはずがありませんよね」
そういうことだ。さっき俺が、ベッドの陰にいたライラに気付かなかったのと同じ理屈。
「ヤンは、絶対に爺さんと目が合うことはなかったんだ。嘘をついていたのは、娘のヤンだったんだよ」
こうして振り返ると、我ながらカンが鈍くて嫌になる。ヤンだって、つい最近町に来たという、容疑者の条件を満たしていた。マルティナのメモにだって、ヤンのことは書かれていた。つまり容疑者は、最初から四人だったんだ。
だがマヌケな俺は、ヤンが女だからという理由で、容疑者から自然と外してしまっていた。テレジアが女だった時点で、そこにも気が付くべきだったのに。ちぇ、探偵役としちゃ、落第点だなこりゃ。
「……でも、ちょっと待ちなさいよ」
うん?上空を飛んでいたアルルカが高度を下げて、俺たちのすぐ隣に並ぶ。
「あんた、さっき絶対目が合わないって言ったけど、それもほんとなの?」
「ほんとかっていうのは、どういう意味で?」
「だって、大人一人がすっぽり隠れるには、それなりの高さがいるでしょ。そこのちびっ子ならともかく、窓が低い位置にあったなら、顔が見えて当然じゃない」
「いや、あの窓の高さなら、十分隠れられる」
「それはあんたの目測でしょ?間違いってことも」
「そうじゃない。ちゃんと比較になるものがあったんだ。花だよ」
ウィルがあ、と声を漏らす。そう、あの花が根拠だ。
「あの花の高さは、育てたことがあるウィルがよく知ってる。で、窓のサッシと花はだいたい同じ高さだった。大人が屈めば十分隠れる高さだ」
俺がそうだろ?と目を向けると、ウィルは確かにうなずいた。アルルカは唇を尖らせる。
「ああ、そう言えばそんなこと言ってたわね。でも、そのジジイだって、ずぅっと屈みこんでたわけじゃないでしょ?腰を伸ばした拍子にでも、目が合ったのかもしれないじゃない」
なるほど、もっともだ。けど。
「それはないな」
「な、なんで言い切れんのよ」
「爺さんの腰は、伸びないんだよ。もともと曲がってたから」
「あ……」
爺さんの腰は曲がって、杖まで突いていた。もし立ったとしても、あの状態で目が合うわけない。
「窓の下を覗き込んだりしたら、目が合った可能性はあるけど。それはもう、目が合うとかの話じゃないだろ?」
「そう、ね。そういう表現の仕方はしない、か。庭が狭いんじゃ、遠くに下がってたってこともないでしょうし」
アルルカもさすがにこれ以上、噛みつくしろが無くなったみたいだ。それにもうそろそろ、目的地に着く。
「でも、私も分からないことがあります」
エラゼムがストームスティードの速度を緩めたタイミングで、ウィルがぽつりと言った。
「桜下さんの言う通りだとすると、ヤンさんの嘘には、お爺さんも気付けたはずなんです。でも、話を合わせたってことは……」
「そうなんだ。二人はグルなのか、はたまた爺さんが勘違いしたのか、それとも俺の考えが大外れなのか。それを確かめたいんだ」
「なるほど。だからここに向かったんですね」
ストームスティードが止まる。ここは昼間も来た、くたびれた家の前。ウォルフ爺さんと、ヤン親子の家だ。
「行こう。それではっきりするはずだ」
つづく
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読了ありがとうございました。
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