726 / 860
17章 再開の約束
2-2
しおりを挟む
2-2
一の国出身の、傭兵の少女アルアが、馬上で戸惑った顔をしていた。
「みなさん、なんだか大騒ぎをしていましたが」
「あ、ごめん。うるさかったか」
「あっ、すみません。そういうわけではないのですが、気になってしまって」
アルアは慌てた様子で、手をわたわたさせた。俺の前で、こういう歳相応の仕草を見せるようになったのは、つい最近のことだ。
「いやまあ、この先のこととか、ちょっと話してたんだよ。ほら、あの山を越えていくんだって?」
「ええ、そのようですね。あんなに高い山は、私も久々です」
「へぇ、アルア、山登りとかするのか?それも傭兵の仕事で?」
「あ、いえ。前に、母に連れられて一度だけ……」
おっと、母だって?アルアの母さんは、あのおっかないプリメラだ。てことはたぶん、いい思い出じゃないんだろうな……
「みなさんは、山越えは不安ですか?」
「ん?いや、そうでもないかな。うちにはほら、優秀な魔術師がいるから」
俺がそう言うと、ライラは偉そうにふんぞり返り、ウィルは恥ずかしそうにぽっと頬を染めた。アルアがうなずく。
「そうでしたね。この連合軍にも、三の国の優秀な魔術師が多数同行しています。大丈夫、きっとうまくいくでしょう」
「ははは、そうなるように祈るよ」
励ましてくれたのか?本当に、前とはえらい変わりようだ……と。俺はふと気になって、訊ねてみた。
「なあ、アルア。訊いてもいいか?」
「はい?なんでしょう」
「前さ、うちのエラゼムと、なんかあったんだよな?それって何か、訊いてもいいかな」
アルアはゆっくりとまばたきすると、顔を前に向けた。
以前アルアと旅をした時、二人はたぶん、何かについての話をしていたらしい。俺はその時寝ていたから、詳しく知らないんだけどな。でもそれ以降、アルアはちょくちょくエラゼムを気にするようになった。なかなか聞く機会がなかったけれど、今ならちょうどいいだろ。
「……あの騎士様には、私の目標についての、話をさせていただきました」
「お前の目標……って、あれだよな」
「はい。魔王の討伐、です」
そんなことを話したのか……かなりの難題だが、エラゼムはなんと答えたんだろう?
「あの方は……私と、自分とが似ていると言いました」
「エラゼムと、アルアが?」
「はい。意外でしょう?私もそうでした」
「まあ……似てるとこよりは、似てないところの方が多い、かな」
大柄で渋みのあるエラゼムと、線の細さが目立つアルア。エラゼムはどこに共通点を見出したんだ?
「彼は、私のことを、燃え盛る松明のようだと言いました」
「松明?」
「ええ。自らを燃やし、周囲を燃やし、そうして最後には燃え尽きる。彼自身がそうだったから、よく分かると」
エラゼム自身が……?俺は、彼の一生を思い出した。城に仕え、城主が去り、そして裏切りが起こって……
「そうか……あいつは、自分のことを、復讐に狂ったやつだって言ったんだな」
「はい、そうです。復讐という炎に身を焦がした者の、末路だ、と」
なるほど、な。俺たちと出会うまで、エラゼムは復讐に駆られる怨霊だった。過去に囚われ続け、惨劇の夜を繰り返し続けるだけの……
「それで、エラゼムはその後、なんて?」
「私に、警告をしました。自ら兜を外し、その中身を見せることで」
「……見たのか、あれを。こう言うのはあれだけど、よく平気でいられたな。いや、俺たちだって、最初はかなりビビったんだぜ」
「さすがに、平気ではありませんでしたよ。むしろ、とても恐ろしく、おぞましかった……すみません、こんな」
「いや、いいよ。言ったろ、俺たちもそうだった。なかなか、衝撃強いよな」
「ええ。でもだからこそ、忘れられずにいます。復讐に憑りつかれた人間の、あれが末路だと言うのなら……私は……」
アルアはぎりっと歯を食いしばると、遠くを見つめた。
「……アルアはさ。将来、何になりたいんだ?」
俺がそう問いかけると、アルアは目をぱちくりさせて、こちらを見た。
「はい?」
「だって、そういう事じゃないのか?エラゼムが言ったことって。たぶんあいつは、復讐をやめろだなんて、言わなかっただろ」
「え、ええ、そうです、よく分かりましたね」
アルアは感心した顔をしたが、こんなのすぐに分かるさ。だってエラゼムは、自分を燃え尽きた松明だって言ったんだろ?真面目な彼は、自分が辿ってきた足跡を棚に上げて、誰かを批判することはしないはずだ。
「騎士様にも、同じように言われました。魔王を倒し、私の目標を達成した後のことが肝心だと」
「そっか。それで、なんて?」
「……答え、られませんでした」
なに?アルアはうなだれ、自分の馬のたてがみを撫でた。
「分からなかったんです。だって、そうでしょう?できるかも分からない目標の、その先のことを考えるなんて……辛すぎます」
「アルア……」
魔王を倒す……字面だけなら、どこまでも王道で、どこまでもシンプルな目標。だけどいざ真っ向から向かい合ってみると、それのなんと難しいことか。それを、この少女が、たった一人でなんてな……
「……なにか、俺たちに手伝えることがあればいいけど」
「え?あはは……」
アルアは一瞬戸惑った表情を浮かべると、乾いた笑いを溢した。
「あなた、どこまでお人好しなんですか。私の手伝いだなんて……」
「う、うるさいな。さすがに、見過ごせないだろ……」
「ふふふ……お気持ちは嬉しいですが、結構です。私個人の私情で、軍全体を危険に晒すことはできません」
「ん……軍、全体?ずいぶん大きな話になったな?」
「そうでしょう?もしあなたたちが私に協力してくれるとして、どうしますか?」
「どうって……あんたがうまく戦えるように、サポートするとか」
「そうです。それが、問題です。……一流の選手の中に、素人の子どもが混じっていたら、試合にならないでしょう?」
俺は目を丸くした。軍を選手に、アルアを子どもに当てはめれば、隠喩の意味は、簡単に理解できた。
「でも、それは……」
「私だって、自分の実力くらい、分かっているつもりです。私に足並みを合わせることで、あなたたちの力が発揮されない事態など、絶対に起こしてはいけません。だから……」
そこまで言うと、アルアは口をつぐんだ。そしてそのまま、馬を歩かせて、俺たちから離れて行ってしまった……
「あっちゃ~……いらんこと聞いちまったかぁ」
小さくなったアルアの背中を見ながら、俺は首の後ろをかいた。
「桜下、なんで桜下があちゃーって顔してるの?」
ライラがこちらを振り返った。どことなく、納得いかないような顔をしている。
「あいつが、勝手に話を終わらせたんでしょ?なんなの、あいつ!」
「ライラ、アルアはむしろ、俺たちに気を遣ってくれたんだ」
「ええ?あれで……」
「それにほら、俺があいつの、なんてーか、あんまり触れてほしくないところを突っついちゃったんだ。俺が悪いんだ、あんまりそういうこと言うなって」
「でも……!桜下は、あいつを助けてあげようとしたんじゃん。あいつが弱っちいのは、あいつのせいでしょ?」
「いろいろ難しいんだよ、アルアの場合は特に……」
「むー!なんでそんなに、あいつの肩ばっかり持つの!」
ええ?俺がうまく説明できないでいると、ウィルがふわりと、俺たちの隣に並んだ。
「ライラさん、気持ちは分かりますけど、その辺にしときましょう」
「おねーちゃん……」
「ほんとに、気持ちは分かるんですよ?桜下さんの誰にも優しいところはステキですけど、時々見境なさ過ぎてイラっとしますよね」
えっ、なんで俺がここで刺されるんだ!?
「とまあ、冗談はさておき……ほんとうに、彼女の問題は複雑ですね」
ウィルは腰に手を当てると、ふうとため息をついた。
「分不相応な大役を押し付けられて、それでも逃げることはできず、向き合い続けるしかない……いっそ、玉砕して楽になろうとしているじゃないかって、時々思うくらいですよ」
冗談にしてはかなりどぎついが、俺はウィルを嗜めることも、ましてや笑うこともできなかった。
「せめてもう少し、アルアが不真面目なやつだったらよかったんだがな」
「真面目過ぎるのも問題ですね。それで身を滅ぼすのでは……でも、桜下さん。さっきの話、優しすぎるのだって、それはそれでよくないですよ?」
「え?冗談じゃなかったのか?」
「八割くらいはそうです。でも、一番大事なことを忘れてないですよね?」
「え?ああ、そりゃもちろん。一番はウィルたちだ。だろ?」
さすがにそこを間違えるほど、俺も馬鹿じゃないぞ。どうだ、ウィルもきっと納得して……と思ったのに、ウィルはあんぐり口を開けると、ぼぼんと湯気が立ち昇りそうなほど、一瞬で顔を赤くした。
「なーんでそうなるんですか!一番はあなた自身だって、何度も言ってるじゃないですか!」
「え?俺?」
「そうですよ!他人より自分を大事にしてください!」
「え、で、でもウィルは他人じゃ」
「他人です!仲間で恋人ですけど、自と他なら間違いなく他人ですって!あなたがやられたら元も子もないんですから、自分を一番に考えてって言ってるんです!」
「お、おう……」
ウィルの言っていることは、分かる。分かるが……俺は腕組してじっくり咀嚼した後、やっぱりこう吐き出した。
「……でもやっぱり、みんなのこと、他人だとは思いたくないよ。だってウィル、俺たち、家族じゃないか」
「………………」
ウィルは水に浸かるように、ずぶずぶと地面に埋まって見えなくなってしまった。お、怒らせてしまったか?すると背後で、大きなため息が聞こえた。
「はぁー……ダーリン、気にしないでいいよ。照れてるだけだから」
「え、あ、そうなのか、ロウラン?」
「そうだよ……もうなんだか、一年間分のお砂糖を突っ込まれた気分なの」
は、はあ……?
つづく
====================
読了ありがとうございました。
続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。
====================
Twitterでは、次話の投稿のお知らせや、
作中に登場するキャラ、モンスターなどのイラストを公開しています。
よければ見てみてください。
↓ ↓ ↓
https://twitter.com/ragoradonma
一の国出身の、傭兵の少女アルアが、馬上で戸惑った顔をしていた。
「みなさん、なんだか大騒ぎをしていましたが」
「あ、ごめん。うるさかったか」
「あっ、すみません。そういうわけではないのですが、気になってしまって」
アルアは慌てた様子で、手をわたわたさせた。俺の前で、こういう歳相応の仕草を見せるようになったのは、つい最近のことだ。
「いやまあ、この先のこととか、ちょっと話してたんだよ。ほら、あの山を越えていくんだって?」
「ええ、そのようですね。あんなに高い山は、私も久々です」
「へぇ、アルア、山登りとかするのか?それも傭兵の仕事で?」
「あ、いえ。前に、母に連れられて一度だけ……」
おっと、母だって?アルアの母さんは、あのおっかないプリメラだ。てことはたぶん、いい思い出じゃないんだろうな……
「みなさんは、山越えは不安ですか?」
「ん?いや、そうでもないかな。うちにはほら、優秀な魔術師がいるから」
俺がそう言うと、ライラは偉そうにふんぞり返り、ウィルは恥ずかしそうにぽっと頬を染めた。アルアがうなずく。
「そうでしたね。この連合軍にも、三の国の優秀な魔術師が多数同行しています。大丈夫、きっとうまくいくでしょう」
「ははは、そうなるように祈るよ」
励ましてくれたのか?本当に、前とはえらい変わりようだ……と。俺はふと気になって、訊ねてみた。
「なあ、アルア。訊いてもいいか?」
「はい?なんでしょう」
「前さ、うちのエラゼムと、なんかあったんだよな?それって何か、訊いてもいいかな」
アルアはゆっくりとまばたきすると、顔を前に向けた。
以前アルアと旅をした時、二人はたぶん、何かについての話をしていたらしい。俺はその時寝ていたから、詳しく知らないんだけどな。でもそれ以降、アルアはちょくちょくエラゼムを気にするようになった。なかなか聞く機会がなかったけれど、今ならちょうどいいだろ。
「……あの騎士様には、私の目標についての、話をさせていただきました」
「お前の目標……って、あれだよな」
「はい。魔王の討伐、です」
そんなことを話したのか……かなりの難題だが、エラゼムはなんと答えたんだろう?
「あの方は……私と、自分とが似ていると言いました」
「エラゼムと、アルアが?」
「はい。意外でしょう?私もそうでした」
「まあ……似てるとこよりは、似てないところの方が多い、かな」
大柄で渋みのあるエラゼムと、線の細さが目立つアルア。エラゼムはどこに共通点を見出したんだ?
「彼は、私のことを、燃え盛る松明のようだと言いました」
「松明?」
「ええ。自らを燃やし、周囲を燃やし、そうして最後には燃え尽きる。彼自身がそうだったから、よく分かると」
エラゼム自身が……?俺は、彼の一生を思い出した。城に仕え、城主が去り、そして裏切りが起こって……
「そうか……あいつは、自分のことを、復讐に狂ったやつだって言ったんだな」
「はい、そうです。復讐という炎に身を焦がした者の、末路だ、と」
なるほど、な。俺たちと出会うまで、エラゼムは復讐に駆られる怨霊だった。過去に囚われ続け、惨劇の夜を繰り返し続けるだけの……
「それで、エラゼムはその後、なんて?」
「私に、警告をしました。自ら兜を外し、その中身を見せることで」
「……見たのか、あれを。こう言うのはあれだけど、よく平気でいられたな。いや、俺たちだって、最初はかなりビビったんだぜ」
「さすがに、平気ではありませんでしたよ。むしろ、とても恐ろしく、おぞましかった……すみません、こんな」
「いや、いいよ。言ったろ、俺たちもそうだった。なかなか、衝撃強いよな」
「ええ。でもだからこそ、忘れられずにいます。復讐に憑りつかれた人間の、あれが末路だと言うのなら……私は……」
アルアはぎりっと歯を食いしばると、遠くを見つめた。
「……アルアはさ。将来、何になりたいんだ?」
俺がそう問いかけると、アルアは目をぱちくりさせて、こちらを見た。
「はい?」
「だって、そういう事じゃないのか?エラゼムが言ったことって。たぶんあいつは、復讐をやめろだなんて、言わなかっただろ」
「え、ええ、そうです、よく分かりましたね」
アルアは感心した顔をしたが、こんなのすぐに分かるさ。だってエラゼムは、自分を燃え尽きた松明だって言ったんだろ?真面目な彼は、自分が辿ってきた足跡を棚に上げて、誰かを批判することはしないはずだ。
「騎士様にも、同じように言われました。魔王を倒し、私の目標を達成した後のことが肝心だと」
「そっか。それで、なんて?」
「……答え、られませんでした」
なに?アルアはうなだれ、自分の馬のたてがみを撫でた。
「分からなかったんです。だって、そうでしょう?できるかも分からない目標の、その先のことを考えるなんて……辛すぎます」
「アルア……」
魔王を倒す……字面だけなら、どこまでも王道で、どこまでもシンプルな目標。だけどいざ真っ向から向かい合ってみると、それのなんと難しいことか。それを、この少女が、たった一人でなんてな……
「……なにか、俺たちに手伝えることがあればいいけど」
「え?あはは……」
アルアは一瞬戸惑った表情を浮かべると、乾いた笑いを溢した。
「あなた、どこまでお人好しなんですか。私の手伝いだなんて……」
「う、うるさいな。さすがに、見過ごせないだろ……」
「ふふふ……お気持ちは嬉しいですが、結構です。私個人の私情で、軍全体を危険に晒すことはできません」
「ん……軍、全体?ずいぶん大きな話になったな?」
「そうでしょう?もしあなたたちが私に協力してくれるとして、どうしますか?」
「どうって……あんたがうまく戦えるように、サポートするとか」
「そうです。それが、問題です。……一流の選手の中に、素人の子どもが混じっていたら、試合にならないでしょう?」
俺は目を丸くした。軍を選手に、アルアを子どもに当てはめれば、隠喩の意味は、簡単に理解できた。
「でも、それは……」
「私だって、自分の実力くらい、分かっているつもりです。私に足並みを合わせることで、あなたたちの力が発揮されない事態など、絶対に起こしてはいけません。だから……」
そこまで言うと、アルアは口をつぐんだ。そしてそのまま、馬を歩かせて、俺たちから離れて行ってしまった……
「あっちゃ~……いらんこと聞いちまったかぁ」
小さくなったアルアの背中を見ながら、俺は首の後ろをかいた。
「桜下、なんで桜下があちゃーって顔してるの?」
ライラがこちらを振り返った。どことなく、納得いかないような顔をしている。
「あいつが、勝手に話を終わらせたんでしょ?なんなの、あいつ!」
「ライラ、アルアはむしろ、俺たちに気を遣ってくれたんだ」
「ええ?あれで……」
「それにほら、俺があいつの、なんてーか、あんまり触れてほしくないところを突っついちゃったんだ。俺が悪いんだ、あんまりそういうこと言うなって」
「でも……!桜下は、あいつを助けてあげようとしたんじゃん。あいつが弱っちいのは、あいつのせいでしょ?」
「いろいろ難しいんだよ、アルアの場合は特に……」
「むー!なんでそんなに、あいつの肩ばっかり持つの!」
ええ?俺がうまく説明できないでいると、ウィルがふわりと、俺たちの隣に並んだ。
「ライラさん、気持ちは分かりますけど、その辺にしときましょう」
「おねーちゃん……」
「ほんとに、気持ちは分かるんですよ?桜下さんの誰にも優しいところはステキですけど、時々見境なさ過ぎてイラっとしますよね」
えっ、なんで俺がここで刺されるんだ!?
「とまあ、冗談はさておき……ほんとうに、彼女の問題は複雑ですね」
ウィルは腰に手を当てると、ふうとため息をついた。
「分不相応な大役を押し付けられて、それでも逃げることはできず、向き合い続けるしかない……いっそ、玉砕して楽になろうとしているじゃないかって、時々思うくらいですよ」
冗談にしてはかなりどぎついが、俺はウィルを嗜めることも、ましてや笑うこともできなかった。
「せめてもう少し、アルアが不真面目なやつだったらよかったんだがな」
「真面目過ぎるのも問題ですね。それで身を滅ぼすのでは……でも、桜下さん。さっきの話、優しすぎるのだって、それはそれでよくないですよ?」
「え?冗談じゃなかったのか?」
「八割くらいはそうです。でも、一番大事なことを忘れてないですよね?」
「え?ああ、そりゃもちろん。一番はウィルたちだ。だろ?」
さすがにそこを間違えるほど、俺も馬鹿じゃないぞ。どうだ、ウィルもきっと納得して……と思ったのに、ウィルはあんぐり口を開けると、ぼぼんと湯気が立ち昇りそうなほど、一瞬で顔を赤くした。
「なーんでそうなるんですか!一番はあなた自身だって、何度も言ってるじゃないですか!」
「え?俺?」
「そうですよ!他人より自分を大事にしてください!」
「え、で、でもウィルは他人じゃ」
「他人です!仲間で恋人ですけど、自と他なら間違いなく他人ですって!あなたがやられたら元も子もないんですから、自分を一番に考えてって言ってるんです!」
「お、おう……」
ウィルの言っていることは、分かる。分かるが……俺は腕組してじっくり咀嚼した後、やっぱりこう吐き出した。
「……でもやっぱり、みんなのこと、他人だとは思いたくないよ。だってウィル、俺たち、家族じゃないか」
「………………」
ウィルは水に浸かるように、ずぶずぶと地面に埋まって見えなくなってしまった。お、怒らせてしまったか?すると背後で、大きなため息が聞こえた。
「はぁー……ダーリン、気にしないでいいよ。照れてるだけだから」
「え、あ、そうなのか、ロウラン?」
「そうだよ……もうなんだか、一年間分のお砂糖を突っ込まれた気分なの」
は、はあ……?
つづく
====================
読了ありがとうございました。
続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。
====================
Twitterでは、次話の投稿のお知らせや、
作中に登場するキャラ、モンスターなどのイラストを公開しています。
よければ見てみてください。
↓ ↓ ↓
https://twitter.com/ragoradonma
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします
雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました!
(書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です)
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる