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16章 奪われた姫君
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アルアが出て行った扉を見て、ウィルは感心したように何度もうなずいた。
「アルアさんかぁ。意外なお客さんでしたけど、ずいぶんお行儀よくなりましたね。前回のことが、よっぽど効いたと見えます」
「みたいだな。恩を売ったつもりもなかったけど」
「にしても彼女、大丈夫なんでしょうか?こう言っちゃあれですけど、アルアさんって、そこまで強いイメージないんですが」
「んんん、まあ……な」
どちらかというと、ボロボロになっている印象の方が強い。
「けどまあ、あのライカニール帝が弱いやつを雇うわけもないだろ」
「だといいのですけど」
それに、アルアは一傭兵。そこまで危険な役目を与えられることもないだろう。それこそ、魔王相手に一人で突っ込んで行くなんてこと。
(けどそれはそれで、あいつの目的が果たせないんだよなぁ)
頭の痛いことに、アルアの宿願は、魔王の打倒なんだ。でもなぁ。さすがに彼女一人で魔王を倒せだなんて、すっぽんが月の代わりに空に浮かぶようなもんだぜ?じゃあ無理だから諦めろなんて、さすがに本人には言えないけどさ……
コン、コン。
「うおっ」
びくりと身をすくませる。まさか、アルアが戻ってきたんじゃないだろうな?さっきの会話、聞かれていたらどうしよう。
「失礼する。桜下、いるか?」
お?この声、アルアじゃない。それに聞いた事があるな。俺はウィルと顔を見合わせると、扉を開いた。
「よう、桜下。久方ぶりだな」
「お、お久しぶりですっ」
「あれ。アドリアに、ミカエルじゃないか」
戸口に立っていたのは、二人の女性だ。一人は長身で片目に眼帯を付け、もう一人は小柄でシスターの恰好をしている。二人は一の国の勇者クラークのパーティーメンバーだ。
「久しぶりだな。シェオル島以来か?で、どうしたんだよ。あがるか?」
「なに、長居はしない、顔を見に来ただけだ。お前たちが来ていると聞いたのでな」
この二人も、アルアと同じ理由か。でも、どうして二人だけなんだろう?クラークは四人パーティーのはずだが。するとアドリアが、からかうようににやりと笑う。
「ところで、聞いたぞ。二の国の勇者殿に一目会いたいと、乙女たちがスカートをはためかせて走り回っているそうじゃないか」
ぐえぇ、またそのデタラメか。俺は口をへの字にひん曲げ、隣でウィルがむぅっと唸った。
「アドリア、あんた与太話は信じないたちだと思ってたんだけどな?」
「そうでもないぞ。笑えるホラ話はけっこう好きだ。それにあいにくと、こいつはホラじゃない。私がこの目で実際に見たからな」
「か、勘弁してくれよ……」
俺ががっくりと肩を落とすと、アドリアはカラカラと笑った。ミカエルは笑ったらいいのかたしなめたらいいのかと、オロオロしている。
「はははは。何をそんなに嫌がるんだ?宴に顔を出せばよかったじゃないか。両手どころか、腕一杯に花だろうに」
「けっ!乙女たちの夢を壊さないために、行かなかったんじゃないか」
「ふふ、そうか。まあお前たちなら、顔を出さんだろうなと思っていたが」
「だいたいそれなら、あんたらはどうなんだよ?クラークも宴に呼ばれたんじゃないのか?」
「もちろん呼ばれている」
アドリアはあっさりとうなずいた。
「だが、呼ばれたのはクラークだ。私たちはおまけにすぎん。それに行ったところで、やれ酌をしろだのきれいに着飾れだのうるさくてな。やつだけ置いて、とっとと逃げてきた」
あんぐり口を開けた。そ、それでいいのかよ?見れば、ミカエルは顔を真っ赤にしている。恥ずかしいと感じてはいるみたいだが、それでもここにいるってことは、一緒に抜けてきたんだな。
「……クラークのやつ、なんも言わなかったのか?」
「まあな。本当なら文句を言いたかったかもしれんが、残念ながらそんな暇はなかった。今頃皆の前で激励の演説をしているところだろう」
うわぁ……そりゃ大役だ。あいつはそういうの好きそうだし、それならアドリアたちがいなくても支障はなさそうだが。どうせ壇上に上がるのはあいつ一人だろ。
「なるほど、なっとくだ。改めて、行かなくてよかったって思ったよ」
「ふふ、そうだろう。ところでなんだが、私はお前たちがここにいることも、少し意外に思っている。特にお前は、こういった面倒事は嫌いじゃなかったか?」
「あっ、アドリアさん、失礼じゃ……」
ミカエルがわたわたと取り乱すが、俺は笑ってうなずいた。
「いや、その通りだよ。本当は来たくもなかった。けど、取り戻さなくちゃならないものができたからな」
アドリアたちも、ロアたちのことは知っているのだろう。そうか、とだけ言ってうなずいた。
「クラークこそ、張り切ってんじゃないか?魔王なんて、悪の親玉みたいなもんだろ」
「うむ、使命感はあるようだぞ。ただ、実はそこまで乗り気でもなかったのだが」
「へ?」
あの、正義オタクがか?にわかには信じられないが……
「あのぅ……すみません」
うん?会話の切れ目に、ミカエルがおずおずと声を上げた。
「あの、騎士様の姿がお見えにならないなって……」
おや、ミカエルもか。そう言えば、彼女は勇演武闘で、エラゼムと試合したことがあったっけ。
「どちらかに行かれているのですか?」
「うん。あいつは、自分の主のとこに還ったよ。今頃は空の上、かな」
「っ」
ミカエルはハッと目を見開くと、ぐっと唇を噛んだ後、両手を合わせて祈祷をした。祈りを捧げてくれたのかもしれない。
「それもだけど……なあ。そちらさんも、一人足りなくないか?」
俺はさっきから気になっていたことを訊いてみる。さっきも言ったが、クラークは四人パーティーだ。だが、一人の名前が一向に上がってこない。
「コルルはどうしたんだよ?クラークと一緒にいるのか?」
赤毛の魔法使い・コルルは、つい先日からクラークと恋仲になったという。だから彼氏の側にいるのかと思ったのだが、アドリアは首を横に振った。
「いや、そうじゃない。今日、コルルは不参加なんだ」
「へぇ、意外だな。あいつも、俺たちとおんなじ理由で?」
「違うな。あれも生真面目なものだから、自ら辞退した。部外者が顔を出すものじゃないと言ってな」
「部外者って……どこかだよ、思いっきり当事者じゃないか。あんたらと一緒に戦うんだろ?」
「いいや。コルルは、此度の戦には不参戦となる」
え……ど、どうして?まさか、なにか怪我か病気を?俺たちが緊張に包まれる中、アドリアは厳粛な態度で、こう告げた。
「身重の体だからな」
「へ?」
みおも……え、え?どういうこと?ミカエルは、顔をまっかっかにしている。俺が口をぱくぱくさせていたので、代わりにフランが、驚いた顔で訊ねた。
「身重って、まさか……赤ちゃん?」
「ああ。身籠っている。クラークの子どもをな」
え、えええぇぇぇぇぇぇ!
「び……っくりしたな。まさか、コルルがおめでただったなんて」
アドリアとミカエルが去った後で、俺はくらくらしながら、先ほどの話を振り返っていた。会話の内容はこうだ。
「まあ、なんだ。勇者とその仲間と言えども、突き詰めれば若い男女だからな」
と、アドリアはやれやれ顔で語った。
「できてしまったものはしょうがない。クラークも責任は取るつもりのようだし、めでたい話でもあるしな。それに関しては何も言う気はないのだが……だが、もう少しバレないようにやってもらいたいものだ」
アドリアの疲れたため息。ミカエルの顔は茹で上がったタコのようで、話を聞いていた俺たちまで恥ずかしくなってしまった。てことはこの二人も、クラークたちの逢瀬を……う、うわぁ。
と、ここまでが回想だ。
「あいつら……やることやってんだな……」
俺はあまりの衝撃に、自分が何を口走っているかも理解しないまま、そうつぶやいていた。
「桜下ぁ、やることってなに?」
「え?」
し、しまった。ライラが不思議そうに首をかしげて、こちらを覗いている。
「あ、あぁっと……こ、子どもを作るような事、かな?」
「ふーん。じゃあ子どもって、どーやってできるの?」
「そぉ、それは……」
まずい、言えば言うほど泥沼にはまっていく。キャベツ畑から拾ってくるんだと言って、ライラが納得してくれるだろうか?
「それにしても、彼も意外ですね」
と、俺たちを見かねたのか、ウィルが割り込むように口を開いた。
「結構堅物かと思っていましたけど、人間らしいところもあるといいますか」
「そ、そうだよな!いやぁ、びっくりだ。俺と同年代で、もう父親なんだもんなぁ」
ウィルの助け舟に乗っかって、話題を変える。それに、本当に驚いてもいる。だって、まだ十代だぜ?信じられないよな……もっとも、昔はこれくらい当たり前だったとも聞くし、まったくあり得ない話じゃないんだろうが。
「わたしは、案外納得かも」
ん?フランは、はじめ驚いていたが、今は割と落ち着いている。
「あの子……コルルは結構、積極的っぽかったから」
「え?へえぇ、そうなのか。あんまり見えないけど」
「うん。でもたぶん、色仕掛けくらいなら普通にやりそうだったよ」
す、すごいな。けど、心当たりはある。シェオル島で、クラークがそんなようなことを溢していたから。今考えれば、あの時すでに、こうなる未来は決まっていたのかもしれない。
「羨ましいなぁ。アタシも赤ちゃん欲しいよ~!」
そんな誰かに聞かれたらとんでもない誤解を生みそうなことを言いながら、ロウランが後ろからのしかかってきた。
「うわっ、ロウラン。急にひっつくなって」
「ダーリーン、アタシとも小作りしようよぉ。こうして実例もできたんだし、おかしなことじゃないってわかったでしょ?」
ひ、ひぃ!ロウランの手が、俺の下腹部をまさぐる。フランが首根っこを掴んで引きはがしたが、ちょっと今のは危険だったぞ……
「はぁ、はぁ……ったく、油断も隙もありゃしない」
「……桜下さんは」
はい?ウィルが、ちらちらと意味深な流し目を向けてくる。
「桜下さんは、子どもとか、その……」
「ん、うん……?」
「……いえ。やっぱり、なんでもありません……」
な、なんだ?一体何を言おうとしたんだろう。俺たちがめいめい騒ぐ中、アルルカだけは一人、さぞ面白そうにくつくつと笑っていた。
つづく
====================
読了ありがとうございました。
続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。
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アルアが出て行った扉を見て、ウィルは感心したように何度もうなずいた。
「アルアさんかぁ。意外なお客さんでしたけど、ずいぶんお行儀よくなりましたね。前回のことが、よっぽど効いたと見えます」
「みたいだな。恩を売ったつもりもなかったけど」
「にしても彼女、大丈夫なんでしょうか?こう言っちゃあれですけど、アルアさんって、そこまで強いイメージないんですが」
「んんん、まあ……な」
どちらかというと、ボロボロになっている印象の方が強い。
「けどまあ、あのライカニール帝が弱いやつを雇うわけもないだろ」
「だといいのですけど」
それに、アルアは一傭兵。そこまで危険な役目を与えられることもないだろう。それこそ、魔王相手に一人で突っ込んで行くなんてこと。
(けどそれはそれで、あいつの目的が果たせないんだよなぁ)
頭の痛いことに、アルアの宿願は、魔王の打倒なんだ。でもなぁ。さすがに彼女一人で魔王を倒せだなんて、すっぽんが月の代わりに空に浮かぶようなもんだぜ?じゃあ無理だから諦めろなんて、さすがに本人には言えないけどさ……
コン、コン。
「うおっ」
びくりと身をすくませる。まさか、アルアが戻ってきたんじゃないだろうな?さっきの会話、聞かれていたらどうしよう。
「失礼する。桜下、いるか?」
お?この声、アルアじゃない。それに聞いた事があるな。俺はウィルと顔を見合わせると、扉を開いた。
「よう、桜下。久方ぶりだな」
「お、お久しぶりですっ」
「あれ。アドリアに、ミカエルじゃないか」
戸口に立っていたのは、二人の女性だ。一人は長身で片目に眼帯を付け、もう一人は小柄でシスターの恰好をしている。二人は一の国の勇者クラークのパーティーメンバーだ。
「久しぶりだな。シェオル島以来か?で、どうしたんだよ。あがるか?」
「なに、長居はしない、顔を見に来ただけだ。お前たちが来ていると聞いたのでな」
この二人も、アルアと同じ理由か。でも、どうして二人だけなんだろう?クラークは四人パーティーのはずだが。するとアドリアが、からかうようににやりと笑う。
「ところで、聞いたぞ。二の国の勇者殿に一目会いたいと、乙女たちがスカートをはためかせて走り回っているそうじゃないか」
ぐえぇ、またそのデタラメか。俺は口をへの字にひん曲げ、隣でウィルがむぅっと唸った。
「アドリア、あんた与太話は信じないたちだと思ってたんだけどな?」
「そうでもないぞ。笑えるホラ話はけっこう好きだ。それにあいにくと、こいつはホラじゃない。私がこの目で実際に見たからな」
「か、勘弁してくれよ……」
俺ががっくりと肩を落とすと、アドリアはカラカラと笑った。ミカエルは笑ったらいいのかたしなめたらいいのかと、オロオロしている。
「はははは。何をそんなに嫌がるんだ?宴に顔を出せばよかったじゃないか。両手どころか、腕一杯に花だろうに」
「けっ!乙女たちの夢を壊さないために、行かなかったんじゃないか」
「ふふ、そうか。まあお前たちなら、顔を出さんだろうなと思っていたが」
「だいたいそれなら、あんたらはどうなんだよ?クラークも宴に呼ばれたんじゃないのか?」
「もちろん呼ばれている」
アドリアはあっさりとうなずいた。
「だが、呼ばれたのはクラークだ。私たちはおまけにすぎん。それに行ったところで、やれ酌をしろだのきれいに着飾れだのうるさくてな。やつだけ置いて、とっとと逃げてきた」
あんぐり口を開けた。そ、それでいいのかよ?見れば、ミカエルは顔を真っ赤にしている。恥ずかしいと感じてはいるみたいだが、それでもここにいるってことは、一緒に抜けてきたんだな。
「……クラークのやつ、なんも言わなかったのか?」
「まあな。本当なら文句を言いたかったかもしれんが、残念ながらそんな暇はなかった。今頃皆の前で激励の演説をしているところだろう」
うわぁ……そりゃ大役だ。あいつはそういうの好きそうだし、それならアドリアたちがいなくても支障はなさそうだが。どうせ壇上に上がるのはあいつ一人だろ。
「なるほど、なっとくだ。改めて、行かなくてよかったって思ったよ」
「ふふ、そうだろう。ところでなんだが、私はお前たちがここにいることも、少し意外に思っている。特にお前は、こういった面倒事は嫌いじゃなかったか?」
「あっ、アドリアさん、失礼じゃ……」
ミカエルがわたわたと取り乱すが、俺は笑ってうなずいた。
「いや、その通りだよ。本当は来たくもなかった。けど、取り戻さなくちゃならないものができたからな」
アドリアたちも、ロアたちのことは知っているのだろう。そうか、とだけ言ってうなずいた。
「クラークこそ、張り切ってんじゃないか?魔王なんて、悪の親玉みたいなもんだろ」
「うむ、使命感はあるようだぞ。ただ、実はそこまで乗り気でもなかったのだが」
「へ?」
あの、正義オタクがか?にわかには信じられないが……
「あのぅ……すみません」
うん?会話の切れ目に、ミカエルがおずおずと声を上げた。
「あの、騎士様の姿がお見えにならないなって……」
おや、ミカエルもか。そう言えば、彼女は勇演武闘で、エラゼムと試合したことがあったっけ。
「どちらかに行かれているのですか?」
「うん。あいつは、自分の主のとこに還ったよ。今頃は空の上、かな」
「っ」
ミカエルはハッと目を見開くと、ぐっと唇を噛んだ後、両手を合わせて祈祷をした。祈りを捧げてくれたのかもしれない。
「それもだけど……なあ。そちらさんも、一人足りなくないか?」
俺はさっきから気になっていたことを訊いてみる。さっきも言ったが、クラークは四人パーティーだ。だが、一人の名前が一向に上がってこない。
「コルルはどうしたんだよ?クラークと一緒にいるのか?」
赤毛の魔法使い・コルルは、つい先日からクラークと恋仲になったという。だから彼氏の側にいるのかと思ったのだが、アドリアは首を横に振った。
「いや、そうじゃない。今日、コルルは不参加なんだ」
「へぇ、意外だな。あいつも、俺たちとおんなじ理由で?」
「違うな。あれも生真面目なものだから、自ら辞退した。部外者が顔を出すものじゃないと言ってな」
「部外者って……どこかだよ、思いっきり当事者じゃないか。あんたらと一緒に戦うんだろ?」
「いいや。コルルは、此度の戦には不参戦となる」
え……ど、どうして?まさか、なにか怪我か病気を?俺たちが緊張に包まれる中、アドリアは厳粛な態度で、こう告げた。
「身重の体だからな」
「へ?」
みおも……え、え?どういうこと?ミカエルは、顔をまっかっかにしている。俺が口をぱくぱくさせていたので、代わりにフランが、驚いた顔で訊ねた。
「身重って、まさか……赤ちゃん?」
「ああ。身籠っている。クラークの子どもをな」
え、えええぇぇぇぇぇぇ!
「び……っくりしたな。まさか、コルルがおめでただったなんて」
アドリアとミカエルが去った後で、俺はくらくらしながら、先ほどの話を振り返っていた。会話の内容はこうだ。
「まあ、なんだ。勇者とその仲間と言えども、突き詰めれば若い男女だからな」
と、アドリアはやれやれ顔で語った。
「できてしまったものはしょうがない。クラークも責任は取るつもりのようだし、めでたい話でもあるしな。それに関しては何も言う気はないのだが……だが、もう少しバレないようにやってもらいたいものだ」
アドリアの疲れたため息。ミカエルの顔は茹で上がったタコのようで、話を聞いていた俺たちまで恥ずかしくなってしまった。てことはこの二人も、クラークたちの逢瀬を……う、うわぁ。
と、ここまでが回想だ。
「あいつら……やることやってんだな……」
俺はあまりの衝撃に、自分が何を口走っているかも理解しないまま、そうつぶやいていた。
「桜下ぁ、やることってなに?」
「え?」
し、しまった。ライラが不思議そうに首をかしげて、こちらを覗いている。
「あ、あぁっと……こ、子どもを作るような事、かな?」
「ふーん。じゃあ子どもって、どーやってできるの?」
「そぉ、それは……」
まずい、言えば言うほど泥沼にはまっていく。キャベツ畑から拾ってくるんだと言って、ライラが納得してくれるだろうか?
「それにしても、彼も意外ですね」
と、俺たちを見かねたのか、ウィルが割り込むように口を開いた。
「結構堅物かと思っていましたけど、人間らしいところもあるといいますか」
「そ、そうだよな!いやぁ、びっくりだ。俺と同年代で、もう父親なんだもんなぁ」
ウィルの助け舟に乗っかって、話題を変える。それに、本当に驚いてもいる。だって、まだ十代だぜ?信じられないよな……もっとも、昔はこれくらい当たり前だったとも聞くし、まったくあり得ない話じゃないんだろうが。
「わたしは、案外納得かも」
ん?フランは、はじめ驚いていたが、今は割と落ち着いている。
「あの子……コルルは結構、積極的っぽかったから」
「え?へえぇ、そうなのか。あんまり見えないけど」
「うん。でもたぶん、色仕掛けくらいなら普通にやりそうだったよ」
す、すごいな。けど、心当たりはある。シェオル島で、クラークがそんなようなことを溢していたから。今考えれば、あの時すでに、こうなる未来は決まっていたのかもしれない。
「羨ましいなぁ。アタシも赤ちゃん欲しいよ~!」
そんな誰かに聞かれたらとんでもない誤解を生みそうなことを言いながら、ロウランが後ろからのしかかってきた。
「うわっ、ロウラン。急にひっつくなって」
「ダーリーン、アタシとも小作りしようよぉ。こうして実例もできたんだし、おかしなことじゃないってわかったでしょ?」
ひ、ひぃ!ロウランの手が、俺の下腹部をまさぐる。フランが首根っこを掴んで引きはがしたが、ちょっと今のは危険だったぞ……
「はぁ、はぁ……ったく、油断も隙もありゃしない」
「……桜下さんは」
はい?ウィルが、ちらちらと意味深な流し目を向けてくる。
「桜下さんは、子どもとか、その……」
「ん、うん……?」
「……いえ。やっぱり、なんでもありません……」
な、なんだ?一体何を言おうとしたんだろう。俺たちがめいめい騒ぐ中、アルルカだけは一人、さぞ面白そうにくつくつと笑っていた。
つづく
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